コメディ・ライト小説(新)

Re: プラネット・ホットライン ( No.5 )
日時: 2022/12/31 15:56
名前: むう (ID: viErlMEE)

 【異世界転星】

 「こちらオートー星。オートー星。応答願います」
 『……なんだこれは。【スキル】発動時の謎の声か!?』

 「ちょっと何言ってるのかわかりません」
 『ほほお。こういうのはだいたい訳わかんなくなるのはこっちなんだが、どうやら今回は逆と見た』

 「こちらはオートー星。シツと申します」
 『そしてそして、大賢者とか小賢者に名前があるパターンね。はいはい。うわー、ラノベの読み過ぎでどんな展開にも対応するボクやば』
 「全然対応してないですよ。らのべとはそちらの言語ですか?」

 『は? あーはいはい。またそうやってはぐらかして。そうだよな、だいたい皆そうやって一旦引くんだよ』
 「僕は違う意味でちょっと引いています」
 『さあ早くスキルくれよ。そんでよお、美少女とキャッキャウフフしてよお、なんかこう、和気あいあいとしたいわけよ!』


 「話が見えてこないのですが、そちらは何という星ですか?」
 『知らないよ、こっちが聞きたいよ。なんか、車に轢かれて異世界転生……ってよくある王道じゃん。でもボクが轢かれたのはなんだと思う?』
 「なんですか?」
 『三輪車だよ! 子供が横断歩道渡ろうとしてて危ないから駆け寄ったら肘に激突したわけ! その衝撃で車道に出て車にはねられたわけ! つまりあれだ……二次災害なワケ』
 
 「ええーと、話を整理するとあなたは事故られたというわけですか?」
 『そうだよ。まさかのそっちが異世界転生知らないパターン?』
 「僕はオートー星の住民です。大賢者? ってなんですか?」
 『え、待って宇宙人? リトルグレイみたいな?』
 「リトルグレイもわかりませんが……ま、そんなもんです」
 『うーわ、やべぇ。嫌な予感しかしないんだけど。あれだろ? スキル【触手】とかで、某漫画の先生みたいにタコになるんだろ? そういう能力を与えるつもりだろ?』


 ―――――――――ー

 「僕が与えられるのは多分コミュニケーションスキルくらいのものです」
 『コミュ障なめてんの?』
 「でも今は流ちょうに喋っておられますが」
 『オタク特有の早口って奴だよ空気読めよ! ……あ、相手宇宙人だった……。マジで宇宙人なの?』

 「そちらのくくりで言えばそうなります」
 『マジか……』
 「つまり要約するとあなたは自分のいる場所の名前も知らないと」
 『マジで何も分かんない。白い空間に横になってる。多分この後かわいい女の子オアあやしい集団が出てくると踏んでいたところにお前の声だ』

 「なるほど理解できません」
 『……てっきり神かなと思ったんだけど、そうか、リトルグレイか」
 「多大な誤解を生んでそうなのですか……」
 『そうだよね。まず文化が違う。ラノベもなにもないよな。ラノベっていうのはな、ふとしたことに男の子が車にひかれて、知らない場所で知らない女の子とイチャイチャする話のことだよ』

 「………ふとしたことでなるようなものなんでしょうか」
 『ファンタジーだからそこは突っ込まないでよ』
 「え、事故ったのになぜあなたはまだ生きているんですか?」
 『あー、そこからか!? そうだよな、そういう話の流れだったよ!』

  ――――――――――ー

 「あなたの話をもっと聞きたいです。貴方のお名前は?」
 『田口だよ』
 「……奇遇ですね。この前、同じ名前の人と話しました」

 『……ボクの弟がなんかブツブツ言ってたけど、もしかして足のサイズが何とか……』
 「それ僕です」
 『――――は!? マジで? なに、兄弟そろって呪われてんの? 【電話に出ただけなのに】と【転生したら大賢者が宇宙人だった件】で全国上映できそうだよ』
 「……わけがわからないよ」
 『【宇宙少年 マジカ★マジカ】も上映決定! ……ってなるかああ!』

Re: プラネット・ホットライン ( No.6 )
日時: 2022/12/31 15:59
名前: むう (ID: viErlMEE)

 【異世界転星】その2

 「つまり貴方方『田口』さんは兄弟そろって僕からの電話を受けているということですか」
 『そのうえ弟は無事テスト赤点取ったし、ボクは異世界転生したあげく……いや、まだ転生してないから転移? ま、どうでもいいけど宇宙人と会話してる。ふつうないよこんなこと』

 ―――――――ー

 「いやあ、僕もよみがえった人からの電話なんて初めてです」
 『あのな、異世界転生ってのは、死んだと思ったらちがう場所で寝てて、神から特殊能力を与えられて、仲間作って魔王を倒すってのが主流なの』
 「田口兄さんはなぜ、そんなに物知りなのですか? ご自分が死ぬことを理解していたのですか?」
 『そーだよ漫画の読み過ぎ! 冴えない陰キャの高校生! ワンちゃんあるんじゃねと思ったら本当に現実になった。現在ちょっと転移する世界がおかしい系ラノベの真っ只中にいる』

 「情報過多です」
 『そりゃこっちも同じだよ。なんか毒気が抜かれた気分だ』
 「特殊能力って話ですが、その神とやらはまだ来てないのですか? だったら異世界転生? ではなく、貴方のいる場所は地獄か天国か……」
 『やめろ夢を壊すな。実際一時間くらい経ってるけど』
 「……神などいないのではないですか」
 『やめろ、それ以上は自分が本当に痛い奴になるからやめろ』

  ――――――――ー
 
 「もしかすると魔王? のポジションが僕だったりします?」
 『……なにその冴えなさすぎるムーブ。あんまりだよ。論破で戦うんか? 宇宙人相手に?』
 「【スキル】 コミュニケーション、とか」
 『お前無駄に話対応するのやめろよ。傷をえぐるな。そして伏線を回収するな。すごいぞ回収しても虚しさしかない』

 ――――――――――ー
 
 「うーん、らのべ? ってやつは分かりませんが、僕の星にも主人公と仲間が悪を倒す話はあります」
 『マジ? どんな話?』
 「主人公が持ってるのは【対応力】という能力です。舞台は白いお部屋。敵さんは、ちょっとイラッとくる言語で攻撃を仕掛けます』
 『……ん?』
 「主人公とその仲間は、【対応力】で敵をやっつけます」
 『え、待って、クレーム対応じゃねそれ。いやいや、全然華もないストーリーじゃん』

  ―――――ー

 「生憎セキュリティに難のある星ですので、結局は言葉で封じ込めるしかないんですよ……」
 『哀愁を漂わせるな。コミュ障の傷が増えるからやめて。ことごとく失礼だねお前。弟から聞いてるけどマジで失礼。天然? っていうか、なんだろう、悪意のない言葉づかいがなんかなあ、心にこう、グッとくるんよ』
「【スキル】かどうかは知りませんが、僕は、自分の話がシラン人の体調不良につながるらしく」
『これが【コミュニケーションスキルに難のある】ってやつか……いや、一周回って怒りもないな』
「怒られると僕も困ります」

 ―――――――

「それで田口兄様。神はどこにおられますか? もしよろしければその、大賢者とやらのデータも取りたいのですが」
 『神はボクを見捨てたようだ。すげえ、言葉並びはめちゃくちゃかっこいいのに、めちゃくちゃダサいぞこれ』
 「美少女とやらは、どこにおられますか? キャッキャウフフの意味を拝受願いたいのですが」
 『二次元の中にしかいなかったみたいだ……」

 「……貴方のいる場所のお名前を、今一度確認したいのですが」
 『多分地獄だ。それかあれだ、【無駄に三輪車にはねられた男子高校星】だ。絶対これ異世界転生じゃない。ひどすぎる』
 「んじゃ、【異世界転星】としておきますね。グッドラック。……すみません僕は地獄には行けそうもないや」
 『また電話がかかってきたら、そんときは多分地獄でキャッキャウフフしてると思うから、こうご期待ってことで』
 「……その際もまた寝そべったままだってセンはないでしょうか」
 『そん時はまた、グッドラックって励ましてくれよ大賢者』


 【X月X日 シラン星『無駄に三輪車にはねられた男子高校星』を記録】