コメディ・ライト小説(新)

Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.26 )
日時: 2023/12/06 12:23
名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: f9c/TndF)

《第25話》

「私が、横浜に引っ越してきたのは中学1年生に上がるときです」

当時、まだ見慣れない駅ビルに、新生活に必要なものを買いに行った記憶がある。
その時の私は新しい希望に満ち溢れていた。
引っ越したことで、私を取り巻く人々も変わる。
私のことをまだ知らない人が多い、ということはもう「神童」って言われなくて済むのかもしれない。
以前暮らしていた仙台では、ずっと周りから「神童」と呼ばれて生きてきた。
全国模試で一桁台の順位を取っていることがなぜか周囲に広がり、そう呼ばれるようになっていた。
私はそう呼ばれるのを頑なに拒絶していた。
努力して成果を出しても、大抵は「神童だから」で片付けられてしまう。
そんな環境が嫌で、毎日逃げ出したかった。
だから、お父さんが横浜へ異動になると聞いた時、心底ホッとしたのを覚えている。

誰も知らない、中学校の入学式。
私はそこで、2人の大切な親友に出会った。
それが、陽花ちゃんと杏ちゃんだ。
2人は元々、同じ小学校で仲が良かったらしい。
そこに、私も混ぜてもらえて平和な生活がスタートした。
毎日一緒にお昼ご飯も食べたし、時にはおかずを交換したりして毎日が楽しかった。
逃げ出したいなんて思わなかった。
この日々が永遠に続けばいいのにと願った。
そこにヒビが入ったのは、まだ入学してから2週間たったばかりの頃だった。

お母さんが、交通事故に巻き込まれたのだ。