コメディ・ライト小説(新)
- 日常 ( No.7 )
- 日時: 2025/05/13 07:31
- 名前: 小説好きな医師 (ID: THBfOZma)
「ここです」
俪杏は「好吃菜館(ハオチーサイカン)」と看板が立てられた1階建ての中華料理店の前で立ち止まる。
「あら随分、小さいですのね」
そ、それだけはっ!
美月は思ったことを直ぐ口に出すタイプらしい。
「これなら私の町の方が立派ですわ」と自慢げに話す。
「美月様っ! 流石にそれだけはっ!」
雨泽は止めようとするが、美月は構わず中へと入っていった。
店員は一人で来た子供を不思議と見つめる。
「あっ、ねえねえ、後宮って知ってる?」
「えーっと……」
店員が質問に戸惑っていると雨泽は後から店内に入った。
「こんにちは。……子供2名、大人1名で」
店員は思わず雨泽に見とれる。
そして目線を下にやり、妬ましそうに俪杏を見つめる。
「…………」
「あの、どうかしました?」
「い、いえ! 今、ご案内しますね!」
何やら焦っているようだった。
にしても流石は人気店。
大分、客足が多くなってきた。
「こちらでございます。それでは失礼いたします」
店員は3人を席に座らせ、厨房へ歩いていった。
さて。
メニュー表を見なくたって、もう頼むものは決まっている。
「杏仁豆腐20個くださーい!!」
俪杏は無邪気にも大声で喋る。
「に、に、20個って……!?」
俪杏の言葉に驚く周囲の人々。美月は思わず声を出してしまった。
この子、可愛い顔して恐ろしいことを言うんだな……。
「あれ、足りなかった? じゃあ30個で!!」
「あの……それは流石にちょっと……」
あまり顔に出ないタイプの雨泽だが、流石の雨泽でも、これには引いている。
「少ない? よーし、じゃあ40個っ!! 店員さーん! 杏仁豆腐40個くださーい!!」
「はい!!」
そう言って、店員は駆け足でこちらに来た。
「お時間をいただきますが、宜しいでしょう……」
「はい!!」
俪杏は即答だった。
「はあ……それでは失礼いたします……」
そう言って店員は再び立ち去っていった。