コメディ・ライト小説(新)

day14 さやかな ( No.14 )
日時: 2024/08/14 21:31
名前: 今際 夜喪 (ID: jEJlOpHx)

 どこまでも遠く。水平線が見えるほど遠く。夜空が広がっている。天井と地上。私は夜空に挟まれていた。見上げれば星の瞬き。見下ろすと水面のようにも見えるそこで、キラキラと星々が輝いている。
 足を進める。一歩踏み出すごとに波紋が広がった。揺れる煌めく夜空。蹴り上げると水飛沫が散った。やはり足元は水面なんだろうか。否、溶けた夜空なのだろうか。わからない。ただ、そういう不思議な空間に私はいた。
 進んでも景色は特に変わらない。だだっ広い夜空の中を、私はひたすらに進んでいる。試しに走ってみると、パシャパシャと音が鳴る。どれだけ遠くを目指そうと、何処にも辿り着かない。
 なんだここ。目指す場所も無いので私はその場でクルンと回る。ステップを踏む。一歩ごとに煌めく光が散って私自身が輝いているみたいで少し楽しい。
 ふと、視界の端に誰かの姿が写った。色素の薄いセミロングに、セーラー服。白い肌を隠す湿布や包帯。見紛うはずもなく、彼女は海月(みつく)だ。力なくふらふらと歩いている。私の方を見ない。

「海月?」

 海月は返事もせずに、その場に跪く。両手を地上に伸ばして、掬い上げる。両手の中を溶けた夜空が満たしている。
 夜空。闇の中、星が含まれている。星を食べる夢を見ると死ぬ。そういう話を思い出した。
 海月は今にもその両手の中の夜空に、口をつけようとしている。

「海月、待って!」

 駆け寄って彼女の腕を掴んだ。海月の手の中、夜空はさやかな光を放っている。無理やり腕を掴んだことで、それがするりと零れ落ちていく。そうしてキラキラ輝きながら、地上に還って行った。

「何してるの海月。星を食べる夢を見ると死ぬって話、したじゃん。なのに飲み込もうとしたでしょ?」

 私の声に僅かに反応して、海月は微かに笑う。

「わかってて口をつけようとしたんだよ」
「何なのあんた。死にたいの?」
「さあ?」

 ふらふらと立ち上がった海月は、ただ笑顔を浮かべている。
 先日のリストカットもそう。海月は生きていたくないのだろうか。

「海月、もうこんなところ出よう」

 言いながら、彼女の腕を引いた。何処を目指せば帰れるのはわからないが、とにかく進もうとする。しかし、海月は動かなかった。どうしたのだろうと思って、海月の方を見る。彼女は地上をじっと見ていた。

「どうかしたの」

 海月は黙って、視線の先を指差す。
 彼女と同じように視線を落とす。地上、溶けた夜空の中。反射して私達が写っている。違う、私が写っているべき部分には海月の顔があって、海月の顔があるべき場所に私の顔が写っている。
 私達の姿が、入れ替わっている?
 慌てて海月の顔を確認するも、ちゃんといつもどおりの彼女の姿があるばかり。なのに、水面には私の顔が写っているのだから、どういうことだ。