コメディ・ライト小説(新)
- 第1話 冒険の終わり ( No.1 )
- 日時: 2025/03/14 14:26
- 名前: 山田鐘人/アベツカサ (ID: qy46g51D)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
勇者一行は、木で作られた箱の中に入っていた。
そのまま、茶色い馬に運ばれている。
「王都が見えてきたね。」
フリーレンは、手に持っていた本を見るのをやめ、ヒンメルの方を向いた。
「私達勇者一行の凱旋です。盛り上がっているでしょうね」
ハイターが口に出す。
アイゼンは、立ちながら「仕事か・・・」と黄昏ていた。
「酒が飲める仕事がいいですね」
ハイターは、相変わらずの口調だ。
「お前僧侶だろ・・・」
ぼそっとヒンメルが口に出す。
「それもそうか。」
フリーレンが口に出す。
ヒンメルは、フリーレンの方を向く。
「フリーレン。君のこの先の人生は僕たちには想像もできないほど、長いものになるんだろうね。」
フリーレンは、相変わらず手に持っていた本を読みながら、「そうかもね。」と答えた。
大きな王都。周囲には、欧風の家が並ぶ。
勇者一行が道を歩くと、周囲の者がみんな、こちらを向いて歓迎してくれる。
勇者一行は、王様の前で姿勢を取る。
王様は、ゆっくりと立ち上がった。
「勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。よくぞ魔王を打ち倒した。これで世界に平和な時代が訪れよう。」
パーティ途中、ヒンメルがこちらに来た。
「王様が広場に僕たちの彫像を作ってくれるそうだ。」
ヒンメルは、そう言いながら、胸を張って歩く。
「まぁ、イケメンであるこの僕を忠実に再現できるかどうかは甚だ疑問だね。」
「現金なもんだ。旅立ちのときは銅貨10枚しかくれなかったくせに。」
横に居たフリーレンが、ぼそっと言った。
そこに、酒樽を持ったハイターが来る。
「まあまあ。フリーレン。こうしてタダ酒も飲めるわけですし、それでいいじゃないですか。」
「生臭坊主。」
フリーレンは、手に持った食べ物を食べながら、ハイターに暴言を言う。
「はっはっは。」
ハイターは、酒に酔ったかのように、明るく笑う。
「・・・終わってしまったな。」
アイゼンは、旅が終わってしまったことを寂しそうに言った。
「そうだね。僕達の冒険はこれで終わりだ。」
ヒンメルも頷く。
フリーレンとハイターは、相変わらずの顔をしている。
「10年ですか・・・色々な事がありましたね。」
ハイターが言う。ヒンメルも樽酒を飲む。
「旅立ちの日にヒンメルとアイゼンが王様にタメ口きいて処刑されかけたり。」
ハイターは、手で顎の部分を触りながら言った。
「うおーん」
ヒンメルが泣いている。
「靴舐めましょうか?」
ハイターは、冷汗を掻き、両手を握っている。
「ちゃんと言い聞かせますんで!」
フリーレンは、両手を伸ばし、処刑を止めようとしている。
「やれ」
王様は、その一言を言うが、間一髪で助かった。
「下手したらあそこで冒険終わってたよね。」
フリーレンは、懐かしみがあるように言った。
そういえばと、ヒンメルも言う。
「ハイターが二日酔いで役に立たなかったこともあったな。」
「アンデットみたいな顔してるけど大丈夫?」
フリーレンが冷ややかな表情でハイターに問いかける。
「・・・駄目」
ハイターは、今にも駄目そうだ。
「駄目かぁ・・・」
後ろでこっそり見ていたヒンメルがそう言う。
「週に一度はこうだったからな。」
アイゼンが言う。
「その点私は優秀・・・」
フリーレンは、目を閉じながら言う。
まるで周囲に呆れているようだ。
「ミミックに食われかけたときは置いていこうかと思ったぞ。」
「暗いよー!怖いよー!」
ダンジョンの中、ミミックに顔を挟まれたフリーレンは、何が何だか分からずに、足をバタバタとさせていた。
「散々罠だって言ったのにマジかよぉ・・・」
ヒンメルとアイゼンは、その状況をぼーっと見ていた。
「このエルフ置いてかない?」
ヒンメルとハイターは、思い出し笑いをする。
「まったく。クソみたいな思い出しかないな。」
ヒンメルは、目を閉じて、当時を思い出すかのように言う。
そして、しばらくして目を開けた。片手はポケットに入れている。
「でも楽しかったよ。僕は君たちと冒険ができてよかった。」
三人は、優しい目でヒンメルを見る。
「そうですね。」
ハイターが同情する。
「短い間だったけどね。」
フリーレンの言葉に、ヒンメルとハイターはぽかんとしていた。
「短い?何を言っているんだ?10年だぞ」
ヒンメルが言う。
「ハイターを見ろ。すっかりおっさんになってしまったぞ。かわいそうに」
ヒンメルは親指を立てながら、ハイターのことを言った。
「失礼ですよ。」
ハイターはかわいそうだ。
「元からでしょ。」
「失礼ですよ。」
フリーレンとヒンメルの言葉に、ハイターはがっかりとしていた。
「そろそろか。」
アイゼンが空を見上げながら言う。
ヒンメルやハイターも、何かを待ち遠しそうに、空を見上げている。
すると、流星群が空から降ってきた。
「半世紀流星でしたっけ。」
ハイターが空を見上げながら言う。
「50年に一度の流星群。」
ヒンメルは、手を合わせながら、お願い事をしている。
ハイターは、手を後ろに組んでいる。
「平和な時代の幕開けには丁度いいな。」
ヒンメルが言った。
空には、無数に輝く星の数。そして、途切れることのないような流星群が、勇者一行の目に焼きついた。