コメディ・ライト小説(新)

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.58 )
日時: 2023/10/28 19:29
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 10月から本編更新予定でしたが、プロットを書いてたらまたまた書きたい欲が抑えきれなくなってしまいました(確か第2章開始時も同じこと言ったような気がする)。
 ということで、ちょっと早いですが始めちゃいます。よろしく!

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 〈コマリside〉
 
 ゴールデンウイークが終わった。
 溜まっていた宿題も(トキ兄の手助けのおかげで)無事終わった。

 私は今、ともえ中学校2年3組の扉の前に立っている。廊下側の窓から流れ込んだそよ風が髪を揺らす。数日間通っていなかっただけなのに、なぜかとても懐かしい気持ちになる。

 さてさて。それではさっそく。
「おっはよぉ!」
 ガラガラッと、扉を開け、大きな声であいさつをする。
 何事もあいさつが大事だからね。落ち込んでいる時も、返事だけは明るくしようって思っているんだ。

 何人かの生徒が、「おはよう」と返してくれる。その中には、幼稚園からの幼馴染である杏里あんりと大福(福野大吉だから大福ね)の姿もあった。

「おはよう月森さん。今日も元気だね~」
「委員長!」

 扉のすぐそばに立って、黒板けしを掃除していた鈴野すずのさんが、のんびり言う。
 肩まで伸びた長い黒髪。鼻先にちょこんと乗せた黒ぶち眼鏡。スカートの丈も、キッチリひざ下。
 彼女はこの教室で、実行委員を務めている。私と鈴野さんは同じ図書委員で、毎週水曜日に図書館で本の整理をしているんだ。

「あれ、委員長焼けた? 珍しい」
「そうなの。G県に住んでいる大学生の姉の家に行ったんだけど、そのあと海に連れ出されてね。そんながらじゃないんだけど……」

 お姉ちゃんのことを『姉』と呼ぶところが、まさに優等生って感じでカッコいい。

「良かったね。いいなあ、海。私ずっとアパートにいたよ。宿題が終わんなくて」
「言ってくれたら教えてあげたのに。LINEも一応繋がってるでしょう? 家も比較的近いし、良かったらまた一緒に勉強会をやりましょう」

 学年首位に教わる勉強かあ。実際彼女に教えてもらったクラスメートの子が、『短時間の勉強会だったけど、要点を抑えて解説してくれて、すっごくわかりやすかった。正直、塾の先生よりわかりやすかった』と絶賛してたっけ。これは期待できそう。

 うーんでも、トキ兄の説明もちょっと……いや、かなりわかりやすいんだよなあ。逆憑きの効果で点数は下がるものの、この前の中間テストの数学テストは56点取れたし。

「ありがとう。また考えとくね」
「うん。いつでも待ってるから」

 鈴野さんはフフッと上品に笑い、黒板のほうに向きなおった。
「まあ、とりあえず鞄をおろしてきたら? 星原さんと福野くん、ずっと待ってるよ」

 あ、そうだね。話は荷物を片付けてからだよね。

 教室に入り、自分の席に向かう。
 3組は先月席替えをし、出席番号順の並びからランダムな並びに変わったんだけど、どうやら休みの期間に配置が直されたようだ。一番左の列の最後尾だった私の席の位置は、中央列の前から二番目(つまり教卓から一番見える場所)になっていた。

「うっわ。またあそこかぁ……。これじゃ授業サボれないじゃん」

 仕方ない。次の席替えまで我慢しよう。
 私は机の横のフックにリュックの紐をひっかけ、椅子に腰かける。直後、このタイミングを見計らったかのように、教室の後ろにいた大福が駆け寄ってきた。彼の隣にいた杏里も、嬉しそうに席の近くへ来る。

「おっす月森」「コマちゃんおはよー」
「おはよう二人とも。って、なんでそんなにウキウキしてるの?」

 二人は頬を真っ赤に染め、どこかうずうずしている。大福の両手はさっきからブンブンブンブン揺れてるし、大人しい杏里も今日は声のトーンが高い。久しぶりに友達に会えた喜びで、というわけは無さそうだった。

「それがさ。どうやら今日、この組に転校生が来るって噂なんだよ。俺日直でさ。職員室に名簿持っていくとき、偶然聞いてしまって」
「えっ? 転校生? この時期に?」

 珍しい。そういうのって普通、始業式の日とか学期の初めと被せるんじゃないっけ。
 ゴールデンウイークはある意味、休み明けだけど……。ってことはあの連休中に引っ越してきたのかな。

「それ、男の子なの? 女の子なの?」と聞くと、
「さあ。詳しいことはわかんねえけど、仲間が増えるのは素直に嬉しいよな」
「そうだね」

 2年3組の生徒は、男子13人女子13人の計26人だ。他のクラスの人数は30人。隣のクラスの騒めきに比べると、こっちのクラスは静か。時間の進み具合も、周りと比べてゆっくりな気がする。
 
 どんな子が来るんだろう。お友達になれるかな。
 私はワクワクしながら、のんびり朝の会の開始時刻まで杏里たちと喋ったのでした。

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 キーンコーンカーンコーン。
 朝の会の開始を告げるチャイムが鳴り、担任の河合かわい先生が教室に入ってきた。
 河合先生は国語担当の若い女の先生で、学年でも人気が高い。

「皆さんおはようございます。朝の会始めるよー。鈴野さん、号令」
「はいっ」

 朝の会の司会進行を担当する委員長が、席から立ち上がる。

「きりーつ、礼。着席。お願いします」
「「「お願いしまーす」」」

 クラスのみんなは既に大福から転校生の話を聞いており、一様に浮かれている。着席したあとも、隣の席の子とコソコソ話をしたり、チラチラと廊下を確認したり。
 私は先生の目の前なので、やりたくてもできない。

「それでは今朝の業務連絡です。1限目はショートホームルームで、課題の提出と係決め。2限の国語の時間は、連休明けの小テストを行います。範囲は中間試験でやった『少年の日の思い出』。長文読解と漢字中心に出題するから、しっかり解くことー」

 その後もどんどん話が進み、ついにその時がやってきた。

「じゃ、皆にサプライズです。今日から3組の仲間になる、転校生の紹介です。入ってー」

 来たっ。来た来た来た来たっ。
 クラスメートの視線が、廊下側の扉へと集中する。

 扉がスルスルと横にスライドし、待ちに待った転校生が廊下から教室に入ってきた。

 生まれつきかな。ウルフカットに整えられた髪は淡い栗色をしている。学校指定のワイシャツの上に、黒いセーターを着ていて、黒いネクタイを締めている。下に履いているのはスカートではなく、スラックス。身長は150センチ前後で、かなり小柄。
 くっきりとした二重まぶたに、ぱっちりとした目元。女の子のようだ。

「女子でズボンなんだ。めっずらしい」
 横の席に座る遠山さんが呟く。

 確かに。性の多様化を受けて、ズボン・スカートの選択権を導入したともえ中学校だけど、女の子でズボンを履いている子は今までいなかったよね。
 
「じゃあ、自己紹介宜しくね」
「はい」と女の子が答える。高くてかわいらしい声だった。

 転校生ちゃんは先生から渡された白いチョークを右手に持ち、黒板に自分の名前を書き記す。書道の先生かと疑うような、丁寧で正確な筆運び。

 番 飛 鳥

「何て読むんだろ」と再び独り言を呟く遠山さん。
「バン? とぶ……」

 女の子は私たちのほうに向きなおると、ハキハキとした強い口調で名乗った。
「つがい、あすか、です。よろしくお願いします」
 
 へえ。あの漢字、『つがい』って読むんだ。初見じゃ絶対に読めないや。
 古風で素敵な名前、いいなあ。私の場合はお母さんが語感の良さだけで決めちゃったから。

「じゃあ、飛鳥さんの席はあそこね。月森さんの前」
「わかりました」
「月森さん、番さんに色々教えてあげてね」

「は、はい」
(へっ!?)

 反射的にうなずいちゃったけど、頭は軽いパニックを起こしていた。

 わ、私の前??
 あ、そうか。出席番号順だもんね。『つがい』と『つきもり』は同じタ行だし、『つがい』が前だ。

 飛鳥ちゃんはスタスタと私の前の席まで行くと、ストンと席に腰かけた。そして、首だけをくるりと後ろに回す。


「よ、よろしくね、飛鳥ちゃん」
 慌てて返事をする。
 何事もあいさつが大事だからね。落ち込んでいる時も、返事だけは明るく……。

「あなたが月森さん?」
 飛鳥ちゃんは値踏みするような目で私を見ると、フフッと妖艶に笑った。

「これからは嫌なこと、起こらないといいね。よろしく」

 ………? 嫌なことって何だろう。
 私、逆憑きのこと誰かに話したっけ………?



 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.59 )
日時: 2024/02/12 06:41
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: M2UOh4Zt)

 休憩時間になると、飛鳥ちゃんはすぐに大勢のクラスメートに囲まれた。
「誕生日はいつ?」「兄弟いる?」「好きな教科と嫌いな教科は?」「好きなアーティストは?」。投げかけられる質問に、彼女は一つ一つ真面目に答えてる。

「誕生日は4月1日。エイプリルフール。誕生日に嘘言っても……例えば『1万円欲しい』って言ってもバレねえから結構便利」
「兄弟か。双子の兄がいるよ。うざくて僕は嫌いだけど」
「好きな教科は生物。嫌いな教科は社会。くそ眠くなるから嫌」
「洋楽のバラードが好き。え、知らない? マジか。めっちゃおすすめ」

 飛鳥ちゃんは男の子っぽい喋り方をする。カラカラと明朗快活に笑い、今どきの若者言葉もスラスラ話す。かといって表立って目立つ性格ではないみたい。外見・服装・口調。全部を含めて見ても、今まで居なかったタイプの女子って感じ。

 私は彼女の後ろの席に突っ伏して、会話を盗み聞きする。
 あの輪に入るのは、陰キャの自分には無理そう。まずは会話のきっかけになるような共通項を、やり取りの中から見つけていこう。
 こんなやり方で申し訳ない。許してくださいませ。

「えー、飛鳥ちゃんってカッコよ。あとでLINE交換しようよ」
 と言ったのはツインテールのギャルっぽい女の子。 
 クラス女子カーストの上位にいる、高峰さんだ。

「あ、実際は校内に携帯持ってきちゃダメなんだけどさ。ルールとか知らんわって、皆こっそり持ってきてんの。これ、先生には内緒ねっ」
 
 背が高くてスタイルが良くて、何より小顔で可愛い。読者モデルをしていて、週2日ほど学校を中退し、レッスンに行っている。現役バリバリの、芸能人中学生として校内でも人気だ。
 くわえて、学級副委員長でもある。副委員長がそんなこと言っていいのかなあ。

「? えっと、あなたは……えっと、高峰、えっと、下の名前なんて読むの?」
 高峰さんの名札に視線を移した飛鳥ちゃんが、きょとんと首をかしげる。

「うち、副委員長の高峰静杏たかみねせあ。あっは、やっぱ初見じゃ読めんよね。キラキラネーム同士仲良くやろうぜっ」
「僕の漢字、キラキラネームじゃないと思うけど」
「でもさ、サイトで検索したら結構順位低かったんよ。『番』」
「そんなサイトあんの」

 すごいなあ。転校初日なのに、もうクラスになじんでる。
 ちなみに先生から聞いた話なんだけど。飛鳥ちゃん、実年齢は13歳だそうだ。
 じゃあなんで中学2年生のクラスにいるのか。その理由が、めちゃくちゃオドロキなの。

 彼女が前通っていた学校は、県内トップレベルの難関中学・律院高校附属中学校りついんこうこうふぞくちゅうがっこう
 トキ兄も元・律院高校生。つまり飛鳥ちゃんは私の同居人と同じくらい、とても優秀な生徒なのだ。

 しかし私立中学に進学したものの雰囲気が合わず、学校を休みがちになった。そしてこの度、家から近い公立のともえ中学に編入してきたのだ。

 私立は公立に比べて授業の進みが早く、もう中1の学習は終わったらしい。そこで彼女は先生と相談して、一つ上の学年―中学2年生のクラスに、飛び級で所属することになったとのこと。

 日本で飛び級ってあり得るんだ………。。
 前後の席なのに、なぜこんなにも遠いんだろうか。
「ちょっと勉強教えてよ」さえも、言い出しにくい存在だよ。

 
「飛鳥さんはご自分のことを『僕』って言われるんですね」
 と尋ねたのは、委員長の鈴野さん。からかっているわけではなく、純粋な疑問のようだ。
 眼鏡のブリッジに右人差し指を添え、位置を直しながら委員長は飛鳥ちゃんと視線を合わした。

「なにアンタ。別にいいだろ、一人称がボクでも俺でもさ」

 否定されたと思ったのか、飛鳥ちゃんは語尾を強めた。
 机に頬杖を突き、足を組んで、ぞんざいな態度を取る。

「そうだよね。個人の自由だよね」と高峰さんも同調。「鈴野さん、もうちょっと言葉の使い方を気をつけたほうがいいよ。今のはあたしもどうかと思うよ」

 飛鳥ちゃんは長いまつ毛の奥の目を光らせながら、棘のある口調で言った。
「それともなに。アンタも前の学校のクラスメートみたいに、痛いとかヤバいとか言って個性を否定するの?」
「す、すみません」
 委員長はかぶりを振る。

「嫌な気分にさせてごめんなさい。そうですよね、個人の自由ですよね」
「そんなに謝らなくても大丈夫だよ。僕だって好きでズボン履いているわけじゃないし。色々あって、仕方なく履いているだけだから」
 
 えっ??
 私は思わず顔を上げた。

 そうなの? ズボンのほうが落ち着くから履いているんじゃないんだ。
 じゃあ、なんでわざわざそんな恰好しているんだろう。って、アレコレ検索するのは失礼か。

「本当に、失礼をおかけしました」
「もう気にしてないから。大丈夫だって」

 なおもペコペコ頭を下げる委員長を、飛鳥ちゃんは慌ててたしなめる。
 相手への気遣いとか所作とか、言葉の使い方がすごく上手い。頭のいい学校へ行くと、そういう礼儀も先生から教えてもらうのだろうか。

 キーンコーンカーンコーン。
 休憩時間終了を知らせるチャイムが、スピーカーから鳴り響く。
 
「あ、もう3限始まっちゃう。じゃあLINEはOKってことでいいよね? じゃああとでパスワード教えるよ。2年3組のグルラあるから、番さんもぜひ入って。あ、あとタメでもいいかな?」
「いいよ。好きに呼んで」
 
 一体何を食べたら、高峰さんのようにハキハキした受け答えができるようになるんだろう。
 短時間で、自己紹介からLINE交換の約束までの流れを作った副委員長のトーク力に、ただただ感心するよ。

「ねえ。そのLINEって、月森さんも入ってる?」
「「「えっ!?」」」

 突然飛鳥ちゃんの口から自分の苗字が発されたので、私・委員長・高峰さんはそろって素っ頓狂な声を上げた。
 学級委員の二人は、(なんでここで月森さんの名前が出てくるの?)の「えっ」。私は、(なんでそんなに私にかまうの?)の「えっ」だ。

「月森さんも、やってるよね? あんまり浮上してないけど……」
 高峰さんは私に確認を求めようと、話を振った。私は反射的にうなずく。

「や、やってるよ、私。LINE」

 放課後はパソコンでゲームをしているから、あんまりスマホは開かないけど、ちゃんとグループには入ってる。夕暮れの森の写真を丸くかたどった、シンプルなアイコンを使ってる。

「え、なに? 番さん、もしかして月森さんに興味あるの?」
「うん。席前後だし、仲良くしてーなって。あと、めっちゃ可愛くね?」

 可愛い!? わ、私が?
 わ、私と飛鳥ちゃんじゃ月とスッポンだと思うけど。メイクもしてないし、髪も寝癖直しただけのボサボサヘアだし。
 あ、もしかしてアクセサリーのこと?トキ兄に貰ったお化け型のヘアピンのことを言ってる?

「か、可愛いってどういうことですか……」
 精一杯の勇気を振り絞って聞くと、飛鳥ちゃんは「小動物みたいで」とカラカラ笑う。
 うっ。しょ、小動物かあ。マスコット的な可愛さってことですか? なんか舐められてる?

「もしかして月森さん、年の近い兄貴とか姉貴とかいるんじゃない? 妹オーラが出てんぜ。僕も一番下だから、気が合いそうだなって思ったんだ」
「お、お兄ちゃんはいないけど、お兄ちゃん的存在はいる」

 もしかして飛鳥ちゃん、エスパーだったりするのかな。それとも勘がものすごく鋭いだけ? 
 さっき初対面で『嫌なこと起こらないといいね』って言ってたし……。
 
「ま、似たようなもんだね。僕、マジカルパワーが使えんだ。そんで、その力が教えてくれたの。月森コマリって女の子が、どんな人物なのかってね」
 
 ど、どういうことなんだろう。年相応の厨二病って考えでいいのかな??
 転校初日のプレッシャーで、少し頭がおかしくなってるって認識でいいのかな??


 (次回に続く!)


 
 

 


 


 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.60 )
日時: 2023/09/28 20:35
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)

Q:さてはあなた、オカルトマニアですね?
 A:はい。妖怪幽霊大好きです。

 Q:好きな妖怪とかいるんですか?
 A:さとり。猿の妖怪です。逸話が面白くて好きです

 Q:憑きもん!に登場させたい妖怪はいますか?
 A:くだん雲外鏡うんがいきょうは今後出てきます。

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 〈――1年前:飛鳥side〉

 一年前、私は家族を亡くした。三歳上の兄だった。
 正義感が強くて、お調子者で、優しくておしゃべりな自慢の兄だった。

 死因はまだ解明していない。死体も見つかっていない。
 確かなのは、市内の中学校の中庭に、兄の制服が落ちていたこと。そしてその制服が赤黒い血で染まっていたことだけだ。

 番家は霊能力者の家系で、怪異の討伐を家業にしている。
 だが霊能力者は、政府非公認の職業だ。『霊能力者の子供が行方不明になりました』と真実を伝えれば、視聴者は訳が分からず唖然とするだろう。
 当主である父親は知り合いの記者さんと交渉して、一連の事件を非公表とすることを約束させた。「息子の失踪の原因究明は霊能力者側が行う」って条件を付けてね。

「飛燕、飛鳥。あとはこっちが上手くやっとくから、向こうで遊んで来なさい」

 初めは皆、捜査に協力的だった。
 そりゃそうだ。番家の長男―最強の術者がいなくなったんだから。
 階級関係なく、多くの霊能力者が任務を遂行する傍ら兄を探した。遠見の術を使って地形を調べる人もいたし、あやかしに協力してもらい情報を収集した人もいた。

 でも―。調査は、三か月後にぴたりと止んだ。情報がえれなかったからだと言う。
 どれだけ時間をかけても、何の成果も得られなかった。なのでもう、正鷹のことは諦めよう。誠に残念だけど。

 その言葉を父親から聞いた私は、頭から熱が引くのを感じた。
 なにそれ。なんで、終わりにしようとするの。残念って何がなの。なんで今絶望してるの。なんで希望を持たないの。ねえ。

「……なんで、諦めるの」
「――仕方ないんだ」
 やり切れないというように首を振る父親。

 私は腹の虫がおさまらず、股の下に敷いていた座布団を彼に思いっきり投げつける。

「仕方ないってなによ! お兄ちゃんを勝手に死なせないで! お兄ちゃんはまだ死んでないっ。責任取るって言ったのはお父様でしょ!? 責任者が役目を放棄するなんて絶対ダメよ!」

「落ち着け飛鳥! 父さんの気持ちも少しは考えろ!」
 横に座っている双子の兄・飛燕が、私の左腕を掴んだ。
「………皆つらいんだよ。わかんだろ。必死にあがいて、それでも無理だったんだ。感情論だけじゃどうにもならないこともあんだよ」と、三白眼でギロリとこちらを睨む。

「なら有理になるまで努力するしかないでしょう!」
 私は飛燕の手をブンッと払いのけ、ドンッと彼を押し倒した。
 なによ、あんたも逃げるの。あんたもお兄ちゃんの存在を無かったことにしたいの。

「約束された結末でも、私はハッピーエンドを信じたい。お兄ちゃんを信じたいの。お兄ちゃんは、無意味に命を絶つような人じゃない。絶対、絶対に何か理由があるのよ。……そうしなければならなかった理由が」

「どっちだよお前。生きてるって肯定してえのか、死んでるって否定してえのか。どっちかにしろよ! なあ!」と声を荒げる飛燕。
「正解は片方しかないんだからさあ!」と、自分に言い聞かせるように叫ぶ。
 
 「正解がないから、迷ってるの。そんなことも分かんないの? 飛燕っていっつもそう。私が何が言ったら決まって反論して! 本当は私と同じ気持ちなのに、いっつも環境のせいにして自分の気持ちを押し殺す!」

 私知ってる。
 お兄ちゃんに『家のこと好きか?』って聞かれた時、愛想笑いしながら『好きです』と返したこと。使用人さんの下駄を、この前こっそり盗んだこと。図書館から借りる本が、家族の日常や絆を描いたものばっかりってこと。

「………私は自分の気持ちから逃げない。皆が無理だって言うなら自分一人でやるわ。自力で事件の真相を暴いて見せる」

 お兄ちゃんは逃げなかった。どんなに辛い任務があっても、決して仕事をサボらなかった。弱音を吐くことは何回かあった。でも決して泣かなかった。いつも「大丈夫だよ」って、歯を見せて笑ってくれた。

『お前らがいるから頑張れてるよ』って。
『いつもありがとうな』って、目を見て言ってくれた。

 自分が一番しんどいはずなのに、お腹を空かせる妹と弟の為に毎日欠かさず料理を作ってくれた。誕生日プレゼントは、全部自分のお小遣いから出してくれていた。私たちのことを常に想ってくれていた。

 だから次は、私の番だ。今度は私が、お兄ちゃんを助けるんだ。
 周りが味方をしてくれなくても別にいい。無理だ、綺麗ごとだと笑われても構わない。私は自分が正しいと思ったことをするまでだ。自分には何もできないとは、思いたくないのだ。

 私は大広間のふすまをピシャッと開け放つと、そそくさと自室に向かった。
 言いたいことは全て言った。これが私のすべてだ。このまま進み続けてやる。
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 「お、お前どうしたその髪。あとその服装」

 夕食を取ろうと一階に戻ってきた私を見て、飛燕は目を丸くした。
 冷蔵庫の扉を開けたまま、数秒身体を硬直させる。右手に握られているのは先日買い替えた醤油さしだ。

 長く伸ばしていた私の髪は、今ではバッサリ、ショートカット。服装は黒いシャツにカーキ色のズボン。愛着していたドレスなどの服は全てクローゼットに閉まった。もう着ることはないだろう。

 飛燕は食卓の上に醤油を置くと、再びコチラをまじまじと見つめる。その後、自分の手をそっと私の頭へと伸ばしてきた。指先に妹の髪を巻き付け、物珍しそうにいじる。

「……自分でやったの? あのロリータファッションも、もういいの? こんなに短くしたら、もうヘアアレンジできないよ。お前、可愛いの好きだろ」

「いい。強くなりたいから。しばらくは要らない」

 私はキッパリと言い切る。
 守ってくれる人がいない以上、自力で強くなるしかないのだ。もう、誰かに守ってもらう年齢ではない。自分のことは自分が一番よく知ってる。

 飛燕はハアとため息をつき、頭をわしゃわしゃと手で掻いた。ぶすっとした表情で。
「………わかった。そこまで言うなら俺も協力する」
「――え?」
「わかったら返事してよ。独り言みたいじゃん」

 い、いいの? 乗り気じゃなかったのに。
 疑惑の念を込めて兄の表情を伺う。何かを我慢するように、彼の唇はきつく結ばれていた。

「決志の為に髪切るとか、どんだけだよ。お前はジブリのヒロインか」
「なんだよそのたとえw」
「渾身のギャグを笑うな馬鹿」

 飛燕は呆れながら、フライパンで焼いた目玉焼きをお皿に盛りつけたのだった。


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 〈現在:飛鳥side〉

 中学校の二階・女子トイレの個室で、僕はズボンのポケットに隠しておいた携帯を取り出し、耳に当てた。


 「ご協力ありがとうございます。宇月先輩。おかげで無事、月森さんに接触できましたよ」
 『……悪者みたく扱うんは別にええけど。ボクかて人伝で聞いただけやから、そない期待はせんでな。あと人が仕事してる時に電話かけんといてくれます? こっちも忙しいねん』

 「コマリさんは逆憑きということですが、先輩は兄の死に彼女がかかわってると思ってるんですか?」
 『いいや。それは何とも言えん。ただあの子の周りでは何かと奇妙なことが起こる。妖怪や幽霊もわんさか寄ってくる。君の立ち回りを考えての判断や。どうするかは任せるわ』


 「それは失礼しました。でもびっくりですよ。まさか先輩から、兄に対する情報が聞けるなんて。こんなことありえますか。情報を集めてくれた飛燕には感謝しかありません」

 『あいつ、やり方が汚すぎる。クタクタに疲れさせてから問い詰めるなんて性格が悪い。まあ、せやな。ボクも人から頼まれとんねや、その事件について調査してーってな。だから力になれることがあるなら何でもするで。ま、お互いの目的はちゃうけどな』

 
「僕は兄の仇を打つために、禍の神の居場所を知りたい」
「ボクは知り合いの友達を探すために、事件の詳細が知りたい」


「『月森コマリの存在は、双方とって重要な鍵になる』」

 (次回に続く!)



Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.61 )
日時: 2023/12/05 09:09
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 〈宇月side >>56の続きから コマリsideと同時刻〉

 黒女くろめ市立体育館は、市街地のはずれにある県立体育館である。築50年。剥がれた塗装や、窓ガラスに貼られたガムテープが建物の劣化を物語っている。昔は多くの市民が訪れたようだが、現在館内に居る人間は二人のみ。体育館前の道路は歩行者はおろか、車も通っていない。

 体育館は二階建て。一階はバスケットボールのコート、二階は室内プールとなっている。
 少子高齢化による利用者激減を受けて、この体育館は数年前に使用禁止になった。建物自体が古いので、遊ぶとケガをするかもしれない。無くなるのは嫌だけど、安全が一番大事だ。当時の館長はそう考え、建物の撤去を求めたらしい。

 しかし、とある理由で工事は中断。よって建物はまだ、この閑静とした農村の中にある。
 現在一階はトラテープで封鎖。プールの水は全て抜かれ、代わりに何の品種かもわからない植物の葉が底に溜まった。取り壊しを事業者に相談した年以来、何と一度も掃除されていない。


「やから、住民さんは皆汚い言うて、近う寄れんのやって。小学校低学年の子は、興味方位でたまに来るけど、怖なって途中で帰りはるって」
「へえー。確かにジメジメしてますね。センパイの心みたいだ」
 
 さて、ボクこと夜芽宇月は先ほど、黒女体育館が使用禁止だと言った。それなのに、後輩を連れて堂々と体育館のベンチに座っている。
 なんなら数分前、倉庫から取ってきたバスケットボールをゴールの中に放り込んだ。そのあと後輩がダンクしようとして、思いっきり頭をぶつけてきた。

 ベンチの隣に座り、首にかけたタオルで汗を拭いている水色髪の少年が、ボクにぶつかってきた後輩だ。名前は番飛燕つがいひえん。ボクと同じ怪異討伐組織に所属する、新人の霊能力者。

 怪異討伐組織・ACEは、都内の霊能力者およそ1000人が所属している、霊能力の教育機関だ。
 霊能力者は単独での任務が基本だが、ひとりで怪異を討伐するには訓練が必要だ。小学生から高校生までの術師は一人前になるまで、この組織に入って技を磨く。組織を出た人間も、希望書を出せば再所属することができ、その場合は講師として後輩の指導につく。

 地元である京都にもACEの支部はあったけど、ボクは一度もACEに入ったことがない。
 というのもボクの扱う〈操心術〉は霊能力者の間で嫌悪されている能力だ。くわえてその術を使う少年は、意地が悪いことで有名だった。
 よって、面接どころか招待のチラシさえ回ってこなかったのだ。自業自得なんやけど。

 昔のボクは「集団行動なんか知らん。嫌いたいなら嫌ってください。ボクもお前らのこと嫌いなんで」と一匹狼を気取っていた。その名残か、今も多少、人付き合いの面で苦労している。
 前と違うことは、そんな自分を認められなくなったことだ。このまま進んでいったら、ろくな大人にならへんなと急に実感した。遅すぎやろ。
 ということで心機一転、自分にも他人にも優しい術使いとして更生するため、講師という形で再スタートを切ったのだ。

 それなのに、まさかこんなことになるとは。
 ボクはぷっくりと腫れあがった額のタンコブを手でさすり、大声で怒鳴る。

「~~ッ。お前が身長低いのにダンクシュートしようとするからやアホ! あんなん、勢い余って倒れるにきまっとるやん。見てコレ。こんなに赤なって! ゴツン言うたで。ゴツンて」

「いや、ゴツンじゃなくて、ゴッッッッでしょ」
「余計あかんやんけ! ほんまええ加減にせえよ。普通の18歳はな、模擬戦100本終わった後に質問攻めに合うたら瀕死になんのや。なのにお前は気にせんとウッキウキでバスケを勧めた。狂ってるでほんま。もう辞めたろか。教えるの、もう辞めたろか!!」
 
「うわガチギレかよ。こわ」
「ちょっとは反省しろやこのクソガキッッ! マジで辞めたるからな! 辞表出すでほんまに!」
「うわ、ごめんって、ごめんなさい! 腕を振りあげないで怖いっ。175㎝に見下ろされんのマジで怖いから。悪かったからああああ」

 彼―飛燕は霊能力者全体を取り締まってきた御三家の人間だ。年齢差や経験値の違いはあれど、実力はボクと変わらない。ほぼ互角だ。小柄な体格の彼から繰り出される技の威力はすさまじく、また動体視力や危機察知能力の数値も極めて高い。


『うちの息子を宜しくお願いする』と番家の親父さん―当主さんに頭を下げられたときはめっちゃくちゃビビった。

 指導係を担当することになったボクは、先月飛燕の家に挨拶に行った。飛燕のお父さんは柿色の着物を身にまとった大柄な男性だった。眉がシュッとしてて、凛々しくて、厳格そうな性格の。
 軽口とか叩いてもいいんですかねとおずおずと尋ねたボクに、親父さんは言った。

『お前の執拗さを見込んで頼んでいるのだ。バシバシ鍛えてやってくれ』
 うわんボクの悪評、御三家にまで届いてますやん。喜んでいいのコレ。ダメだよね。
 が、頑張ろ。良い噂を立ててもらえるように頑張ろ。
 
「はぁー。それで、教えた情報はアレでええの?」
 ボクはタオルをリュックの中にしまうと、うーんと両手を伸ばす。
「ああ、あの禍の神の話ですか」と飛燕は顎に手を当てると、「OKっす。十分すぎます」とニカッと笑った。

「てかヒエ、どこから禍津日神の話を知ったん? 普通に調べても、そんなの出てこんやろ。禍の神の文献を読んでも、それが兄の死に関わってるなんて誰が知るん。それこそボクみたいに当事者から聞かんことには何もわからんで」

 桃根ちゃんの過去話から始まった、霊能力者失踪事件。なんだか、どんどん深い話になって来たな。桃根ちゃんとユイくんが死んで、 二人を狙って悪い神様が暴れて。それを止めようと、道開きの神様と契約してた番家の長男が命かけて。いい神様は人間の霊魂と合体して。そんで今、女の子の方はボクのすぐそばにいる……。うわ頭痛なってきた。

「あー。言ってませんでしたっけ。そうっすね、さっきの模擬戦も受け身の練習でしたもんね」
 ヒエは首の後ろを手で掻きながら、ぼそぼそと続けた。

「番家の子供はそれぞれ、皆使う能力の系統が違うんです。兄ちゃんは〈憑依系〉。妹はセンパイと同じ〈操術系〉。俺は〈使役系〉を使います」

 使役系術士は、あやかしや霊と契約を結び、友に戦闘する能力者だ。一度交わした契約は術士が死ぬまで消えない。使役する怪異とは常に従属関係を持つ。使役対象は犬や猫、狐などの低級霊から、高位の妖怪まで多岐にわたる。

「へえ。使役系か。どんな怪異と契約しとるん? そうやなあ、ボクがこれまで会うてきた人は、猫・猫・猫・猫……あかん猫ばっかりや」
「一番付き合いの長いのは雲外鏡のじいちゃんっすね」
「う、うんがいきょう!?」

 雲外鏡は、未来を予知できる鏡の妖怪だ。付喪神つくもがみと同じで、鏡に取りついた霊がそのまま雲外鏡になったとされている。
 ボクが驚いた理由。雲外鏡は妖怪カースト上位に君臨する高貴な妖怪だからだ。いくら御三家の次男といえど、そう簡単に契約できる相手ではない。

「はい、そうです。3歳の時―まだ術のコントロールもできなかった時期に、誤って契約してしまいまして。彼に頼んで、予知をしてもらいました。だいぶ老いぼれてるんで、1日1予知しかできないんすけどね。あはは」

 いやいや、「あはは」で終わらせんといてくれます? ツッコミが追い付かんから。
 誤って契約した……? 3歳で? ボクだって術の発現は小学校入ってからだったのに?
 正鷹さんといい飛燕といい、御三家ってやっぱエリートなんやな。

 じ、自分なんかが気軽に教えてええんかなあ……? 心配になってきたわ。
 あー、やば。頭がさらに痛くなってきた。あとでコンビニ行って頭痛薬を買おう。

 


 

 


 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【15話更新しました!】 ( No.62 )
日時: 2023/10/11 08:01
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)

 〈コマリの登校日の翌日、美祢side〉

 ヴ―ッヴ―ッというスマホのアラーム音で目が覚めた。
 携帯の画面を開く。ホーム画面には、〈6:30〉の文字。朝だ。
 俺はまぶたをこすりながら、もぞもぞと布団から這い上がった。

「ふわぁぁぁ」
とあくびをかます。
 
 高校を中退し、バイトも習い事もしていない俺。日中にやることといえば、家事や読書やゲーム。たまに外出もするが、モールに行って貯めていた小遣いを崩して服を買う程度。
 しかし今日は珍しく朝に用事があった。外出の用事だ。早めに朝食を作り置きしなければ。

 俺は自分の布団・シーツ・枕をまとめて腕に抱え、奥にある脱衣所にそれらを運ぼうとし。
 ふと足を止めた。

 左横の布団で、同居人であるコマリが寝ている。すうすうと穏やかな寝息を立てていた。本来ならばもう起きる時間だけど、残念ながら俺は優しい人間ではない。

 夢でも見ているのか、時々「うみゃぁ、おかーさん、お団子そんなに食べるとパンダになるよお」と訳の分からない呟きが耳に飛び込んでくる。なぜ団子を食べるとパンダになるのか全く分からない。生地の中に特殊な薬が混合されているんだろうか。怖いな。

「……幸せそうな顔しやがって。つーか寝相ヤバすぎだろ」

 コマリは両手をダラーッと上に持ち上げ、股を開くと言った誠におかしな体制をとっている。
 世間一般の女子の寝相がどうなのかは知らないが、流石にこれはダメだ。流石の俺でも擁護できん。こいつは、女子が本来持っている何かをお腹の中に落としてきたのかもしれない。

 脱衣所に向かった俺は、ドラム式洗濯機の中に洗濯物を放り込んだ。そして、外に誰もいないことを確認してから扉を閉め、そそくさと着替えを始める。

 うちのアパートは、ひとつの階に五つの部屋がある。部屋は全て1LⅮK。リビング・ダイニング・キッチンがキュッと、一つの部屋に詰め込まれている。子供部屋などない。当たり前だが脱衣所はワンルームに一つだ。

 すると何が起こるか。注意を怠ると、同居人に着替えを見られる可能性がある。

 しかもアイツの寝起きはひどい。脳が上手く働いていない状態で朝の準備を始める。「いただきます」すら満足に言えず、一昨日は「食うべからず頬張ります」と食べるのか食べないのかどっちなんだよ、という謎の言語を発していた。後にこの言語はコマリ語と名付けられる。

『トキ兄ー? トキ兄はお醤油、ご飯にふりかけたほうが好きだっけ』
『ふりかけは30回降ってから箸でまぜるとおいしいよ』
『今日の7時間目は放課後だよー』

 なので時常美祢は毎朝、同居人が起きるまでの約三十分の間に準備をすます。
 なんで忙しい朝にタイムアタックしないといけないんだよ。

 脱衣所の床に設置している籠の中からTシャツとズボンを出して大急ぎで着替え、寝間着は洗濯機へin。洗剤を入れて、洗濯機のスイッチオン。そのあとすぐに台所へ向かい、冷蔵庫の中から冷凍ご飯と味噌玉(みそ汁の具をラップで丸めたもの)を取り出す。ご飯は電子レンジであっためてから茶碗に盛る。味噌汁も同様。ふりかけをかけて納豆を添えてお盆にのせて。

 ここまでに使った時間はおよそ十五分。はぁ、はぁ。今日も何とかなった。
 後はメモ帳に出かける趣旨を書いて、机の上に置いとけばいかな。

「ふわああ、あ、おはようございまふ美祢さん」

 声のしたほうを見やると、同居人ナンバー2である浮遊霊の少女・桃根こいとが宙に浮いていた。 
 抱き枕として使っているのだろうか。大きなクマの人形をもっている。服装は桃色の可愛らしいルームウェア。頭にはナイトキャップ。トレードマークである二つ結びの髪は降ろされて、肩口に垂れている。

「おはよ。お前、いつもどこで寝てるの? てか、いつ入ってきた」
「ふふーん。美祢さん、幽霊に扉を開けるという概念はありませんよ。壁も窓も床も、するするーってすり抜けるんですから。……私こいとちゃん、今あなたの後ろにいるの……」

 怖い顔で凄んで来たところ悪いけど、早朝なので全く怖く感じないぞ。

「驚かすんだったら服装から整えるんだな」
「ちぇっ。少しは乗ってくださいよお」

 こいとは最近、アパートに来なくなった。来るとしても一週間に一、二回といったペースだ。話し相手がいなくなったコマリは毎日のように俺に彼女の居場所を尋ねてくるが、こちらも何も知らされていない。だから答えられない。

 こいとはブスッとむくれながらも、素直に質問に答えてくれた。
「どこで寝てるか? 知り合いのところです。仲いい人がいて、その人に身の回りのお世話をしてもらってるんですよ。ご飯作ってもらったり、寝る場所与えてもらったりね」

「そいつ、男?」

 なんとなく気になって聞くと、幽霊の女の子は「だったらなんだって言うんですか」と不服そうにくちびるを尖らせる。
 肯定した。へえ、コイツ男と一緒に寝てるんだ、と内心驚く。

 そうだ。この調子で更に情報を引き出してみるか。
 隠し事されるの嫌いだし。経験上こういうのを放っておくとろくな目に合わない。アパートに来れない理由を教えてもらえれば、コマリも安心するだろうし。
 幸い出かけるまでの時間も、たっぷりある。

 俺は寝癖でくしゃくしゃになった髪を手櫛でとかしながら、冷静に聞こえるように出来るだけ意識して口火を切った。
 
 
「つまり年上か。年の近い子―例えば前に言っていた幽霊友達なら、知り合いではなく『あの子』とか『友達』って言葉を使うのが普通だ。それなのにお前は敢えて『知り合い』といった」

「なっ」

 こいとは、痛いところを突かれたような顔になり、口元を手で覆った。
 なるほど図星か。俺の推理は的外れじゃなかったってことだな。よしよし。
 さて、年上の男で幽霊友達じゃないとすると、人物はかなり絞られてくる。

「ここで仮説その一。つまりお前と相手の心の距離はあまり近くない。だが、知り合いと呼ぶくらいなら何かしら接点がある人物だ」
「……」

「仮説その二。そいつは俺とコマリがよく知っている人物だ。なぜか。こいと、お前は俺らに行き先を公表していない。『知り合いの○○さん』と伝えることもできるのに、それをしなかった。つまり名前を明かす行為はお前にとってハードルが高いということ。俺らに『なぜアイツとつるむのか』と問い詰められるのが怖いから」

 俺が左手の指を一本ずつ立てる度、こいとの表情は暗く沈んでいく。

「仮説その三。相手は霊感がある人物。浮遊霊に飯をやったり家の場所を教えたりできる人間は、霊が視えなきゃいけない。そして、この三つの情報を照らし合わせると、条件の合うやつは一人しかいない」

 初対面で俺とコマリに術をかけ、疑似恋愛をさせて反応を楽しんでいた薄汚い人間。
 プライドが高くて気取ってて、飄々としていて、つかみどころがない猫みたいな人間。
 昔から顔を突き合わせるたびに喧嘩ばっかりしていた人間。
 才能があって傲慢で、俺がずっと憧れていた大っ嫌いな人間。

 なんでお前、あんなやつと協力してるんだ。
 なんで今まで黙ってたんだ。
 お前らは俺たちに隠れて、何をやろうとしてる?


「お前の協力者は宇月だ。お前は幽霊友達に会いに行くって嘘ついて、隠れて宇月と会っていた」
 こいとは反論しなかった。ただ忌々し気に俺を見上げ、軽くうなずいた。

「いずればれるだろうなとは思ってたけど、まさかあなたに暴かれるとはね」
 幽霊の少女は、悲しいような嬉しいような、複雑な顔で笑ったのだった。

(次回に続く!)
 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【15話更新しました!】 ( No.63 )
日時: 2023/10/25 20:18
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 
 〈翌日、美祢side〉

「どういうことだよお前!」
 郊外にあるビルの一階、受付の前で俺は声を荒げた。
「全部聞いたぞ! 隠そうとしても遅いからな!」

 視線の先には、「は?」と目を白黒させている宇月がいる。彼の今日の服装は無地のTシャツに長ズボン。いつも長い白衣を着ているので、ラフな格好は珍しい。
 
 何事かと目を見張るカウンターのお姉さんに頭を下げた宇月は、「あんなあ」と眉を寄せた。
「何に対して怒っとるんか知らんけど、まあ落ち着きぃや。ここロビーやぞ。あと、これから面接やぞ!?」

 ----------------------
 
 俺が今いる場所は、霊能力者の教育機関である〈ACE〉の事務所だ。
 こちらの建物、表向きは廃ビルとなっている。外にある看板に〈旧黒女市ダンススクール〉とあるが、これはカムフラージュ用だ。ビルの周りには強力な結界が張られている。
 能力を持たない民間人の立ち入りを防止しているらしい。

 何故俺がこんなところにいるのかというと。
 先日、いとこである宇月に言われたのだ。「好待遇のバイトがあるんやけど、やらん?」って。

 時給10000円~。半日勤務可能、シフト要相談。昼食つき。
 仕事はちょっとキツイが、優しい人が多く、働くには絶好の場所とのこと。

 16歳、高校中退。アパート生活。親の経営するアパートなので家賃はタダ、光熱費や水道代は親からの仕送り。同居人は中学生女子(+幽霊)。
 
 俺は部屋主として、同居人たちの食費と生活費を自力で稼がなければならない。
 バイトの文字が脳裏をチラつくことは、今までに何回かあった。
 頼れる大人はいない(一人いるがウザくて無理)。家族に幽霊が、逆憑きがなんて言ったら頭の病気を疑われる(一人だけ信じてくれる奴がいるがウザくて……以下略)。

 バイトしなきゃなあと思いながらも、なかなか実行に移せないでいたのだ。
 実は、俺はバイト未経験者ではない。高1の初め、一か月だけ本屋のバイトをしていた。しかし、先輩—バイトリーダーと気が合わず、直ぐに辞めてしまった。

 『好待遇のバイトには絶対裏がある。前バイトしてたとこも同じやり口だった。フラットな職場って書いてあったのに、陰で社員のいじめが起こってたから』
 『大丈夫やって。ボクが勤めてるとこやし。知人紹介で色んな特典もつくから』

  特典という特別感あふれる単語に軽く流されそうになる。
  って、お前が働いているところかよ!? やっぱり裏があるじゃねえか。

  俺はスマホを耳から離し、通話終了ボタンを押そうとして。
  画面の向こうから聞こえてきた声に、手を止めた。
 
 『宇月だから嫌いとか、宇月だからウザいとか。いい加減哀しくなるわ。……まあ、それだけボクが人様に迷惑かけたってことなんやけどさ』

 微かだが、すすり泣きのような音も混じっている。
 俺のいとこは演技が上手いが、演技にしては声量が小さいような気がした。何かを演じるとき、人は無意識に声を張り上げ、大げさな態度をとる。しかし彼の言葉は一貫して同じトーン。

 『なあ美祢。少しだけで良いから、手伝いに来らん? 報酬はずむで。 コマリちゃんのボディーガードすんの、大変やろ。受け身とか、簡単な護身術くらいなら、ボクも教えられるから――』
 宇月はスウッと息を吐き、さっきよりも強い口調で言う。

『償わせてほしいんや。今までやってきたこと謝る。お前に言うたこと全部撤回する。やから、ボクのこと苦手でええから、せめて嫌わんどってくれへん?』

 俺は、思わず口をぽっかり開けてしまった。あまりにも突飛な発言だったから。
 何だお前。苦手以上嫌い未満? なんだそりゃ。

 だってお前は昔から、事あるごとに誰かを見下してた。人の失態をネタにして、自分の失態は隠して。上手く立ち回って、巧みな言葉で人をだまして、味方につけて。
 夜芽宇月はそうやって生きてきたんだろ? 全部自分で決めたんだろ? なんでそんな、泣きそうな声を出すんだよ。なんで被害者気取りなんだよ。

 ……そこまで考えて、ハッとする。
 もしかしたら、俺が宇月の首を絞めていたんじゃないか? 
 宇月は変わろうとしていた。変わりたいと願っていた。なのに、俺が「嫌い」とか「無理」とか言ったから。突き離してしまったから、彼は勘違いしたのではないだろうか。
 
 ――自分は、嫌われて当然の人間なんだって。
 ――変わる権利すらないんだって。

 会うたびに指をさされる。考えを否定される。本当のことを話したのに嘘つき扱いされる。
 俺はこれまで、宇月の話を真剣に聞いたことがあっただろうか。
 彼に笑い返したことがあっただろうか。

『しゃーない。嫌なもんを無理やり押し付けるのはあかんしな。んじゃ切るわ。おやす――』
『面接の時間と日程は?』

 いとこのセリフに被せて俺は言った。
 何をするにしても、まずは自分から動かないと。
 稼ぐ稼がないは置いといて、とりあえず、見学だけ行ってみよう。そこで職場の雰囲気や、作業環境を確認しよう。


 そう思ってたのに。


 ----------------------

「なんで言ってくれなかったんだよ!」

 人目を避けるべく。俺は宇月と一緒に一旦建物を出、裏へと回った。
 ビルの裏にある駐輪場のトタンの壁に、いとこの身体を思いっきり押し付ける。ガシャンッと大きな音が響いた。

「なんでこいとのこと、俺に教えてくれなかったんだよ! なんでもかんでも、一人で決めようとすんなよっ、馬鹿野郎!」

 俺は今朝、こいとに持っている情報を一つ残らず吐露してもらった。なぜ彼女がコマリに近づいたのか、なぜ神様の力を持っているのか、過去に何があったのか、なぜ宇月と協力しているのか。

 こいとは最初淡々とした口調で話していたけど、当時のことを思い出したのか急にしゃっくり上げ、話が終わる頃には赤い顔で洟をすすっていた。
 俺はその後、「助けたかっただけなんですぅぅぅぅぅ」「叱らないで……怒らないで……」と頭を下げる幽霊の少女の身体を、そっと抱きしめた。冷たかった。体温がないから、冷たかったよ。

「俺がお前を嫌いな理由、教えてやろうか。めんどくせーからだよ!」
 俺は、宇月の両腕を掴む手のひらにグッと力を籠める。宇月は「ぐえッ」と呻いた。

「本当は構ってもらいたいくせに、ひとりになろうとする! 痛いときに痛いって言えない! 寂しいときに寂しいって言えない! だから自分をひたすらに強く見せようとする。平気で噓をつく。平気で愛想笑いする。全然平気じゃないのに、平気なふりをする。孤独と不安が自分を強くさせると勘違いしてる。そういうところだよ! そういうところが嫌いだ!」

「うっさいわ!」
 突然、宇月が叫んだ。俺の拘束を振り払い、思いっきり右足を振り上げる。
 厚底ブーツのスパイクが、俺の腹にめりこんだ。

「ボクのこと見んかったくせに! ボクのこと嫌いだったくせに! お前に何がわかるん、お前が何を知るん。頭悪い性格悪い能力汚い。そんなん、自分をだまして生きるしかないやろ! 成績優秀・真面目・素直なお前に何がわかるん! なあ!」


 (次回に続く!)
 
 

 



Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.64 )
日時: 2023/12/05 09:22
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 Q.なんでそんなに更新が遅いのですか?
 A.別サイトの小説執筆と掛け持ちしているからです。スミマセン。

 Q.美祢と宇月はよく喧嘩しますが、喧嘩ップルなんですか?
 A.喧嘩ップルですね。お互いツンデレのツンが強く意固地ですが、リスペクトしあっています。
 ただ、『大好きだよ』と言うのが恥ずかしいだけなんです。デレる方法を知らないんです。

 ----------------------

 〈宇月side〉

 ボクは、自分のことが大嫌いだ。小学校の時からずっと嫌いだ。
 普通に会話をしているつもりでも、気づけば誰かを泣かせていて。謝ろうとしたら、また深く抉ってしまって。呆れられて、怖がられて、見放されて。ごめんなさい、を許してもらえなくて。

 家に帰ったら怪異払いの仕事。
 人と怪異の心を操り、主導権を奪い、一匹また一匹と倒していく。無心で祓う。ちょっと笑う。
 無理やり、笑顔を張り付ける。アンタは街の平和を守るカッコいいヒーローなのだと、自分に言い聞かせる。だから笑え、泣くな。
 
 『お前はもう、何もしゃべるな』と、父ちゃんに言われたことがあった。
 『そんな子に産んだつもりはない』と母ちゃんに言われたことがあった。

 中学生くらいから、家族内でも評判が下がっていった。
 明るかった母親は、一緒に食事を取らなくなった。父親は、あからさまにボクを拒絶した。
 両親とは元からあまり話さなかったが、流石にこれは堪えた。

 そして、思ったのだ。遠いところに行きたい。この場所から逃げ出したい。
 ボクなんか、いないほうがいいやろって。
 その一心で、家を抜け出した。高校も大学も、寮つきの学校を選んだ。やけくそだった。大学在学中に、家族からメールが送られてきたが全部未読無視した。内容を見るのが怖かった。

 『ばぁちゃぁぁぁぁぁぁん!!!』
 小学校の時、クラスの女の子が転校した。夜芽宇月の揶揄いに耐え切れんくなって。
 彼女が転校することを知った日の夜、ボクは逃げるように家に帰って、キッチンで洗い物をしていた祖母の腰にしがみついた。

 『ばあちゃん、そのハサミ、ボクに貸してぇや! なあ!』
 ばあちゃんは、キッチンバサミで昆布を切っていた。味噌汁の出汁の準備中で。
 『どしたん宇月。えらい慌てて』
 目を丸くする祖母に、ボクは何の説明もなしに、こう叫んでしまった。
 『それ使ったら楽になるんやろ!?』って。

 ばあちゃんは更に目を丸くした。
 ボクは彼女に全てを話した。人をいじめてしまったこと。人を悲しませてしまったこと。今回だけではなく、毎日誰かを泣かせていること。改善しようとしているけど、なかなか上手くできないこと。周りと違う自分が大嫌いだということ。

 『もう無理や。ボクもう無理や。悪人になってもうたぁぁぁ! もう全部真っ黒や』
 ばあちゃんは、暫く何も言わなかった。喚く孫の頭を、ゆっくり撫でるだけだった。何かを発しようとして、すぐに口を閉じてしまう。どう返答していいか、困っているようだった。

 何分、経っただろうか。
『アンタは、私の光や』
 しわがれた、聞きなれた声が頭上から降って来た。
 そっと顔を上げる。ばあちゃんはキュッと目を細め、静かに笑う。

『……ちゃう。だってボクはっ、全然っ』
『せやなあ。アンタは小っちゃい頃から問題児やったからなあ』

 家のコンセントは勝手に抜くし。野良猫は手で追い払うし。母親と父親にアッカンべして、良く怒られとったな。いとこの美祢にも、ちょっかいかけとったやろ。今もか。先生にもしょっちゅう呼び出されとったし、成績表のコメントも毎回悪い文章ばっかやったな。

『――気にしてもらいたかったんやろ』
 不意に、ばあちゃんが言った。丸眼鏡の奥の瞳を光らせながら、ゆっくりと告げる。
『注意を引いたら、みんな寄ってくるからな。寂しさが紛れてええよなあ』

 寂しいと思うことは、ダサいと思っていた。悲しいと泣くことは、ダメだと思っていた。
 これまで沢山人に迷惑をかけてきた。自分より、相手が泣いた数の方が圧倒的に多い。
 だから、ボクが弱音を吐くのは違う気がした。言う権利なんて、ない気がしたんや。

『………せきにん、とらんといけん、気がして』
 つっかえながら、ボクは説明する。ばあちゃんの前でだけ、素直になれた。
『人を泣かせたやつが、シクシク泣いとったら、感じ悪いやろ? 「悪かった、友達になろう」って言っても怖がられるやろ。……笑ったら、裏があるってなるやろ。泣いたら、演技やってなるやろ。やから、ずーっと、悪い奴でおった方がええんじゃないかって、その。でも、寂しくて、その』

 
 誰にも言えなかった。演技って思わんどいてって、言えんかった。
 コロコロ表情を変えてしまうのは、迷っているからだって、言えなかった。
 
『宇月。大丈夫。周りの子は、アンタのことなんてこれっぽちも考えてない』
 言いたいことは分かるけど、それはそれで悲しいな。
 ボクはススンと洟をすすって、「ぼっちやな」と少し強い口調で返した。
 
 ばあちゃんは「せやな。みーんな、ひとりぼっちや」とカラカラ笑う。
『やから、もしアンタのことを知りたいって人が現れたら。それは自分が愛されてる証拠なんや』

 宇月は、悪い子やと私も思うで。愛してくれた人の気持ちを、踏みにじっとんのやからな。
 素直になったらあかんとか、泣いたらあかんとか、思わんでええから。人様泣かした分以上の幸せを、見つけなさい。

 これは、二人だけの約束。つらいときは思い出してな。
 
  ----------------------
 
 「――痛ってえなぁ!」
  蹴られた腹をさすりながら、美祢が起き上がった。Tシャツの胸元は、泥で茶色くなっている。
  いとこの少年は口に入った砂をぺッと吐き出し、その視線をこちらに向けた。

  そして。
  こちらに近寄り、ボクの体を思いっきり抱きしめた。
  身長はこちらの方が十センチほど高い。必然的に美祢は背伸びをせざるを得なかった。細い足
 が、プルプルと震えている。

 「はっ? なにキモイことやっとるんや! 離れろっ、おいっ」
  必死で腰をよじるけど。あかん、力強い! 
  小・中・高と帰宅部だったくせに! ヒョロヒョロのモヤシ体系のくせに!

 「……俺、お前のことめっちゃ好きだよ」と美祢はボクを見上げる。
 「え? な、なんっ……な、なんっ」
 「尊敬してるよ。昔からずっと。ずっと好きで、嫌いなんだよ」
  顔が赤く染まる。心臓がうるさい。

 「なんやねん! 嫌い嫌い言うてたやろ! ツンデレか?」
 「ツンデレだよ! 好きな奴に意地悪したくなるあれだよ! これで分かったか! 俺はお前のことずー―――っと見てんだよ! お前は俺の光だからな」

  美祢は一呼吸ついて、話を続けた。
  嫌いって言ってたのは、置いておかれそうで怖かったからだよ。お前が憧れだったんだよ。
  いつも自信たっぷりで。頭の回転が速くて。自分の力で何かを救うことが出来て。
  中途半端で、人の機嫌を取ってばかりの俺とは違う。お前の自慢話が嫌いだったよ。
 
  年を重ねるごとに、相手の考えていることが薄っすら分かるようになってきてさ。
  お前の行動から、打算的に生きていることが読み取れて。自分を嫌っていることが分かって。
  すっごくムカついたんだ。俺の期待を返せよって。期待させたくせに何なんだよ。

  腹に一物抱えたまま笑うお前が嫌いだった。
  自分が信用されていないことが嫌だった。
 
 「今までごめん。嫌いって言ってごめん。相談相手になれなくてごめん。でも、見てるよ、ちゃんと。だからお前もちゃんと見ろよ。こっちを見ろよ! 昔みたいに、肩並べて話そう! 俺も素直になるから、だから信じてくれ!」

 
  ――気にしてもらいたかったんやろ。 
  ばあちゃんの言葉を思い出す。

  そうやけど、そうやったけど!
  ボクはもう成人済みなわけで。いとこ同士とはいえ、ボディタッチは恥ずかしいわけで。しかも
 ここ、職場の裏やしっ。

  あぁぁぁ、もう。なんやねんお前。毎回毎回。
  そういうところ、ほんまに。ほんまに。


  大っ嫌いや。


 「……好きって言えなくて、ごめん」
 「許す」美祢はフフッと笑った。


 「……寂しいときに、寂しいって言えなくて、ごめん。泣きたいときに、泣きたいって言えなくてごめん。しんどいって言えなくて、ごめん。助けてって言えなくてごめん。笑ってごめん。嘘ついて、ごめん。今までずっと、相談でできなくて、ごめん」

  両目から、熱い水滴が零れ落ちた。それは顎を伝い、床にしみ込んでいく。
  言ってしまったら、もう止めることはできなくて。

  ボクは美祢の背中に両手を回す。子供体温やなあ。あったか。
 「ごめんって言えなくてごめんな。ありがとうって言えなくて、ごめんな」
  



 (次回に続く!)
  
  

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.65 )
日時: 2023/11/13 20:04
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

【閲覧数2100突破記念★特別編】

 こんにちは、こんばんは。作者のむうです。
 次回の更新は一月ですと言っていたのですが、私実は現在メンタル絶不調で療養してまして。
 その一つに手の震え……って言うのがあるんですよね。
 なので、長いお話を書けなくて。
 リハビリで少しずつ、短い文章から書いていきたいなと思っています。

 今回の特別編は、台本形式になります。
 地の文じゃなくてごめんなさい。
 二次創作版の『ろくきせ』を知っている方は、馴染みのある書き方かな。
 よって、本編は一旦置いといて、特別編を書きます。
 ご了承くださいませ。それでは行ってみましょう。

 ----------------------
 〈特別編★○○しないと出られない部屋〉

 美祢「作者に『この部屋でステイしといて』って言われたんだが」
 コマリ「しかも私とトキ兄だけ。こいとちゃんや宇月さんはいないし……」

 ~トキマリペア in白い部屋~

 美祢「だだっ広い部屋だな。ドアは正面に一つだけか。出られたりするのかな」
 コマリ「わ、私見てくるっ(ドアの近くへ駆け寄って)」

 コマリ「(カチャカチャ)ダメだ、鍵がかかってる」
 美祢「つまり、閉じ込められたってことか!?」
 コマリ「そうみたい。でもなんで、むうちゃんがそんなことを?」

 美祢「分からねえ。分からねえが作者は、いつも妙な行動をとる。キャラの仲を勝手に引き裂いたり、カップルを爆誕させたり、敵キャラを乱入させたり、やけに複雑な設定作ったり」
 コマリ「納得」
 美祢「つまり今回も作者のおふざけによるものと見られる。……ったく」

 コマリ「おふざけって言っても、どうすればいいんだろう。ど、ドア蹴ってみる?」
 美祢「やめとけコマリ。お前の足が折れる」
 コマリ「でも、だって……」

 ~コマリ、くるりと部屋を見回して~

 コマリ「? トキ兄、壁に張り紙がしてあるよっ」
 美祢「ん? ほんとだ。なになに」


 【○○しないと出られない部屋】

 コマリ・美祢「○○しないと出られない部屋ぁ??」
 コマリ「えーっと。『アナウンスが流れるので、それに従ってお題をクリアしてください。全問クリアできれば、ドアが開きます。せいぜい頑張ってください』だって」
 美祢「はぁ!?」

 コマリ「あ、最後の行に『むうより』って書いてある。ご丁寧に似顔絵まで」
 美祢「あいつ、いったい何を考えてるんだ? お題ってなんだよ」
 コマリ「し、知らないよ私に聞かれてもっ」

 ~ピロン(アナウンス)~
[お題其の1。手をつながないと出られない部屋]


 美祢「は? 手?」
 アナウンス「制限時間―二分以内に手をつないでください。クリアすれば、部屋の鍵を差し上げます。さあ早くいちゃつきなさい。タイマーぽち」

 コマリ「ちょっ。やばい、タイマーの音してる。始まってるよ!」
 美祢「いちゃつくって……。(チラリとコマリを見る)」

 コマリ「ま、まあ手をつなぐくらいは何とかできそうだよねっ。はいっ(右手を差し出す)」
 美祢「お、おいコマリ!?」
 コマリ「やだなー、トキ兄。いくら私でも手くらい洗ってるよ」
 美祢「いや、そういうことじゃなくて」

 コマリ「トキ兄、早くしないとクリアできないよ。さっさと終わらせて帰ろうよ」
 美祢「(うぉおおおお、こいつマジか? なんで平気そうなんだよ! 天然なのか!?)」
 コマリ「とーきーにーいー(不満そうに口を尖らす)」
 美祢「だぁああああ、もう! ……ん」

 ~美祢、コマリの右手を取り、指を絡ませる~

 美祢「あったかいな、お前の手(ぬぉおおおお、何話せばいいんだ。だ、大丈夫だよな? 気持ち悪いって思われてないよな? 怖えええええええ!!)」
 コマリ「う、うん。杏里からもよく言われる(う、なんか恥ずかしくなってきた。手つないだことは今までに何度かあるけど、いざやるってなったらちょっと……)」

 アナウンス「ブッブー。誰が普通に手をつなげって言いましたか?」
 美祢「――――――は?」
 アナウンス「こういうのは恋人つなぎがセオリーでしょう」

 美祢「知らねえよ。 なんだよそれ!」
 アナウンス「最近はシリアス展開多めでラブを書けていなかった。そもそも私が恋愛経験が乏しいから中々筆が進まなかった。でも今なら書ける気がするんだ。シチュエーションに頼れば書ける気がするんだ!」
 美祢「すっげえ嬉々として喋るなコイツ。うぜえ」
 コマリ「トキ兄が心の底から呆れてる……」

 アナウンス「無駄口をたたいていいのかい?、あと30秒だぜ?」
 コマリ・美祢「!!」
 コマリ「ど、どうしようトキ兄っ」

 美祢「(なんで俺らが作者の嗜好に付き合わねえといけねえんだよ! あああ、このままじっとする訳にもいかねえし、時間は過ぎるし。緊張で汗ヤバいしっ!)」
 アナウンス「あと20秒。ほらほらー、早くうー」
 コマリ「トキ兄、急がないと閉じ込められちゃ………わっ」

 ~キュッ~

 コマリ「…………え、その、トキ兄?(ゆっくりと美祢を見る)ぐむっ」
 美祢「こっち見んな馬鹿(コマリの顔を右手で覆って)」
 コマリ「ちょ、ちょっと! やめてよ前見えな」

 ~コマリはそこで言葉を切る。美祢の顔がリンゴのように赤い~

 コマリ「(耳まで真っ赤だ。手をつなぐだけなのに。そういやボディタッチ苦手だったっけ)」
 美祢「~~~~っ。お、おいこれでいいかっ?(天井を見上げ)」

 アナウンス「尊、じゃなかった。おめでとう!レベル1クリアです!」
 コマリ「今何か言いかけてなかった?」
 アナウンス「作者っていいなって思ったら、本音が」
 美祢「お前にはオブラートに包むって概念がないのか?」

 アナウンス「ということで、部屋の鍵を開けましょう!」
 コマリ「やった! どっかから鍵が出てくるのかな? (きょろきょろ)」

 ~ウィ――――ン。(ドアが横にスライドされる)~

 コマリ「あ、あれ、自動で開いた。ど、ドアノブついてるのに横に滑った」
 アナウンス「あ、これオートロックなのよ」
 美祢「じゃあなんでドアノブついてんだよ……」
 アナウンス「設計ミs、じゃなかった。カムフラージュ用。 密室じゃなきゃ意味がないからね。決して業者がアホで組み立てミスったって話じゃないの!」

 美祢「おーおーおー、全部言っていくな。そんな奴に委託するなよ」
 アナウンス「ところで君らはいつまでお手手をつないでいるのかい?」

 美祢「えっ? っっ!!(バッと手を放し、目をそらす)」
 コマリ「あはは、トキ兄挙動不審すぎー」
 美祢「……うるせー! とっとと次行くぞっ。早く帰ってイベランしたい。昨日徹夜でチーム編成してたんだよこんなことに時間取られてたまるか」

 アナウンス「ゲーム何やってんの」
 美祢「フォ〇ナ!!」

 ~美祢、逃げるように部屋の外へ~

 コマリ「むうちゃん、さては書くの楽しくなってきてない? 昔の書き方が書きやすすぎてニヤニヤしてるでしょ」
 アナウンス「なぜバレたs、じゃなかった。さあコマリちゃん、君も美祢の跡を追いなさい。私はトキマリのイチャイチャを見れてテンション爆上がりしたから」

 コマリ「全てを曝け出すね!? わ、わかった。じゃあまた後でねっ(タタタッ。扉の奥へ)」
 アナウンス「ふっ。てえてえな!」
 コマリ「何も隠し通せてないよ!!」


 ※次回に続く!
 
 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.66 )
日時: 2023/12/22 11:47
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 [特別編 第2話]★天敵組★

 猿田彦(体は由比)「どうなってんだよこの部屋っ! 出られないとかおかしいだろォ!」
 禍津日神「なんで我が此奴と一緒にされなければいけぬのだ。甚だしい」

 猿田彦「こっちのセリフだ! はぁ、はぁ。ダメだ、開かない(ドアノブから手を放す)」
 禍津日神「どけ。替わる(猿田彦を後ろに下がらせて)」

 禍津日神「――禍火かび炎玉えんぎょく!」

 ~マガっちの手のひらから、黒い球が発生する~

 禍津日神「これを扉に投擲すれば、何とか脱出できるだろう」
 猿田彦「ぉおおおい待て待て待て待て! 正気か!? 壊れたらどうすんだよ!」
 禍津日神「誰にモノを言っている。我は禍の神だぞ。何が壊れようと此方の知ったことではない」
 猿田彦「ちょっ、待てって!(マガっちの手を掴んで)」

 禍津日神「なんだ貴様。わざわざ戸を開けてやろうとしているのに、無礼な奴だな」
 猿田彦「世の中には、力で解決できねえ問題もあるんだよ! それにお前がそれを投げれば、俺の体も吹っ飛ぶし!」

 禍津日神「……チッ。なら貴様も策を講じろ(術を解いて)」
 猿田彦「はぁ、はぁ。なんだか、反抗期の餓鬼の相手をしてるみてぇだ」
 禍津日神「奴らと一緒にするな。我は万物を創造する神だぞ」
 猿田彦「なら『力を使ったらどうなるか』もちゃんと想像しろよ馬鹿垂れッ」

 禍津日神「というか貴様、未来予知ができるのではなかったか? なのになぜこんなところで右往左往している?」
 猿田彦「熱出て体調崩してんだよ。だから思うように力が出せないんだ。俺が乗っ取り解除したら、由比はお前と二人きりになっちまう。流石にそれは、かわいそすぎるだろう」
 禍津日神「風邪か? ちゃんと薬は飲ませたのだろうな? 安静にさせろ戯けが」

 猿田彦「絶対言わなさそうな言葉が本人の口から出たんだが」
 禍津日神「勘違いするな。我は優しくない。完璧なものを壊すことにやりがい感じるから、ここでくたばって欲しくないだけだ。近い将来、お前ら二人を吸収してやる。本編でな」

 猿田彦「はあ。一瞬でも期待した俺の純情を返せよ。とりあえず風邪薬を飲ませたけど、まだあまり効いてねえな。頭が痛え」
 禍津日神「数が足りぬのではないか? いっそ全部ぶち込んだ方が」
 猿田彦「お前に『優しさ』という感情がないことは、よーくわかった」
 
 
 ~ピーンポーンパーンポーン~

 アナウンス「やあやあやあやあ。お久しぶりだね二人とも」
 猿田彦「なんだこの声。って、むうじゃねえか!」
 アナウンス「だ、誰そいつ。知らないですよ」

 禍津日神「カキコ作家・むうを知らないだと? ならば我が教えてやる」
 アナウンス・猿田彦「へ?」
 禍津日神「むうは17歳、通信高校に通う学生だ。学業と並行して執筆活動を行っている。性格は陰気で思慮深く繊細。これらを三十秒以内にしっかり脳に叩き込め」

 アナウンス「短ッ。ていうかマガっち何? あなた、むうのガチ勢かなんか?」
 禍津日神「我はむうの創作物だ。ガチ勢ではない」
 猿田彦「間違っちゃいねえけど、いいのそれで!? っうぉ、頭が……痛っ、うわっ(ふらっ)」

 禍津日神「何やってるんだ貴様は――」
 由比「ゴホッ。ゴホゴホッ。ちょっと猿ちゃん、また僕の体乗っ取って、ゴホ」 
 アナウンス「おっとここで、猿田彦選手、由比選手と交代か―――っ」
 禍津日神「実況アナウンスをウキウキルンルンでやるな! 状況を簡潔に説明しろ!」


 由比「えーっと、ここどこ。何この部屋。ってか、あなたは誰」
 禍津日神「禍津日神だ」
 由比「ッ!? (バッと身を引いて)な、何が目的ですか」

 禍津日神「我に聞くな。答えは放送者に聞け。此方も突然閉じ込められて、意味が分からぬのだ」
 由比「アナウンス?」

 アナウンス「由比くんこんばんは。本日の司会進行を務める天の声です」
 由比「えっと。むうちゃん、だよね? ひ、久しぶり。ゴホッ。ごめんね、風邪ひいてて」
 アナウンス「わ、わたしはむうではないって何度も言ってるじゃないですか」

 禍津日神「何故だ。その聞き取りにくい音量と声質。むう以外の何者でもない」
 アナウンス「ひどくない?」
 由比「ま、まあ。アレだよ、設定だよ。ここは乗ってあげよう(コソッとマガっちに耳打ち)」
 禍津日神「……仕方ない。このまま話が進まないのも癪だ(コソコソ)」

 アナウンス「あ、じゃあ天の声ってことで。あのですね、今企画で特別編をしてましてね」
 禍津日神「今企画って云ったぞ。やはり貴様」
 由比「も、もしかしたらどっかの会社の社員さんかもしれないよ! 企画会議とかあるじゃん。き、きっとそれだよ。ねっ(必死のフォロー)」
 アナウンス「そ、そそそ、そうだよー」
 禍津日神「無理がありすぎる気がするが」

 アナウンス「そんで、2人をペアにして、密室に閉じ込めたんですよ。魔法で」
 禍津日神「神が扱う力は魔法ではなく神通力だが」
 アナウンス「細かいことは置いといて(スルー)。なので今、別の部屋でも君たちと同じように、誰かが閉じ込められてるよ」
 
 由比「な、なんでそんなことを? ゴホッ。」
 アナウンス「君たちの連携力を試したくてね。私がお題にクリアすれば、次の部屋の鍵がもらえるしくみになっているよ。順番に部屋を回っていって、どのペアが一番乗りするかっていうゲームなんだ」

 禍津日神「我以外にも参加者がいるのか」
 アナウンス「ちなみにペアは、コマリ×美祢のボディーガード組、宇月×こいとの秘密共有組、飛燕×飛鳥の双子組、そして君たち妖怪組だね」

 由比「そ、そんなに閉じ込めちゃったの? つ、捕まるよっ!?」
 アナウンス「ピュアやね君。大丈夫よ、私作者だもん」
 禍津日神「………今、自白したな。貴様はもう、むうで確T」
 アナウンス「このゲームの作者ってことね!!(必死)」

 アナウンス「ということで、クリア頑張ってください~。私はモニターで各チームの様子を確認します。優勝者には豪華特典があります」
 由比「豪華特典?」

 アナウンス「題して〈視点変更権〉。自分が主役でやる回を、作者に書かせる権利です!!」
 由比・禍津日神「やっぱり君(貴様)はむう(ちゃん)では」
 アナウンス「天の声です!!!」

 next→次回は宇月×こいとペアの様子をお伝えします! 次回もお楽しみに。

 ★そして今回のお話は閲覧数に応じて、優勝ペアを決めようと思っています。
 閲覧数が偶数→美祢ペア、宇月ペアから ランダムに選定
 閲覧数が奇数→双子ペア、妖怪組、全員一斉クリア からランダムに選定
 
 

 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.67 )
日時: 2023/11/18 21:07
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 閲覧数2300感謝! これからも憑きもんをよろしくお願いいたします♪
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 [特別編 第3話]★秘密共有組★

 宇月「あかん、美祢の奴スマホの電源切っとるわ(携帯をポケットにしまう)」
 こいと「困りましたね。これじゃ連絡が取れないです。脱出ゲームってアナウンスの音声は言ってたけど、全然問題出す気配ないし」

 宇月「『ちょっと待って』って言うて、そのまんまやねんな。アイツの話からすると、美祢たちも閉じ込められとるようやから、そっちの相手しとるんかもしれんな」
 こいと「あ、こうも言ってましたよ!『マガっちやばいから対処してくるわ』って」
 宇月「そんな軽い感じで言われても困るんよこっちは」
 こいと「ですよねえ(宙にふわふわ浮きながら)」

 ~しーん~

 宇月「あ、あの、ごめんな。秘密のこと、美祢に話してしもて(静寂に居たたまれなくなり)」
 こいと「え? ああ、全然。いつか暴かれるだろうなとは思ってましたから。平気です。それに、お二人は仲直りできたんでしょ? なら大丈夫ですよ」
 宇月「でも、その。せっかく頼ってくれたんやし。その」

 こいと「……大丈夫ですって(宇月を後ろから抱きしめる)」
 宇月「――ふぁっ!? ちょ、桃根ちゃん……離っ」
 こいと「この恋愛マスターこいとちゃんを言い負かそうなんて、良い性格してますねえ宇月サン」
 宇月「~~~っ、君はほんまに、ほんまにっ」
 こいと「ほんまに、なんですか?(二ヤリ)」

 宇月「は、離せ!!(ググッと力を込めて、こいとを自分の体から引きはがす)」
 こいと「あらら。もーなんですか、柄にもなく照れちゃって」
 宇月「う、う、うっさいわ! あ、あんたはユイくん一筋なんやろ。ぼ、ボクの反応なんかいらん方がええんとちゃう?(白衣についた埃をはらって)」

 こいと「もちろんわたしは由比推しですよ! 宇月サンはアレです、オカズです」
 宇月「オカズて。多大な誤解を生みそうな発言やめぇや」
 こいと「あなたの反応をオカズにして、こいとは日々生き生きと霊生を送ってますよ!」
 宇月「あかーんこの子素直すぎるわ――――っ!」

 アナウンス「ふぅー、ふぅー。お、お待たせしましたああ(ゼエハア)。遅れてすみません!」
 こいと「あ、謎の声さん。さっきぶりです~。なんでそんなに息切れしてるんですか?」
 アナウンス「ま、マガっちが、その、術をね、ぶっ飛ばそうとしてまして。あと数秒遅れれば、扉が木端微塵になるところでした……」


 宇月「マガっち? ってあんた、ラスボスも部屋に閉じ込めとるんか!?」
 アナウンス「由比・猿田彦と一緒に閉じ込めました★ 使えるものは何だって使う、それが俺だ」
 こいと「由比と!? ちょ、ちょっとなにしてくれてるんですかっ、やめてくださいよ!」
 宇月「あーあー、あー、もうどうなっても知らんで……。猿田彦サン、頑張って……(同情)」

 アナウンス「ということでお待たせしました、お題発表に移らせていただきます!」
 こいと「何が来るのかな」
 アナウンス「では発表します、ばばんっ」

[お題其の1。壁ドンしないと出られない部屋]

 宇月「―――は? か、壁ドン?」
 アナウンス「はい。そこの壁でお願いします。男の子が女の子を壁ドンしてください。制限時間は無いですので、心の準備が出来たらしてもらう形で」
 宇月「いや、ちょ、ちょい待って?」

 アナウンス「なんですか? 情報は全部伝えましたよ。悪いですが私、このあと双子たちに同じ説明をしなければいけないので失礼させてもらI」
 宇月「あ、あんた鬼なん??(壁に取り付けられている魚眼レンズに近づいて、小声)」
 アナウンス「は?」

 宇月「やから、鬼なんかって。ボク、恋愛経験ないで? ほんまに言うてるならこのレンズ殴るで?」
 アナウンス「やだなあ。これは序の口ですよ。直接接触しないだけマシじゃないですか。美祢はコマリちゃんと恋人つなぎしてましたからね(小声)」
 宇月「こ、恋人つなぎって……、え、美祢はマジでやったん?」

 アナウンス「ええ。この目でしっかり確認しましたよ。貴方のいとこは、ちゃーんと真面目に女の子とお手手つなぎましたよ(語尾を強めて)」
 宇月「あ、あいつマジか!?」
 アナウンス「何なら見ます? 私のスクショ」

 宇月「――ほんまアンタ……、じゅ、、術使ってやるのはアリなん?」
 アナウンス「何言ってんですか。ナシ寄りのナシですよ。人の心惑わせるなんて最低だよ」
 宇月「あ――――っ、ほんまに作者って良いご身分やなぁぁ!!」

 ~と、後ろからこいとが駆け寄ってくる~

 こいと「どうしたんですか宇月サン。独り言、気持ち悪いですっ(ニコッ)」
 宇月「この子の素直さは時に心をえぐるんやけど」
 こいと「もうお互い隠し事もないですし、素で行きますよ」
 宇月「……やっぱ女の子ってようわからん。はぁ――――――っ(盛大な溜息)」

 宇月「(いや待て落ち着けボク。これはあれや、恋愛ゲームやと思えばいいんや。そうや、今までさんざん女の子を落として来たやろ。ゲームでやけど。やからその時と同じような感じで適当になんだかんだやればええんやっ、落ち着け!)」

 
 ~考えに反して、宇月の鼓動は速まる~

 こいと「宇月サン? どうしたんですか俯いて。 頭でも痛いんですか?」
 宇月「………」
 こいと「あ、わかった。壁ドンとか言われて焦ってるんでしょ~。もー、本当にこういうのよわいですよねえ」
 宇月「……好き放題言うなあ、君も」
 こいと「だってそうでしょ? 貴方は本当は臆病で弱虫っ……ひゃっ」

 ~こいと、宇月に肩を掴まれ、そして~

 宇月「(ドンッと壁にこいとを押し付ける)」
 こいと「あ、あの、ちょっと。え? あ、あの///」
 宇月「よくもまあ、ペラペラペラペラと(こいとの顔の横に手をついて)」

 こいと「あ、あの、宇月サン、ちょっ」
 宇月「………これでもまだ弱虫だって思うん?」
 こいと「ひゃっ、あ、あの、ちょっ」

 ~ピンポーン~

 アナウンス「はーい、お題クリアでーす! お疲れさまでした――――っ」
 宇月「ふーっ。よっしクリアぁ(壁から離れて伸びをする)」
 こいと「え、は? え、どういう」

 宇月「本気なわけないやろ、バーカ(ニィッと口角をあげる)」
 こいと「なッ。な、な、あ、あなたまさか、このこいとちゃんをはめてっ」
 宇月「ハーイ引っかかった引っかかった! 素で行けって言われたからな。満足した?」

 こいと「~~~~~っ、も、もう知りません! 宇月サンのあんぽんたんっ(声にならない叫び)」
 アナウンス「ホントにアレは素だったのか?」
 宇月「素に決まっとるやん。本気であんなことできるはずないやん。さ、桃根ちゃん次の部屋行くで。わはははは、顔メッチャ真っ赤やん。かわいいーw(逃げるようにその場を後にする)」


 アナウンス「宇月さん、隠そうとしてもバレバレですよ。あーもう、あの人自分の素がなにかも分かっていないのね。めんどくさいねえ。ま、作者なんですけど」


 ※次回に続く! 次は飛鳥&飛燕のペアです!お楽しみに~!!
 

 
 

 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.68 )
日時: 2023/11/22 19:29
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 こんばんは、明日は祝日ですね!
 むうは描いているイラストを進めようと思っています。
 メンタル状況は、ぼちぼちかなあ。書くスピードは、ちょっと戻ってきました。
 続き行きます。

 ----------------------
 [特別編:第3話]★双子組★

 飛鳥「飛燕、どう? 扉開きそう?」
 飛燕「うーん。おっかっしいなあ。アニメでは探偵が針金で簡単に開けてたんだけど(クリップで扉をガチャガチャ)」
 飛鳥「アレはフィクションだよ。無理そうなら諦めよう」

 飛燕「あーあ。なんかこの部屋おかしいよな。俺らの術も発動しねえ。妖怪を使役して、助けてもらおうと思ったんだけどなあ(軽く伸びをしながら)結界でも貼られてるのかな?」
 飛鳥「どうだろう。微かな霊気は感じるけどね」

 飛燕「それより問題なのはお題だよな。アナウンスの声に従わないと出れないんだろ?」
 飛鳥「そうみたいだね。えーっと、最初のお題は何だっけ?」
 飛燕「……ポッキーゲームだよ。ほら、あそこの棚にあるじゃん、ポッキー」

 ~双子がいる部屋の中央に、小棚がある。その上には皆さんおなじみのチョコ菓子~
 [お題其の1:ポッキーゲームしないと出られない部屋]

 飛燕「俺らあれじゃん。双子じゃん。血のつながってる兄妹じゃん」
 飛鳥「そうだね」
 飛燕「出来るわけねーだろ!?? 気まずすぎて蕁麻疹じんましんでるわ!!(くわっ)」

 飛鳥「アナウンスが言ってたね。『ラブコメなのにラブを書けてない。特別編で取り返す』って」
 飛燕「にしても、チョイスおかしいだろ?? 霊能者2人いるんだからさあ、悪霊退治とかでいいじゃん!」
 飛燕「悪霊退治は無理だけど、確かに別のお題ならいくらでもあるよね(はあ、とため息をついて)」

 飛燕「……妹よ。この状況をどう考える?」
 飛鳥「クッソめんどいと思う」
 飛燕「だよな!? くっそめんどいよな!? 双子でポッキーゲームやって萌えるのは、顔面が良い奴とお互い好き同士の奴だけだよ」

 ~飛燕、床に座り込む~

 飛鳥「あ、連絡来た(スマホを開いて)」
 飛燕「連絡?」
 飛鳥「他のチームのお題を、スマホを通して共有する仕様になってるんだって」
 飛燕「へー。あ、俺、宇月センパイが何したのか知りたいっ。頼りになる人の行動を参考にした方がいいだろ? 見せて見せて」

 【夜芽宇月は 桃根こいと と 壁ドンしました】

 双子「ゑ(は)?」
 飛燕「あのセンパイが異性と壁ドン?? う、嘘だ。絶対嘘だ」
 飛鳥「あ、あの、『恋愛はゲームやから』とか変な言い訳してた先輩が?? 信じられないっ」
 飛燕「た、頼りになる人の行動を参考に――」

 飛鳥「無理無理無理無理ッ。ポッキーのチョコの部分しか食べない奴とやりたくない!」
 飛燕「無理の基準そこかよ!? 割と最初のところだぞそれ。今躓くところじゃないよね??」
 飛鳥「映画館のエンドロール最後まで見ないとか有り得ない」
 飛燕「それは今関係ねーだろ!? 長時間ずっと席に座るの嫌いなんだよ!」

 飛鳥「あとさあ。先週、【妖視あやみはゐな】ちゃんの配信録画してなかったでしょ! 7時間目がある日だから、撮りわすれないでねって言ったじゃん!(床に置いていたリュックをブンッ)」
 飛燕「ゴフッ。待って? ポッキーのチョコしか食べない兄にここまで情緒乱す妹いないと思うんだけど」

 飛鳥「あ、あやみんのゲーム配信、リアタイしたかったあああああああ(泣) だいたいさ、お兄ちゃん私のプリン食べたでしょ! あれカラメルいっぱい乗ってて楽しみにしてたのに! あ、あとこの間の期末テスト、『副教科の総合点は俺の方が高い』とか言ってドヤってきたよね。あれうざいからやめて欲しかった! あと、あと!」
 
 飛燕「すっごい! ここぞとばかりに不満が出てくるっ。そういうのは当日に言って!? あと、ちょっとしたアクシデントですぐ取り乱すのやめて?? いつもの強気はどうした」
 飛鳥「……兄ちゃんとポッキーゲームするとか死ねる……生理的に無理……」
 飛燕「反抗期の娘を持つ父親の気持ちが今ようやく分かったぜ。お父様はこんな心境だったのか」

 飛燕「だいたいなあ。散々言ってくれたけど、俺もお前の言動には飽き飽きしてんだよ」
 飛鳥「ふぇ?(目をこすりながら)」

 飛燕「ちょっと頭の出来が良いからって、胸そらすのやめろ! あと自分で勝手に髪切るのなおせ! 切りそろえてやってるのに嫌な顔すんじゃねえ! 二人になったから家事分担しようって発案したくせに、全部兄に押し付けるのマジでやめてくれ! 推してるVtuberが被ったからってしょげんな! 準一卵性双生児ですって、プロフ帳でアピールすんな!身の丈に合わん覚悟はダサいからな! 推しのランダムグッズの開封を兄に任せておきながら、推し以外が出たら俺のせいにする癖なんとかしろッ」

 飛鳥「うぉ、言葉のナイフが胸にッ(ゴフゥ!)。で、でも準一卵性双生児は誇っていいでしょ。0.000ウン%しかいないんだから――ッ」
 飛燕「はぁ―――……すっきりした。って、うわ、ポッキーのチョコ溶けてる!」
 飛鳥「あんだけ長々と喋ったらそりゃあ溶けるよ」
 飛燕「お前に呆れられてもな。んっ(ポッキーを全本口に入れる)」

 飛鳥「あ――――っ!なんで全部口に入れるの!? 溶けてない奴もあったでしょ!?」
 飛燕「どうせお腹に入るんだから一緒だろ。ん。ん、ゴホッゴホッ」
 飛鳥「もー、言わんこっちゃない。………んっ(飛燕の口からはみ出たポッキーをくわえる)」

 飛燕「!? ちょ、やめてマジ辞めてポッキーゲームは俺も生理的に無」
 飛鳥「(バキッッッッ)」
 飛燕「あ(スンッ)。なんだろう、とてつもなく嫌だったのに、いざ突き放されると心にくるものがあるような、ないような」


 
 ※Next→トキマリコンビ2巡目! 次回もお楽しみに!

 【おまけ:飛燕と飛鳥の推しⅤtuber:妖視はゐなについて】
 妖視はゐなは、ゲーム実況・歌ってみたを中心に活動するヴァーチャルライバー。
 妖怪や幽霊・UⅯAが大好きな女子高生・16歳。ちなみにリアル年齢も16歳。
『くじろくじ』という大手Ⅴtuberグループに所属している。
 髪色は白。ボブヘア+、髪の左右にはお団子がついている。インナーカラーはオレンジ。
 服装は巫女装束。
 ボーカロイドマニアでもある。好きなボーカロイドは『再音クミ』(憑きもん世界のミクちゃん)
 ちなみに桃根こいとも生前、妖視はゐなちゃんを推していた。
 

 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.69 )
日時: 2023/11/24 20:54
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 [特別編:第4話]★トキマリ組・二巡目★

 〈脱出ゲームの舞台裏〉

 むう「ふぃー。全グループに企画説明するの疲れたぁ。あー、誰か代わりにやってくれないかなあ。やってくれたら、とっても嬉しいなあ(チラリ)」
 正鷹「交代してほしいなら最初から言ってくれ」

 むう「だって、君がアナウンスやったら、文字通りの天の声じゃん」
 正鷹「それでもいいよ。頼って欲しいよ。今後、本編登場しないんだから。特別編で喋らせてよ」
 むう「むー。でもそしたらバレそうじゃん。声の主がむうだって。途中でキャラ追加できるの作者しかいないし(テーブルの上にあった午後の〇茶をゴクゴク)」
 正鷹「大丈夫だ、もうバレてるから(ニコッ)」

 正鷹「むうは体調不良なんだから休んどけよ。あとは俺がチャチャッとやるから。こう見えて、小中と放送委員会だったんだぜ。トーク力には自信がある」
 むう「そこまで言うなら、頼ろっかなあ。はいこれ、ヘッドホンと台本」
 正鷹「メタいから台本って言うのやめろ。オッケー、じゃあ二巡目お互い頑張りますか!」

 
 ----------------------

 〈再びトキマリ組〉

 美祢「今回の部屋は一面が黄色いな。目がチカチカする」
 コマリ「またしても、何もないね。正面の壁に扉が取り付けてあるだけだ」

 美祢「なるべく簡単なお題にしてほしいんだけど、相手はむうだ。期待はしない」
 コマリ「もー、トキ兄。むうちゃんをそんなに敵視しちゃダメでしょ」
 美祢「だって見て見ろよ、このスマホの文章」

 【夜芽宇月 は 桃根こいと と壁ドンしました
  由比若菜(猿田彦)は禍津日神と第1の部屋にステイしています
  番飛燕と番飛鳥はポッキーゲーム 未クリア】

 美祢「壁ドンとか恋人つなぎとかポッキーゲームとか。恋愛系ばっかり。つーか宇月壁ドンしたのか。マジか。信じられない。ここ夢?」
 コマリ「現実だよ! あと、宇月さんをからかわないの! トキ兄だって私と恋人つなぎしたじゃん!」


 美祢「ふぁ(顔が一瞬で真っ赤に)」
 コマリ「? ………あ(ワンテンポ遅れて赤面)」

 美祢「~ッ、~ッ(声にならない叫び。無言でコマリの頬をつねる)」
 コマリ「いだッ。いだいって、やめひぇよ~」

 美祢「ふーっ。はぁ。いいかコマリ。今日のことは後日ちゃんと忘れろ。約束だ」
 コマリ「え、ええ――――っ。無理ゲーすぎるよ!」
 美祢「頼む忘れてくれ。そうしないと黒歴史になる。俺の黒歴史がまた一つ増える」
 コマリ「元から厨二じゃ……いだい! 悪かったからつねらないで!」

 コマリ「………はあ。まあ、この作品ラブコメだからね。今までシリアスが多かったけど」
 美祢「でも、こういう形を俺は望んでない。やるなら最初から本編でやってほしい」
 コマリ「いや、本編でもちょっとはあったよ? ほんとにちょっとだけど……」

 ~ピーンポーンパーンポーン~

 天の声「ってことで始まりました! 〈憑きもん特別編〉のお時間です!みんな上手くやってるかー? 上手くやれてないコンビも、まだまだ時間あるから気張ってこー!」
 美祢「なんだこのアナウンス!?(テンション高めの放送に驚く)」
 コマリ「やけに明るいBGMがバックで流れてるね。あと、むうちゃんの声じゃない。けどこの声、どっかで聞き覚えがあるような」

 天の声「あ、申し遅れました。前アナウンス主に代わり、実況を務めさせて頂きます私・番正鷹と申します。何卒よろしくお願い申し上げます!」
 美祢・コマリ「ええええええええええええ、バンさん!???」

 美祢「え、待って待って。なんで正鷹さんがアナウンスしてるんだよ。おかしいだろ」
 天の声「本編の展開の都合で登場できないので、無理言って特別編に参加させてもらいましたー」
 美祢「噂には聞いていたが、この人もめっちゃくちゃ声でかいな。やりづれえ」

 天の声(正鷹)「あ、でっかかった? ごめんごめん、ボリューム下げまーす。あ、恋人つなぎお疲れ。あ、あと申し訳ないんだけど、お題箱見る限り全部恋愛系で固めてるっぽいからご容赦ください」
 謎の声「ちょっ、それは公表しない約束でしょ!(ガサゴソ)」
 天の声(正鷹)「そーだっけ。悪い悪い」

 美祢・コマリ「(ま・じ・で・す・か)」
 天の声(正鷹)「大丈夫。過激そうなのは俺が外しとくからさ。ここ全年齢対象版だし。上手いことやるから安心して(小声)」

 美祢「まあ、正鷹さんが監修してくれるなら平気か」
 コマリ「う、うん。すごいね。不安が一気に軽くなったよ」
 天の声(正鷹)「んじゃあトキマリ組、2番目のお題発表するよーっ」

 [お題其の2:お互いの好きなところを10個言い合う]

 天の声(正鷹)「題して、お互いの好き語りだ。ちゃんと相手の目を見て話すこと!」
 コマリ「うーん。こ、恋人つなぎよりは比較的簡単かな?」
 美祢「よ、良かった(ホッ)。じゃ、コマリ先でいいぞ。手早く済ませよう」

 コマリ「わかった。え、えーっと(美祢を見つめて)。えーっと」
 美祢「うっ!?(あ、あれ。難易度は簡単だって分かってるのに、なんでドキドキするんだ?)」
 コマリ「えーっと、トキ兄の良いところは(指を折る)」

 コマリ「①寝起きが良い ②頭の回転が速い ③料理が上手い ④人の話を笑わない(※一部例外を除く)⑤たまに見せるリラックスした表情が好き ⑥意外と歌が上手い」
 美祢「おぉぉぉい待て待て。一部例外を除くってなんだ。変なもんを入れるな」
 コマリ「じゃあ反論をどうぞ」
 美祢「ぐっ……。は、早く続きを言え」

 コマリ「⑦冷静 ⑧大事な物事に対して熱くなれる ⑨相手のことを一番に考えてくれる」
 美祢「う。は、恥ずかしいなコレ……(ふにゃあ)。じゅ、十番は?」
 コマリ「⑩たまに見せる笑った顔が好き」
 美祢「んんんんんっ(あー、反則だろそれ!)」

 天の声(正鷹)「月森ちゃんありがとー。お次は時常くん、行ってみよう!」

 美祢「あー。んーっと。え、えっと。①優しい」
 コマリ「ふんふんふん。次は?」
 美祢「え? えと、②毎日ワクワクで過ごせる ③食べ物を美味しそうに食べる ④ポジティブ」
 コマリ「へえー。ってトキ兄、顔赤いけど大丈夫?」

 美祢「部屋が暑いんだよ! ⑤ハマったものはとことん推す ⑥人見知りしない ⑦信用出来るやつにはめっちゃ心開く ⑧声が可愛い ⑨菓子をほおばる仕草が小動物みたい」
 コマリ「小動物かあ。飛鳥ちゃんにも同じこと言われたな」
 美祢「⑩笑顔が可愛い、で」
 コマリ「!!」

 ~ピンポーン~

 天の声(正鷹)「おめでとうございます! お題クリアです! よく頑張った二人とも。って、なんでそんな気まずそうな顔してんの?」


 コマリ「(それはずるいよトキ兄……! やだ、顔火照ってきた。ばれない様にしないと)」
 美祢「(人のこと褒めるって、なんでこうも恥ずかしいんだ。ぐぬぉおおおおおおおおお)」
 双方「………………………………」

 
 天の声(正鷹)「え? 待って、もしかしてこれ俺が悪い? ちょっとむう、俺恋愛のことよく分かんねえ! こういう時ってどんな声かけりゃいいの?(困惑)」
 

 ※Next→天敵組・二巡目! 次回もお楽しみに。

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.70 )
日時: 2023/11/28 21:28
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 [特別編:第5話]★天敵組・二巡目★

 禍津日神「おい小童こわっぱ!」
 由比「ひゃ、ひゃいっ。な、なんですか」
 禍津日神「他の班員が次々とお題をクリアしている。しかし我々はまだ第一関門も突破していない。そこでヘラヘラする暇があるなら、スマホのシャッターとやらを切れ」

[お題其の1:お互いの写真をSN〇Wでいい感じに加工しろ]

 由比「ででで、でもマガッちさん」
 禍津日神「禍津日神だ」
 由比「マガさん」
 禍津日神「はあ。もういい、好きなように呼べ。ったくどいつもこいつも」

 由比「あ、はい。あの、僕携帯にあまり詳しくなくて。加工とか言われても何をしていいか」
 禍津日神「そこの猿は何か知らないのか」
 猿田彦(霊化状態)「何故俺様が知っていると思うんだよ。こちとら神だぞ」
 禍津日神「お前、人間の影響でアニメやコミックに詳しいだろう」
 猿田彦「それは乗っ取り先がバンだったからだ。あいつは写真加工なんか興味なかった」

 アナウンス(正鷹)「興味なくはねえよ!? 妹がいるからな。苦手なだけで嫌いじゃないぜ」
 禍津日神「当然のようにアナウンスをしている番正鷹にもツッコミたいところだが」
 アナウンスを(正鷹)「久しいなマガっち! 俺から出番を奪った罪は重いぞ」
 禍津日神「この我に『手をハートの形にして決め顔しろ』と言ったお前も大概だぞ」

 
 ~天の声・マガっち。モニター越しにバチバチ状態~

 由比「ちょ、ちょっと二人とも喧嘩はやめて! 僕頑張るからっ。それでいいでしょ?」
 猿田彦「でも由比、お前幽霊だろ。スマホとか持てるのか?」
 由比「指先だけ一時的に実体化させるから大丈夫だよ。猿ちゃんにこの間実体化のコツ教えてもらったし」

 猿田彦「お前手先だけは器用だよな……」
 由比「えへへへへへへ」
 猿田彦「褒めてないぞ。メンタルケアもしっかりやってくれ」

 禍津日神「ふん。早急に遂行しなくてはな。由比とやら、早く我を撮れ」
 由比「あ、はい! いきますよー、はいチーズ!(カシャッ)」
 禍津日神「チッ(指は―と+ウィンク)」
 由比「うわ」
 禍津日神「おい、これ見よがしに引くんじゃない」

 アナウンス(正鷹)「ブフッ。マガっち最高――――――っ。おいむう、見ろよこれ。やばい。めっちゃやばい。マジうけるんだけど。あー、今まで溜まっていた鬱憤が消えていく。清々しい~」
 禍津日神「…………此奴ッッ(わなわな)」


 ~天敵組、お互い顔を近づけて加工アプリを見る~

 
 猿田彦「よし。素材は取れたし、こっから加工だな。このどキツイ素材をオシャレにしよう」
 由比「猿ちゃんってホントに神様? 一番ウキウキしてるね」
 猿田彦「道開きの神たるもの、流行は徹底的に抑えておきたいんだ」
 由比「へえ。よく分かんないけど、まあいっか。うーん、加工、何から始めればいいんだろ」

 禍津日神「この『エフェクト』というのは何だ? 童、タップしろ」
 由比「えっと、なんか全体にキラキラつけたり出来るようです。ハートのフレームとか、レトロ風とか、パウダーとか。いろいろできるみたいですね」
 禍津日神「ならばこの【暗黒】をつけろ。画像一面が黒塗りされ、我の存在が引き立つからな」

 由比「それだとマガさんの髪色と同化しちゃって、生首だけ浮かんでいるみたいになりますよ」
 猿田彦「それはそれで面白いな。ネタ画像にして送ろうぜ」
 由比「もー猿ちゃん。嫌いだからって、そんな言い方はないでしょ!」
 猿田彦「相手は敵だぞ。お人よしもここまでくると心配だぜ。って、俺は父ちゃんか何かか?」
 

 由比「じゃ、じゃあこの【小顔効果】はどうですか? 顎がシュッとなって、凛々しくなると思います!」
 禍津日神「元々童顔だから問題ない。見ろこのツルツル肌」
 猿田彦「宿主の身体が子供だから当たり前だろ。自分の手柄みたいに言うんじゃないよ」

 
 由比「じゃあ、これは?【チーク】。頬に赤みが出ますよ。マガさんの顔、血の気がないから。赤みを足せば、ハートポーズのきつさもちょっと和らぐ気がします」
 禍津日神「ほお。任せよう」
 由比「はいっ。(ウキウキで加工)」

 猿田彦「由比、お前にっこにこ笑顔でかなり辛辣なこと言ってるぞ。自覚あるか?」
 由比「ん?」
 猿田彦「ダメだこいつ。色々と鈍感すぎる」
 由比「(カチャカチャ)で、できましたチークっ。どうですかね?」

 ~由比、スマホを猿田彦と禍津日神に向けて~


 禍津日神「なんだこの怪Bっ、ぐっ(猿田彦に口をふさがれて)」
 猿田彦「やめろ、由比の夢を壊すんじゃないっ。ただでさえメンタル豆腐なんだからっ(小声)」
 アナウンス(正鷹)「ぶっ、ふはははははは、傑作傑作!」
 猿田彦「バンもちょっとは自重しろ!!」

 由比「ど、どうかな。チークって女の人が良く使ってるイメージだから、たくさん塗れば可愛くなるかなって思ったんだけど」
 猿田彦「あー、すっごい健康そうな色になったよ(当社比)」
 由比「ほんとっ? 良かったぁ。他になにか修正しなきゃいけないところあるかな?」

 禍津日神「我としては一番に自身の色彩感覚wっ、ぐむっ。だから離せ!」
 猿田彦「(再度口をふさいで)あー、そうだな。吊り眉になってるから、垂れ眉にしたら可愛くなるんじゃないかな。あと口紅とか、ネイルとかも塗ってあげて」
 由比「わかった! ゴホッゴホ」

 猿田彦「風邪ひいてるんだからムリすんなよ」
 由比「はーい」
 アナウンス(正鷹)「(お父さんというより、最早お母さんじゃ)」

 ~由比、ウキウキルンルンでスマホを操作~
 
 禍津日神「おい猿田彦。貴様っ」
 猿田彦「ごめん可愛い由比の泣き顔を見たくないんだ。ここは我慢してくれ。あとで俺の写真好き放題やって良いから」

 
 禍津日神「なら言葉に甘えて、顔色を悪くしてやる。エフェクトは闇。炎のステッカーもつけて、ポーズは目の前にいる者を殴る感じでどうだ」
 猿田彦「ジャ〇プの悪役みたいで、めっちゃカッコいいじゃねえか」


 ~天敵組、一向に進まない~
 
 ※Next→秘密共有組の3巡目! 次回もお楽しみに。


 【おまけ:憑きもん!キャラ 技名辞典①】
 ・恋魂球ラブコンボール
 →こいとの技。恋愛の運気をエネルギーの球にして投げる
 
 ・黒呪符くろじゅふ
 →宇月の奥義。呪符に呪いの念を込めて投げる

 ・謁見えっけん
 →飛燕の術。位の高い霊・妖を召喚し使役する。

 ・番家流:憑依術ひょういじゅつ
 →正鷹の術。取り憑いた霊が持つ能力を自分好みにカスタマイズする

 
 禍火かび
 →禍津日神の術。負の感情をエネルギーの球にして投げる
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.71 )
日時: 2023/12/03 22:17
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 小説大会宜しくお願いしますっ。
 無理のない範囲で頑張ります!
 
 -------------------

 [特別編:第6話]★秘密共有組・3巡目★

 宇月「だああああああ、何なんあれ何なんあれ(猛ダッシュ)」
 飛燕「俺に聞かれてもしりませんよおおおおおおお」
 こいと「ちょ、ちょっと飛鳥さん先先行かないでくださいっ」
 飛鳥「無理いいいいいいいいいいっっ」

 ~宇月&こいとチーム、飛燕×飛鳥チームと合流~

 宇月「この状況マジ意味わからん。次の部屋へと続く廊下を歩いとったら、曲がり角からめっちゃ巨大なロボットが出てきて、ボクたちに襲い掛かって来たんやけど」

 ロボット「お掃除シマス お掃除シマス」
 飛燕「しかもここ、術が発動しない場所ですから攻撃も出来ませんよね?(ダダダダダダッ)」
 宇月「ど、どうなんやろっ。はぁー、はぁー、はぁー。も、桃根ちゃん、一回技撃ってみてくれんかな?」

 ロボット「お掃除シマス お掃除シマス」
 こいと「わ、分かりました。(足を止めて)。ロボットさんちょっと失礼します! 必殺・恋魂球ラブコンボール―――――っ!」

 ~こいとの手のひらからピンク色のエネルギーの球が発生~
 ~ロボットに向かって飛んでいく~

 ロボット「(カキンッ)」
 飛鳥「なっ。跳ね返した!?」
 宇月「術は効いてるっぽいけど、ロボットさんの強度が強いせいではじかれてまうんやろな」
 こいと「嘘でしょ? 結構なエネルギー持ってますけど……」

 飛燕「あー、やべえ。こんなことになるなら一番目の部屋にとどまっておいた方が良かったよ」
 飛鳥「もう二度としないから。レモンのお味とか嘘だった」
 双子「………(気まずそうな顔)」

 こいと「ちょ、お二人さん敵来てますから! 足を止めないでくださいっ。幽霊の私が言うのもなんですけど!(宙にフワフワ浮きながら)」
 宇月「全くや。って、あかんこの通路行き止まりやっ。こっから先行かれへんっ。シャッターが下ろされとる」
 飛鳥「確か反対側の通路も行き止まりでしたよね?」

 
 ビーッ


 宇月「なんやこの音? ブザー音?」
 アナウンス(正鷹)「今からこのあたり一帯を覆っていた結界を解きます。あ、これは霊能力者の能力が使えなくっつーアレね」

 双子「お、お兄ちゃんっ!?」
 飛燕「な、なんで死んだはずのお兄様の声が……? おい誰か録音してんだろ! やり方が汚いぞ!」
 アナウンス(正鷹)「え、ちょっと」

 飛燕「情報って言うのは無闇に共有・拡散しちゃいけねえんだ! プライパシーの権利とかなんとか。が、学校で習ったんだからな!」
アナウンス(正鷹)「必死に説明しているけどゴメン弟よ。すっげー説得力がないよ。あと俺の話を聞いて?」

 アナウンス(正鷹)「細かいことはあとで。とにかく、結界を解いたから、このフロアにいる限りみんなの術は発動するぜ。自分のスキルを活かして目の前のロボット(むう作)を倒してくれ。これが今回のミッションだ!」

 [共通お題:目の前の敵を討伐せよ]

 宇月「あのー、全部恋愛系で固めてるとか言うてませんでした?」
 アナウンス(正鷹)「ごめん、このお題入れたのむうだから文句は彼女に言って。霊能力者と幽霊そろえば何とかなるんじゃねって思ってるから」

 ロボット「お掃除シマス お掃除シマス(どんどん迫ってい来る)」
 こいと「と、とりあえず協力してあのロボ倒す感じですかね?」

 飛燕「そうっすね! てか今思ったんだけど、このロボってなんかその、ゴキブリに似てないですか? 無駄に触角とか生えてるし、テラテラしてるし」
 飛鳥「やめて!? 考えないようにしてたんだから」
 アナウンス(正鷹)「むうの自信作・『討伐Gメンロボ』です」
 宇月「ダブルミーニングするのやめてもろて」

 飛燕「ま、倒したもん勝ちってことすね。俺の技まだ本編で出てないんで、説明時間短縮になっていいかもですね」
 宇月「なんでこの小説はこうも曝け出すん?」

 こいと「ってことでまずは私が先陣を切ります! 皆さんサポートお願いします! 恋球球―――――ーっ!」
 ロボット「ギャウッ(ふらついて)」
 
 飛燕「んじゃあ俺も行きますか。術展開・【謁見えっけん】!」

 ~飛燕が右手を掲げると、妖が二体出現する~

 狐の妖怪「ヒャハハハ! 呼んだかのう! 呼んだかのう! 要件は何じゃ? 今宵は何をするのじゃ?」
 飛燕「紹介します。こいつは九尾の炎狐えんこ。人間の姿に化けることができます。炎も吐けますよ」

 蜘蛛の妖怪「おい炎狐、五月蠅うるさいぞ」
 飛燕「この蜘蛛のじいちゃんはアラクネっていう妖怪です。とっても強いんですよ!」

 こいと「わ、すごい。召喚系の術をつかうんですね」
 飛燕「そうっす。俺、使役系術士なんで!」
 蜘蛛「おいトビ。制限時間リミット代償コストを頼む。今宵はどれくらい暴れればいいかの?」

 飛燕「そうだな。とりあえず30分で。(カブリと手の甲を噛む)」

 ~血液がポタポタと地面に流れて~

 飛鳥「これが代償です。使役術士は使役した妖怪に対し、一定量の何かを支払う必要があります(こいとに小声で説明)」
 こいと「なるほど!(攻撃をさばきながら)」

 飛燕「炎狐、蜘蛛爺、頼む! センパイ、今です!」
 宇月「あーはいはい。わかりましたよっと。【操心術・第一式】解放!」
 飛燕「うっ(グラッと姿勢が傾く)」

 飛鳥「宇月先輩、一体何を?」
 宇月「何って、使役系術士は術使っている間無防備になるやん? その間、ボクがヒエの体操って攻撃防げばいいんちゃうかって話。ボクは肉弾戦が弱い。ヒエは頭脳戦が弱い。お互いの欠点を補いあうのが戦法や」

 こいと「な、なるほどっ、うわっ(攻撃を避けて)」
 炎狐「ガアアアアアア!(口から炎を吐く)。どうじゃわらわの炎は! 熱いじゃろう! 熱いじゃろう!!」
 ロボット「お、お掃除……オソ……お掃除…」

 飛燕「オーバーヒートしたか?30分長すぎたかな(よろよろと起き上がって)」
 蜘蛛「待てトビ。何か様子がおかしいぞ」

 ロボット「戦闘用ソフトウェアをアップロード しマス」
 宇月「は? アップロードって何や……うわっっ、気持ち悪!(ロボットのアームが一メートルくらい伸びる)」
 ロボット「アップロードを完了シマした。攻撃に移りまス」

 一同「こいつグレードアップするんか―――――――い!」
 

 こいと「そんなの聞いていません! あんなものにラブはめ派打ち続けたりなんて出来ませんよ」
 飛燕「俺の術も……沢山使えばその分血液を消費するから……長丁場は避けたいな。飛鳥、お前の術は使えないか?」

 こいと「飛鳥さんも術が使えるんですよね? どんな術を使うんですか?」
 宇月「飛鳥ちゃんのはかなり詠唱のハードルが高いからなあ。本人のモチベーションと気力がないとなかなか出来ん。それらがピッタリ合わさったら強いんやけどな」

 こいと「つまりなんなんですか?」
 宇月「ほら飛鳥ちゃん、言うてみ。自信の能力(攻撃をジャンプでよけながら)」


 飛鳥「僕の能力は【転写】。今まで出会った人の外見・体重・身長・能力などを一言一句間違えず唱えれられれば、その人のステータスを模倣することが出来ます」
 こいと「す、すごい! つまりその人に変身できるってこと?」

 飛鳥「はい。そして、間違えれば」







 飛鳥「身体の機能の正常値が一ずつ減っていきます」
 こいと「………………え?」


 ※Next→トキマリ組×天敵組! 次回もお楽しみに。
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.72 )
日時: 2023/12/08 18:20
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 [特別編:第8話]★トキマリ組×天敵組★

 猿田彦(霊化状態)「ふう、ふう。やっと次の部屋ついた。やべえ、脱出する前に俺様の気力がなくなりそうだ」
 由比「カッコよく編集してもらえて良かったねえ(ほわほわ)」
 禍津日神「貴様、熱が上がってきているのではないか? ふらふらしていて危なっかしい」

 由比「んー? だい、りょーぶ(ぐらっ)」
 猿田彦「っぶねえ! おい由比、おい由比。あとは俺がやる。お前はちょっと寝ろ」
 由比「へーきはよ。だってぇ、上手くいけばいとちゃんに会えるかもしれないんれしょー」

 猿田彦「そんな状態で行っても向こう大変だろ。ってことで体貸せ」
 由比「んぅー、猿ちゃん大丈夫だってば……うぉわっ、あ、意識が……なくなる………(スゥ)」

 由比(猿田彦)「よし、交代完了。うわ、頭すっげえ重い。こりゃ三十九度くらいあるんじゃねえか?」
 禍津日神「また貴様と二人か。チッ」
 由比「てめー少しは俺の宿主のことも案じろよ」

 ~と、向こう側から美祢とコマリがやってくる~

 美祢「はー、はぁー、何だアレ。マジ意味わかんねえ」
 コマリ「なんか変なロボットが襲って来たね!?」
 美祢「とりあえず近くにあったこのモップでバコーンやったけど。また来るかもしれねえな」

 コマリ「力技すぎるよトキ兄」
 美祢「アレ以外にどうしろっていうんだよ! 俺は小中高と帰宅部だったんですけど?」
 コマリ「ご、ごめん」

 禍津日神「何やら騒がしいな。ん? あれはこの小説の主人公ではないか?」
 由比「いい加減名前覚えようぜ」
 禍津日神「我はあの娘と、まだ本編で出会ってないからな。名前を言えと言われても無理な話だ」
 由比「……なんでこの小説はこうも曝け出(以下略)」

 コマリ「あ、トキ兄。あそこに人がいるよ!」
 美祢「本当だ。って。とんでもねえ面子と再会してしまったよ俺ら」
 コマリ「確かに。幽霊+神様+神様だもんね」
 美祢「ここにこいとが居れば、あいつの目的【完】で一件落着なのに……はぁ」

 コマリ「ど、どっちから声かける?(ガクガクブルブル)」
 美祢「いやお前が行けよ主人公だろ(ガクガク)」
 コマリ「その主人公がなんかあった時にサポートするのがボディーガードでしょ!」
 美祢「いかなる時でも笑顔とプライドを捨てないのが主人公だろ?」
 両者「(ぐぬぬぬぬぬぬ)」

 両者「さいしょーはグー。じゃーんけーん」
 コマリ「(パー)」
 美祢「(グー)」
 コマリ「ということでボディガードよろしくう!」
 美祢「なんでだああああああ」

 禍津日神「おい見ろ猿田彦。ピンク髪のチンピラ小僧が現れたぞ」
 美祢「あ、あのう。禍津日神さんです、よね(もみ手)」
 禍津日神「いかにも」
 美祢「よ、横の人は、その」
 由比「あー。猿田彦だ。こっちの体は由比若菜。よろしく」

 美祢「あ、よろしくお願いしますう」
 コマリ「(トキ兄って初対面だとあんな感じなんだ……)」
 

 アナウンス(正鷹)「はい再びこんにちは! 天の声のバンでーす。おおっとそっちも合流した感じ? ヤバいなこの展開」

 禍津日神「おい番正鷹! 貴様いい加減にしろ。SNОWで加工などしたことがないわッ」
 アナウンス(正鷹)「知ってるよ。あれは俺からのご褒美だ。楽しめたようで何よりじゃねえか」
 禍津日神「そうだった。此奴も煽りスキル高いんだった!」

 アナウンス(正鷹)「てことで折角両サイド出会ったわけだし、そっちにも共通お題を発表するぜ」
 コマリ「共通お題って何ですか?」

 アナウンス(正鷹)「二つのチームが合同になってクリアを目指すお題だ。秘密共有組と俺の兄妹が今まさにこれをやってる。まあ、あっちは体力勝負のお題だけどね」

 美祢「秘密共有組って……宇月とこいとか。うお、向こうは霊能力者三人か!」
 コマリ「人外3人がいいか能力者3人がいいかってことか。で、私たちは人外の方になったと」
 

 アナウンス(正鷹)「今回のお題はこれです! ばばん」

 [共通お題:回答一致するまで終われま10!]

 美祢・由比「急に大喜利みたいになったんだが」
 アナウンス(正鷹)「神様2人居るこの状況で意見がそろうことなどまずない。ってわけで、今からアナウンスでお題出すから、それに各自答えて行ってな。回答が一度でもそろえばクリアだ」

 コマリ「こっちは三人ともあんまり関りがないから難しいね」
 美祢「そうだな。勘で行くしかない。向こうは多分こちらに合わせないと思うから、俺たちが向こうに合わせるしかないぞ」
 コマリ「つまりヴィラン側の気持ちになって考えるってこと? できるかなあ」
 
 由比「いやだから悪役はこの禍津日神だけなんだってば」
 アナウンス(正鷹)「ということで終われま10ボタン、ぽち」

 ~第1問:憑きもんメンバーの中で一番人気があるのは誰?~

 一同「一番人気??」
 美祢「んなもん、集計取ってないからわかんねえだろうが」
 コマリ「んーでも、いとこ組が好きって声はよく聞くよね」

 由比「過去編が夏の大会と重なったことで、みんな結構読んでくれたから、案外俺ら幽霊組も人気かもしれない……」
 禍津日神「愚問だな。我が一位に決まっている。30スレにも渡って相手を煽ってやった(ドヤ)」
 美祢「うーん。正鷹さんは誰が人気だと思いますか?」

 アナウンス(正鷹)「俺も一応登場人物なわけで。あ、そうだ。そういう時にこの人よ。むうーっ」
 むう「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。むうです。そうですねえ。この問題は要するに、私が一番気に入っているキャラを答えればいいのです」

 美祢「まあそうか。視点が多く書かれているキャラは認知されやすいもんな」
 由比「っ、それだと由比と俺がかわいそうだろおおおおおっ。俺ら数えるほどしか視点奪ってねえぞ!」
 コマリ「でも猿田彦様は、過去編で見せ場たくさんあったじゃん」
 美祢「長く本編に出てたのは、コマリと俺か」
 一同「う―――――――ーん」


 アナウンス(正鷹)「それでは回答どうぞっ」

 コマリ「私がナンバーワン!だって主人公ですから」
 美祢「なんだかんだ言って冷静な奴が勝つ。つまり俺だ」
 由比「頑張っているキャラや過去編が重いキャラは愛されやすい。俺は自分の功績を称えて由比に入れるぞ」
 禍津日神「ふん。我に決まっているだろう」

 アナウンス(正鷹)「第1問、無事失敗—————————!」
 むう「あかんコイツら自我が強い………」
 
 Next→秘密共有組×双子組vs討伐Gメンロボ(グレードアップver)
 次回もお楽しみに。
 皆さんは憑きもんキャラで誰が好きですか?
 良ければまたコメントしてね。ではでは。

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.73 )
日時: 2023/12/10 20:59
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 ★憑きもんに対するFAQ★

 Q1:コマリの逆憑きは現在どうなっているのですか?
 A:宇月から貰った魔除けの腕輪の効果で、ポルターガイスト&曇天日が月1くらいになっています。

 Q2:美祢が通っていた高校の偏差値はどれくらいですか?
 A:75です

 Q3:物語の舞台はどこですか?
 A:20XX年の東京・黒女くろめ市です

 Q4:なぜ美祢は宇月のいとこなのに霊能力が使えないのですか?
 A:時常家のご先祖様が疫病により命を落とし、術が途絶えました。

 Q5:コマリの本来の学力はどれくらいですか?
 A:必死に勉強すれば全教科50点くらいは取れます

 
 Q6特別編終わったら、地の文章に戻りますか?
 A:はい。本編進めます

 Q6:時系列の順番を教えて!
 A:Prologue→過去編→本編1~4章→特別編へと繋がっていきます
 初見さんは目次の通り読むのをお勧めします

 Q7:更新日は?
 A:決まっていません。不定期連載です

 --------------

 〈特別編:第8話〉秘密共有組×双子組

 >>71の続きより

 飛燕「センパイ! とりあえず一旦撤収して作戦を練りましょう。このままだとジリ貧です!」
 ロボット「がガガガガガガ(ジリジリと四人に迫る)」

 宇月「……せやな。桃根ちゃん、飛鳥ちゃん。逃げるで」
 こいと・飛鳥「了解です!」

 ~一同、全速力で来た道を引き返す~
 ~曲がり角の陰に隠れる~

 ロボット「目標を見失いマしタ。見失いマしタ」
 一同「ふぅー」


 こいと「一旦状況を整理しましょう。わたしたちが対処するのは、むうちゃん作のロボット【討伐Gメンロボ】です。あのロボットには戦闘用ソフトウェアが入っていて、自動的にグレードアップします」

 飛燕「こっちは霊能力者3人に幽霊一人。俺とこいと先輩がアタッカー、飛鳥とセンパイがサポーターですね」
 宇月「桃根ちゃんとヒエは術の多用は避けるべし。飛鳥ちゃんは発動のリスクがでかい。ボクも使いすぎると体調が悪くなる」

 飛鳥「僕等の主な戦闘方法は、こいとさんと飛燕が攻撃。先輩がサポート。僕が状況分析でしたね」
 宇月「さて、どうしたものか。って炎狐サン、貧乏ゆすりすんのやめてくれん?」

 ~宇月の隣で、少女に化けた炎狐が舌打ちする~

 炎狐「ウム? 戦わないのか? わらわはいつでも準備オッケーじゃが。折角代償コストを貰ったのに。このままだとわらわは、制限時間リミットまで時間をつぶさなければならん」
 飛燕「ごめん炎狐。状況が変わったんだ。少し我慢してくれ」

 こいと「あの、思ったんですけど、アナウンスをしている正鷹さんに協力を頼むのはどうでしょう。確か、結界を制御しているのは彼ですよね。うまいことやってくれないでしょうか」

 アナウンス(むう)「バンはいまコマリ陣営の説明中だから、手が離せないよ。あと私と彼は今回運営側だから。ごめんね」


 一同「うーーーーん」
 ロボット「お掃除しマス お掃除しマす(一同の横を通り過ぎる)」
 一同「ひぃっ」

 宇月「現段階で考えられるのは、誰か一人がロボットを引き付けて隙を作り、あとのメンバーが追い打ちをかける感じで攻撃とかやろか」
 飛燕「でも、奴はソフトウェアを更新しますよ。学習能力を持った相手に俺らが適いますかね」

 宇月「与えられる情報がないと学習できんやろ。やから、学習するまでの一瞬で攻撃を決めないと。強烈なやつだったら、相手をひるませることができるかもしれん」

 
 こいと「わたしの能力は同じ技を繰り返すだけですから……飛燕さん、他に召喚できる妖怪とかいませんか?」
 飛燕「ずっと試してる!(右腕を突き出して)」

 ~飛燕の右腕から血がポタポタ零れ落ちる~

 飛燕「試してるんだ。体に影響がない範囲で、コストを支払ってる。けど今日は調子が悪い。契約してるやつらは他にもいるのに、全然応答しねえ……!」

 こいと「そんな……。な、なにかないんですか? 正鷹さんまでとはいかなくとも、強い攻撃持ってないんです……あ」
 飛鳥「どうしました?」
 こいと「わ、分かりました! 状況を打破する方法!」

 宇月「ほんまか!? なんやそれは」
 こいと「(頬を上気させて)飛鳥さん、家族はどうですか! 年齢も性別も能力の詳細も把握してる、長い付き合いの人間ですよ」
 飛燕「つまりお兄様に変身するってことか? できんのお前?」

 飛鳥「確かに。お兄ちゃんの術は私たち兄妹が一番近くで見てきた。なんとかなるかもしれない」
 宇月「でも正鷹さんの憑依術は、霊を取りつかせんと――あ、まさか飛鳥ちゃん、やっちゃうんか?(こいとのほうを振り向いて)」

 飛鳥「そうです! お兄ちゃんは超希少な憑依特化型! 取りついた霊の能力を自由自在にカスタマイズできる!」
 宇月「うおおおおおおおおお、御三家すげえええええええええ」

 こいと「え? え? つまり飛鳥さん、変身した状態で私を取りつかせるってことですか?」
 宇月「それ以外に突破方法がない。頼む桃根ちゃん、どうなるかは分からんけど、君の力が必要なんや! ボクとヒエが上手いことサポートしたるから、頼む!」

 こいと「え、ええ……人間に取りついたことなんてありませんけど」
 飛鳥「頼みますこいとさん。やりましょう。飛燕とセンパイのサポート力は僕が保証します。二人は強いです」
 
 こいと「しょ、しょうがない、かあ。わ、分かりました。よろしくお願いしますっ。(どちらにせよ私も、もっともっと強くならないといけないんだ!)」

 飛鳥「それでは行きますよ! 術式展開:【転写】! 対象:番正鷹! えーっと3月31日生まれAB型、性格は面倒見がよく時に大雑把、饒舌、好きな食べ物はお寿司で嫌いな食べ物は家で出される高い定食料理、特技は料理(以下永遠に続く)」

 ~ボフンッと煙が上がって~

 正鷹(飛鳥)「よし、上手く行った! 慣れない身体で歩きづらいけど。うわ、めっちゃジャンプできる(ぴょーん)」
 飛燕「お兄様の体で遊ぶんじゃねえ!」
 正鷹(飛鳥)「よし、こいとさん、どうぞ! 思いっきりタックルしてもらって構いませんよ」

 こいと「は、はい。うおおおおおおおおおおおおおお!っひゃ(スイッ)」
 宇月「どうや?いったか?」
 正鷹(飛鳥)「うん、良い感じです。こいとさん、ちょっと僕技出してみますね」


 正鷹(飛鳥)「(思い出せ。お兄ちゃんがやってた、術の発動方法。体の使い方を……!」

 飛鳥は手を銃の形に組み、そっと腰を落とした。
 スウ、ハアと息を吐く。全身に、力がみなぎっていく。
 これが霊能力者最強(だった)兄の力。何という霊力。


 正鷹(飛鳥)「お兄ちゃん、ありがとう。行くよ!」






 正鷹(飛鳥)「番家流・憑依術! BANG!!!!」
 宇月「うわっ」


 飛鳥の右手のひさし指から発生したエネルギーの球は、正面にいた宇月の髪スレスレを飛んで行った。
 バコンッッッッッッッ!という凄い音が響き渡った。球が着地した地点のトタン板が、円形状に沈没している。

 

 宇月「こっわ! ボク! ボクの手と指ちゃんとついとる!? ちゃんと立ってる? こ、怖! 当たったら即死やったんだけど。ひぃいいいいいいいいっ」



 飛燕「…………な、懐かしいぜ。この桁違いの術の感触……。そうだったこんな感じだった。そりゃあ、拳一振りで300体倒すわ……」
 こいと(うわああああああ、何ですかあれ、何ですかあれ! なんかすっごい音したんですけど!??)


 
 正鷹(飛鳥)「はぁ……はぁ………はぁ………。OK、感覚はつかめた。これは、行けるっっ」
 宇月「ゴメン、今ので腰抜けてしもた。も、もうちょっと時間くれへん? た、タンマ」


 ※Next→終われま10!のクリアを目指すトキマリ組&天敵組!回答一致なるか。次回もお楽しみに。


 





 
 
 

 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編更新しました!】 ( No.74 )
日時: 2023/12/18 11:11
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 [特別編:第9話]★トキマリ組×天敵組★

 【回答一致するまで終われま10! 継続中】

 お題bot「第18問~。問題:『体の大きい哺乳類と言えば?』open!」
 
 コマリ→熊
 美祢→シロナガスクジラ
 禍津日神→知らぬ
 由比→ゾウ

 美祢「だああああああ、おいマガ野郎! なんだこの回答は!」
 禍津日神「フン。我は過去に多くの動物を創造した。何万、何千もの種族を生み出した。いちいち覚えていられぬ」
 美祢「意地でも思い出せっ。次っ!」

 お題bot「第19問。問題:『パスタの具と言えば?』」
 
 コマリ「うーん。私は王道のアレが好きだけど、トキ兄はあっさりした味が好きだよね」
 美祢「ああ。良く作るな。潮の味がしておいしい」
 由比「あ、僕分かった。ど、どっち行きますか?」
 美祢「ここは王道で決めよう」
 由比「ま、マガさんは分かりましたか?」
 禍津日神「勿論」

 お題bot「open!」

 コマリ→ミートソース
 美祢→ミートソース
 由比→ミートソース
 禍津日神→知らぬ

 猿田彦「おおおおおおい戦犯! マガっち!」
 禍津日神「我は人間の血しか口にせぬ」
 美祢「ダメだこれ。おい由比、コマリ、この神の回答に合わせるぞ」
 コマリ・由比「はいっ」

 美祢「スマホの情報によると、宇月たちは順調らしい。俺らも早くタスクを終わらせないと」

 お題bot「第20問! 問題:『敵が膝をついて倒れています。貴方ならなんと声をかけますか?』」

 由比「(僕だったら『大丈夫?』になるけど、マガっちさんはそんなこと言わないよな)」
 美祢「(あいつは人の気持ちなんて考えていない。簡潔、それでいて冷酷な一言を考えろ)」

 コマリ「(えええええ、分かんないよお。『どうした、立てないのか?』とかかな? あ―ダメだ、どうしても読んでいるマンガのセリフになっちゃう)

 お題bot「open!」

 コマリ→フッ。愚かだな人間
 美祢→雑魚め
 由比→人間風情が
 禍津日神→どうした、大丈夫か

 一同「なんで!??」

 禍津日神「合わせろと言われたので合わせたまでだ」
 コマリ「マガっちさん、もう合わせなくていいんですよ。私たちが合わせますから。話ちゃんと聞いて下さい!」
 美祢「せっかく俺らが合わせに行ったのに、なんで逆を行く??」
 由比「キャラに合わない言葉書いちゃったよ……」


 美祢「あああああああ、もう! イライラしてきた! おいbot、質問ジャンルの変更とか出来ねえのかよ」
 bot「出来ます」

 一同「できんの!?」
 bot「皆さんが答えやすいお題ですと、憑きもんに関するものがございます」

 美祢「よし。それでいこう。特別編から俺らのことを知ってくれた読者の為に」
 コマリ「私たちで宣伝して好きになってもらうってことね!」
 由比「でも、合わせちゃいけないと!」
 禍津日神「フン」

 お題bot「第21問。『憑きもんのイメージソングを答えてください』」
 美祢「イメージソング???」
 コマリ「むうちゃんがYouTubeに保存して、よく聞いてるよね。モチベになるからって。つまりそれを答えるってこと?」

 由比「これは一致するんじゃないかなあ? むうちゃんから皆、話を聞かされているからね!」
 美祢「それじゃ、宣伝もかねて行ってみるか。せーのッ」

 コマリ→プライド革命
 美祢→プライド革命
 由比→プライド革命
 禍津日神→人間っていいな

 美祢「なぁんでだよッッ!なんでそれなんだよッ」
 禍津日神「人間のことを唄にした曲で、真っ先に思い浮かんだのがこれだったのだ。これをイメージソングにすれば、皮肉っている感じがして非常に気持ちいい」
 美祢「それはお前の感想ですよね!?」
 由比「マガさんの流行り曲は、昭和で止まってるんだね」

 コマリ「ってことで、憑きもん!のイメージソングはHoneyWorksさんのプライド革命だよ!キャラごとのイメソンは、【キャラ深堀紹介】に記載してあるから是非聞いてみてね!」

 お題bot「第22問!」
 美祢「いい加減決めたい……。おい、みんなラスボスの気持ちになるんだ。いいな!」
 コマリ・由比「はいっ」

 美祢「そんでおまえは意見を曲げないこと! 頭に浮かんだものをそのままフリップに書け。いいな!」
 禍津日神「御意」

 お題bot「22問。『憑きもんで一番強いのは誰?』」
 コマリ「来たっ、ラッキー問題! これはあれでしょ!」
 美祢「おい禍の神。自分を貫けよ頼む」
 由比「もうほぼ答え言っちゃってますよ美祢先輩」
 
 お題bot「open!」

 コマリ→禍津日神
 美祢→禍津日神
 由比→禍津日神
 禍津日神→我

 お題bot「パンパカパーン! クリアです! 皆様には次の部屋の鍵をお渡ししましょう!」
 美祢「よっしゃああああああああああああ!やっと出られるっ(ガッツポーズ)」
 

 コマリ「長い道のりだった……。ラスボスの気持ちになるって、難しいんだね」
 由比「うんうん。まさか、童謡が来るとは思わなかったよ」
 お題bot「それでは鍵をお渡ししますね」

 ~天井の通気口から、銀色の鍵が落ちてくる~

 一同「いや適当すぎる!!!」
 美祢「うおおおおおおおおっ、誰か拾って!」

 由比「任せて!右手だけ実体化させて……。(スイィと飛行移動。パシッ)キャッチ!」
 コマリ「おおおお。流石幽霊」
 由比「えへへ。この鍵を鍵穴に差し込んで」


 ~カチャカチャ~
 ~ギィィィィィィッ~


 由比「! 開いたっ。みんな早く外へ!」


 ~一同が、部屋の外に出ると~
 扉の先は、広い廊下だった。幅は一メートルほどだろうか。左手にある突き当りの壁は行き止まり。右手側は、シャッターで封鎖されている。

 どっちに行けばいいんだ、と辺りを見回した美祢。
 その視界に突然、ある人影が映り込んだ。

 宇月「うわ、ちょ、なんでここに居るん!?」
 美祢「! 宇月!? ま、まさか俺たち、戦闘組のすぐ近くで終われま10やってたってことか?」

 宇月「なんやよう分からんけど今取り込み中やねん!巻き込まれんのが嫌なら、はよ逃げや!」
 美祢「へ? うわっ、あれはさっきの、ゴキブリロボ!?」
 宇月「知っとるんかいな!」

 振り向いた先に、鉄製のゴキブリ型ロボットがいた。目を赤く光らせ、ホース状のアームを伸縮させている。
 それは間違いなく、美祢が数分前モップでバコーンと倒した、例の敵だった。

 コマリ「宇月さん!? なんでこんなところに居るんですか?」
 宇月「そのセリフまんま返すわ。なんでこんなところに居るん? ちょ、今マジでやばいから動かんどってな」

 コマリ「? うわ、何あのロボットッ」
 宇月「コマリちゃんがたちが何のお題やったかは知らんけど、ボクらの共通お題はアレを倒すことやねん。やから、ほんま動かんどってな」


 宇月「【黒呪符】!」
 ロボット「ウ゛ッ」

 宇月は、白衣のポケットから一枚の黒いお札を取り出し、それをロボットに向かって投げつけた。
 呪符はシュッと空気を切り裂いて、有刺鉄線の縄へと姿を変える。
 縄に右足をグルグルに縛られ、ロボットは大きくよろけた。

 宇月「今やヒエ!」
 飛燕「了解っすセンパイ! どりゃああああああああああああ!」

 曲がり角に隠れていた水色髪の少年が、宇月の掛け声を受けてバッと飛び出した。
 リスのような素早い動きで、敵の背後に回る。右足を踏み込み、軽々と彼は地面を蹴って空を舞った。

 ロボット「対象を確認シまシタ。攻撃にうつりまス」
 飛燕「今だ飛鳥! 撃て――――――ッ」


 

 
 


 飛鳥「【番家流:憑依術】……」





 ウルフカットの少女・飛鳥が術を発動しようとした0.001秒前。
 扉の隙間から顔をのぞかせたおかっぱの少年が、右手のひらから黒い球を発生させていた。





 禍津日神「なんだ、敵か」


 ※Next→憑きもんだよ、全員集合!(違う)。特別編はあと2,3話で終了になります。最終話公開時の閲覧数に応じて、誰の視点で本編を再開するかを決めます。よろしくお願いいたします。
うーん。カオスになる予感しかしないわね。


 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編・修正作業中です】 ( No.75 )
日時: 2023/12/19 12:53
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 
 [特別編:最終話]★憑きもんメンバー全員集合!★

 禍津日神「なんだ、敵か(技を発動させようとして)」
 由比「ちょっ、ちょっと待って!(禍津日神の前に立ちふさがる)」

 廊下の通路に取り付けられている扉から顔を出しかけた禍津日神を、白髪の少年が咄嗟に制した。
 白色のニットに、薄水色のシャツを着た彼の体は透けており、宙にフワフワと浮いている。

 禍津日神「なんだ童。退け。前が見えぬ」

 禍津日神は心底嫌そうに肩を回した。
 いきなり脱出ゲームに参加させられる、嫌いなものと一緒に同じ部屋に入れられるなど、ストレスの多い展開が今日は続いていた。
 これでやっと、自分の本来の目的――敵を排除すること―を行えそうだったのに。

 由比「こ、ここで術を発動すると、今戦っている人たちにも攻撃が当たっちゃいます! そうすると、貴方以外全滅する可能性もあります」

 俯き加減でボソボソと喋る由比が、珍しく大きな声で話し且つ自分を睨んできたので、禍津日神は目を丸くする。自己主張をせず、相手に合わせるだけの人間だと思っていたが、どうやら違うようだ。

 禍津日神「つまり一旦ここは奴らに任せろと」
 由比「はい。それに、この話が終わったら本編が再開します。人を死なせるわけには行きませんっ」
 禍津日神「成程なるほど。確かに。我としても遊び相手がいないのはつまらぬ。貴様の考えには納得できるな」

 由比「あと戦いの場では、自分の立ち位置を把握するのも重要です。僕たちが、あの場所でも戦えるかと問われれば……」
 美祢「まあ無理だろうな。俺はコマリのボディーガードとして、コイツの隣にいるのが最善策だろう」
 コマリ「そうだね。つまり私たちは宇月さんが言った通り、ステイするのが良い」

 コマリ「だけど……他の人たちが戦っているのに、何もできないのはなんか嫌だなあ」

 宇月たち霊能力者組は、現在もロボット―討伐Gメンロボと対峙中だ。禍津日神の発言のせいで、飛鳥が攻撃を発動するタイミングがずれてしまった。

 飛鳥はロボットの攻撃を回避することが出来ず、鉄製のアームによって数メートル先に飛ばされる。彼女が立ち上がるまでの時間を稼ぐため、宇月と飛燕がロボットに立ち向かっていた。

 ロボット「ガァアアアアアアアアアアア」
 宇月「【操心術!】」
 ロボット「!? ……(飛燕の方に向かっていく)」
 宇月「よし。って、いだああああああ!!??」

 宇月の能力である操心術は、長時間使い続けると頭痛や腹痛を引き起こしてしまうと言うデメリットがある。頭の中を駆け巡る鈍い感覚に、宇月は顔をしかめた。

 飛燕「大丈夫っすかセンパイ!?」
 宇月「……なんとか……ヒエ、そっち行ったで!」
 飛燕「ハイ!」


 ロボット「お掃除……しマす!」
 
 飛燕はロボットの攻撃を右に飛んで回避すると、ダッと右足を踏み込んで再び空を舞う。そして着地点が敵の頭上と重なると、両腕を前に突き出した。

 飛燕「【謁見】!髑髏!」

 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
 
 飛燕が詠唱すると同時に、黒い靄が彼の体から発生する。その靄から出てきたのは、体長約二メートルもある大きな骸骨だった。
 骸骨はガシャガシャと骨を鳴らしながら空中から落下。物理的に押しつぶされたロボットの頭部は破損。空いた穴から中の絡繰りが出てくる。

 ロボット「ブッ……ブスブスッ……」
 飛燕「飛鳥、いいぞ!」
 飛鳥「OK(よろよろと起き上がって)BANG!」

 飛鳥の指の先から発生したエネルギー砲が、ロボットにトドメの一撃をくらわす。正面から攻撃を食らった鉄の塊は、その後起き上がることはなかった。


 ★ミッション・コンプリート★

 アナウンス(正鷹)「お、やるぅ。みんなお疲れ! これにてすべてのミッションが達成されました! 突き当りのシャッターを上げます。出口はその先にあるから、安心して通ってください!」


 霊能力者一同「ふぅー」
 傍観者一同「ふわああああああ(感嘆のため息)」
 

 コマリ「すご……すごいよトキ兄! あの人たち、あっという間に敵を倒しちゃった!(目をキラキラさせて)」
 美祢「そ、そうだな。あっという間にじゃなかったけど、皆強いな」
 コマリ「漫画の登場人物みたい。いいなあ、かっこいいなあ! 後でサイン貰おっかなああ」
 美祢「なんで芸能人扱いなんだ。って、そんなに身を乗り出すなコマリ。まだいいって言われてないだろ!」

 こいと「はー、何とかなりましたねえ飛鳥さん!わ、わたし上手にできていましたかっ?(飛鳥の体から出る)」
 飛鳥「うん。ばっちりだったよ。僕の方こそごめんなさい、無理言って。ありがとうございました」
 


 飛燕「はぁ、はぁ、はぁ。やっと呼び出せた! ったく、見ろよこの手!(両腕を髑髏に見せる)」

 飛燕の両腕には、肘から手首にかけて血の線が引かれていた。

 飛燕「さっきから貧血でフラフラするし…もっと早く来いや……。炎狐と蜘蛛爺は制限時間切れでもう呼び出せねえし……。なんで今日こんな遅かったんだ?」
 髑髏「誰ガ行コウカッテ、モメマシタ」

 どうやら、飛燕と契約している妖が、謁見権を競い合っていたらしい。最初に出現した炎狐は周りの意見を聞かず飛び出してしまったようだ。蜘蛛爺は長年の付き合いなので、あっさり召喚できたが。
 
 飛燕「はぁ……って、う゛!?(頭を押さえて)い、痛ッ」
 宇月「あ、ごめん。ヒエに術かけてたから、それ解いたんや。どう? 体調とか平気か?」
 飛燕「は、はい。なんとか。平気っス!」

 美祢「(待って、あの骸骨喋れるんだ。すげえな)」

 ~憑きもんメンバー、全員でシャッターへと向かう~

 コマリ「お、お疲れ様です皆さん! す、すごかったです!(扉から出て)」
 宇月「おーコマリちゃん。美祢と恋人つなぎしたんやって? どうや、上手く行ったか?」
 コマリ「え、えと、まあ、はい。ていうか宇月さんも壁ドンしてませんでした?」
 宇月「あ、あぁー……うーん(目をそらす)」


 由比「い、いとちゃんっ! ぼ、僕のこと覚えてるかな」
 こいと「!? 由比っ」
 由比「ごめんね、いとちゃん。沢山言いたいことがあるけど、伝えるのはまだまだ先になりそう。いつかちゃんと、本編でも話すから」

 こいと「ううん、ううん。(ブンブンと首を振って)由比が元気そうでよかった! 待ってるよ、わたしも頑張るからっ」
 由比「うん、約束。お互い頑張ろう。指切り」
 こいと「ふふふ。また、一緒に笑えますように(小指を重ねる)」

 飛燕「あーあ、これ終わったらまた怒涛の毎日だぁ。うわ、冬休みの課題あるじゃん。マジだるいんだけど……しかもACEの研修もあるし」
 飛鳥「僕も色々やることが増えそう。はぁ」

 美祢「まぁ、たまにはこういう日も悪くないな」
 コマリ「そうだね。皆に会えたのも、逆憑きの効果かな。はは、だったら全然嫌な体質じゃないね」
 美祢「俺は迷惑してるけどな」


 アナウンス(正鷹)「それではみなさん、お憑かれ様でした――っ。次からは本編に戻りますので、またよろしくお願いします!」

 むう「只今本編修正中です。ちょっと文章が変わってたりするから、ご了承ください。話の展開はあんまり変わらないから安心してね。それではまた次回! ばいばい!」


 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編終了&本編修正中】 ( No.76 )
日時: 2023/12/25 16:45
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 視点変更ルーレットをやった結果、コマリ視点になました。
 書きやすいし良かったかも(・・?
 あと本編修正・終了しました。変更した個所は、第一章です。
 今冬なのに、本編ではまだゴールデンウイーク明け。
 本編再開です。
 ―――――――――

 〈コマリside〉

 番飛鳥つがいあすかちゃんが転校してきてから早一週間。私は彼女と一緒に行動することが増えた。
 席が前後なので授業では頻繁にペアになるし、選択科目は同じだし。その上、なんと委員会や掃除場所まで一緒になっちゃったの。

 先生は「たまたまだよ」って笑っていたけれど……。うむむ、これも逆憑きの効果かしら。
 でも、最近私の悪運体質はだいぶ落ち着いているんだよね。

 というのも一か月前、私は同居している高校生・トキ兄のいとこから、魔除けの腕輪を貰ったんだ。お風呂に入る時以外はつけとけって言われてたので、毎日肌身離さず持ち歩いているんだけど。

 この腕輪、本当にすごい。毎日起きていたポルターガイストはぴたりと止み、突然雨が降ることも知らない人に突然声をかけられることも無くなった。よって、比較的安定した生活を送れているんだ。

 でも、私は『嫌なことが立て続けに起こる』のが普通だったわけで。未だ、些細な出来事も「これって……」って疑ってしまうんだよね。

 さて。話は変わまして。
 私は現在学校から歩いてニ十分ほどの距離にある自習OKのファミレスに、飛鳥ちゃん、そして幼なじみである杏里たちと来ている。

 今日は土曜日だったんだけど、学校がある日でね。午後は授業がないから、皆で勉強会も兼ねてご飯を食べに行こうってことになったんだ。
 ちなみに中学生は家族の同伴がないと買い食いできないため、杏里のお母さんが同行してくれている。ありがとう、おばさん。

「コマちゃん、そこの古文の読み方間違ってるよ?」
 対面に座る杏里が、テーブルに広げた私のノートを指さす。

「え? どこどこ?」
「上達部。うえたつべ、じゃなくて上達部かんだちめって読むんだよ。この前の授業でやったじゃん」

 もう、と頬を膨らませる杏里に対して、私は真顔。横に置いていた筆箱の中から消しゴムを取り出し、無言で回答を消していく。
 なんで部で『め』って読むんだろう。うーん謎だ。

「福野くんも、そこの英作文間違ってる」

と言ったのは、私の右隣でオレンジジュースを飲んでいた飛鳥ちゃん。  
 腰に巻いた学校指定のセーター、緩めた黒色のネクタイ。半袖Tシャツの下には紺色の薄手のヒートテックを着ている。

「え、どこ?」
「ほらここ。I going to play game this weekend.これ、なんて書こうとしたの?」
「え、『私は今週末ゲームをする予定です』って」

 飛鳥ちゃんは真剣な顔。

「be動詞が抜けてるよ。be+going to~で、○○するつもりだ・○○する予定だになる。このままだと『です』部分が抜けていることになっちゃう。Iとgoingに入る単語を考えてみて」
「えーっと。そうだ、am忘れてた」
「正解。よくできました」

 流石、元律院附属中。教え方が丁寧で無駄がない。彼女のワークブックや教科書は、テーブルの奥に閉じて重ねてある。
 なんとこの子、ファミレスに来てから数十分で今日出された課題を全部解いちゃったの。全教科合わせて、六つくらいはあったのに。

「飛鳥ちゃんすごいね。難しい問題もスラスラ解けてさ。先週やったゴールデンウイーク明けテストも満点だったじゃん」

 私はシャーペンの頭で頭を掻きながら、ちょっと不貞腐れて言う。
 自分もあれくらい素早く問題を解けたらいいのになあ。一問解くのに三十分かかるようじゃ駄目だよね……。

「そんなことないよ。僕の場合は友達が居なくて、ずっと勉強してただけだから」と飛鳥ちゃんは笑い、顔の前で両手を振った。

「人付き合いが苦手でさ。小1から小6まで、友達が出来なかったんだよね。その寂しさを埋めるために勉強してたの。中学入って話す人は出来たけど、あんまり気を許してなかったな」

 そういえば転校した日、学校に馴染めなくて公立中学に移ったって言ってたっけ。勉強が好きだから点数が取れているのかなと思っていたけど違ったんだね。

「そうなんだ。ごめんね、なんか」
「いいや。大丈夫だよ。今はちゃんと話せる友達がいるしね」
 飛鳥ちゃんの笑顔には、暗い影が落ちていた。
 
 ——小1から小6まで、友達が出来なかったんだよね。

 私も、同じような経験をしたことがある。
 逆憑きの対処法も分からず、頼れる人間もいなかったあの時期、自分の世界は黒一色に染まっていた。
 仲良くなった友達は、ほとんど引っ越した。運動会や遠足、体育祭、卒業式は全部雨だった。娘のせいで家の修理代は馬鹿ならない。自分が存在しているだけで、周りの人間が不幸になる。

 いっそ、死のうかな。と考えた日もあった。
 だけど今年の春、お父さんがアパートを紹介してくれて。トキ兄と出会って。私の生活は変わった。

『お願いします! 私の逆憑きを直してください! いい妖怪見つけてくださいお願いしますううううう!』

 トキ兄と初めて会った日、私は部屋の扉を開けた彼の足にしがみついて、泣きながら頼み込んだ。

『っ!? 何だお前!? はなれっ、はなっ』
『迷惑をかけるのは重々承知をしているのですが、わが家を倒壊させるわけにもいかないんですうううううううううう! この後このアパートも半壊させるかもしれませんけど……』

『なにそれ怖ッ。ちょ、半壊させる奴と一緒は流石に無理なんだが』
『う。うぅ……』
『うわ。泣くな! 分かった、分かったから。とりあえず話聞くから!』
 
 想えば、トキ兄には色々と我慢させてしまっているよね。幸い台風が直撃することはなかったけど、ポルターガイストが起こるだけでも十分怖かっただろう。
 
「私も沢山の人に迷惑かけてるから、その気持ちは分かる」
「そっか。月森さんも色々苦労してるもんね」
 飛鳥ちゃんはトレーに並べられたフライドポテトを頬張る。

 ………って、あれ? 今の発言、なんかおかしくなかった?
『月森さんも色々苦労しているもんね』。色々苦労しているんだね、じゃない。『苦労しているもんね』だ。

 飛鳥ちゃんはこんな風に、まるで私の過去を知っているかのような口ぶりで話すことが度々ある。
 転校初日にも、『嫌なことが起こらないといいね』と言っていた。図書当番で一緒になった日は、私に妖怪大辞典をお勧めしてきた。

 これは、偶然? それとも彼女は、私のことを知ってる?
 もしかして過去に会ったことがあるのかな。珍しい苗字と名前。一度会ったら忘れることはなさそうだけど……。

「ねえ、飛鳥ちゃん。私と飛鳥ちゃんって、昔会ったことあったっけ?」
「なんで?」と飛鳥ちゃん。
「だって。いかにも私のことを知ってそうな言い方だったじゃん。ちょっと不思議だなって思ってさ」

 幼稚園が同じだったとか? いや、一個下の学年にも知り合いはいたけど、番なんて苗字の子はいなかった。
 転校した友達ではないよね。そもそも歳が違うし。
 スーパーやデパートで見かけたとか? けど、それだけで私が苦労していることが分かるものなのだろうか。もしそうならエスパーとしか……。

 恐る恐る右隣を見る。
 飛鳥ちゃんは、「ふふっ」と妖艶に笑い、テーブルに頬杖をついた。綺麗に磨き上げられた爪に照明の光が当たる。

「どっちだと思う? ていうか、どっちなら月森さんは安心するの?」

 

『うん』でも『いいえ』でもない返答に、私はただただ目を白黒させるしかなかったのでした。

 ――――――――――
 
 ※次回に続く。
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.77 )
日時: 2024/01/06 11:16
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 【お知らせ】
 テスト勉強であまり更新できません。
 よろしくお願いいたします。

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.78 )
日時: 2024/01/06 11:18
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)

 〈コマリside〉

 「なんてことがあったんだよね」

その日の夜。家に帰った私は夕ご飯のチャーハンを頬張りながら、今日のことをトキ兄に相談した。
トキ兄は私のボディーガード。よって、私は彼に少しでも違和感を感じる出来事があれば遠慮なく話すよう言われている。こいとちゃんの件もあり、私たちは前以上に会話をするようになっていた。


「ふーん。つまりその、飛鳥ってやつが怪しいってこと? うわ、なにこの豆腐!? なんで三角形なんだよ」
「半分に切れって言われたから」
「斜めに切ろうとするやつ始めて見た。うわ、ネギも繋がってるし!こっちの大根は短冊みたいだし。お前なあ……」

 
 トキ兄はお盆の上に置かれた味噌汁を飲む。ちなみにこの味噌汁に入っている具は私が切ったものだ。おかげで無残な形になったけれど、結局食べるんだから問題ない。問題ない、はず。


「そういえば、俺が今バイトしてるAⅭEって事務所に、飛燕っていうやつがいるんだけど。番って苗字だったよ」
「え、そうなの?」
「確か双子の妹居るって言ってたっけ。待って。どっかに書類が」

 トキ兄は茶碗をお盆の上に置くと、部屋の後ろの方へかけて行く。部屋が狭いので、棚に入らなかったモノが奥に散乱している。彼はそこをゴソゴソ漁り、一冊の冊子を取って戻ってきた。

 灰色の表紙で、タイトルには『AⅭE メンバー表』とある。
 トキ兄はメンバー表をペラペラとめくり、一番最後のページを開いて私に差し出した。

 社員さんの顔写真が紙面いっぱいに印刷されている。例えるなら、卒業アルバムみたいな。

「ほら、ここ。番飛燕つがいひえん
「あ、ほんとだ。漢字も一緒」

 トキ兄の知り合いだと言う飛燕くんは、活気の良さそうな顔をしていた。童顔で肌が白い。水色の髪の先っぽは寝癖で外側に跳ねている。

「宇月の後輩らしくてさ。アイツと一緒に話しているのをよく見かけるよ。バイトに行った時も『こんにちは!』って大きな声で返してくれてさ。なんか、犬みたいだよな」

「ふうん。飛鳥ちゃん、双子のお兄ちゃんいるって転校初日に言ってたし……。飛燕くんの妹なのかな? 」

 あ。AⅭEっていうのは、霊能力者の育成施設らしい。政府非公認の組織で、一般人にその情報は公表されていない。AⅭEの事務所には結界が張られており、関係者以外の侵入を防いでいる。

 トキ兄は宇月さんの紹介で、AⅭEのお手伝いに行くことになったらしくてね。週三回、いとこさんと電車に乗ってバイトに行くんだ。

 バイト内容は部屋の掃除や書類整理、結界の調整とかだったかな? 結界の調整って、どうするんだろう。聞きたいけれど、企業秘密で詳しいことは教えてくれないんだ。

「飛燕と一応LINE繋がってるけど、聞く?」
「でもなんて答えればいいの? 下手なこと言ったら私まで怪しまれちゃうよ」
「妹さんがお世話になってます、でいいんじゃね? そこから徐々に質問して情報を引き出していこう。怪しくなかったらそれでいいし」
「そ、それでいいのかなあ……」

 トキ兄は自分のズボンのポケットからスマホを取り出し、私を見る。スマホケースも蛍光色のピンク。触れていいのかダメなのか、未だに分からない。ピンク好きなの?って、言っていいのかしら。

 トキ兄の指が、通話ボタンに当たる。プルルルル……プルルルル……とコール音が三回なった後、電話の奥でブブッとノイズ音がした。

『はい。番です』
「あ、飛燕くん? 俺、美祢だけど」

『お――――――ーっ、時常センパイ! どうしました?』
「お前、何してた?」
『俺すか? 任務終わりで、今事務所のシャワー室出たところです!』

「……そうなのか。悪いな、いきなりかけて」
『いえいえ!もうドライヤーも使いましたんで!』

 飛燕くんの声は、私にも聞こえるほど大きかった。声量が大きいのと、良く声が通るのと、口調が明るくハキハキしているのとで、とても聞きやすい。

「ちょっと話がしたくて」
『? あ、シフト合わなかったですか?』

「いや、シフトはいいんだけど。知り合いがお前と話したいって言ってて。なんでも、お前の妹と同じクラスらしいんだよ。それで、世話になってるって挨拶したいらしくて」

『あ、そうなんスねすいません! わざわざ!』
「OK。じゃあ、変わるわ」

 トキ兄はスマホを耳から離すと、私に差し出し軽くうなずいた。
(よ、よし。行くぞ)と、ゴクリとつばを飲み込む。
 怪しまれないように、自然に会話をするんだ。頑張れ私!

「あ、あの、こんにちは。わ、私、月森コマリと言います……。あ、あの、妹さん……飛鳥ちゃんに、お世話になってます」

『―――――』

「あ、あの? き、聞こえてますか……??」

 ―――――――――

 次回に続く。



 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.79 )
日時: 2024/01/06 11:32
名前: りゅ (ID: vHHAQ2w4)

素敵な小説ですね!(⋈◍>◡<◍)。✧♡
更新頑張って下さい!

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.80 )
日時: 2024/01/11 18:32
名前: むう (ID: F7nC67Td)

……(つд⊂)ゴシゴシ
……( ゚д゚)ハッ!
……(;つд⊂)ゴシゴシ


え??????
夏の大会と冬の大会どっちも入賞してる??

更新全然してないのに? 嘘…
あ、ありがとうぅぅううう!!!

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.81 )
日時: 2024/01/13 16:29
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)


 【コンテスト入賞!ありがとうございます/重要なお知らせ】


 こんにちは、こんばんは。または初めまして。むうと申します。
 この度、2023年冬★小説コンテストで拙作「憑きもん!」が銀賞を受賞しました。
 本当にありがとうございます。

 実はわたくし・むうは現在、長時間小説を書くことが出来ません。
 過去に色々ありまして、小説を書くこと・何かを想像すること・自分の力で発表することがトラウマになりました。

 その色々というのが、昨年の9月くらいからポツポツと発生しまして。
 その時は、丁度夏の小説大会が開催されていましたね。
 夏をカキコで過ごして、乗り越えられるかな?と思ってましたが、現実はそう簡単に進まない。

 下がるメンタル、欠如していく想像力、湧かない気力。
 プロットを作る気力も、現在はありません。

 「あれ、私って今までどうやって小説書いたっけ?」と藻掻く毎日。
 文字を打つけれど、すぐに疲れて途中で断念してしまいます。本編を読んでくださった方ならわかると思うのですが、第3章→第4章で文字数がグンと下がっています。

 実は特別編公開あたりからこんな感じなんですよ。
 なので、もしかすると前作・「カオスヘッドな僕ら」のように、途中で更新を停止するかもしれません……。

 むうは、嬉しかったです。
 しんどいしんどいって言いながら書いてるのに、まだ見て下さる方がいて。

 小説書くのやめようかなーとも、考えていたんですよ。
 というのも私は通っている精神科の心理テストで、「性格の気質上、こういった公の場で活動することが極端に苦手である」「先が見えないものを想像する力は同年代の子供と比べて極端に低い」と判断されたんです(泣)

 マジで向いてねえなって、凹みました……。
 でも一度憧れてしまったから、諦めることが出来ないんです。


 小説を書きたい。
 上手くなくても良いから楽しんで書きたい。
 動け右手っ(叫び)

 
 申し訳ございませんが、しばらく小説更新ををお休みさせてもらいます。
 その期間に多くの物事を経験し、メンタルを強くしたいです。
 現在、様々な方に協力を頂いて、ゆっくり精神状態を回復させている状況です。

 続きを書けるかどうかは分かりませんが、更新してたら『むうが一生懸命書いたんだな』と思ってください。1000字書くのも辛いんです!

 小説は書けないけれど、文章を打つことは好きなので、たまに雑談掲示板の自スレで独り言を呟いています。良ければそちらもよろしくお願いします。

 
 2024年1月13日 むうより