コメディ・ライト小説(新)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【特別編終了&本編修正中】 ( No.76 )
- 日時: 2023/12/25 16:45
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
視点変更ルーレットをやった結果、コマリ視点になました。
書きやすいし良かったかも(・・?
あと本編修正・終了しました。変更した個所は、第一章です。
今冬なのに、本編ではまだゴールデンウイーク明け。
本編再開です。
―――――――――
〈コマリside〉
番飛鳥ちゃんが転校してきてから早一週間。私は彼女と一緒に行動することが増えた。
席が前後なので授業では頻繁にペアになるし、選択科目は同じだし。その上、なんと委員会や掃除場所まで一緒になっちゃったの。
先生は「たまたまだよ」って笑っていたけれど……。うむむ、これも逆憑きの効果かしら。
でも、最近私の悪運体質はだいぶ落ち着いているんだよね。
というのも一か月前、私は同居している高校生・トキ兄のいとこから、魔除けの腕輪を貰ったんだ。お風呂に入る時以外はつけとけって言われてたので、毎日肌身離さず持ち歩いているんだけど。
この腕輪、本当にすごい。毎日起きていたポルターガイストはぴたりと止み、突然雨が降ることも知らない人に突然声をかけられることも無くなった。よって、比較的安定した生活を送れているんだ。
でも、私は『嫌なことが立て続けに起こる』のが普通だったわけで。未だ、些細な出来事も「これって……」って疑ってしまうんだよね。
さて。話は変わまして。
私は現在学校から歩いてニ十分ほどの距離にある自習OKのファミレスに、飛鳥ちゃん、そして幼なじみである杏里たちと来ている。
今日は土曜日だったんだけど、学校がある日でね。午後は授業がないから、皆で勉強会も兼ねてご飯を食べに行こうってことになったんだ。
ちなみに中学生は家族の同伴がないと買い食いできないため、杏里のお母さんが同行してくれている。ありがとう、おばさん。
「コマちゃん、そこの古文の読み方間違ってるよ?」
対面に座る杏里が、テーブルに広げた私のノートを指さす。
「え? どこどこ?」
「上達部。うえたつべ、じゃなくて上達部って読むんだよ。この前の授業でやったじゃん」
もう、と頬を膨らませる杏里に対して、私は真顔。横に置いていた筆箱の中から消しゴムを取り出し、無言で回答を消していく。
なんで部で『め』って読むんだろう。うーん謎だ。
「福野くんも、そこの英作文間違ってる」
と言ったのは、私の右隣でオレンジジュースを飲んでいた飛鳥ちゃん。
腰に巻いた学校指定のセーター、緩めた黒色のネクタイ。半袖Tシャツの下には紺色の薄手のヒートテックを着ている。
「え、どこ?」
「ほらここ。I going to play game this weekend.これ、なんて書こうとしたの?」
「え、『私は今週末ゲームをする予定です』って」
飛鳥ちゃんは真剣な顔。
「be動詞が抜けてるよ。be+going to~で、○○するつもりだ・○○する予定だになる。このままだと『です』部分が抜けていることになっちゃう。Iとgoingに入る単語を考えてみて」
「えーっと。そうだ、am忘れてた」
「正解。よくできました」
流石、元律院附属中。教え方が丁寧で無駄がない。彼女のワークブックや教科書は、テーブルの奥に閉じて重ねてある。
なんとこの子、ファミレスに来てから数十分で今日出された課題を全部解いちゃったの。全教科合わせて、六つくらいはあったのに。
「飛鳥ちゃんすごいね。難しい問題もスラスラ解けてさ。先週やったゴールデンウイーク明けテストも満点だったじゃん」
私はシャーペンの頭で頭を掻きながら、ちょっと不貞腐れて言う。
自分もあれくらい素早く問題を解けたらいいのになあ。一問解くのに三十分かかるようじゃ駄目だよね……。
「そんなことないよ。僕の場合は友達が居なくて、ずっと勉強してただけだから」と飛鳥ちゃんは笑い、顔の前で両手を振った。
「人付き合いが苦手でさ。小1から小6まで、友達が出来なかったんだよね。その寂しさを埋めるために勉強してたの。中学入って話す人は出来たけど、あんまり気を許してなかったな」
そういえば転校した日、学校に馴染めなくて公立中学に移ったって言ってたっけ。勉強が好きだから点数が取れているのかなと思っていたけど違ったんだね。
「そうなんだ。ごめんね、なんか」
「いいや。大丈夫だよ。今はちゃんと話せる友達がいるしね」
飛鳥ちゃんの笑顔には、暗い影が落ちていた。
——小1から小6まで、友達が出来なかったんだよね。
私も、同じような経験をしたことがある。
逆憑きの対処法も分からず、頼れる人間もいなかったあの時期、自分の世界は黒一色に染まっていた。
仲良くなった友達は、ほとんど引っ越した。運動会や遠足、体育祭、卒業式は全部雨だった。娘のせいで家の修理代は馬鹿ならない。自分が存在しているだけで、周りの人間が不幸になる。
いっそ、死のうかな。と考えた日もあった。
だけど今年の春、お父さんがアパートを紹介してくれて。トキ兄と出会って。私の生活は変わった。
『お願いします! 私の逆憑きを直してください! いい妖怪見つけてくださいお願いしますううううう!』
トキ兄と初めて会った日、私は部屋の扉を開けた彼の足にしがみついて、泣きながら頼み込んだ。
『っ!? 何だお前!? はなれっ、はなっ』
『迷惑をかけるのは重々承知をしているのですが、わが家を倒壊させるわけにもいかないんですうううううううううう! この後このアパートも半壊させるかもしれませんけど……』
『なにそれ怖ッ。ちょ、半壊させる奴と一緒は流石に無理なんだが』
『う。うぅ……』
『うわ。泣くな! 分かった、分かったから。とりあえず話聞くから!』
想えば、トキ兄には色々と我慢させてしまっているよね。幸い台風が直撃することはなかったけど、ポルターガイストが起こるだけでも十分怖かっただろう。
「私も沢山の人に迷惑かけてるから、その気持ちは分かる」
「そっか。月森さんも色々苦労してるもんね」
飛鳥ちゃんはトレーに並べられたフライドポテトを頬張る。
………って、あれ? 今の発言、なんかおかしくなかった?
『月森さんも色々苦労しているもんね』。色々苦労しているんだね、じゃない。『苦労しているもんね』だ。
飛鳥ちゃんはこんな風に、まるで私の過去を知っているかのような口ぶりで話すことが度々ある。
転校初日にも、『嫌なことが起こらないといいね』と言っていた。図書当番で一緒になった日は、私に妖怪大辞典をお勧めしてきた。
これは、偶然? それとも彼女は、私のことを知ってる?
もしかして過去に会ったことがあるのかな。珍しい苗字と名前。一度会ったら忘れることはなさそうだけど……。
「ねえ、飛鳥ちゃん。私と飛鳥ちゃんって、昔会ったことあったっけ?」
「なんで?」と飛鳥ちゃん。
「だって。いかにも私のことを知ってそうな言い方だったじゃん。ちょっと不思議だなって思ってさ」
幼稚園が同じだったとか? いや、一個下の学年にも知り合いはいたけど、番なんて苗字の子はいなかった。
転校した友達ではないよね。そもそも歳が違うし。
スーパーやデパートで見かけたとか? けど、それだけで私が苦労していることが分かるものなのだろうか。もしそうならエスパーとしか……。
恐る恐る右隣を見る。
飛鳥ちゃんは、「ふふっ」と妖艶に笑い、テーブルに頬杖をついた。綺麗に磨き上げられた爪に照明の光が当たる。
「どっちだと思う? ていうか、どっちなら月森さんは安心するの?」
『うん』でも『いいえ』でもない返答に、私はただただ目を白黒させるしかなかったのでした。
――――――――――
※次回に続く。
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.77 )
- 日時: 2024/01/06 11:16
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
【お知らせ】
テスト勉強であまり更新できません。
よろしくお願いいたします。
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.78 )
- 日時: 2024/01/06 11:18
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
〈コマリside〉
「なんてことがあったんだよね」
その日の夜。家に帰った私は夕ご飯のチャーハンを頬張りながら、今日のことをトキ兄に相談した。
トキ兄は私のボディーガード。よって、私は彼に少しでも違和感を感じる出来事があれば遠慮なく話すよう言われている。こいとちゃんの件もあり、私たちは前以上に会話をするようになっていた。
「ふーん。つまりその、飛鳥ってやつが怪しいってこと? うわ、なにこの豆腐!? なんで三角形なんだよ」
「半分に切れって言われたから」
「斜めに切ろうとするやつ始めて見た。うわ、ネギも繋がってるし!こっちの大根は短冊みたいだし。お前なあ……」
トキ兄はお盆の上に置かれた味噌汁を飲む。ちなみにこの味噌汁に入っている具は私が切ったものだ。おかげで無残な形になったけれど、結局食べるんだから問題ない。問題ない、はず。
「そういえば、俺が今バイトしてるAⅭEって事務所に、飛燕っていうやつがいるんだけど。番って苗字だったよ」
「え、そうなの?」
「確か双子の妹居るって言ってたっけ。待って。どっかに書類が」
トキ兄は茶碗をお盆の上に置くと、部屋の後ろの方へかけて行く。部屋が狭いので、棚に入らなかったモノが奥に散乱している。彼はそこをゴソゴソ漁り、一冊の冊子を取って戻ってきた。
灰色の表紙で、タイトルには『AⅭE メンバー表』とある。
トキ兄はメンバー表をペラペラとめくり、一番最後のページを開いて私に差し出した。
社員さんの顔写真が紙面いっぱいに印刷されている。例えるなら、卒業アルバムみたいな。
「ほら、ここ。番飛燕」
「あ、ほんとだ。漢字も一緒」
トキ兄の知り合いだと言う飛燕くんは、活気の良さそうな顔をしていた。童顔で肌が白い。水色の髪の先っぽは寝癖で外側に跳ねている。
「宇月の後輩らしくてさ。アイツと一緒に話しているのをよく見かけるよ。バイトに行った時も『こんにちは!』って大きな声で返してくれてさ。なんか、犬みたいだよな」
「ふうん。飛鳥ちゃん、双子のお兄ちゃんいるって転校初日に言ってたし……。飛燕くんの妹なのかな? 」
あ。AⅭEっていうのは、霊能力者の育成施設らしい。政府非公認の組織で、一般人にその情報は公表されていない。AⅭEの事務所には結界が張られており、関係者以外の侵入を防いでいる。
トキ兄は宇月さんの紹介で、AⅭEのお手伝いに行くことになったらしくてね。週三回、いとこさんと電車に乗ってバイトに行くんだ。
バイト内容は部屋の掃除や書類整理、結界の調整とかだったかな? 結界の調整って、どうするんだろう。聞きたいけれど、企業秘密で詳しいことは教えてくれないんだ。
「飛燕と一応LINE繋がってるけど、聞く?」
「でもなんて答えればいいの? 下手なこと言ったら私まで怪しまれちゃうよ」
「妹さんがお世話になってます、でいいんじゃね? そこから徐々に質問して情報を引き出していこう。怪しくなかったらそれでいいし」
「そ、それでいいのかなあ……」
トキ兄は自分のズボンのポケットからスマホを取り出し、私を見る。スマホケースも蛍光色のピンク。触れていいのかダメなのか、未だに分からない。ピンク好きなの?って、言っていいのかしら。
トキ兄の指が、通話ボタンに当たる。プルルルル……プルルルル……とコール音が三回なった後、電話の奥でブブッとノイズ音がした。
『はい。番です』
「あ、飛燕くん? 俺、美祢だけど」
『お――――――ーっ、時常センパイ! どうしました?』
「お前、何してた?」
『俺すか? 任務終わりで、今事務所のシャワー室出たところです!』
「……そうなのか。悪いな、いきなりかけて」
『いえいえ!もうドライヤーも使いましたんで!』
飛燕くんの声は、私にも聞こえるほど大きかった。声量が大きいのと、良く声が通るのと、口調が明るくハキハキしているのとで、とても聞きやすい。
「ちょっと話がしたくて」
『? あ、シフト合わなかったですか?』
「いや、シフトはいいんだけど。知り合いがお前と話したいって言ってて。なんでも、お前の妹と同じクラスらしいんだよ。それで、世話になってるって挨拶したいらしくて」
『あ、そうなんスねすいません! わざわざ!』
「OK。じゃあ、変わるわ」
トキ兄はスマホを耳から離すと、私に差し出し軽くうなずいた。
(よ、よし。行くぞ)と、ゴクリとつばを飲み込む。
怪しまれないように、自然に会話をするんだ。頑張れ私!
「あ、あの、こんにちは。わ、私、月森コマリと言います……。あ、あの、妹さん……飛鳥ちゃんに、お世話になってます」
『―――――』
「あ、あの? き、聞こえてますか……??」
―――――――――
次回に続く。
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.79 )
- 日時: 2024/01/06 11:32
- 名前: りゅ (ID: vHHAQ2w4)
素敵な小説ですね!(⋈◍>◡<◍)。✧♡
更新頑張って下さい!
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.80 )
- 日時: 2024/01/11 18:32
- 名前: むう (ID: F7nC67Td)
……(つд⊂)ゴシゴシ
……( ゚д゚)ハッ!
……(;つд⊂)ゴシゴシ
え??????
夏の大会と冬の大会どっちも入賞してる??
更新全然してないのに? 嘘…
あ、ありがとうぅぅううう!!!
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【本編再開!】 ( No.81 )
- 日時: 2024/01/13 16:29
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
【コンテスト入賞!ありがとうございます/重要なお知らせ】
こんにちは、こんばんは。または初めまして。むうと申します。
この度、2023年冬★小説コンテストで拙作「憑きもん!」が銀賞を受賞しました。
本当にありがとうございます。
実はわたくし・むうは現在、長時間小説を書くことが出来ません。
過去に色々ありまして、小説を書くこと・何かを想像すること・自分の力で発表することがトラウマになりました。
その色々というのが、昨年の9月くらいからポツポツと発生しまして。
その時は、丁度夏の小説大会が開催されていましたね。
夏をカキコで過ごして、乗り越えられるかな?と思ってましたが、現実はそう簡単に進まない。
下がるメンタル、欠如していく想像力、湧かない気力。
プロットを作る気力も、現在はありません。
「あれ、私って今までどうやって小説書いたっけ?」と藻掻く毎日。
文字を打つけれど、すぐに疲れて途中で断念してしまいます。本編を読んでくださった方ならわかると思うのですが、第3章→第4章で文字数がグンと下がっています。
実は特別編公開あたりからこんな感じなんですよ。
なので、もしかすると前作・「カオスヘッドな僕ら」のように、途中で更新を停止するかもしれません……。
むうは、嬉しかったです。
しんどいしんどいって言いながら書いてるのに、まだ見て下さる方がいて。
小説書くのやめようかなーとも、考えていたんですよ。
というのも私は通っている精神科の心理テストで、「性格の気質上、こういった公の場で活動することが極端に苦手である」「先が見えないものを想像する力は同年代の子供と比べて極端に低い」と判断されたんです(泣)
マジで向いてねえなって、凹みました……。
でも一度憧れてしまったから、諦めることが出来ないんです。
小説を書きたい。
上手くなくても良いから楽しんで書きたい。
動け右手っ(叫び)
申し訳ございませんが、しばらく小説更新ををお休みさせてもらいます。
その期間に多くの物事を経験し、メンタルを強くしたいです。
現在、様々な方に協力を頂いて、ゆっくり精神状態を回復させている状況です。
続きを書けるかどうかは分かりませんが、更新してたら『むうが一生懸命書いたんだな』と思ってください。1000字書くのも辛いんです!
小説は書けないけれど、文章を打つことは好きなので、たまに雑談掲示板の自スレで独り言を呟いています。良ければそちらもよろしくお願いします。
2024年1月13日 むうより