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コメディ・ライト小説(新)
- day25 カラカラ ( No.25 )
- 日時: 2024/08/30 22:29
- 名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)
炎天直下。外にいればどうしたって暑い。なのに外に出るのはどうしてだろう。茹だるような暑さを五体で浴びて、夏を享受したい。なんだかんだ言って私達は夏が好きなのだ。
殺人光線降り注ぐ空を見る。空色の中を入道雲が流れていく。そこに蝉の合唱が混ざり、何処からかトマトの匂いがする。
手にはサイダーの缶。私達と同じように、表面に汗をかいて、スチール缶すら灼熱に喘いでるみたいだ。
傾け、勢い良く煽る。口内を満たす甘味と酸味と、少しの痛み。爆ぜる炭酸が喉を潤していく。キンキンに冷えた液体に、臓腑が冷やされる感触が心地良い。
五感で夏を享受して、暑さは疎ましいのに、やっぱり夏が好き。
隣を歩くセーラー服は、何やら缶の中に小石を詰めている。先に飲み干して、空き缶になったそれが手持ち無沙汰だったのだろうか。
「こら、ゴミで遊ばない」
「遊んでないもーん」
「じゃあなにしてんの」
「演奏」
缶を振ると、スチールと小石がぶつかり合ってカラカラと音がする。
「ああああああああ! 真夏のジャンボリイイイイイイ!」
カラカラカラカラカラカラ!
「うるせえ!」
「何? 選曲が駄目だった?」
「シンプルに煩いのよ、住宅路で騒がないの」
「じゃーあー」
「いや、もういいから」
「妖精! 達が! 夏を刺激する!」
「生足魅惑のマーメイドおおおお!」
カラカラカラカラカラカラ!
私達は煩くて近所迷惑だった。夏らしい曲って煩いのが多い気がする。
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