コメディ・ライト小説(新)

杏仁豆腐 ( No.2 )
日時: 2025/05/04 06:51
名前: 小説好きな医師 (ID: THBfOZma)

「店長っ! 杏仁豆腐2つ!!」

「えっ!? まだ隅中ぐうちゅうだぞっ!!」

店長は突然の言葉に驚いていた。

「いいから早くっ!!」

「よーしっ!!」


(なんだか慌ただしいな……)


5分後、ついに店員が真っ白な皿を持ってきた。

その皿の上には、スライムのように揺れ動く見事な杏仁豆腐が2つ付いている。

その杏仁豆腐に俪杏は、ぱあああと明るくなる。

朝ごはんはあまり食べてこなかったから、より嬉しさがある。


店員は、その皿をこちらに置き、「失礼します」と言って立ち去った。


さてさて、真っ白なミルクに、ちょこんと乗った赤い杏仁。

もう我慢できない。

俪杏はカップのすぐ傍にあった散蓮華ちりれんげを手に持ち、さっそく杏仁豆腐を掬い上げた。


やはり何度見ても見事だ。

こういう中華料理店には一度も行ったことが無かったから、めちゃくちゃ嬉しい。


「いっただっきまーす!!」

そして、掬い上げた杏仁豆腐を口の中へ入れた。

その瞬間、ほんのり甘い味が口いっぱいに広がった。

しばらくすると、さっぱりとした後味がした。


なんて美味しいんだろう。こんなに美味しい杏仁豆腐は生まれて初めてだあ……!!


その後も俪杏は、手を休むことなく、残った杏仁豆腐もどんどん口に入れていった。


「あの子、なんで、あんなに食べられるのかしら……」

柱の陰でこっそり見ていた店員は、ぼそっと呟く。

あのスピードで杏仁豆腐を食べられれるのは、ある意味、異次元だ。

「さあな……」

その光景には、料理人でさえも驚くほどだった。


食べ始めてから、わずか10秒で2つの杏仁豆腐は俪杏の中へ入っていった。


「ごちそうさまっ!!」

俪杏は、そのまま中華料理店を出ようとした。


「ちょっと待った!! お会計をっ!!」

「あっ、そうでしたっ」

急ぐ店員に俪杏はてへっとする。



「えーと、お会計は、銅幣4枚ですね」


これと……これと……。

「はいっ!!」

俪杏は銅幣4枚を店員に渡す。

店員はそれを確認し、茶色く小さな袋に入れた。

「ありがとうございました!」



俪杏はスキップをしながら家へと向かう。

「杏仁豆腐、美味しかったなあーっ!!」


あれっ? でも、何か忘れてるような……。

俪杏は、ゆっくりと足を止める。

はっ!!

「そうだっ! 買い物を頼まれてたんだったっ!!」

気づいた頃には、もう家の前まで来ていた。


ああ、振り出しに戻ってしまったんだ。


……仕方ないね。

俪杏は再び、徳州扒鶏を買いに出かけたのだった。