コメディ・ライト小説(新)
- day21 自由研究 ( No.21 )
- 日時: 2024/08/26 20:46
- 名前: 今際 夜喪 (ID: QeRJ9Rzx)
「おわー!」
嫌な浮遊感ののち、ベッドから跳ね起きた。心臓がバクバクと胸を叩いている。冷や汗で背中がじっとりし、寝間着に使っていた高校の体操着が張り付いて気持ち悪い。
高いところから落ちる夢を見ると、本当に落ちたかのように錯覚して起きる。目覚めは最悪だが、こういう夢って、夢占い的には吉兆だとか言うからよくわからない。
ベッドの足元には海月(みつく)が腰掛けていて、私の顔を観察していた。
「うーむ、また夢の中で夢を見ている」
摩天楼の景色は夢。今も夢。もはや自分が何処にいるのかわからないぞ。
「わからないから寝ます!」
二度寝! 考えるのに疲れたときは二度寝に限る。
「寝ちゃうの? 糖子。ね、そういえばさ、そろそろ夏休みだよ。夏の予定でも立てようよ。八月はどっか旅行とか行こうよ、北海道とかさ」
暇そうな海月が、布団の上から私の腹を突く。煩わしくて、私は芋虫みたいにモソモソと動いた。
「ね、そういえばさ、夏休みの宿題も沢山出るよ。数学の問題沢山解かなきゃ。読書感想文も書かなきゃ。そのための読書をしなくちゃ。あと自由研究もあったよね。何を研究しようか?」
海月は相変わらず私の腹を指先で突いている。くすぐったいのでやめてほしい。布団から腕だけ出して、海月にしっしと追い払うジャスチャーを送る。
「私の自由研究、これにする。糖子のお腹の肉を突き続けて、何時間経ったら起きるのか」
「何時間も突くつもりなん? 多分、数時間後に起きるときは、突かれたから起きるんじゃなくて、眠くなくなったから起きるんだと思うけどね。てか、そろそろ突くのをやめろ」
結局根負けして私は上体を起こす。海月は嬉しそうだった。よかったね。眠い目を擦りながら、ぼんやりした頭のまま喋る。
「八月の予定? 海月、北海道行きたいとか言った? 八月の北海道、内地と変わらないくらい暑いよ」
「いいの。私、美味しい海鮮が食べたいの。海のある県に行こう。埼玉には海がないから」
「無いの? 夢の中には埼玉タワーがあったんだから、埼玉湾くらいあるのかと」
「糖子。埼玉湾の魚は美味しくないよ」
「埼玉湾はあるんだ……じゃあ自由研究は埼玉湾の魚とかにしようか?」
「糖子本気? 埼玉湾にはパルデモパルデモニョポポが出るよ」
「ぱる……なんだってえ?」
まだ夏休みに入ってないのに夏休みの宿題について考える。私達はなんとも真面目な学生だ。