コメディ・ライト小説(新)

Re: 桜はすぐに散るから ( No.3 )
日時: 2024/01/04 22:47
名前: 黒百合 (ID: tuakPBCn)

朝、起きるとなぜか、俺がベッドの上にいる。そして春川がいない。春川を探すために俺は、家の中を歩き回る。出ていったんじゃないよな。もし、そうだとすれば、俺の何がいけなかったんだ。そんなことを考えていると、1階から音が聞こえる。見に行くと、春川が料理していた。
「あ、花崎、来てくれたんだ。花崎が起きてくれないから、呼びに行こうとしてたんだよね」
時計を見ると11時だった。こんな時間まで寝てたのか。
「なんで、俺がベッドの上にいたのか分かる?」
疑問に思ったことを聞いてみる。
「私が起きたあと、花崎をベッドの上に投げておいたから」
ベッドの上に投げておいた!?春川が力持ちすぎて怖くなる。
「朝ごはんも出来たし、食べようか」
春川が俺をじっと見ている。
「どうしたの?」
なぜ俺を見ているのか聞いてみる。
「花崎ってよく見るとカッコいいなって思っただけ」
ドキドキして心が焦げたように熱くなった。
「春川も可愛いよ」
つい口が滑った。こんなこと言ってしまって良いのだろうか。
「えっ、ありがとう」
春川の顔が赤くなっている……可愛い。俺たちは恥ずかしがって、目を合わせられなくなっている。沈黙が続いている。俺たちは、目を合わせず食事をする。
「ねぇ、今日どこ行く?」
春川が聞いてきた。今日は考えておいた。
「季節外れかもしれないけど……海、行こう!」
俺は昨日、寝る前にずっと考えていた。
「海ねぇ……」
あれ、もしかして海嫌い?
「行きたい!けど、水着ないよ」
春川が喜んでいるが水着がないそうだ。正直、春川の水着姿が見たかったということは、置いておこう。
「水着なくても、砂浜までなら行けるよ」
そう言ったら、春川は微笑んだ。早速、海へ行こうか。今日も電車やバスを乗り継いで行く。車窓を眺めていたら、海に着いた。
「わぁ~、海だ~!」
無邪気に笑う、春川に見惚れていた。久しぶりに海に来たな。
「ねぇ、足だけなら入れてもいいよね?それなら服も濡れないから」
俺たちは、海に足を入れて手を繋ぐ。海風が少し吹いている。穏やかな波を見つめる。
「海ってどこまでも広くていいよね。私もどこまでも行きたいな……」
春川の目から涙が流れる。俺は指で顔を撫でるように、涙を拭いてあげる。
「春川、泣かないで。俺がついているから」
カッコつけた台詞を言ってしまい、恥ずかしくなる。
「顔、赤くなってるよ」
さっきまで泣いていたとは思えないぐらいに春川は笑う。
「夕焼けのせいだよ」
顔が赤いことを夕焼けのせいにする。
「違うでしょ。頬だけが赤いよ、恥ずかしがってるの?」
春川はさっきよりも笑顔になる。この愛しい笑顔を守れたならいいな。
「そう言ってる春川も顔が赤いけどね」
春川のが俺より赤くなってる気がする。
「うるさい……私も夕焼けのせいだから!」
照れている春川が可愛い。春川も夕焼けのせいにするんだ。
「俺たち、似ているかもな」
俺らは似た者同士。そう思った。
「フフッ、そうだね」
二人の笑い声が海風に乗っていく。幸せな時間がずっと続けばいいのに。それからも海風を浴びながら、波を見つめていた。
「よし、帰ろう!」
春川がそう言い、俺たちは自分たちの住む町へ帰る。
「やっぱり海って良いよね。時間を忘れられるから……」
確かに海にいると時間を忘れられる気がする。
「本当に時間を忘れられたらいいのに……」
春川は、本当に時間を忘れたいよな。だって時間さえなければ、春川はずっと生きていられるんだから。今日も春川の家に行き、前回と同じように寝る。

__また、幼い頃の夢を見た。

「あれ?この前の人だ!」
少女は俺に声をかける。
「桜、見に来たの?」
少女に問われて、そうだと言う。
「もう3日経ったけど、まだ綺麗だね」
俺は呟く。綺麗なものは、いつまでも綺麗だ。