コメディ・ライト小説(新)

Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.30 )
日時: 2024/04/06 15:12
名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: WZc7rJV3)

《第27話》

お母さんは、先程まであったはずの活力は消え失せ、まるで別人だった。
お母さんは、私に力を振り絞って言葉を紡ぎ出す。
「美織……」
「お母さん!しっかりして!」
「高校生になったら、星川高校に行きなさい」
私の動揺は止まらなかった。
なんで死ぬ直前に高校の話なんてするの?
いや、思い出話とかそういうのじゃないの?
お母さんは学歴なんかにこだわる人じゃなかった。
まるで人が変わってしまったようだ。

「そこの特進クラスに通いなさい。そこで、あなたの人生はきっと変わる」
「え……?」
廊下から、沙絵がすすり泣く声が聞こえてくる。
怖い、と言って廊下へ逃げ出してしまったのだった。
お母さんの手から、急激に力が抜けていく。
やがて、病室にアラーム音が響いた。

お母さんが死んだなんて、実感は湧かないままだった。
滞りなく葬儀も終わり、お母さんと別れを告げる日々は終わった。
それから毎日が変わり、1日1日を生きるのが大変だった。
やがて、学校へも行けなくなった。
初めの頃は先生も何度か来てくれたけれど、だんだん来なくなって。
その時にやっと気づいた。

大切な人がいなくなる世界なんて、怖い。
こんな世界、生きていけるのかな───と。