コメディ・ライト小説(新)
- Re: p「art」ner ( No.3 )
- 日時: 2023/05/25 17:26
- 名前: 絃葉 (ID: umLP3brT)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13737
【2話 橘 陽風水】
「橘さん」
リュックを背負って帰ろうとしたところ、担任の先生に呼び止められた。名前は確か……井田先生。
「何のご用でしょう?」
「学校にはもう慣れたかしら。友達、できた?」
柔らかい、いい先生スマイルで聞いてくる。1日で学校に慣れるワケないじゃないですか……。
もちろん、そんなことは口に出すわけもなく。
「はい、みんな優しくしてくれたので」
「あら、良かったわ。先生とも仲良くしましょうね」
うげっ。
と思いつつ、ありがとうございましたー、と頭を下げた。
「あっ、橘〜!」
「日向……」
今日1日で聞きあきた声が、背後からささる。隣の席の、とにかくよくしゃべる日向だ。すると、どこからか、微笑ましげな視線を感じる。
「部活動見学、あるでしょ。美術部がおすすめ!」
「……え……部活動見学なんて、ないけど」
「あ、言ってなかったっけ」
割り込んで来たのは、先生だ。
「うちの学校は、部活動が必須なの。今日は見学一日目。」
楽しんでね、と悪びれずに微笑む先生。
何それ……聞いてない。
私が口を開くときにはもう、二人はその気になったようだ。
「橘、みんないい人だから安心して!」
「橘さん、美術室はこの教室の真下よ」
「……」
そんなこんなで、私は美術室の前に立っている。日向樹、なかなかの行動力。それとも私がちょろいのか。
引き戸ではなく、ぽつんと壁にドアがくっついている。
ドアノブを握る。
回して、力を込めて、引くと……。
ぱしゃっ、と。
水がかかった。今日初めて着たセーラー服の、スカートに。上履きへと流れ落ちる、冷たい、青くにごった水。
乾いた音をたてて、バケツが廊下を転がっていく。
「おぉぉぉっとぉぉ!!」
目の前で女の人がよろけて倒れた。
ぽかんと開いた口がふさがらない。あまりのことに目をしばたたく。何が起こった……?
「も〜、部長ったら」
隣に立っていた日向が、笑いながら女の人、部長さんを起こした。
「橘、ごめんねぇ……。たぶん部長が洗ってくれるよ」
「あ、別に……」
立ち上がった部長も、うむ、とうなづいた。
「すまなかった。責任を持って丁寧に洗おう。では脱いでくれたまえ」
「……は」
「部長、それはセクハラでは」
「ん、おっと。失礼した。」
部長さんはメガネをおしあげた。思ったよりクールな姿だ。
そして、どうして水をこぼしたのか説明をしてくれた。途中で話がどこかに飛んでいったり、大変だったけれど、なんとなく分かった。
絵の具を使っている最中、水が濁ったので替えようとしたら、見えないなにかに足を引っ張られて……ナンチャラカンチャラ。
ということらしい。
……。
全く分からないし分かりたくもないけど、分かったことがある。日向だけではない。部長も、びっくりするほど変人だ。美術部、大丈夫か。
「あの、ジャージに着替えてきますね」
限界がくる。めまいもしてくる。
~あいさつ~
鏡花→絃葉に改名。むうにゃあ様がつけてくれました!ありがとう!
更新するの遅くてすみません……。