コメディ・ライト小説(新)

Re: 始発線は終点をしらない ( No.8 )
日時: 2022/08/28 20:44
名前: たまはる (ID: tEZxFcMB)

第六話「憧れと勉強会」


「やべー...」
湊は焦っていた。なぜならば、近々中間テストがあるのだ。
湊は、今までギリギリで赤点を回避していたが、今回ばかりはそうはいかない。

「どうしたのですか、湊さん」
「うわぁ!?ってなんだ星奈か...。」
「なんだとはなんですか」

不覚にもドキッとしてしまったのは言うまでもないだろう
「ご、ごめん。いや実は...」
全てを話した。話したところでどうにかなるわけでもないが。
すると、星奈は数秒考えて口を開いた。

「じゃあ土曜日、私の家で二人きりで勉強会を開きましょう!拒否権はありません!」
「あ、ああ...(積極的になった...!?)」

こうして、勉強会は決定した。
そして、土曜日...。

ピンポーンという、何とも間抜けな音が北条家に響いた。
数秒経つと、ドタバタという音が聞こえたあとにドアが開いた。
「はーい。湊さん!どうぞ、入ってください」
「う、うん。お邪魔しまーす...」
若干遠慮しつつも、湊は中に入った。

室内に広がる甘い香りは、鼻腔に刺さると湊の思考を奪っていく。
「ここが私の部屋です」
「お、お邪魔しまーす」
内装は想像通り、女の子女の子していた。

だが、それ以上に星奈の香りが一層強くなり、湊の心拍数はどんどん上昇していった。
「じゃあ、早速取りかかりましょう。何からやります?」
「え、えっと数学から」
「数学ですね...わあ、ノートは綺麗に取れてますね」

物理的な距離は先ほどよりも縮まり、湊の心拍数はさらに上昇していく。
しかし、それは湊に限ったことではなかった。
「基本的に公式は理解できているので、応用問題ですね(うう...湊さんが近いぃ...)」
「ああ、あんまり公式の当てはめ方が分かんなくて(うう...星奈の距離が...)」

「ーーよし、全問正解です。やればできるじゃないですか」
かれこれ、ニ、三時間ほどで全教科は終わった。
湊と星奈は、すでにクタクタだった。
「はぁ...疲れた~」
「よく頑張りました」
疲れはてた湊の頭を、星奈は撫でた。
意図的ではない、ただ何も思わず。

「!?」
「あっ、すいません!私ったら」
星奈は、自分が何をしたのか気付き、咄嗟に手を引っ込めた。
「い、いや...そうだ、お腹空かない?どっか食べに行く?」
「いえ、今日は私が作ります」
星奈が昼食を作ると聞いて、湊は好きな人の手料理を食べれるということで、楽しみ半分、羞恥半分であった。

「ーーできましたよ。牛丼です」
「うわぁ...!いただきます!」
湊は丼に盛られたそれを口に運ぶ。
「うん!美味しいよ!」
「良かったです!おかわりもありますよ」
その後、湊はすぐに平らげた。
星奈は、幸せいっぱいになった。

午後の勉強を始めてから数十分、湊は睡魔に襲われていた。
「湊さん、眠いのですか?」
「うん...」
星奈は考えた。そして、勝手に恥ずかしくなった。
「み、湊さん!よければ私の膝を!」
「うん...」
湊にそんなことを考える気力は残っていなかった。
理性を捨ててしまった彼には、どれが最善なのか分からない。

湊はほどよく柔らかい星奈の膝に頭を預けた。
「おやすみなさい...」
湊は、小さく寝息を立てて深い眠りに落ちた。
湊の寝顔は、男とは思えないほど可愛らしかった。

「...んぅ......あれ、俺寝てた...?」
意識が覚醒してから、状況を理解するのはそれほど遅くはなかった。
「こ、これって...膝枕!?」
「スウ...スウ...湊さん...」

湊は一人で、羞恥心に駆られながら、星奈は寝言を呟きながら、夕日に照らされるのであった。