コメディ・ライト小説(新)
- Re: .°*・.夕空〜君の瞳に映るのは〜.・*°. ( No.5 )
- 日時: 2023/05/08 21:34
- 名前: KAORI (ID: rys6jfTw)
.°*・.PAGE4.・*°.〜君の視線の先〜
「はぁ?結局、入部したの?」
朝の電車で偶然鉢合わせた綾人に新聞部に入部した事を話すと明らかに不機嫌そうな声色でそう言った。
「まぁ‥‥部員がいなくて廃部させたくなさそうだったし‥バイトとも両立できそうだし良いかなって」
捲し立てるようにそう返した。
あの時‥
七瀬先輩が‥不意に見せた大切な何かを見つめる様な視線を見たら。
なんとなく、 断れなくなってしまった。
「ーーーその七瀬って先輩のこと‥気になってんの?」
唐突すぎる綾人からの問いに。
あたしの鼓動はドキッとする。
「なっ‥何言ってるの‥そんなわけないし。ほらっ!早く行かないと遅刻するよ」
取り繕う様にそう言って、その場を流す。
あたしはせかせかと歩を進めて綾人の一歩先を歩く。
「っ‥明らかに動揺してんじゃん‥‥」
ボソッと呟いた綾人の言葉は‥
あたしの耳には届いてなかったーーー。
▪️ ◇ ▪️ ◇ ▪️ ◇ ▪️ ◇
ーーーキーンコーン‥。
『七瀬って先輩のこと‥気になってんの?』
綾人の今朝の言葉が頭の中で反芻しながらも
1日は過ぎて、あっという間に放課後になった。
活動場所である生物準備室の扉を開けると。
七瀬先輩1人だけが既に来ていた。
だけど‥先輩は机に顔をうずめて
寝息を立てて寝ている。
長いまつ毛。整った顔立ち。
電車の中での横顔も綺麗だけど‥
寝顔も‥とても綺麗で、思わず見惚れてしまう。
準備室の窓は少しだけ空いていて。
春の心地よい風がそっと吹いてカーテンを揺らしている。
どのぐらい経っただろうか。
見惚れていたその時だった。
「‥‥紗奈‥先輩‥」
寝言で‥彼はそう言った。
瞬間。
心臓を鷲掴みにされたみたいに思考が停止した。
はっきりと聞こえたのは‥
年上の‥女の人の名前だった。
本人に聞かなくても‥わかる。
寝言で名前を呼ぶぐらい‥きっと、先輩にとって特別な人だったんだろうと。
そして‥今でもきっと‥大切に想ってる人なんだろうとーーーーーー。
「‥‥っ‥‥」
瞬間。
あたしの頬を涙がつたっていく。
馬鹿だな‥。
こんなタイミングで自分の気持ちに気付くなんてーーー。
気づくと‥窓の外から見える空はオレンジ色に染まっていて。
夕陽の光が差し込んでいた。
この瞬間。
あたしは‥
ーーーーーー別の誰かを想う貴方に恋をした。