コメディ・ライト小説(新)

はじまり ( No.1 )
日時: 2025/05/25 07:10
名前: 星 (ID: lCrzzWFh)

 北斗は渋々と星空高校に向かって歩いていた。

 周囲の楽しそうな笑い声に耳を塞ぎたくなる。
 友達も彼女もいない北斗にとって、その笑い声は、まるで北斗を見下しているかのようで、その場にいるだけでも辛かった。

 そんな辛い気持ちは消えてしまえばいいのに…………そうだ!
 夏休みに3年前の、あの頃みたいに山に登って星空の景色を見よう。
 
 勉強も運動も苦手な北斗にとって、それは唯一の救い。

 さて、ここからが考えどころだ。何人で星空の景色を見に行くか。
 ちょうど夏休みの8月1日は親が仕事だし、その期間なら、そっと家を抜け出せるだろう。

 とりあえず、クラスの生徒でも誘ってみるか。


 昼休み、北斗はクラスの生徒に誘いを出す。
「ごめん、その日予定あるんだ」
「虫がいるの嫌だからなあ」
「暗いのは嫌だよ」
「なんでお前なんかと一緒に行かなきゃいけねえんだよ!!」
 やっぱり……ダメか……。

「あの、私は行ってもいい?」
 北斗に声をかけてきたのは、北斗が小さい頃から好きだった満星(みらい)だった。

 北斗の目が一瞬、キラリと輝く。

「もちろんだよ」
 北斗は即答した。
 一人でも来てくれるなら、それだけで嬉しい。

「じゃあ8月1日の午後5時、公園に集合ね」

「分かった!」
 満星も嬉しそうだった。
 初めて満星と話せた。初めて満星に声をかけられた。


 8月1日の午後5時10分、北斗は公園で待っていた。

 まだ来ない……。

 すでに約束の時間から10分も過ぎている。

「ごめん、遅くなっちゃった!」
 やっと満星が来た。

「もう……ん……」
 北斗は満星の服装に目を光らせた。

 星柄のワンピースを着た満星は、いつも以上に綺麗だった。

「ワンピース、どうかな?」
 見る限り新しいものだ。まさか、この為に……?

「に、似合ってるよ……」
 北斗は、満星の姿が可愛すぎてちゃんと見れない。

「ふふ、ありがと。さ、行こ!」

「え、あ……」
 満星は嬉しそうに微笑んだ後、北斗の手を引っ張り走っていく。

 無邪気に走る満星。普通は逆なんだけど……手を繋げたなら、それでいいよね。


 それにしても。

 満星(北斗)の手、あったかい。