コメディ・ライト小説(新)
- Re: 逢魔が時におかえり ( No.3 )
- 日時: 2024/10/07 00:02
- 名前: mie (ID: sp0cIx.0)
【はじめまして!】
■アケミちゃん
「ねえ、今私のこと見てたよね?」
くりくりとした丸目が貴方を捉える。
単調、しかし冷淡には聞こえない声を探すと、大学生ぐらいの女性が貴方の近くに立っていた。肩までの黒髪を揺らしてくすりくすりと笑っている。
「えー、違う? あはは、そんなことないですよね。……あなた、私が見えるんだ。面白いひと」
貴方を見定めているような視線にたじろぐと、そのほのかな笑い声が一段階強まった。第一印象は"大人しそうな子"。しかし、その無感情な声色から、彼女がただ者ではない雰囲気を感じる……。
「そうだ、これ。んー……ここかな。入れておいてあげるね」
――ぱっ。ズボンをまさぐる貴方。
勝手に預けられたものを手のひらで掬った直後、貴方は悲鳴を上げた。それは人の指だったからだ。
「"私"だよ。プレゼント。……捨てたら殺しちゃうから」
■ヒギョウさま
「こんばんはなのよ!」
夜にはそぐわない甲高い挨拶に肩を揺らす貴方。
時間帯も時間帯、遊ぶ人すらいない公園の入り口で一人の子供が万歳をしていた。
こんな時間に出歩いてはいけないと諭そうとして、彼の手足に釘付けになる。――人間のものではない、雛が持つにふさわしいそれ。
「あ! ヒギョウが見えるのね? うれしーのよ! ようやくヒギョウが見えるニンゲンに会えたのよ!」
固まった貴方に構いもせず人懐こくこちらを見つめてくる、その目。異質ではないはずの存在が、なぜだかどうしようもなく異質なモノに思える。――なぜだろう?
「このカラダ、ちいこくてフベンなのよ。でも、このカラダだとたくさん構ってもらえるはずなのよ。"コドモ"だもの! えーと、ニンゲンのナマエは……」
自己紹介をする。ヒギョウと名乗る子供は、じわじわと両頬を赤色に染めた。どうやら嬉しがっているようだ。
「ナマエ! ナマエ、ヒギョウのことたくさんなでるのよ! 早く早く!」
……なでてあげようか?
■おおいさん
ぽろ、と前からガムがこぼれてきた。
手前の……男性が持ち主だろうか。そう考えた貴方は落とし物ですよと声をかける。
温厚そうな青年が目を見開いた後、「ありがと~」とガムを受けとった。
「きみ、優しいねえ。……唐揚げあげる~」
……串をいただいてしまった。
「今おれ気分いいんだあ。みっつごはん食べたから。……おやつにきみでも食べようかなあ」
……なにをいって?
「ねえ、いのちちょうだい。だめ~?」
支離滅裂だし、"いのち"が命であれば無理だ、と貴方は断る。
「そっかあ。じゃあ、いつかぜーんぶもらおっと」
残念そうにする青年にいつかもなにもないと言い放つと、「じょ~だん、じょ~だん」と微笑まれた。
――はぐらかさないで!
■旅館の求人
携帯が鳴っている。相手の名前は……文字化けしている?
故障だろうか。とりあえず出てみることにした。
――ザ、ザザ。
「死ね」
――沈黙。
いきなりの罵倒をされるほど、自分はなにかしでかしただろうか。貴方は考える。
「死ね……死ね……! お前も僕と同じように、焼死してしまえ……!」
聞き覚えのない声だ、友人ではないだろう。きみのことを知らないけれど、と質問してみる。
「当然だろ。僕もお前とは初対面だよ」
じゃあ恨み言をいわれる覚えはないけれど……。
「僕は人間全員嫌いなんだ、お前のことも当然嫌いだ! バイトにいく途中で呪いでも受けてしまえばいい!」
……とりあえず、名前だけでも教えて。そういわず、できれば仲良くしてほしい。
「は」
駄目?
「……神尾!!」
――ツー、ツー。
通話が終わってしまった。貴方の念押しに答えてくれた"神尾"なる声の主は、きっと本当はいい人なはず。貴方はそう思った。
■邪視
「わっ!?」
夕暮れを楽しむ散歩の途中、誰かとぶつかった。その拍子に落ちたのだろう、ぶつかった相手のものと思われるサングラスを拾い、謝ろうと頭を上げ――暗転。
「あ、駄目。僕の目、見ないでください」
頭がかき乱される感覚と共に足がもつれる。瞬間、貴方の思考は底が見えない絶望に支配されていた。それがぱっと消えたかと思えば、サングラスをかけた青年が一人。
……今のは。
「えっと……お気になさらず。もう大丈夫ですので」
不可解だと思ったが体調は元通り。貴方はうなずき、しかし、地面に落とされたサングラスでないものに気づいた。コンビニで買える少年向けの雑誌だ。表紙が"そういう"アイドルの。
彼のものだろうか。貴方は雑誌を見せる。すると、見る見るうちに彼の顔が真っ赤になっていった。口をぱくぱくさせている。
「な、なな、な……!? そ、そんなものっ――ハレンチです!!」
……こ、これぐらいで?
「ふ、不浄です! きみ、まさか僕をそういう目に遭わせようと……!? そういう本みたいに! そういう本みたいに!!」
しないよ。
■怪人赤マント
貴方は目を開けた。どうやら今まで眠っていたようだ。倦怠感と頭痛に不快感を覚えつつ正面を向くと――軍服と赤いマントを着た男性がいた。
面識はない。腕がやけに重いと思っていたが、縄で縛られている。腕だけでなく足も同様だ。
捕らわれている。そう気づいた貴方は、目の前の男性を睨んだ。なにをする気?
「なにもしない。ただ貴殿を守りたかっただけだ」
その声色は真剣そのもので、本音をいっているのだと理解する。
だとしてもやりすぎだ。
「しかし、貴殿は危険な怪異どもに狙われている。乱暴な手だと理解はしていたが、貴殿の命を失わせないためには仕方ないのだと……」
危険な怪異ども?
「生者を理解できない付喪神、なりかわりの力を持つ神を自称する者、たわいなく生者を食らうモノ……知っているだろう?」
確かに心当たりはあるけれど……。
今のところ危険な目には遭っていない、なにかあったら遠慮なく助けを呼ぶから、どうか縄を解いてほしいと頼んだ。彼が唸る。
「しかし……いや、そうだな。牙を剥かれたら俺を呼んでくれ」
彼の名前となぜ軍服を着ているのか問うと、不敵な笑みを浮かべたあと敬礼された。
「はっ。自分は赤橋明中尉であります! ……理解したか?」
――なるほど。
