コメディ・ライト小説(新)

Re: 横井家族の日常 【小5執筆】 ( No.1 )
日時: 2022/12/04 08:38
名前: むう (ID: viErlMEE)


  第1話「目立ってしまうわけ」

 四月三十日。始業式から三日後。新六年生になっても、クラスメイトは五年生のころとおんなじ。
 でも。一番左の列の最後尾のわたし—横井郁よこいいくの席には、友達がたくさん集まっている。
 どこにでもいる普通の女の子。ひっそり生きていきたいというわたしとしては、非日常な光景。

「郁ちゃん、すっごいよねえ!」
「テレビに映ってたもん」
「……ああ、もう。地味に生きていたいのに、なんでこうなるのよ~」

 机に突っ伏して泣き言を言うと、親友の島村朱音しまむらあかねがぽんぽんと背中をたたいてくる。
 テレビに出てしまった。すごいことをしたわけでも、何かのコンクールで賞をとったわけでもない。

「まあまあ。だってしょうがないじゃん、あんたは。ドンマイドンマイ」
「でも、八人兄妹ってすごいよねえ。色々大変でしょ?」

 目立ちたくないのに、どうも目立ってしまうわけ。それは、七人も兄妹がいるから。
 それを聞きつけた地元のテレビ局がやってきて、いやいやテレビに出演して、結果的に目立っちゃって……。はあ……。

 あ。ちなみに、兄妹の名前と、生まれた順番はね。

 長男:直己なおみ(中1)ミステリーや事件にあこがれている、八人兄妹の一番上。
 長女:わたし(小6)普通の女の子……なのかな?
 次女:栞奈かんな(小6)わたしの双子の妹。クールな性格。
 次男:拓也たくや(小5)そこそこ頭がいい。足が速い。
 三女:由紀ゆき(小4)手先が器用で、生意気で、おませさん。
 三男:そう(小3)八人兄妹一番のいたずらっ子。
 四女:渚沙なぎさ(小2)末っ子。一番の天然娘。
 四男:旬也じゅんや(小2)渚沙の双子の兄でゲームが好き。

 はあ。駆け足で紹介したけど、わかってくれたかな?
 男子四人、女子四人。合計八人。
 八人も兄妹がいなければ、目立つことも、テレビに出ることもなかったのに。
 でもこれだけは、どうすることもできないのだっ!
 あぁ……もう……。

 お母さんに文句を言うわけにもいかないし。
 何より、うちんち共働きだから、七人分の面倒をお兄ちゃんとわたしと栞奈が見なきゃいけないんだよね。
 んで、そのお兄ちゃんが部活で夜遅く帰ってくるもんだから、面倒見るのはほぼ、小6双子コンビ。
(大変なのねぇ。六年生なのにすごいわ)って、テレビのアナウンサーさんはやや大げさに驚いてたっけ。
 同情してくれるのはいいけど、大げさに言われるのは嫌だったなぁ。

「ねえ郁ちゃん。お料理も自分で作るんでしょ?」
 いつのまにか、ゆるふわ女子の萌絵もえちゃんまで机の周りに来ていた。ふわっふわの髪をゆらして、首をかしげる。

「まあね。簡単なものばっかりだけど……」
「じゃあ今度教えてくれない?」

 女の子達から、質問とお願いが飛ぶ。
 教えるのはいいけど、目立つのはあんまり。
 だって、クラスの中心のような、女子力高いグループの女の子達や男子が、うわっ……て目で見つめてくるもん。

 ちょくちょくからかわれたりもするし。
 何度も言ってるけど、うんざりだ。
 ……って、感慨ふけっている間にも、話は続く。

「栞奈ちゃんも作るの?」

 話にちょくちょく名前が出てくることが多い双子の妹の栞奈は、クールで文武両道だ。
 だから人気があるのだけど、自分ではそれを認めてない。
 でもクールなのは学校だけ。家ではクールと言っちゃクールだけど、色々うるさくて、しょっちゅうケンカする。ましてや、料理を作ってくれたことなんて一度もない。

「へえ。そうなんだー」
と誰かが言ったところで、ご本人登場。

 同じクラスじゃないから、あんまり話さないし教室にも行ったことがない。栞奈はちょくちょく来るけど。
 
 真っ黒のサラサラ長髪ヘア。わたしとうり二つの顔だから、余計に腹が立つ。
 あーあ。何でわたしにはああいう「お嬢様」感が少ないんだろう。

「……何しに来たの?」
「逃げて来たの」

 彼女の言動は謎めいていることが多い。だからいちいち聞き返さなくてはいけない。

「誰から?」
「……あんたの弟」

 はあ?

 聞く暇はなかった。
 あきらかにこいつだ! と分かるような声が廊下で聞こえたから。



 (次回に続く!)
 

Re: 横井家族の日常 【小5執筆】 ( No.2 )
日時: 2022/12/04 08:57
名前: むう (ID: viErlMEE)


 第1話(2)

 「せっしゃは剣の戦士、横井颯であるぞおっっ! 神妙にお縄につけいっっ!」
 分かりやすいとはまさにこのこと。こいつ、自分でばらしやがった。

 ガラガラッと教室の扉を開け、大股でつかつか入ってきたのは、間違いなく小学三年生の横井颯だった。
 両手に、どこから持ってきたのか、剣のおもちゃを持っている。

「ほら来た……」
 栞奈もわたしも、あっけにとられた顔になって、颯を見つめた。

 こいつ、いたずら好きで、よく兄妹がいる教室に入り込んでは、ツッコミどころ満載のセリフを吐いたり、いたずらしたりしている。
 そして今日は、昨日見た時代劇のセリフを口走って登場。なぜか横には、由紀もついている。最悪なコンビだ。
 いたずら男に生意気少女。

「じゃあ、お願いねッ」
 なんと、栞奈はわたしをドンッと突き飛ばして、教室を出て行った。
 お、お願いね……って。
 この状況、どうしろって言うのよ――――――――!

 まずは落ち着くことだ。
 すーはーすーはーと深呼吸。

「ちょっと颯、由紀。なにしてんのよ」
 お姉さんっぽく叱りつけると、なんと彼はこう言ってのけた!
「せっしゃに向かって呼び捨てとは無礼じゃッ!」
 
 ……この場合、どうコメントするべきか……。
 昨日見た時代劇がよほど心に残ったんだね。だからずっと侍口調なのね。それは分かったよ。でもね……。

 由紀は、颯ほど心に残ってないでしょ?

「わたしは颯様のお供として、ここに向かったのだ。無礼な言葉を吐いた罰として、おまえを倒すッ!」

 え――――――!? ちょ、ちょっと待ってよ。
 何なのよこの展開!
 
 クラスメイトは面白そうに、颯と由紀とわたしのやり取りを見物している。
 目立ちたくないって何回言えばわかるのよ。
 
 と! 二人が干ばつ入れずにタックルしてきた。

「ふひゃあっ」
 頭突きされ、後ろにひっくり返る。
 もう、何するのよ、あんた達!

 ギロっと二人を見ると、なんと二人とも満足そうに口の端をあげている。
 そしてとどめの一言。

「これで町は守られたのである。終わり!」

 もう許さない。家に帰ったら説教だ、説教!
 お兄ちゃんに言いつけてやるんだ!
 
 だいたい最後の「おわり!」って何よ?
 もう今日という今日は許さないんだから!


 (次回に続く!)


 -------高2むうの一口メモ------------
 横井家族の日常は、小6の時、
 当時いた保健室(保健室登校をしていました)グループの卒業発表で
 なんと、音読(!)しました。
 このあと、「ハチャメチャ学園!?」というこれまたカオスな小説を(冒頭だけ)書いたんですが、このあいだカクヨムを見たらまんま同じタイトルの小説があってびっくりしました。
 世界って広いね。