コメディ・ライト小説(新)

Re: 雪と雫と日向 ( No.26 )
日時: 2023/01/18 08:48
名前: once (ID: wsTJH6tA)

第2章

***

慌ただしい春が忙しく過ぎ去り、
学生や社会人、新生活を迎える者が
手に入れたり与えられた新しいポジションに慣れる頃。

浮かれた雰囲気も
落ち着かない雰囲気も
ようやく沈静化した学校内。

とりあえず高校生活エンジョイしよう
と悠長に構えて遊び呆けるつもりの生徒もいれば。

さあかかってこい
とこれから待ち受ける困難に備えて
戦闘態勢を万全に整えるまじめな生徒もおり。

勉学に励むか、遊びに逃げるか。
両方を選ぶものもきっといるだろう。

──私もその両方を選びたい人間だ。

しかし、あいにく両立させる術を知らない
どっちつかずの選択肢すらない能なしである。

自分が両方を選びたくても、
片方だけですら手に負えるか分からない
不器用な人間だということに自分でも幻滅するしかない。

それなりに努力して、
今現在成績は可もなく不可もなくといったところで
顔面蒼白にならずに済んでいる。

高校生活の方はというと──。

Re: 雪と雫と日向 ( No.27 )
日時: 2023/01/18 09:02
名前: once (ID: wsTJH6tA)

残念ながら、
エンジョイできるタイプでもなかった。

そもそも交友関係が狭くて、
結局あれから新しくできた友達はゼロ。
今でも頼みの綱は月夜だけ。

情報屋と取り引き相手か?
と思うようなやり取りばかり。

様々な、些細な報告までも受けて
それに対して何も返せない自分。

月夜にとっては何の利益もないはずなのに
それでも未だに私に構ってくれている。

つまらない人間なもので。
平凡以外の特徴がないもので。

相変わらず友達はできないわ、
会話という会話も事務的なもので
一言交わすか返事するだけか……。

いや、まあ……。
学校生活ってそんなもんだよね。

変に期待した自分が悪かった。
何を夢見てたか、間違いだった。

ドラマや漫画の世界とは違うのか。
現実は甘くない。
理想は脳内に留めるに過ぎない。

勉強ばかりの学校生活なんて、
エンジョイできるものか。

Re: 雪と雫と日向 ( No.28 )
日時: 2023/01/18 09:17
名前: once (ID: wsTJH6tA)

私が知る、ドラマや漫画の中での
理想的な高校生活というのは……。

全校生徒が友達みたいな距離感だったり、
若い先生との距離感が異様に近かったり、

──それはまあ嘘くさいと
薄々気づいてはいたけど。

他にも……。

校則違反すれすれでおしゃれしたり、
放課後、友達と寄り道したりはしゃいだり、
イベントには積極的に参加したり、

思い出がたくさんできるのが学生生活。
大人になったらできないこと。
幼いままの遊び心を形にできる年齢。

夢を夢で終わらせないのが高校生。
行動力があって一生懸命なのが高校生。

あくまで理想で、もはや完全に夢の世界。
ドラマや漫画などに影響されまくった
事実行動力も人を動かす能力も皆無な凡人。

せっかく雪くんと同じ高校に入れたのに。
旧友もほぼゼロで
新しい友達をたくさん作ろうと意気込んでいたのに。

──日向くんの制服姿を見たとき。
どうせなら中学生に戻りたいと思ってしまった。

茨の道から逃げたくなってしまった。

Re: 雪と雫と日向 ( No.29 )
日時: 2023/01/18 09:49
名前: once (ID: wsTJH6tA)

どうしたって
学校生活をエンジョイできそうにない。
青春を謳歌することは困難を極める。

なぜなら。

先輩方の圧が強すぎて
学年問わず生徒全員が仲よくなることは
不可能に等しいし。

若い先生がほぼほぼ見当たらない我が校で
最も若そうなめがね陰気なオタク気質の男性教諭。

向こうから生徒と距離を置いているため、
近づくどころか異様に遠ざけられる始末。

校則に厳しいのは先生よりむしろ生徒会で。
規則通りの格好、生活態度でなければ
目をつけられ、生きた心地がしない日々を送るはめになる。

先日も、校則を堂々と突き破り
髪を真っ赤に染めてきた男子生徒がいて
違反者が1年生だったにもかかわらず、

髪をもとの色に染め直すこと、
反省文を提出すること、
今後厳しく指導されること
などを言い渡されていた。

自分は単に目立ちたかったり
おしゃれのつもりでも
学校は遊ぶ場所ではないと一喝されたのだった。

放課後の寄り道だって
1人で道草食っても仕方ないし。

図書館くらいなら行けるだろうけど。
用事もないし居心地が悪いだけだ。

Re: 雪と雫と日向 ( No.30 )
日時: 2023/01/20 08:50
名前: once (ID: wsTJH6tA)

勉強が不得意で苦手で
はっきり言って嫌いで

自分には向いてないなと
つくづく思う。

容姿を気にすることも
そんなになくて……。

──気にする、というより
気にかける、の方が正しいかも。

自分が特別かわいいわけでも
取り立ててきれいなわけでもない
ということは自覚しているし。

身の丈に合った立ち居振る舞いで
出しゃばらず無難に生きる。
それが運命だと重々承知している。

おしゃれするのは美人の特権。
メイクするのも余裕のある人の趣味。
スキンケアは努力する理由がある人だけ。

──まあ、そりゃもちろん、現状維持にも
何かしらの心がけが必要だろう。

毎日のお手入れで結果が変わる。
何もしない人の荒れた肌が醜い。
さらに老後に大変な思いをするのは己。

現状維持が困難を極め始める年頃では
もう遅い。気づくのが遅すぎる。

──美容は、試験勉強と同じ。
まるで、テスト勉強の心得。

授業をよーく聞いておくこと。
テキストをしっかり熟読すること。
予習復習を怠らないこと。

毎日の積み重ねがあって
細かい部分や気になる箇所を入念に手入れ
自分に合った方法で、順番を守って。

Re: 雪と雫と日向 ( No.31 )
日時: 2023/01/20 09:06
名前: once (ID: wsTJH6tA)

「ブスでもメイクで生まれ変われるの」
「平均的な容姿も努力次第で平均以上になれる」

──どこかの広告か、
誰かのセリフかで耳にした文句。

嘘くさい、と最初は思った。

ブスはメイクしても所詮ブスだし。
根本が生まれ変われるわけじゃないのが
なんだか残念な宿命というか。

平均的というのはつまり、平凡てこと?
可もなく不可もなくということならば。
別にそれ以上を求めなくてもいい。

今の自分を好きと思えなければ、
一生悶々とした気持ちで
自分のその容姿と向き合わねばならない。

性格と違って自分次第で変われるものじゃない。
体質と違って突然変異する可能性はゼロ。
救いようがない。

──でも、女の子の気持ちを知ったとき。
自分も彼女らと同じ女子と気づいたとき。

誰かのためにきれいになりたいと思う心。
振り向いてもらいたくて努力する心。
わずかでも気づいてもらいたい心。

正直、理解というか共感できる面があった。

原動力があってこそ、
女の子はひたむきにがんばれ続けるのだ。

Re: 雪と雫と日向 ( No.32 )
日時: 2023/01/20 09:27
名前: once (ID: wsTJH6tA)

まずは日々のお手入れが重要。
テレビか雑誌で見て、まねし始めた.

運動不足はむくみのもと。
せめてものストレッチで体を動かす。
そしてなるべく意識的に、
用がなくても階段の上り下りを増やした。

ドラッグストアの美容関連コーナーで、
PBの激安商品じゃなくて
ちょっと値は張るけど有名な化粧水を選んだり。

下調べしてきた、モデルさん一押しの
乳液、パック、クリームなんか買って。

リンパマッサージがいいらしい、とか
時間をかけて優しく丁寧に、とか。

そういう情報を取り入れつつ、
女の子らしいことしてるな自分
と鏡に映る目の前の姿を挑発した。

面倒くさがりな自分が長続きするとは、
飽き性な自分でも継続できることがあるとは。

これで劇的に変わるとは思ってないし
今の状態を保つため先手を打っただけで
見た目が華やかになるわけではなかった。

私はいつも通り、いつもの調子で。
誰にも気づかれることのない
自分改革をスタートさせていた。

これはまず初期段階といったところ。

Re: 雪と雫と日向 ( No.33 )
日時: 2023/01/20 09:46
名前: once (ID: wsTJH6tA)

日々のお手入れが定番になって、
自分の生活の一部になって
当たり前が必要不可欠になった頃。

ステップアップして
次の段階へ進むことに。

装いや風貌を変化させること。

──校則の厳しい学校では難しい。

校外なら自由だろうけど、
正直校外でいつ顔を合わせるか?
難しい問題だ。

自分自身、割とまじめで
制服を着崩すことは反対派だし
校則違反者とは距離を置きたい。

要するに。
悪目立ちすることは避けたい。
白い目で見られ、腫れ物扱いされ。
後ろ指を差される存在──断固拒否。

誰でもそうかもしれないけど、
こういうときは心配が絶えない。

不本意な形で目立って、意図しない噂が立ち
その噂がもし相手の耳に届いて……。

幻滅されてしまうかもしれない?

可能性はゼロじゃない。
万が一の賭けには慎重でいたい。

──ひとまず。

まずは自分のセンスを磨こう。
流行を知ったり、異性の心に響くスタイルを知ろう。
願わくば相手の好みも知りたい。

それとなく探りを入れてみるか……。