コメディ・ライト小説(新)
- Re: 始発線は終点をしらない ( No.6 )
- 日時: 2022/08/27 07:43
- 名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)
第四話「ピアニッシモ」
「~♪~♪」
音楽室から聴こえる、美しいピアノの音。
放課後、誰も居ない音楽室にただ一人、凪咲はピアノを弾いていた。
ーーパチパチパチ。
「うわぁ!?」
不意に鳴った破裂音に、少女は思わず声を上げる。
「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ...」
申し訳なさそうに、千歳はピアノの横に立つ。
「...ピアノ、好きなのか?」
「えっ!?う、うん...。小さい頃からやってたから」
「すごい綺麗だなと思ったんだ。君のおてんばな性格からは想像できなくてさ」
凪咲はむっ、と顔をしかめた。
遠回しにバカにされたのが、気に食わなかったのだろう。
「...ひねくれ男」
「ギクゥ!?な、なぜそれを!?」
「湊くんから聞いたもん。『千歳は少しだけひねくれてる』って」
おのれ湊...と思いつつも、ひねくれていることがばれてしまったことに、千歳は焦りを隠しきれなかった。
「...ぷっ、あははははは!」
「な、なぜ笑う!」
いきなり笑い始めた凪咲に、千歳は恐怖を覚えた。
それから少しして、ようやく落ち着いたのか凪咲が話始めた。
「だ...だって、千歳くん焦るとすごい顔するんだもん...ひぃ...!」
「そんなものか?...ぷっ、これは酷いな...。ははははは!」
刹那、凪咲はいきなり大声を上げた。
「あっ、千歳くん笑った!」
「そ、そんなに驚くことか...?」
凪咲は微笑みながら、理由を話した。
「だって千歳くん、いつも気難しい顔してるんだもん。」
そうなのか、と呟き思い当たる節を探したが、それらしい記憶はない。とすれば、無意識のうちにそうなっていたとしか考えられない。
「...ねぇ、一曲弾かせて?」
「ああ。それで、何を弾いてくれるんだ?」
すると、凪咲は笑い答えた。
「Quatre mains」
聞いたことがある、確かエヴ○で流れたピアノの連弾曲のはずだ。
「連弾だろ?弾けるのか?」
「私は絶対音感の天才だぞ?」
天才かどうかはさておき、凪咲は深呼吸をしてから弾き始めた。
「~♪」
(...楽しそうだ。それに、高難度のこの曲をミスなしでこなしている)
「...ふぅ。どうだった?」
「すごかった...。感動したよ」
すると、少しだけ頬を染めて小さく呟いた。
「こんなこと、大切な人にしかやらないのに...」
「ん?今なんて?」
「ううん、なんでも」
本当は聞こえていた、なんて言えるはずがない。
「あっ、もうこんな時間!私、帰るね」
「ああ、じゃあな」
走って帰っていったが、転ばないかと心配になる。
(大切な人、か...。)
環境音は、ピアニッシモの如く、弱く聴こえた。
千歳:「よろしく」
凪咲:「うん!よろしく~」
千歳:「今日のピアノはものすごく綺麗だったぞ。いいものが聴けたよ」
凪咲:「そう?良かった♪」
千歳:「あ、悪い飯食ってくる」
「あ、行っちゃった...。千歳くん、か。イケメンだけど恋愛には興味なさそう。」
凪咲は決意した。
「絶対に振り向かせてやる」