コメディ・ライト小説(新)

クリーニング屋さんに行きまして ( No.2 )
日時: 2025/05/17 08:18
名前: 毛筒代 (ID: THBfOZma)

あった!

それは、もう20年ほど前に着た制服だった。
少し汚れているけれど、洗濯すればまだ使えるはずだ。

よし、洗濯しよ!

とは言ったものの、制服ってどうやって洗濯すればいいのか分からない。

だから、こういう時は……。

湊は財布と制服を持ち外に飛び出す。

そしてすぐに到着した。

クリーニング屋さんだ。
ここのクリーニング屋さんは湊の家の隣にあって、湊はそこの常連客みたいなものだ。

「おはようございまーす!」
クリーニング屋さんに来たら、いつも早朝に来ている年配の方がいるので、必ず湊は挨拶をしている。
これは湊のルーティンみたいなものだ。

「んー?」
年配の男性は、こちらをじっと見つめていた。

気まずいな……。
「君、どこかで見たことがあるような……まあいいや、おはよう。ここは初めてかい?」

初めて?だって、いつも来てるじゃないか。

あっ!そっか、今の自分は中学生なんだ!
どうりで彼の反応が普段と違っていた訳だ。

どうしよう、ここは初めてって言っておくべきかなあ……。でも嘘をつくのも嫌だしなあ……。

「……初めて、じゃないです」
やはり嘘はつきたくない。面倒くさいことはしたくないし。

「そうか……」
彼は悲しそうな顔をする。
もしかしたら、何か教えたいことがあったのかもしれない。

悪いことしたかな……。いや、自分の判断は間違っていないはず……!

自分を信じて、湊は制服を洗濯機に入れた。

ぐるぐると回る洗濯機を見て、湊は深く考えた。


また中学生に戻れた……けど、つまり学校に行かなければならないってことだ。
今まで楽していたニート生活も終了、これから忙しくなるだろう。

確かにニート生活は暇ばかりだったけど、学校に行くというのも何だか面倒くさい。
こうして面倒くさいと思っているのも、もしかしたら引きこもりの癖がついてしまったのかもしれない。

それに……確かに中学生っぽいかもしれないけど、子ども扱いしないでほしい!!
何だよ、あの言い方!流石にいらつく!!
いくら初対面でも、もう少し言葉に配慮してほしい!!

「何やってるの?」

「え?」
後ろを振り返ると、制服を着た女の子がいた。
湊が所持していた制服と同じ物である。

「まさか君、咲良中学校の生徒!?」

咲良中学校の生徒であることは、制服の左胸にある校章を見れば分かる。
「そうだけど……それより、早く行かないと遅刻するよ!」

「行かないとって……どこに?」

「学校にだよ!」

「でも……まだ俺、クリーニングが終わってないんだ……ところで、君、誰かに似て……」

「いいから早く!あと5分で授業はじまるよ!」
彼女はとても慌てているようだった。

「なんで、そこまでして俺を気にするのさ。俺に構ってないで早く……」

「構うよ! ……だって、君だけ遅刻するの、許せないから!! 遅刻するなら私としよ!」
彼女は真剣に言う。

「なに言ってんだよ!意味分かんねえよ!ってか、顔近づけるな! 恥ずかしい……だろうが……」
そんなに顔を近づけられたら、想像するなという方が無理がある。
どうやら、変態性欲も中学生の頃に戻ったらしい。そこは戻らなくてもよかった気もするが。

「でもさ、顔を近づける時って自然って場合もあるんだよね、例えば顔を近づけることが生理的反応だった時……」

「わかったわかった!俺が悪かった!」

ピー!

どうやら制服がクリーニングし終わったらしい。

湊は制服を洗濯機から取り出す。
しかし……ここじゃ着替えられないな……。
「着替えないの?」

「いや無理があるだろ!! ごめん……トイレ行ってくるわ」

いい方法ではないけれど、トイレで着替えるくらいしか方法はない(←自分の家でやれよ)。

湊はトイレに入り、制服に着替える。

制服、久々に見た。
こんな大きかったっけ?

にしても……あの子と居る時、少しだけドキッとしたな……。
しかも、あの性格はまるで……まさかな。

とりあえず、今はあの子のことよりも制服のことを考える方が先だ。

しかし、制服ってスベスベー!ここに出したい……って、何考えてるんだ!

やばいやばい、中学生に戻ったことで、大人の自分よりも変態性欲が高まっているのか!
大人になってからは恋愛っぽいことしてこなかったからなあ……久々ってこともあって、あそこも緊張してるんだよな。

湊は優しい目で下半身を見つめる。

さて、行くか。

湊はトイレのドアを開ける。
「お待たせ!」

「ねえ、ズボンのチャック開いてるよ。それ、最新の流行?」

ガチャッ!

バカバカバカ!シンボル部分を開けるとは、自分はなんて不甲斐ないことをっ!!

恥ずかしいー!恥ずかしすぎるー!!

それから3分間の間、湊はトイレから出ることが出来なかった。