コメディ・ライト小説(新)

黒雪姫ものがたり#5「理人目線」 ( No.7 )
日時: 2023/03/11 13:33
名前: 鏡花 (ID: xJUVU4Zw)

黒雪姫ものがたり#5「理人目線」
「これは…夢じゃ、ない?」
穂村がそう言って、ぽかん、と口を開けた。
バカか!
「気づかなかったなんてバッカじゃねーの、バカすぎるだろ。こんな長くてやけにリアルな夢見るかふつう?マジでバカだな!」
俺がそう言っても、穂村はまだボケーっとしている。
そしてなぜか天井を見つめた。
…こいつ大丈夫か?
しばらく口をパクパクさせて、
「わたし帰る」
か細い声で、そう言った。

……ん?帰る?

「はぁぁ!?ぜってームリだろ!ここの城は警備がぎっしりいるんだぞ、おまえにはムリムリ。おとなしく仕事してろ。」
俺がそう言うと、穂村は少し目を泳がせた。
「……でも、瀬央くんだってやっぱり」
何かを言いかけて、これは言っていいのかと悩むしぐさをする。
何だこいつ?
「おい早く言え。気になって夜しか眠れないだろ。」
「いやー夜だけ眠れば十分だと思いますよー」
穂村は俺にそうツッコんだ。そして何でもないです…とまた天井を見つめた、
まあ…こいつの本性は意外と怖かったからな。どうせ悪口だろう。
「まあ、とにかく!わたしはカンベンです!何としても帰りますから!」
「無理だろうな。」
俺は即答した。すぐに穂村の顔がゆがむ。
「黒雪姫さまは一度決めたことはやり直さない。どうせ失敗が恥ずかしいんだろうが。ツンデレだからな。」
「そ、そんなっ!」
「だから…」
俺はポケットに手を突っ込んだ。
中から取り出したものを、穂村の前にぶら下げて見せる。
「奥御殿のカギだ。黒雪姫さまと話をつけてくるといい。」
パッと、穂村の顔がはれた。俺は足元で石像のように固まっている叶芽に声をかける。
「叶芽は賢い猫なんだ。こいつに案内してもらえ。…叶芽、頼んだぞ。」
俺の言葉が分かったのか分かっていないのか、知らないが叶芽はみゃおおん、と鳴いた。
「多分無理だが、まあ頑張るといい。」
穂村の気持ちは分からなくもない。…俺だって……昔は。
穂村は少し驚いたような顔をしたが、ありがとう、と素直に言った。
本性ばれてから穂村はころっころ表情を変えているな。面の皮がはがれてしまったか。
ちょっと機嫌がよさそうに、穂村は。

「叶芽ちゃんがいるのは心強い。なんたって、叶芽ちゃん人間の言葉話しますもんね。」

……………。
…………は???
さっきまで少し応援していた気持ちが一瞬で吹き飛んだ。
「叶芽は話さないぞ?猫が話すなんてあるもんか。」
すると叶芽が、みゃおん!といつもより明るい声で鳴いた。
「ほら話しました!今、みらの!っていってたでしょう?……って、なんですかその目は!どうしてかわいそうな人を見るよな目でこっちを見るんですか!」
「その顔でオカルトマニアとは。現実逃避はほどほどにな。」
「むっっっかつっく!!さっきのありがとう返してください!」
ガタンっ、と椅子を立った穂村はあさっての方向を向き、叫んだ。
「ここの人たちはみんな変人!!」
何だとおまえ!