コメディ・ライト小説(新)

黒雪姫ものがたり#プロローグ1 ( No.1 )
日時: 2023/03/05 16:14
名前: 鏡花 (ID: 0.f4Pw3t)

黒雪姫ものがたり#プロローグ1

その日、俺の部屋では小さな戦いが繰り広げられていた。真っ白な対戦相手…別名、宿題。俺はそいつに向かって鉛筆を、
「うおおおおオラァぁ!!!」
じゃなくて剣をつきさした___

ジジジ…ジジジジ…

…半径500メートル以内に、ハンバーグがある。あたしは気配を感じ取った。聞こえる、聞こえる。
『わたくしハンバーガーになるのよ!ついにっ』
『なのはさんに食べてほしいなぁ』
ハンバーグの声が!
「今行くからぁぁぁっ!」
あたしは食堂に向かってダッシュした___

ジジジジ…ジジジッ…ジジ


※登場人物を追加します
・叶芽
カタコトでしゃべる、オッドアイの黒猫。尻尾に芽が生えている

黒雪姫ものがたり#プロローグ2 ( No.2 )
日時: 2023/03/05 16:16
名前: 鏡花 (ID: 0.f4Pw3t)

黒雪姫ものがたり#プロローグ2
カシャッ、カシャッ
シャッター音が響いて、視界がカメラのフラッシュに遮られる。歩くボクのまわりにキャーッと黄色い声を上げるファンの方々…
「っていう夢をみてたのに理人の起こされちゃったんだよねぇー」
「「「やかましいわ!!!」」」

ジジジッ…ジジジ…


映像がとぎれた。さっきまで映像を映し出していた
「鏡」が命令されたのだ。
「あ~~もうっ、なんで私の部下たちは変人ばかりなのよぉぉっ、もっとまともな子はいないの!?鏡ぃぃ答えなさいよぉぉ!」
「あぅぉえああ」
鏡を揺さぶって大声を上げる女がいた。
ぶん、ぶんと女のツインテールがゆれる。
「類は友を呼ぶということでしょうね」
ぼそっとつぶやいたのは、他でもない。鏡だ。
「類は友を呼ぶって何よ?」
「さあね、検索してみてください」
「分かったわ…ってそんなことはいいの、優秀な子を探しなさい!今すぐ!亅
「はいはい」
このままでは私は…。その女__黒雪姫は、下唇をかみしめた。

黒雪姫ものがたり#1「何この猫…」 ( No.3 )
日時: 2023/03/11 13:16
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#1「何この猫…」
にゃああああぉん にゃああああああぉん
「……………。亅
ついてくる。昇降口を降りたあとから。ここまで。ずーーーーっと、ついてきている。
迷い猫、かな?
ちらっとカーブミラーを見てみると、黒いやせ細った猫がついてきているのが見えた。うるんだ瞳で泣きそうになりながらついてきてる___と、思っていた。
しかし。
碧色と朱色のオッドアイはくもっていて、
『あーめんどくせー』というセリフが聞こえてきそうな顔をしていた。
はぁ…何この猫…
残念ながらわたしは動物が好きではない。走り去ろうとした、その時だった。
すとん、となにかの穴に右足が入った。それだけじゃない。
「みらの!」
「!?」
え………?
この猫がしゃべったの………?わたしの名前を…
今、たしかに猫の口は動いていた。み、ら、の、と。
どういうことなの!?
しかし、たしかめる前に私の意識はぷつんととぎれた___
「みらの、黒雪姫ものがたりが始まるよ!」

黒雪姫ものがたり#2「黒雪城?」 ( No.4 )
日時: 2023/03/11 13:22
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫#2「黒雪城?」
耳もとで、声が聞こえる。
「…だか……………あ…ってんの!」
誰の声だろう?
「えーー……………すか…」
「…フ………………」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!」
低い、叫び声が耳に入ってくる。かと思ったら。

ビシャァっ

「うわああァァっつーう!?」
アッツい!!
わたしは勢いよくはねおきた。え何!?
見ると,わたしが着ていた制服に、茶色いシミができている。
「この子が新しい部下ね」
向かい側に、知らない女の人が座っている。その人だけではなかった。机の上には黒猫が。となりには赤髪の男の子。金髪の男の子と茶髪の女の子もいる。
もう一人の女の人はあわわわわーと言いながらわたしの制服を拭いてくれた。
みんな美形で豪華な服を着ていて、思わずオーラにたじろぐ。
「やーっと起きたか亅
「えっとあの…ここって…」
部屋をぐるりと見渡す。
赤いカーペットの上には金ピカの机や椅子。天井にはシャンデリアがぶらさがっている。鎧がたくさん置いてあるのも気になった。
ん、と赤髪の男の子が答えた。
「白雪姫ワールドの、黒雪城だぜ」
……これはきっと夢だ。わたしはそう思うことにした。

黒雪姫ものがたり#3「変な人たちですね」 ( No.5 )
日時: 2023/03/11 13:26
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#3「変な人たちですね」
「こちらは新しい部下の穂村未来乃よ。」
…ツッコミどころが満載すぎて困る。しかしいちいち反応していたらダメだ。世界が終わる。
わたしは目の前にいる3人と一匹に頭を下げた。
「こんにちは…」
…と、私の手を誰かがつかんだ。
「よろしくね、あたしはなのは!!好きな食べ物は食べ物で、好きな人は食べ物で、好きな色は食べ物だよっ!みらのんは何が好きなの?ちなみに今日の夕飯はね、」
「ストーーーーップぅっっ!!」
わたしのことを部下といった人が、両手で茶髪の女の子、なのはさん?の口をふさいだ。なのはさん…半分以上は何を言っているかわからなかったけど、陽キャなんだね。そこは理解した、うん。
続いて、金髪の男の子がフサァッを掻きあげて。
「ハーイ!ボクは梨久だよ!よろしくね未来乃!不安だろうけどきっと大丈夫!ここにいればすぐにボク色に染まってしm」
「あんたもストーーーップ!!」
うわぁぁ…。目の前のナルシストボーイにわたしはちょっと引いていた。美少年なのは間違いないんだけどねぇ…。この人たちはすごくよくしゃべる。
「われは叶芽!みらの、よろしくね」
ぴょん、と例の黒猫がわたしのひざに飛び乗ってきた。
…うん、これは夢なんだからね!
「俺は瀬央理人。言っとくがここの世界はきついからな?宿題がアホみたいに多い。」
赤髪の男の子は、現実離れしたイケメンだ。
うん、なるほど。この人は勉強できない系か。
そして、さっきからストップをかけていたツインテールの女の人。
「わたしは黒雪姫よ。あなたの上司だからよろしく。
さあ頑張って白雪から王子を奪い返すわよ~!」
「で、わたしはその白雪だよ~」
わーパチパチ、ととりあえず拍手をした。そして感想を述べる。
「ここの人たちはみんな変な人たちですね。」
「そうでしょう!?あなたは分かってくれるのね、未来乃!」
いや、あなたもですよ。

黒雪姫ものがたり#4「夢じゃ、ない?」 ( No.6 )
日時: 2023/03/11 13:30
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#4「夢じゃ、ない?」
なのはさんは『パスタに呼ばれた気がするッ』と食堂へ猪突猛進。
梨久さんは「鏡を見てくるよ』と謎のポーズでどこかへ。
白雪姫さんは『あーわわー』とどこかへ。
黒雪姫さんは無言でどこかへ行ってしまった。
…本当に、あの人たちの行動は意味不明すぎる。
「どうした穂村?ボケーっとして。見えない幽霊と会話してんの?」
そして、一人だけずっと足を組んですわっている瀬央 理人。…この人は暇人なんでしょうか。
赤みがかかった髪に、目鼻立ちの整った顔。現実ではなかなかご覧になれないイケメン、なのは間違いないんだけど…
「ちょっと考えごとしていただけです。ちなみにわたしは幽霊を信じておりません。」
「へぇー。ってかさ、タメ口で良いんだぜ?キャラかくしてんじゃね?」
一言多いっ。
顔はいいのに、中身は大幅マイナスだ。ここの人たちみんなそうだけど!
「私が普通にしゃべったらまともになるだけです。あなたはつぶれると思いますけど、ツッコミによって。」
ちょっと毒をまぜるつもりで言ってみる。
「あぁぁ!?穂村おまえ、ちょっと本性現しやがったな!その前にお前がこの剣によってズタズタになるぜ。ふははは!」
「ふははは!じゃないですよ、ちょっと剣を振り回さないでください!警察に通報しますよ!」
「なんだ警察って。」
「そこから!?」
この世界には警察というものが存在しないのか。じゃあこの世界はどうやって成り立っ………。
そこまで考えたところで、わたしはハッとした。
瀬央くんは、口の右端だけつりあげて、ニヤリと笑った。気づいたか、と。
わたしは今、普通にしゃべっていた。心の中で、思ったように。
「俺は本性もいいと思うぜ!その達者な口で俺の嫌いなヤツをこらしめてほしいな。そう、まずは
俺が万引きしたときにチクった5丁目の爺さんから。」
「ぜんぜんわたし役立ってなくて傷つく…。犯罪はダメですよ。」
はめられた。瀬央くんって頭悪そうなんだけど、ずるがしこいのかもしれない。
はああああっ、とわたしは大きく長ーいため息をついた。もうあきらめた、キャラを隠すことを
「もうこれ夢だし…いいや、普通に話そ…。」
わたしがそう言うと。瀬央くんは、……なぜか固まった。
そして、私に向かって手を伸ばし…
パーンッ、と頬に平手打ちををした。
「!?」
とっさのことに声が出ない。え、は、はぁ?
右の頬がジンジンと痛………。
痛い?
分かった、気がする。瀬央くんの意図。
「これは…夢じゃ、ない?」




~あいさつ~
はい、こんにちは!毎日ひまな鏡花です!読んでくださっている人ありがとうございます。ダメダメ初心者鏡花は、誤字に気づいたりすると修正しているのでそこのところをよろしくお願いしますね!
すみません…

黒雪姫ものがたり#5「理人目線」 ( No.7 )
日時: 2023/03/11 13:33
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#5「理人目線」
「これは…夢じゃ、ない?」
穂村がそう言って、ぽかん、と口を開けた。
バカか!
「気づかなかったなんてバッカじゃねーの、バカすぎるだろ。こんな長くてやけにリアルな夢見るかふつう?マジでバカだな!」
俺がそう言っても、穂村はまだボケーっとしている。
そしてなぜか天井を見つめた。
…こいつ大丈夫か?
しばらく口をパクパクさせて、
「わたし帰る」
か細い声で、そう言った。

……ん?帰る?

「はぁぁ!?ぜってームリだろ!ここの城は警備がぎっしりいるんだぞ、おまえにはムリムリ。おとなしく仕事してろ。」
俺がそう言うと、穂村は少し目を泳がせた。
「……でも、瀬央くんだってやっぱり」
何かを言いかけて、これは言っていいのかと悩むしぐさをする。
何だこいつ?
「おい早く言え。気になって夜しか眠れないだろ。」
「いやー夜だけ眠れば十分だと思いますよー」
穂村は俺にそうツッコんだ。そして何でもないです…とまた天井を見つめた、
まあ…こいつの本性は意外と怖かったからな。どうせ悪口だろう。
「まあ、とにかく!わたしはカンベンです!何としても帰りますから!」
「無理だろうな。」
俺は即答した。すぐに穂村の顔がゆがむ。
「黒雪姫さまは一度決めたことはやり直さない。どうせ失敗が恥ずかしいんだろうが。ツンデレだからな。」
「そ、そんなっ!」
「だから…」
俺はポケットに手を突っ込んだ。
中から取り出したものを、穂村の前にぶら下げて見せる。
「奥御殿のカギだ。黒雪姫さまと話をつけてくるといい。」
パッと、穂村の顔がはれた。俺は足元で石像のように固まっている叶芽に声をかける。
「叶芽は賢い猫なんだ。こいつに案内してもらえ。…叶芽、頼んだぞ。」
俺の言葉が分かったのか分かっていないのか、知らないが叶芽はみゃおおん、と鳴いた。
「多分無理だが、まあ頑張るといい。」
穂村の気持ちは分からなくもない。…俺だって……昔は。
穂村は少し驚いたような顔をしたが、ありがとう、と素直に言った。
本性ばれてから穂村はころっころ表情を変えているな。面の皮がはがれてしまったか。
ちょっと機嫌がよさそうに、穂村は。

「叶芽ちゃんがいるのは心強い。なんたって、叶芽ちゃん人間の言葉話しますもんね。」

……………。
…………は???
さっきまで少し応援していた気持ちが一瞬で吹き飛んだ。
「叶芽は話さないぞ?猫が話すなんてあるもんか。」
すると叶芽が、みゃおん!といつもより明るい声で鳴いた。
「ほら話しました!今、みらの!っていってたでしょう?……って、なんですかその目は!どうしてかわいそうな人を見るよな目でこっちを見るんですか!」
「その顔でオカルトマニアとは。現実逃避はほどほどにな。」
「むっっっかつっく!!さっきのありがとう返してください!」
ガタンっ、と椅子を立った穂村はあさっての方向を向き、叫んだ。
「ここの人たちはみんな変人!!」
何だとおまえ!





黒雪姫ものがたり#6「叶芽ちゃん…」 ( No.8 )
日時: 2023/03/11 13:06
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#6「叶芽ちゃん…亅
「みらの、左!」
「あっうん…。」
叶芽ちゃんの後ろを、パタパタとついていくわたし。
これは…夢じゃないんだよね。すごく変な感じ。
叶芽ちゃんが一文字しゃべるたびに「うえぇ!?」、わたしが叶芽ちゃんに一文字しゃべるたびに「ひゃうぁぁ!?」……と、そんな具合。
そして、瀬央くんには帰る、帰ると言ったものの、まだ夢だと思ってしまう自分もいる。
「みらの、どこいくの?」
「うえぇ!?」
…おっと。ボケーっとしていたら間違えて右に曲がってしまった。
あわてて追いかける私に向かって。
「そっちはいかないで。すごく、すごく危ないからね。」
叶芽ちゃんが、暗い目をして、そう言った。
ゾーっと背中に怖気が走る。
叶芽ちゃんのオッドアイが一瞬、黒に包まれたからだ。これは相当やばいやつだ。黒い目を見た瞬間に感じ取った。わかった、と叶芽ちゃんに向かってうなずいた。


数分後…
「みらの、階段を上ったらつくよ。たぶん一分くらいで。」
ふう…やっと着くみたいだ。叶芽ちゃんと話しながら来たり、ムダに豪華で警備が並ぶ廊下を走ったり、
わたしの頭はもう爆発寸前だ。気がめいってしまった。
「ここまでありがとう叶芽ちゃん!」
「叶芽でいいよ」
「ありがとうね、叶芽!」
すると。叶芽はぱーっと明るい顔をして、くるん、と空中で一回転した。嬉しそうにふりまわしているしっぽに、
「……!?」
…植物の芽、みたいなものがくっついていた。そして、あんなにがりがりだった細いおなかにも、ちょっとお肉がついている気がする。
…………。
……………うん。
「じゃあ行ってくる!」
もうこんなワケの分からないところ、一刻も早く飛び出してやるわ!

黒雪姫ものがたり#7 ( No.9 )
日時: 2023/03/16 13:55
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#7「呪いはやめて!?」
階段の下から見上げてみると、大きな金色の扉が見えた。≪奥御殿≫というプレートがかかっている。
あれが例の部屋かぁ。
ちょっと緊張してきた。もしも説得に失敗したら、わたしの人生は終わったようなものだ。こんなワケの分からない「しらゆきひめわーるど」?の「くろゆきじょう」?で変人と過ごすとか無理むりムリ。
それはカンベンだからねっ!

「さっさと帰ってやるーっ!」

わたしは一段、一段と階段を上り、スピードを上げていった。




そして、一分前後で登り切れた___はず、だった。
「えっ…ハァ、なんで…⁉」
いくら上っても、部屋に近づけない。
まるで、わたしがずっと同じところを走っているよう…。
どういうこと…!


そう思ったときに、背後に気配を感じた。
おそるおそる振り向くと__黒い猫が顔を出していた。
「叶芽ぇ!」
叶芽、いいところに!助けに来てくれたんだねぇ!

しかし、黒い猫は微動すらせず私をずっと見つめてきた。闇を宿した、黒い瞳で。

「ネコ違いだった~!!!亅

「ちょっと静かにしてくれない?亅
枯れた声がした。
あたりを見渡しても、猫だけが立っているだけ。
ぬうぅぅ?こいつもしゃべる型の猫か。

「そこの猫さん、ちょっ…。」

「未来乃!」
足元がふわりとして、宙に浮いたような心地がした。
「黒雪姫さん!」
黒雪姫さんは鏡のようなものをわたしに向けている。しばらくし、「チッ」と舌打ちをした。
「逃げられたか…。未来乃、感謝しなさい!私がいなければ、あなた今頃…わぁっ!?亅亅
私の顔を見て、思い切りのけぞった。
どうしておどろくのか。
わたしはただ、こんな世界に連れてきた誰かさんを思っているだけなのに。

「未来乃?えぇーっと…顔が怖いわよ?怒ってる??」
「そんなことはございません。」
「いや絶対怒ってるわよね⁉ねえ何かあった?」

黒雪姫さんは、なぜか数歩、後ずさって愛想笑いを浮かべた。

「…あ~…、あっそうだ!未来乃、私に用があるんでしょ?仕事熱心ねぇ、何でも聞いてちょうだい!」
えっ。この人は何を言っているのだろう。
「日本に帰るために来たんですよ?」
黒雪姫さんの動きが止まった。
「えっとなになんて言ったのかな未来乃うーん空耳だよねきっとねそうだよねー。」
ぶつぶつぶつぶつとつぶやいて、…目を白黒させた。
「噓でしょう⁉ねえ未来乃、嘘だと言って!亅

「本当に決まってるじゃないですか。」

「いぃーやぁーあーぁぁぁっ!!絶対に!絶対に帰らせないからぁぁぁーっっ!」
絶対に!絶対に帰るからぁぁぁーっ!








「じゃあ未来乃、座って頂戴。」
「お邪魔します。」
言うまでもなく、奥御殿はゴージャスだった。小学校の教室ほどもある、あり得ない大きさの机が真ん中に置かれていた。ピアノや、カーペットやこの部屋はどんな量のお金でできているんだろう…?
黒雪姫さんはそこに、シルバーのふちの鏡をどーんっ、と雑に置いた。
「『白雪姫』という童話は読んだことがあるかしら?」
「……は?」
いきなり何を言い出すんだろう、黒雪姫さんは。
「あの~その話は今は。」
「いいから、聞いて。絶対に役立つはずよ。」
はぁ。わたしはとりあえず、黒雪姫さんの話を聞くことにした。




白雪姫という童話があるわよね。
ざっくり言うと…
白雪姫の美しい見た目に嫉妬した継母が、白雪姫に毒リンゴを食べさせた。
死にかけたけど、王子のキスによって生き返って、幸せに暮らしましたよーって話。ちなみに、それはあくまでも童話っていうだけで王子様の本命は私よ!
それで、私は童話を守る係であり白雪のライバル。だけど恋のライバルってだけでね、戦うほどではないわ。
でもね。

「大変だぁーっ!継母を撃退したのに、新しいライバルが現れたぞーっ!」
「何ですとぉ⁉私たちで白雪姫様をお守りせねば……。」

なんか、白雪のところの部下、〈七人の小人〉が勘違いしたのよね。私が敵キャラだーって。
白雪は「黒ちゃんはそんなんじゃないですぅ」とかなんとか言ってくれたらしいけど、効果ナシ。
次々と私のところに現れる暗殺者。
だからね、部下を作ったのよ。守ってくれる部下。
一人目がなのは。

「この子はですね、成績は優秀ですよ。成績は。」

ある人に紹介されたのだ。
二人目が梨久。

「ボクは平和主義だからね!この腕を生かす場が欲しかったのだ!」
自分から申し出てきた、もと一般人。

三人目は理人だ。

「あんたを殺しに来た。」

もともと暗殺者だった。あの時は10歳くらいで、驚いたわよ。殺されかけたんだもの。でも、説得に成功し部下となったわ。

そうして私は部下を手に入れた。
でも、それが間違いだったわ。さらに勢力を拡大したぞーとか言われて、童話はめちゃくちゃ。
そのスキに童話を乗っ取るやつらがたくさん現れたの。さっきの猫もそうね。
しかも、部下たちもあんなありさま。
私はもう死んじゃう!と鏡に相談をしたの。
そしたらね……。
「日本という国にいる穂村未来乃がいいと思いますよ~。この子は自分でまともと言っていますし、それでいて能力もある。ダメダメなあなたたちをきっとカバーしてくれます!」
それがあなた。
つまり、あなたは選ばれしものなのよ…。









黒雪姫さんは、語り終わって満足そうに息をついた。
「どうだった?」
「え?」
黒雪姫さんに話しかけられ、ハッと我に返った。

「どうだったって言われましても……途中から聞いてなかったので。」

役に立つからーとか言っていたから途中までは耳をかたむけていたのだ。途中までは。
なんだけど、話が長いしワケわかんないし役立たなそうだったから、やーめた、ってね。

「何ですってぇぇぇ未来乃ぉぉぉっ⁉」

黒雪姫さんが立ち上がって叫ぶ。
何ですってぇぇじゃなくて早く帰らせてほしいのですよ、こちらとしては。
「ねぇ今の話を聞いて何も感じなかったの?かわいそうな黒雪姫さん、わたしが救ってあげたいとかなんとか。」
「ないですね。」
「ないのぉぉぉっ⁉」
あるわけがない。
「あのーいい加減帰っていいですか?宿題がまだ終わってないので」
「待って!ねえ待って頂戴!ここにいれば宿題なんて気にしないでラクラク♪なのよ!いいでしょう?」
「嘘はいけませんよ!」
瀬央くんが言ってたじゃん、宿題がアホみたい多いって。
くぅぅっ…、と黒雪姫さんが悔しそうに歯ぎしりをした。
やっと帰れる…。



そう思った直後だった。

「いやーでもあなた、黒雪姫様に助けていただいたのですよ~?感謝の気持ちを持っていないのですかね。」

余計な、余計な、余計すぎる一言が聞こえてきたのは。
「あらー!たまにはいいこと言うじゃないの、鏡!」
今の余計な一言の発信源は、鏡だった。
さっきの、雑に置かれていた鏡。
………。
うん………。
またまた変なキャラが登場しましたね。
…ツッコんだって無駄だ。どうせわたしはここを出ていくのだから。
「黒雪姫様、穂村未来乃に呪いをかけましょう!いくら帰ろうとしてもここを出られない。いくら離れようとしても黒雪姫様たちと縁が切れない呪いを!」
鏡がシャレにならないことを言ってきた。
冗談じゃないよっ、絶対やめろ!!
「へぇ~まあまあいいじゃないの。はやく未来乃に呪いをかけて頂戴。」
「やめてぇぇ!?」
「行きます!」
わたしと、鏡の声が重なる。
黒い煙が立って、周りが見えなくなった。







黒雪姫ものがたり#8「みらいののおへや」 ( No.10 )
日時: 2023/03/11 18:53
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#8「みらいののおへや」
どっしーん!
「…いっつぅ……。」
わたしは腰をさすりながら立ち上がる。
えぇーっと…こんにちは、呪いにかかった穂村未来乃です。
帰ろうとしても帰れない、縁を切っても切れない。
…という、最悪サイテーな呪いに…。
わたしは、部屋の中をぐるりと見渡した。
床は干し草。ボロボロな壁は剥がれかけていて、クモの巣なんかついちゃってる。
「………。」
また、ホコリをかぶった机は脚が折れ、今にも倒れてしまいそうだ。

………………………おい。

なんだこの部屋は。
ドアの方をちらりと見ると…。
❴おへや ほむら みらいの❵と鉛筆でうっすら書いているのに気がついた。
なぬぅ!?
『みらいの』じゃなくて『みらの』なんだけど…、まあそこは許せる。
お部屋、穂村未来乃ってこれわたしの部屋じゃないよねぇ!?
さすがに違うよね…?
ドアノブを引っぱると。
《ピーーッ、ピーーーーッ…魔術がかかっているため、ドアは開きません。》
どこからか音声が。
あ~~い~つ~ら〜!!!
わたしにここで過ごせと!?想像すると寒気がした。
冗談じゃない!シンデレラじゃあるまいし。
こんなところにいたら体が腐っちゃうよ!
「誰か開けなさぁぁぁい!!!」
叫ぶ私の大声に耐えかねたのか、パチっと電気が勝手に消えた。



[あいさつ]
読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
前回は長文失礼いたしました。
これからはちゃんと読みやすく書きます!
あと、目次も付けました。