コメディ・ライト小説(新)
- Re: プラネット・ホットライン ( No.1 )
- 日時: 2022/12/28 17:21
- 名前: むう (ID: viErlMEE)
【オートー星】
「はいこちら、オートー星。オートー星。応答願います」
『………ん?』
「ん? というのはそちらの言語でしょうか? できれば、ん? ではなく別の言葉で対応してほしいんですけど」
『……は?』
「は? というのもそちらの言語ですか?」
『あんたなに言ってんの?』
「こちらオートー星。オートー星。他星のなんかしらん人と受信中。翻訳通信オン。どうやら判別可能な言語のようです」
『は?』
「は? というのがどうやら、彼の星で一番使われる言葉のようですねマスター。はい、さっそく登録を……」
『ちょちょちょい。待って待って待って』
「ん?」
『さっきから訳が分からんこと言われても困るって。なんなの? 何か急に俺の電話が鳴って、そしたらアンタの声が聞こえたんだけど』
「はい、こちらはオートー星です」
『オットセイ?』
「いえ、オートー星です」
『応答せい?』
「はい」
『今応答してるけど』
「あー、マスター。会話難航中。会話難航中。至急翻訳電波の供給を頼みます」
『おーい、勝手に話を進めんなー』
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『で、さっきからずっと出てくる【マスター】ってなに? あとアンタ誰? 結局これはなに?』
「僕は、オートー星……いえ、オットセイじゃなくて、オートー星のカウンセラーです」
『カウンセラー?』
「オートー星は、他の星の電波をすべて受け取ってしまう、超セキュリティガバガバの星なので、こうしてたまにしらん人から連絡が来ます。そのしらん人と応対をする仕事が我々です。しらん人が困ってたら相談に乗りますし、しらん人が失恋したらなぐさめます」
『セキュリティガバガバすぎるだろ』
「そういう星です」
『そんなもんか、で片づけて良い問題じゃないよコレ。本当に大丈夫なの?』
「大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます、しらん人」
『しらん人って言うのやめてくれる?』
――――――――
「と言われましても、僕の国では、他の国の人間は【シラン人】と呼ぶのです」
『ネーミングセンスよ。もっといい方法あるだろ』
「我が国の個性です」
『悲しいよ』
「ところであなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか」
『俺は田口だよ』
「シラン人の……田口様で? 出身星はどちらになりますか?」
『地球。日本』
「ほお。マスターマスター。シラン人の情報を確認しました。はい、ぬかりなく」
『マジで心えぐられるから、シラン人って言うな……。それでアンタの名前は?』
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「僕の名前は『シツ・レイ』です」
『色々終わってるよ君の国』
「マスターっていうのは僕の上司になります。名前を付けてくれました。カウンセラーからは『リー夫人』と親しまれています」
『理不尽すぎるマスターじゃねえか』
「リフジン? それはどういう意味ですか?」
『……失礼だから、やっぱいいわ』
「シツレイ? はい、僕の名前はシツ・レイですが」
『もういいって』
- Re: プラネット・ホットライン ( No.2 )
- 日時: 2022/12/28 21:45
- 名前: むう (ID: viErlMEE)
【オートー星】その2
「それで田口様。こうして電波を受信できたのも何かの縁ですし、あなたのことを聞かせてください」
『俺のこと?』
「ええ。シラン人の善悪を区別しなければいけません」
『しつれ……おおっとなんでもないよシツ。わかったよ。とりあえず話せばいいんだろ? なにから言えば?』
「足のサイズとかでしょうか」
『お前ふざけてるの?』
『宇宙は広いですよ。前担当したシラン人は、からだがゼリー状になっていたのです。この質問は相手がどういう体系をしているのかを判断する、重要な質問だと思います」
『はあ。25だよ。指の数は五本。……なんでこんなこと初対面の奴に言わないといけないんだ』
「そういう星です」
『それ、もういいって。わかったから』
「田口様はなにか仕事をされているのでしょうか」
『学生だよ。中学校』
「チューガッコ?」
『みんなで集まって勉強する仕事をしてんの』
「へえ。僕のとことは大違いだ。こっちは、ただ話を聞くだけの仕事ですよ」
『めちゃくちゃつまらなそうな仕事なのに、お前のせいでめちゃくちゃ楽しそうだ』
「よく言われます」
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「それで田口様。今困ってることとか、悩んでいることとかありますでしょうか? 僕も仕事ですので、相談に乗りますよ」
『今の流れ全部が頭痛につながってるよ』
「僕のせいで頭がいたくなったんですか?』
『………そうだよ』
「遠く離れていても、言葉の力が他者に与える影響は大きいってことですね」
『綺麗にまとめてんじゃないよ。痛いよ。痛みがさらにひどくなったよ。名は体を表すって言葉の意味がようやく理解できたよ』
「マスターはすごいでしょう」
『色んな意味で凄いし、君の国も色んな意味で凄い』
「褒めていただき光栄です」
『褒めてないって』
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「ではシラン人。今回はお時間いただきありがとうございます。無事データを収集できました」
『俺の名前と出身地と足のサイズだけで大丈夫なの?』
「あとはなんか凄いマシーンがテキトーにやってくれます」
『心配だよ。めちゃくちゃ心配。そっちに行きたいよ』
「ありがとうございます。楽しんでいただけたようでなによりです」
『なんだろう、不安しかない』
「それでは僕はちがうシラン人の対応をしなければいけませんので、この電話はここで終了しますね。田口様」
『はいはい。なんか明日テストさぼろうかと思ったけど、どうでもよくなったわ』
「これがオートー星のカウンセラーです」
『………んじゃ。切るよ、シツ・レイ』
「また会えたら、一緒にお話ししましょう。田口様の話し方って会話が弾みますね。なんででしょう」
『ボケとツッコミがいるからだよ……』
【X月X日 シラン人・日本人のデータを記録】