コメディ・ライト小説(新)

第1話 出会い ( No.1 )
日時: 2023/11/09 21:27
名前: 華憐 (ID: 21zier3A)



咲良さくら!!」


ドンっと背中を叩かれたと同時に振り返ると、似菜になが満面の笑みで駆けてきていた。


「ねーねー、ほんっっとうに行かないの?合コン。咲良がきてくれたらさ〜」

「行ーかない。私はね、忙しいんです。」

似菜の目も見ずにスタスタ歩く私を「えーーー、お願いーー」と、膨れて似菜が追いかける。
教室に入って席に座るも、なおも似菜は執拗に私を誘う。


「咲良、絶対に飲み会とかも来ないんじゃん。なんで??まさかお酒で失敗したこととかあるの??」

「そんなんじゃないよ。ただめんどくさいだけ。自己紹介とか?趣味はなんですか?とか?そういうの、なんか嫌なの」

よっこいしょ、と思わず声を出して、カバンから重たい辞書を取り出す。紙の辞書じゃないと勉強しても意味が無い、などとよく理屈の分からないことを言う教授のせいで、ほぼ毎週この苦行を強いられている。


「じゃあさ、今日もしも私が合コンでいい人見つからなかったらさ、協力してくんない?」

「協力って?」


私がきょとんとしていると、似菜は「ひーみつ!!今日の合コン終わったらね!」といたずらっぽく笑って、黒板に向き直った。
ちょうど、無精髭を生やした教授が、教壇に向かうところだった。



大学へ入学して早2ヶ月。
大学デビューという言葉も聞かれるほど、ちらほらと入学時の緊張から解かれ、浮き足立つような話が聞こえてくるようになった。


やれサークルのどの先輩がかっこいいだの、新歓祭で誰に声をかけられただの、聞き耳を立てずとも、誰かの最新スクープは何かしら耳に入ってくる。



-耳障りだった。

私にとっては。



浮き足立つみんなが見ている世界がピンク色だとしたら、私が見ている世界はきっとモノクロだ。恋に花咲く人の姿も、誰かにとって輝く存在の男性も、似菜のように楽しい時間にはしゃぐ人たちも、私にはすべてモノクロに見える。


とかく、「恋愛」というものに対して、私は関心も期待も持たないようになっていた。
いや、恋愛に対してというよりも、対人関係に対して、という方が正しいのかもしれない。


誰にもきっとわからない。伝わらない。
私には、きっとこの先もモノクロの世界だけが、広がるばかりなのだろう。