コメディ・ライト小説(新)

第28話 シャインマスカット ( No.42 )
日時: 2025/02/26 14:40
名前: 小説嫌いな医師 (ID: lCrzzWFh)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

5月2日。今日も通常通りの花咲中学校。今更って感じではあるが、ここは魔法と通常授業を勉強する学校であった。その為、土日も基本的には学校がある。

「皆さん、はじめまして!」
そう言ってりんごのクラスの教室に入ってきたのは、シャインマスカットこと青木水魔だった。
「青木水魔です!よろしくお願いします!」
そう言うと、水魔は生徒たちに向かってキラキラとしたウインクを放った。そのウインクに、周りの女子は「キャーキャー」とさわぎ始める。りんごは、うるさくなりそうだと、先に耳をふさいでいたが、耳をふさいでも聞こえてしまう女子の高音に、りんごは悩まされる。れもんの方をこっそりと見ると、あの陰キャっぽいれもんでさえも、水魔のとりこにされていた。
(うそ・・・)
りんごは、少し衝撃的だった。
(たしかに水魔の顔はイケメンだし、格好いいけれど、あのれもんが熱中するなんて、どう考えてもおかしい!)
ちなみに、りんごは大樹によってだまされてから、男子のことは全員きらいになった。
なのでもう、男子にはまったく興味はない。

少し時間が経って、やっと周りの声が収まってきた。女子が一斉にさわぎ出すと、鼓膜が破れそうになる。
水魔はおそろしい奴だと、りんごは認知した。
「ありがとう!ありがとう!」
水魔が席へと歩くたびに、女子はみんな、水魔に注目している。
水魔は、一番後ろの席になった。しかし、よりによって、水魔とりんごは1mしか離れていないのだ。
(恰好いいー・・・はっ!)
りんごは、いつの間にか水魔のことを見てしまっていた。となりだからとはいえ、水魔を見てしまうなんて。
(だめだめ!また、大樹のときみたいにだまされるに決まってる!)
そうだとは分かっているが、どうしてもちらちらと見てしまう。意識したくないのに、逆に意識してしまう感覚、これこそが恋・・・?
(な、私なに考えてるんだろ!)
となりにいたれもんが、りんごに声を掛けてきた。
「りんごちゃん、かお赤いけどだいじょうぶ?」
「だ、だ、だ、だいじょうぶだよ!ははw」
何とか笑ってごまかすが、れもんにはバレバレだろう。
すると、大樹と秀平が後ろを向いてきた。現在、授業中なのに。
「なあ、数学ってマジで難しくない?」
「ねえ、ノート見してよ。ここの問題わかんなくてさあ」
「え、えっと・・・」
りんごは困ってしまう。大樹と秀平がいじることをやめたあの日から、なぜかぐいぐいとりんごに話しかけてくるようになった。りんごのとなりにいたれもんが忠告する。
「それくらい、自分でやりなさいよ。それに、いま授業中でしょ?こっち向いてないで、前向いててよね」
れもんの正論に、大樹と秀平はあきたように言う。
「はいはい、分かったよ」
「これだから、れもんちゃんは」
愚痴を吐きながら、2人は前を向いた。
「せっかく、いちごのときに助けてやったのに。なんなのよ、こいつら」

しばらくすると、となりから不可解な音が聞こえてきた。りんごは気になり、となりを見てみると、れもんがノートに絵を描いていた。そして、描き終わったのか、シャーペンを机の上に置き、こちらに見せてきた。
「どう?谷口先生の似顔絵」
その絵は、まさに谷口先生が怒った時にそっくりだった。とてもうまいけれど、これを谷口先生が見たら、なんて言うだろうか。りんごがそんなことを考えているうちに、谷口先生はれもんに気づき、こちらに向かって歩き出した。
「れもんちゃん、早く消した方がいいよ・・・」
りんごが小声で話す。
「なんで?せっかく書いたのに!それよりさ、この目の部分とか・・・」
れもんが話している途中に、先生がれもんの前に立った。その顔は、ものすごい怒りだった。
「れもんさん?ちょっと、職員室に行きましょうか」
れもんは、涙目になる。
「え、えっと、あの、いやです!」
「いいから来い!」
そのまま、先生に誘導されてしまった。

れもんが職員室に行っている中、教室は先生がいなくなり、静かになってしまった。みんな、れもんのことが心配で話すことができなかった。しかも、この教室は、前にも述べた通り、職員室の上にあるのだ。なので、少しでもうるさくすれば、先生がすぐにこちらに来るというわけである。

しばらく時間が経ち、れもんが教室に戻って来た。しかし、その顔は笑顔で、何事もなかったかのようだ。れもんが席に着いたところで、りんごはこっそりとれもんに聞いた。
「れもんちゃん、だいじょうぶだった・・・?」
「うん!谷口先生の似顔絵がね、よく描けているってほめられたんだ!」
「え・・・?よかったね・・・」
そしてりんごは、そのまま机の上にたおれてしまった。
「うん!あれ、りんごちゃん、だいじょうぶ!?」
「心配して損したよ・・・」
「ほんとに・・・だいじょうぶ・・・?」
れもんは、りんごの姿に余計に心配になってきた。谷口先生が、授業の続きをしようとしたところで、りんごがたおれているのに気づく。
「もう、りんごさん!授業中にねてはいけませんって何度も言ってますよね?早く起きなさい!」
先生にしかられてしまう。
「ねてるんじゃないのにー・・・」
りんごは、泣きながら声を出していた。そして秀平が、後ろを振り返る。
「そういえば今日、国語の宿題の提出日だってさ」
「・・・うわーん!!」
りんごは、ついに大泣きしてしまう。国語の宿題なんて、つい忘れてしまっていた。
「ちょっと秀平、あんた何てこと言うのよ!」
「えっ!?おれはただ、国語の宿題の提出日を教えてあげただけなのに・・・」
秀平のやさしさは、もはや絶望しているりんごにはとどかないのであった。

秀平がちょっとかわいそうですね。今回は、少し茶化せてみました。作者、りんごが泣くところが大好きなので・・・。次回はもう少し、水魔について書こうと思います。今日か明日には必ず投稿しますので、お楽しみにしていてくださいね!それでは、またお会いしましょう!