コメディ・ライト小説(新)

友達  ( No.6 )
日時: 2025/05/10 07:38
名前: 小説好きな医師 (ID: THBfOZma)

気づいた頃には銀幣残り16枚となっていた。

(だいぶ減っちゃったなあ……)

銀幣が減ってしまったということは、食べられる杏仁豆腐の数も減ってしまったということ。
俪杏は、ため息をつきながら顔を俯ける。

「うわっ!!」

前から歩いてきていた男性とぶつかり、お互い後方に倒れた。

その男性は凄まじい筋肉を持っており、あまり見かけない顔だった。

新しくこの街にやってきたのだろうか。

床に手を付け考察する俪杏に男性は体勢をすぐに立て直し、「このやろ!」と口に出して俪杏の顔に殴りかかった。

もうダメだ……!!

「やめなさい!」
後ろから俪杏と同じくらいの女の子は言った。

女の子を見た男性は俪杏のことをそっちのけでいた。
美月メイユェ様っ!!」
男性が叫ぶ。どうやら女の子の名前は美月と呼ぶようだ。

その女の子は、とてもおしとやかで、満州服とは違った見たことも無い派手な服装をしていた。

「馬車の中で待っているよう伝えたじゃありませんか!」
馬車とは、あれのことだろうか。

ここから数メートル離れたところに、立派な馬車が置いてあった。

「あなたが、また乱暴をふるうからいけないのですよ? さ、早くそこからお退きなさい」
その声は、まるで何処かの妃のようだった。

「しかし、こいつがっ!」

「いいから早くお退きなさい。それとも、わたくしに喧嘩を売るつもりで?」

「……」
しばらくして、男性はその場を退けた。

よく分からないけど、この女の子、私と同じくらいの年齢なのに風格が違う……。

「まったく、大勢の人が居る前で恥ずかしいですわ。さて、怪我はありませんでしたか?」
そう言って美月は俪杏に手を差し伸べる。
その顔は、さっきとは一変していて優しい顔だった。

「だ、大丈夫ですっ……」
ダメだ、眩しすぎて見れない。

俪杏は動揺気味に答えた。
目を逸らす俪杏に、「ところで」と美月は口を開いた。

「この辺に杏仁豆腐というものはありませんか?」

「杏仁豆腐……ですか……?」
俪杏は美月の顔をチラチラと見る。

「ええ、私それが食べたくてここに来ましたの」

「柔らかそう……それに比べて私なんて……」
俪杏は、美月と自分の胸を見比べながらぼそっと声に出す。

「何か言いました?」

「いえ、何でもありませんのよ! おほほほほ!」
わざとらしい笑いを浮かべる俪杏に、美月は怪しげな顔で見つめてきた。

「……まあ、いいですわ。ところで、その杏仁豆腐というのは何処にありますの?」

俪杏は立ち上がり、満州服に付いた汚れを手で落とす。
「案内しましょうか?」

「連れていってくださるのですかっ!?」
美月は嬉しそうに目を輝かせる。
「いいですよね、雨泽ユーゼェァ?」

「もうお好きにどうぞ……」
雨泽と呼ばれたその男性は、ただそう言うしかなかった。
反論したところで、また怒られてしまうからだ。

「ってことですので、ぜひお願いしますわ!」
美月はカーテシーをする。
着用していたスカートからして、きっと西洋から来た者なのだろう。

「こ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ!!」
私は深く一礼をした。

まあ、杏仁豆腐は一人より、人数多い方が楽しいしね。