コメディ・ライト小説(新)

Re: 桜はすぐに散るから ( No.2 )
日時: 2024/03/19 20:47
名前: 黒百合 (ID: SGjK60el)

太陽光がカーテンの隙間から差し込む。朝になったのか。昨日のことは夢だろうか。桜と共に散る女、春川紗倉。あれ、俺の家のカーテンってピンク色だっけ?ピンク色の布団……ここ、俺の家じゃねぇな。
「おはよう」
囁くような小さい声で呟かれる。突然、綺麗な声で呟かれたので、俺は何も言えずにいる。
「花崎、朝だよ。起きてよ」
体を揺さぶれて、目が覚める。なぜ朝起きたら春川がいる?
「なんで居るんだ?」
は?というような表情で春川は俺を見る。
「私の家だから、私は居る」
確かにそうか。じゃあ、なんで俺がここに居るんだ?
「なんで俺がここに居るんだ?」
人の家に俺が勝手に入った?いや、それはないか。
「昨日のことは覚えてる?」
昨日……春川と出会って、10日間デートすることになって……。
「覚えてる」
春川がほっとしたような表情になる。
「昨日の花崎、途中からずっと上の空だったからさ、心配してたんだよね。それで急に倒れて、動かなくなったから、私が背負って、家まで連れ帰ってきた」
連れ帰ってきてくれたのか。
「春川、ありがとな」
ちょっと待てよ。俺と春川の身長は7cmぐらい差があると思う。そして体型は、どっちも痩せている。ということは、春川って、思っていたより力持ち?
「もしかして、春川って……力持ち?」
あ、こんな発言していいのか?デリカシー無いよな。傷つけたかもしれない。
「凄いでしょ。私、力に関しては自信があるんだ。花崎のこと、持ち上げられるぐらいの力はあるよ」
良かった、全く傷ついてなさそうだ。
「目、覚めてる?眠そうだけど……疲れてるなら寝てもいいよ。私の家だから好きにしていいし」
俺、女の布団に入っているのか。早く起きなきゃ。勢いよく布団から出る。
「起きたね。デート行こうよ」
そうだ。デート!忘れていた。
「どこに行くんだ?」
どこに行くか、決めてなかった。
「デート先、考えてない男はモテないよ」
冷たい目をして言われ、普通に傷ついた。すると、すぐに春川は笑顔を取り戻した。
「ねぇ、遊園地とか、行ってみたくない?遊園地でイチャイチャして……」
キラキラした目で、こちらを見てくる。遊園地か、悪くない……むしろ良い。
「行くか、遊園地!」
と言っても、チケットあるのか?買わないと行けなくないか?
「チケットある?って思ったでしょ。心配しないであるから。ペアチケットがここに。カップルなら、なんと二人で合わせて200円」
途中から通販番組みたいだな。安すぎだろ。カップルなら……カップル!?
「よし、行こう!」
水色の電車に乗って向かうことにした。窓の外に見えている景色を見つめている。これから俺は初めてのデートをするんだよな。そう思うと、緊張してきて拳を握りしめた。俺ならきっと春川を幸せにできると強く思い込むようにしている。

__まもなく、桜川崎町さくらかわさきちょう……桜川崎町。※創作の地名

電車のアナウンスが聞こえる。ついに着いてしまった。俺は春川の左手を握って、電車から降りる。春川の手の温もりが俺の心を暖める。
「私たちが住んでいる場所より空気が良いね」
春川が深く息を吸う。駅から少し歩いて遊園地に着いた。
「わぁ~。メリーゴーランドや観覧車とかあるじゃん。早く行こうよ!」
いつもは大人しい春川が、はしゃいでいる。春川に手を引っ張られて、俺たちは走る。春川が幸せになれるなら、それを支えるだけで俺は満足だ。メリーゴーランドやコーヒーカップなど定番のアトラクションに乗った。気づいたら、もう夕方だ。時計を見ると、5時だった。
「え?もうこんな時間?楽しいことは、すぐに終わっちゃうね」
楽しいことは、すぐ終わる。春川と過ごす時間も楽しいけど終わってしまうんだな。電車に乗って、俺たちの住む街へ帰る。
「バイバイ、春川」
明日も春川と過ごせたらいいな。服の袖を掴まれる。
「待って。一人じゃ寂しいから……私の家、来て」
恥ずかしそうに言っている春川が可愛すぎる。春川の家に着いた。
「よし、寝ようか。花崎がベッドで寝ていいからね」
この家に入らせてもらっている俺がベッドで寝るなんて。
「いいよ。春川がベッドで寝て」
それからどうぞどうぞと譲り合っていたが、春川がベッドで寝ることになった。俺は床で寝ることにした。明日からも春川が笑って過ごせますように、そう思いながら、俺は眠りについた。