コメディ・ライト小説(新)
- 2月の旅鳥 ( No.3 )
- 日時: 2023/01/23 15:14
- 名前: 此雨真狐 (ID: /m6A2I47)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13593
3月10日(木)
「行かないで(前編)」
最近二人との間に距離を感じる。
私はいつも荒海知華ちゃんと一緒に総武線で帰っていた。知華ちゃんは面白く、私と同じ腐女子であったため、よくおしゃべりをしながら帰っていた。ところが、6年になって、2人の間に山岸さんが入ってきた。山岸さんはいつも、別の電車で帰っているのだが、知華ちゃんと一緒に帰りたいから、とかなり遠回りになる総武線を選ぶようになった。最初は山岸さんも知華ちゃんとくだらない話をしながら一緒に帰るのがよくてそうした行動をとっているのだと思っていた。しかし、違った。実は私は山岸さんと同じ学校であるのだが、ある日、クラスメイトに自慢話をしているのを見てしまった。
「私、ちかちゃんの親友なんだ!」
荒海ちか。それは、子役だった。しかも、父も母も芸能界ではとても有名な人で、ちかちゃん自身も有名で、よくテレビCMにも出ている。私たちが2、3年生の頃には紅白歌合戦にだって出た。どこの幼稚園、小学校でもちかちゃんたちの歌は少なくとも1度はかかったであろう。そういう有名人であった。
そう、山岸さんにとって知華ちゃんはアクセサリーだったのだ。「λ1」にいったことも両親が東大の医学部だということも、全て彼女にとってはアクセサリーでしかなかった。
それからも山岸さんは知華ちゃんにぐいぐいと迫っていった。知華ちゃん自身の芸歴から、お父さんの学歴、家元、お母さんの映画出演歴まで。事実、知華ちゃんさえも山岸さんのいないところでは怖い人だと言っていた。さらに山岸さんは知華ちゃんが他の人と話している時、無理矢理会話に割り込んで自分のペースにしたりと、段々エスカレートしていった。
私も2人との距離を感じざる追えなくなっていた。
3人で帰る途中も、駅のプラットフォームを歩く時も
歩幅は嘘をつかないから。