コメディ・ライト小説(新)

第26話 りんごといちご ( No.40 )
日時: 2025/02/22 18:03
名前: 小説嫌いな医師 (ID: lCrzzWFh)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「アレってなんだよ」
思わず、秀平が聞いてしまった。確かに気になるが、そんなストレートに・・・。
「ひ・み・つ!」
そう言われ、大樹と秀平はしょんぼりする。
「それで、どっちの味方になるの?もちろん、いちごだよね?」
いちごの、その甘い声とかわいらしい容姿にさそわれそうになる。しかし、秀平は目をつむって保健室へと走っていった。大樹も秀平を追う。
「ごめんっ!やっぱ俺、友達としてりんごのこと、心配だから!」
「俺も!ほんとごめんっ!いちごちゃん!」
いちごの顔が、今までにないくらい暗くなった。ぶどうが登場した時のように、空全体が暗い雲で覆われ始める。まるで、今にも雨が降り出しそうな天気だ。
「そっか、りんごとは友達だったんだ。じゃ、私とは、友達じゃないってこと?」
大樹と秀平は立ち止まる。
「いや、いちごちゃんも友達だよ・・・でも、今はりんごちゃんの体調が・・・」
「そうだよね。りんごちゃんの方が大事だもんね。でも、いちごのところに戻ってくれないのなら、本気でやるよ?」
そう言って、いちごは一瞬だけ光りだし、大きないちごの姿をしたフルーツ・キングへと変身した。
秀平と大樹は、気配を感じ、後ろを振り返る。二人は、その場で足がすくんでしまった。今まで、信用していたいちごが、まさかフルーツ・キングだったなんて。こわばっている二人に、いちごは優しく話しかける。
「大丈夫。こわいことはしないから。それより、こっちに来ないと、あんたたちの命はないよ?」
大樹と秀平は、また迷ってしまう。もし、ここでいちごの言う通りにしなかったら、りんごや他の生徒が危ない。この時、二人は昔のことを思い出した。今まで、りんごをいじってきていた。りんごには、なぐるなどとして、おどしていた。あの時のりんごも、きっとこんな感じだったんだろう。自分は、こんなに悪いことをしてしまったんだと後悔した。
「うわああああああああ!!」
二人は、その場で絶望する。その大声に、いちごでさえもおどろく。
「さあ、こっちに来て、おねがい」
たとえ、相手がいちごであっても、フルーツ・キングであれば、やることは一つしかない。たたかうことだ。
「いちごちゃん、ごめんね!」
幸い、魔法史の授業の始めに着替えておいたので、すぐに戦える状態になっている。大樹の魔法の服は、青色で恰好よく、秀平の魔法の服は、紫色でどこか怪しい感じがする。
「なるほどね。もう、すでに準備はできてるってことか。じゃ、本気で行かせてもらうよ!」
そのオーラは恐ろしいものだった。顔はかわいいのに、威力はまるで別人のように感じてくる。
「あまリーヌ!」
いちごが、そう唱えた瞬間、大樹と秀平の足元に、赤くてねばねばしたものが飛んできた。
「なんだこれっ!」
秀平は、突然の出来事におどろく。
「あれ?知らないの?フルーツ・キングには、独自魔法っていう魔法が、それぞれにあるんだよ!ちなみに、いちごの独自魔法は、その場から動けなくなる魔法!」
なんていうことだろうか。ただ、あのスピードは、とても大樹と秀平にはかわせなかった。当たってしまったということは、本当にこの場から動けなくなるのだろうか。もし、それが本当なら、いちごは本当に強いということになる。大樹と秀平は、足を動かそうとするが、地面にあるねばねばしたもののせいで、一歩も動けなかった。二人が苦戦している中、いちごは笑いながら、二人を見ていた。
「だから、動けないって言ってんじゃんwいい加減、あきらめなよw」
「俺たちは・・・りんごちゃんに、何事もあきらめない方がいいことを学んだ!りんごちゃんが体調を頑張っている中、俺たちだってあきらめきれない!」
いちごは、やれやれと感じた。
「また、その話ー?いちごの前でりんごの話はしないでよー・・・っていうか、あんたたち、自分の立場分かってる?いま、動けないんだよ?動けもしないで、よくそんな口を聞いてられるよね」
いちごの口論が続くが、大樹と秀平だってひるむことはない。
「ああ、だって俺たちは、りんごちゃんをいじってきた、大樹と秀平だぞ!そう聞いて、怖いとか思わないのか?」
しかし、いちごは首を横に振った。
「ぜんぜん。いちごはね、今まで10人くらい、在校生の服を食べたんだ!おかげで、こんなに強くなっちゃって・・・いつの間にか、”あまリーヌ”という強力な魔法まで覚えてしまったってこと。だから、いちごからしたら、あんたたちもしょせん、在校生と同等なのよ」
そう告げられ、大樹と秀平はいっしゅん、ショックを受けた。しかし、大樹や秀平だって、今まで何もしないで過ごしてきたわけではない。
「ごめんね!これが、フルーツ・キングの使命なの」
そう言って、大樹と秀平へと近づく。大樹と秀平は、怖くて逃げようとするが、足が動かない。
そのまま、少しずついちごが二人へと近づいていき、服をはぎ取ろうとした。
「フルーツ・キングにとって、魔法の服は、大切なものなの。だから、少しの間だけ、許してね」
そう言って、いちごは、二人の服を食べ始めようとした。せっかく買った服が、またフルーツ・キングにおそわれてしまう・・・。ぶどうの時と同じように・・・。しかし、2人は動けるはずはなく、何とか上半身だけでも抵抗するしかなかったのだった。