コメディ・ライト小説(新)

第22話 力を合わせて ( No.34 )
日時: 2025/02/11 14:11
名前: 小説嫌いな医師 (ID: lCrzzWFh)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi

一方、りんごとコロンはクローバーを追いかけていた。
(けっこう早い・・・)
人間であるりんごにとって、クローバーとコロンのスピードに追い付くのは難しいことだった。
(ああ、瞬間移動できる魔法とかないかな・・・)
そんなことを考えていると、大きな扉の前でクローバーはヒラヒラと落ちてしまった。りんごが、急いで
クローバーを両手でキャッチする。そして、扉を見る。まさか、ここに大樹と秀平がいるというのだろうか。
「コロン、行こう?」
コロンは、震えているようだった。りんごがドアノブに手を差し伸べたところで、コロンが呼び止める。
「ちょっと待って!なんか感じる・・・強力な何かを・・・」
「それって・・・つまり・・・」
りんごは、ドアノブに手を触れようとしたが、やっぱりやめた。コロンの言うことは守っておいた方がいい。今までコロンと過ごしてきて、それがやっと分かってきた。そして、さっきまでは晴れていた空が、急に暗い雲で覆われた。風も強く、凍えそうな寒さだ。
「多分、この中にいるんだ・・・”フルーツキング”に所属しているフルーツが・・・」
「それって、もしかして、前にみかんが変身したやつ!?」
りんごも不安になってくる。
「きっと、そうだと思う。確信はないけど、この気配、みかんの時と似てるから・・・」
りんごは身震いを感じた。しかし、それでもドアノブに再び手を差し伸べる。
「何してるの!?中にはフルーツがいるんだよ!それは、命に関わるようなことなんだよ!」
コロンは必死でりんごを止めようとする。りんごは、真剣な顔でコロンを向いた。
「いま助けなくて、どうするの!せっかく、ここまで来たのに、このまま見捨てるの・・・!?」
コロンは、はっとなる。あのマイペースだったりんごが、今では物凄く頼もしく見えた。
(やっぱり、最高の魔法少女になるのは、りんごちゃんだ)
そう思いながら、コロンはりんごに近づく。
「確かに、大樹も秀平も、本当はいいやつだし、助けたいって気持ちはわかるよ。だけど、だけど・・・」
コロンは、りんごの前で涙を流す。
「りんごちゃんを、この前みたいに遭わせたくないんだ・・・!」
「どうして?それを言ったら、私だって、コロンにあの時みたいな目には遭ってほしくないよ?
コロンは、私を助けてくれて、時には厳しく言ってくれたりもして、本当に嬉しかったし、本当によかったよ。コロンはね、私にとって、ともだちって気がするんだ」
「とも・・・だち・・・?」
「そう。前までは、ともだちがいなくて、寂しかったけど、今はさみしくないよ。コロンがいてくれて、本当に嬉しいと思ってる。でも、これ以上、コロンに無理してほしくない!だから、お願い、私も一緒に行かせて!だめ・・・かな・・・?」
コロンは、深く考える。もし、これでりんごが危険な目に遭ってしまえば、コロンのりんごを最高の魔法少女にするという約束は、破られてしまう。しかし、ともだちであれば、どんな時でも一緒に立ち向かっていくべきではないのだろうか。
「分かった。じゃあ、”フルーツ・チェンジ”しよう」
りんごは、嫌そうな目でコロンを見る。
「”フルーツ・チェンジ”って、あのくすぐったいやつ・・・?」
「そうだよ!」
「こんな外じゃ出来ないよー!」
りんごは、どうしても拒否するようだ。もう、二度と、あのくすぐりには遭いたくない。
「・・・ごめん。ぼくが悪かった。ぼくだけで行ってくるから・・・」
コロンが顔を俯き、ドアノブを開けようとしたところで、りんごは呼び止めた。
「待って!分かった!”フルーツ・チェンジ”するから!」
コロンは、立ち止まり、ちらっとこちらを見た。
りんごは、目を瞑り集中する。前に魔法史の授業でやったことを、思い起こせばいいだけだ。
ゆっくりと目を開けると、目の前にあの時と同じ、赤色の丸い形をした魔法が現れた。
ずっと見ていたかったが、そんな時間はない。急がないと。
「フルーツ・チェンジ!」
りんごは、そう唱えた後で、すぐにくすぐりが来ても大丈夫なように備えた。くすぐりが来ると分かっていれば、耐えられるはず。あの時と同じように、急にくすぐりが、りんごを襲ってきた。
「んっ・・・ひゃっ・・・あっ・・・またっ・・・んっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
りんごは、くすぐりが終わり脱力してしまった。
たった5秒間の短い時間だったが、りんごにとってはとても長い時間のように感じた。
「これで・・・いいの・・・?」
まだ、少しくすぐったさが残っている。まあ、のちに消えていくと思うけど。
「うん!ばっちり!じゃあ、そのままジャンプしてみて!」
「ジャンプ?こう・・・?」
りんごは、思い切ってジャンプしてみると、一気に建物の屋根の上まで飛んでしまった。
りんごは、慌てて足をふらつかせる。
「うわああああああっ!!」
そのまま、地面に倒れ込んでしまった。コロンが駆けつける。
「りんごちゃん、大丈夫!?」
「これ、どういうこと・・・?」
りんごは、服や顔を汚しながらも、コロンに問う。
「これも魔法の力なんだった・・・。”フルーツ・チェンジ”してる時は、いつもよりも力が強くなるんだ。だから、ジャンプは高く飛べるし、走れば速く走れる。そしてもちろん、与えるダメージも強くなっているんだ」
「それ・・・先に言ってよ・・・」
「ははは・・・ごめんごめん」
りんごは、ゆっくりと起き上がった。にしても、あんな高い所から落ちたのに、キズは一つもついていない。これが魔法使いということか。
「行こっか、コロン」
「でも、キズは・・・」
「もう大丈夫。それより、早く大樹と秀平を助けないと!」
「・・・うん、そうだね。でも、危ない事だけはしないでよ。あと・・・」
「はいはい、分かったよー」
りんごは、軽く返事をして扉を開ける。ここが、「フルーツ・キング」のアジトだろうか。
「ちょっと、まだ開けちゃだめだよ!何があるかわかんないし・・・」
こっそりと開けてみると、そこには涙目で立っている大樹と秀平がいた。しかし、魔法の服を着ていなかった。まさか、誰かが中に入ってくるとは知らなかった大樹と秀平は、すぐさま体を隠した。
りんごは、その光景に恥ずかしくなる。りんごも、すぐに目を下に逸らした。
「あの・・・その恰好・・・なに・・・?」
「えっと、その・・・」
ぶどうの形をした大きなフルーツは、こちらに向かって歩いてきた。見た目はぶどうなのに、目や口があって、まるで着ぐるみのようだ。これも魔法の力だろうか。
「おっ、やっと来たかw待ってたよ、りんごw」
りんごは、その甘ったるい声に身震いした。
「なんで・・・私の名前知ってるの・・・」
「ふふw」
ぶどうは、嫌らしいような笑みを浮かべてきた。
ぶどうとりんご、りんごにとっては初めての戦いだが、一体どちらが勝つのだろうか・・・。