コメディ・ライト小説(新)
- Re: 桜はすぐに散るから ( No.1 )
- 日時: 2024/03/17 23:12
- 名前: 黒百合 (ID: SGjK60el)
今年も何も楽しいことがなく終わるのか。彼女も出来ないで、楽しい青春も遅れずに、ただつまらない日常を繰り返していたよな。そんなことを考える春休み、窓の外を見ていた。公園の桜が綺麗に見え、気づいたら俺は公園に向かっていた。
そういえばかなり前に見に来たような。あの時より綺麗に見える。俺はカメラを桜に向け、写真を一枚だけ撮り、確認する。写真より実物の方が美しい。
「こんにちは。桜、好きなんですか?」
後ろから声をかけられ、振り替えると、そこには桜のような見た目をした女性がいた。
「別に好きじゃないです。ただ綺麗だなって思って見に来ただけで……」
俺は正直に答える。
「知ってる?桜って、満開になってから10日から二週間で散るんだよ。儚くて美しいよね」
初耳だった。そんなに早く散るなんて。なんて儚くて美しいんだ。
「私は桜と一緒に散るんだ」
彼女は言う。俺は理解できてない。
「は?どういうこと?」
そいつの顔を見る。
「そのままの意味だよ。私は10日後に死ぬんだ。……別に知らない人が死ぬなんて、どうでもいいよね」
知らない人でも、急に死ぬなんて言われたら、どうでもいいわけないだろ。しかも10日後に死ぬとか、桜と一緒に散るとか、気になることしかない。
「君は死にたくて死ぬのか?怖いとは思わないのか?」
疑問に思ってたことを口にする。
「死にたくないし、怖いよ。でも、これは決まっていることで、私の運命なの」
理解できないが、この人を助けたいと思った。
「なぁ、したいことあるなら言ってくれ。俺が協力してやる」
その人は、口をぽかんと開き、驚いていた。
「ありがとう。でも、その気持ちだけ受け取っておくよ。だって、貴重な春休みを私なんかのために使いたくないでしょ?」
今までの俺ならここで退いていただろう。しかし、俺は楽しいことがしたい。この人といたら楽しめる気がする。
「俺は、退屈な日常に飽きていて、暇なんだよ。君に協力することで、僕も楽しいかもしれないからさ、俺と春休みを楽しもうぜ!」
そういえば名前を聞いていなかった。
「君、名前は?俺は花崎晴斗」
急にこんなことを聞かれたからか、その人は沈黙した。
「春川紗倉です。」
春っぽい名前だなと思った。
「花崎さんは、10日後までにしたいことはある?」
俺は別に何でもいい。少しでも楽しければいい。
「あ、呼び捨てでいいよ。したいこと……デートとかかな?」
デート!?そんなものしたことねぇぞ!?どうすればいいんだ。
「別に嫌だったらしなくてもいいよ」
春川が悲しそうな顔をしている。俺が先に春休み楽しもうって言ったくせに、ここで断ったらダメだろう。それに春川、清楚系で可愛くて一緒に居たいって思うし、正直に言うとデートしたい。
「……10日間、ずっとデートしよう。俺も実はしたかったんだよ。彼女が出来なくて、寂しかったから」
この発言に対して、キモいと思われてないか。こんなことを気にするなんて久しぶりだ。この感情って恋だっけ?もうずっと前のことだから覚えてないや。確か、その時もこの桜の下で……
「花崎、大丈夫?」
俺は考え事をしていた。夢から覚めたような状態になっている。
「あぁ、大丈夫。ちょっと昔のこと、思い出していただけだから」
春川は不思議そうな顔をして聞いてきた。
「どういうことを思い出したの?」
正直に答える。
「数年前、この桜の下で可愛い人を見て、一目惚れして……」
へぇ~、と興味無さそうに思ってそうな顔をしている。
「それじゃあ、もう遅いし、帰ろうか」
春川に言われ、時計を見る。いつの間にか18時を過ぎていた。帰り道、春川の顔が頭に浮かんで離れない。なぜだろうか。春川とは今日、初めて出会っただけで何もないはずなのに、どうして春川の顔が頭から離れないんだろう。夕食を食べ、ベッドに寝っ転がる。なかなか寝れなかった。頭の中に、あの人の顔が浮かんで。
__数年前の桜の木の下で
起きたことの夢を見た。
桜を見上げている少女がいる。綺麗で可愛い少女だ。
「なあ、桜の何がいいの?」
俺は少女に声をかけた。
「えっとね~、咲いている時って綺麗じゃん。落ちてくるのも綺麗なところかな?」
少女は桜の魅力を語る。
「散る時も綺麗なのが魅力ってことか?」
俺は少女に問いかける。
「うん。お母さんから教えてもらったんだけど、桜って満開になってからすぐに散っちゃうんだって。それもいいよね」
この頃の俺には分からなかった。儚さの美しさが。それよりも、俺が忘れていたことがあるじゃないか。この時に、桜がすぐ散ることを知っていた。