コメディ・ライト小説(新)

Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.19 )
日時: 2023/10/14 12:45
名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: 4VUepeYc)

《第19話》

「は!?お前、何を言ってるんだ…?」
まさか転勤してくるとは思わなかったから目が飛び出るほど驚いた。
いくらホワイトがメインとはいえ、ハッカーが大企業のお嬢様もいるらしい私立名門校に転入してしまったら…
日本の経済や政治が大ピンチに陥るのでは!
ホワイトだからって信用ならない!
「大丈夫だよ。よほどのことがない限りハッキングはしないから」
と余裕をかましている。
「お前の大丈夫は信用ないんだよ」

「まぁまぁ、落ち着いて」
そう言いながら、彼は両手を上げる仕草をしてみせる。
「柴田美織やその友人は今特進にいるけれど、一般に落ちる可能性も0ではない。その場合を考えてだよ」
俺が特進クラス、謙信が一般クラスを観察するということか。
うん…やってみてもいいだろう。
「それに、俺の学力じゃ多分一般が限界だし」
「2人で協力して観察するということか?」
「ご名答!」
そう言って無邪気な笑顔を浮かべる。
作戦の内容はだいたいわかった。

「でも、本当に…柴田美織を追うだけで俺たちの成り立ちがわかるのか?」
「さっきも言ったけど、柴田美織は本当にキーマンだ」
「……」
謙信はより1層声を潜めて言う。
「彼女、あの柴田佳奈実しばたかなみの娘だ」
「え…」
「佳奈実さんは美織が中1の時…。宮城から横浜に引っ越してきてすぐ事故死してる」
「そう…なんだ」
誰よりも真面目そうで、芯を持っている彼女の母親は既に───亡くなってしまっていたのだ。
彼女はそれからどのような人生を歩んだのだろう。
数秒の重苦しい沈黙が流れる間、彼女の人生に思いを馳せた。