コメディ・ライト小説(新)
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- Enjoy Club 第2章【12/28番外編更新】
- 日時: 2019/12/28 16:56
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=10985
あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――
ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメ(?)です。
クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)と申しますv
この小説は前スレから続いている長編小説です。1章のほうは参照↑に貼っておきますので、よろしければ読んでみてください^^
〜お客さま〜(1章から引き続き)
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん
・セピアさん(おかきさん) ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMA3(ARMA、書き述べる)さん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・神楽(抹茶.、小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・ るな..(蜜姫.)さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・北野(仮名)さん
・優香さん ・カケガミさん ・黎さん ・Lithicsさん
・夏目さん ・美樹さん ・ヴェルタさん ・向日葵さん
・明鈴さん ・苺莢さん ・みっしゅさん ・クエン酸Naさん
・四季さん ・いろはさん ・塩鮭☆ユーリさん ・柞原 幸さん
・みかんさん ・栗豆さん
読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m
〜目次〜
※一気に読みたい方>>18-399
≪第2章≫
プロローグ>>18
第1話『愛しき日常』
(1)>>22 (2)>>27 (3)>>34 (4)>>59,>>60 (5)>>66
(6)>>69,>>70 (7)>>76 (8)>>84 (9)>>98 (10)>>102,>>103
第2話『灰に染まる波』
(1)>>109 (2)>>115 (3)>>122 (4)>>129,>>130 (5)>>134,>>135
(6)>>141,>>142 (7)>>146,>>147
第3話『ふたり』
(1)>>155 (2)>>162,>>163 (3)>>172,>>173 (4)>>177 (5)>>183
(6)>>187 (7)>>206 (8)>>211 (9)>>226
第4話『知る者、知らぬ者』
(1)>>239 (2)>>244 (3)>>250 (4)>>254 (5)>>259
(6)>>262 (7)>>276 (8)>>291 (9)>>313 (10)>>322
(11)>>328>>329>>330 (12)>>332>>333
第5話『僕らの仲間は』
(1)>>343>>348 (2)>>358 (3)>>366 (4)>>369 (5)>>379
(6)>>386
第6話『揺らぎ』
(1)>>390>>391 (2)>>392 (3)>>396 (4)>>399 (5)>>402
〜登場人物紹介〜
>>368 登場人物いちらん
>>15 あだ名紹介
〜キャラ絵〜
荒木恵玲 >>50
棚妙水希 >>383
棚妙水希&荒木恵玲 >>384
荒木恵玲 >>406
〜企画〜
≪E・C紹介文≫by ARMA3さん
>>306 2013.1.27
≪プチ企画≫
お客様の小説紹介第4弾 2012.11.9 >>284
≪第2回キャラ人気投票≫2011.5.4〜 詳細>>2 結果>>55
≪*E・Cラジオ*≫
NO.6 有衣&夜ゑ >>46
NO.7 亜弓&恵玲 >>234
NO.8 亜弓&恵玲&風也 >>349
NO.9 亜弓&恵玲 >>361
NO.10 風也&功 >>405
≪E・C年表≫ 2013.1.27 >>307
≪短編≫
White Day Short Story >>198 >>202(未完)
番外編(タイトル未定。功のお話) >>412
~小説大会~
2010年度冬 金賞受賞★
2011年度夏 銀賞受賞
2012年度夏 銅賞受賞
2012年度冬 銀賞受賞
2018年度夏 銀賞受賞
2019年度夏 金賞受賞★
投票してくださったみなさま、本当にありがとうございましたm(__)m
- Re: Enjoy Club ( No.395 )
- 日時: 2019/09/29 17:34
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
>>みなさま
このたび小説大会2019夏の金賞を受賞させていただきました……!!
投票してくださった方、この小説を読んでくださったみなさま、そしてコメントを残して応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
定期更新とはとうてい言えない状況で、こうして投票してくださる方々がいるのは本当にありがたいです。
私の頭の中ではいまだにあーちゃんたちがわちゃわちゃ動いているので、相変わらず不定期にはなってしまうと思いますが、今後も更新頑張っていきたいと思います。
ていうか実は、もう1回キャラ人気投票をやりたいという野望があるのですが(前回からかなり話動いてるし)、そのためにはもう少し安定して更新してお客様を増やさないとだめですねーがんばります。
また近日更新できる予定なので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
>>書き述べるさん
いつもコメントありがとうございます!
そしてお祝いのお言葉まで、ありがとうございます。
私も金賞のところに載ってるの見たときめちゃくちゃびっくりしました。
そうなんです、あーちゃんだけ主人公特権で一人称視点になるんです笑 へんな小説……笑
風也がどういうふうに「可愛い」を言うかは、すごく悩みました。
今回みたく改まって「可愛い」って直球で言うか、あるいは会った瞬間「可愛いじゃん/似合うじゃん」ぐらい軽く言うかで。
ここに載せた後もひと晩悩んで、次の日も悩んでました笑
結局、状況考えたらこれでたぶん合ってると納得してますが、今までこういうセリフを言わせたことがあまりないので、読者の方とあーちゃんはびっくりしたろうな、と思います笑
書いてくださってる通り、全部持って行った例の町田は、実はものすごい出番が少ないんです!
今回書くにあたって町田を全文検索(笑)かけたら予想以上に少なくて、作者がびっくりしました。
彼女にはこのままメインストーリー無視して突っ走っていってほしいなと思っています(放任)
あ、遥声ってわかってもらえた( *´艸`)
えれさまはえれさまで体育祭そっちのけで独走すると思うので(←)、ぜひまた見に来てくれると嬉しいです。
あらためて、コメントありがとうございました!
>>朱雀さん
いつもコメントありがとうございます!
そしてお祝いのお言葉も……!! お二方のように昔からのお客様にこうして祝ってもらえるなんて、私は果報者です、ほんとに。ありがとうございます。
投票してくださったんですね! うれしいです、ありがとうございます。
金賞は最初に頂いたきり一度も受賞していなかったので、私はすごくびっくりしましたし、久しぶりにまたこれを見れたなぁ、という感覚でした^^
最新話についてですが、
一度くらい言わせておこう、と笑←
もともと、日常の場面のどこかで1回くらい可愛いという趣旨のことを言わせたいなと思っていて、なかなか言ってくれなかったんですけど(言ってないよね。。。)、
今回最新話書きながらポニテバージョンのあーちゃんをノートに落書きしていたらそれが予想以上にめちゃくちゃ可愛くて(というか似合っていて)、これ風也が見たら「かわ……っ!!」てなるじゃんと思って、ここに入れました。
ストレートに褒めてくれる彼氏は私もとてもうらやましいですが笑、たぶん風也ふだんはあまり言ってない気がします笑
風也を褒める朱雀さんが新鮮です!笑
どなたか体育祭バージョンの3人を書いてくれないだろうか……←
町田がライバルの立ち位置なのに全然ライバルになっていませんが笑、2人の闘いご期待(?)ください^^
それでは、コメントありがとうございました!
また是非いらしてください^^
- Enjoy Club 第2章 第6話『揺らぎ』(3) ( No.396 )
- 日時: 2019/10/01 00:58
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
そのころ荒木恵玲は、校庭を脇目もふらずに歩いていた。校舎の方向に向かって歩いてはいるが、実のところ目的地は決まっていない。ただ、他の誰の目にもつかない場所。それもできれば、どれだけ大きい声で叫んでも誰の耳にも届かないような場所に行きたかった。
向かう先が決まっていないわりに、土を踏むスピードは速く、そして力強い。一歩一歩足を踏みしめるたびに、体の脇で握ったこぶしを勢いよく振っている。今の彼女を友人が見たら、目を丸くして声をかけるのをためらっただろう。それくらい今の恵玲は、張り詰めた雰囲気をまとっていた。
黒瞳がちな目が、強く前を見据える。
――……教室、はダメ。誰かが廊下にいたら聞こえちゃう。校舎の裏……も大きい声だと意外と聞こえちゃうかも
候補を考えては打ち消す。握るこぶしに、力が入った。
ふと目線を上にあげる。校舎と青空の、境い目。
――……屋上ならもしかして……
よし、と心の中で気合を入れ、恵玲は歩くスピードをさらに速めた。
先刻。頭の中に“遥声”が響いたのは、突然だった。
あまりに突然だったので、親友と話している最中だったにもかかわらず会話を止めて頭の中の声に意識を向けてしまった。そんな行動、こちらの事情を何も知らない人から見たら不審な行動にしか見えないのはわかっているが、驚いて声をあげなかっただけでも褒めてほしい。
“遥声”が飛んでくるなんて、本当に稀なことだ。恵玲自身は、その場の感情に任せて使ってしまうこともあるが、他のメンバーはほぼ使わないと言ってもいいくらい“遥声”を使わない。使う必要がない、と言った方がいいかもしれない。その場にいない能力者仲間と、電話でもメールでもなく、あえて声を飛ばして連絡を取らねばならないことなどそう滅多にないのだ。
だから恵玲は、それが飛んできたというだけで心底驚いた。そしてさらに、その声が記憶違いでなければ隣のグループである月下白狼のメンバーのものであることに、二重で驚いた。しかも、その内容が実に半端で。
「“荒木、聞こえるか”、なんて、聞こえてなかったら返事できないじゃん。ていうか用件はなんなの、一体」
苛立ちに独りごちる。
とにかく、“遥声”が届いていることを答えてやらねばならないが、叫ぶ場所がない。
――と、そこで。
はたと、恵玲はその場に立ち止まった。気づくと校舎の入り口までたどり着いていたが、そんなことはどうでもいい。もっと重要なことに気が付いてしまったのだ。
――……どうしよう
口元に手をやり、ぎゅっと目をつむる。先ほど飛んできた声は男性のもので、どこかかすれたように聞こえる声だった。たしかに聞き覚えがある。先日、影晴の屋敷で月下白狼のメンバーと対面したときにいた2人のうち、リーダーではないほうの声だ。どことなく影晴への態度が生意気だった彼。そこまでは覚えている。覚えているが、
肝心の「顔」が、思い出せなかった。
“遥声”は、相手の顔を思い浮かべて叫ばねば効力はない。しかし、ぼんやりとした輪郭くらいしか思い出せない。
恵玲は早々に思い出すのをあきらめて、近くにある花壇に腰かけた。伏せた額に手をあてる。
“遥声”を返せない苛立ちと、なぜ月下白狼の彼から“遥声”が飛んできたのかという疑問とで混乱する頭をゆっくりと静める。そうすると、だんだん今自分がすべきことが、ふわりと浮かんできた。
「ウィルくん……いるかな」
頼りになる彼と連絡を取ろうと顔をあげるのと同時に、人の気配がして視界にさっと影がかかる。無言で上を見上げると、亜弓が焦った顔でこちらを見下ろしていた。
「大丈夫ですか!? もしかして、本当に具合悪かったんですか!?」
仮病だとわかってるような顔をしていたくせに、結局追いかけてきたのだろうか。
恵玲は彼女の質問には答えず、身軽な動作で立ち上がった。親友のほうを振り返って口端を上げる。
「ちょうどよかった。あたし早退するから、先生に言っておいて」
えっ、と顔をしかめる亜弓。何か言い返してくる前に、恵玲は言葉を連ねた。
「さっきの、ほんとに風也くん賭けるの?」
「賭けるわけないのです!!」
間髪おかずに全力で否定される。
「なぁんだ、つまんない」
そう言って恵玲は、何か言いたげな顔で見つめてくる亜弓にひらひらと手を振り、迷いのない足取りで校舎を後にした。取り残された亜弓は、不服そうに親友の後ろ姿を見つめていた。
- Re: Enjoy Club 第2章 【10/1最新話更新】 ( No.397 )
- 日時: 2019/10/05 16:35
- 名前: 柞原 幸 (ID: Ytr7tgpe)
お祝いコメント、遅くなってごめんなさい(・・;)
コメライ金賞受賞おめでとうございます!
もう本当に凄い経歴ですね…!バリバリ尊敬してます╰(*´︶`*)╯
友桃さんの書く文章は丁寧で、正確なので本物の単行本読んでる気持ちになっちゃいます。
これからも応援してます!!頑張ってください!
あ、最近気づいたんですが、
あーちゃんが可愛くて鼻血出そうです笑笑((変態
- Re: Enjoy Club ( No.398 )
- 日時: 2019/10/06 14:29
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
>柞原 幸さん
コメントありがとうございます!
お名前見たときとてもうれしかったです( *´艸`)
お祝いのお言葉まで、ありがとうございます!
幸さん(と呼んでいいのかな…?)が投票してくださったおかげです!
以前からお世話になっている読者様はもちろん、新しい読者様にも投票してもらえるっていうのは本当にうれしいし、心強いです。
あーちゃんはたまに熱烈なファンが付く子なんですよね……!笑
コメント欄で一番(いい意味で)荒れるのはあーちゃんに対するコメントな気がします笑
主人公のあーちゃん推してくれたら筆者としてもとてもうれしいので、ぜひ応援してやってくださいませ(*´▽`*)
それではあらためてコメントありがとうございました!
ぜひまたいらしてくださいv
- Enjoy Club 第2章 第6話『揺らぎ』(4) ( No.399 )
- 日時: 2019/10/14 11:36
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
屋上へ続く重たい扉を開けたとたん、乾いた風が金糸を揺らした。視界を覆ったそれを鬱陶しげに耳にかけ、かわりに襲ってきた容赦ない日差しに顔をしかめる。そのまま視線を落とすと、その先には見慣れたコンクリートの地面と、黒い、人影。はっとして風也が目を上げた先には、薄手のロングコートを着た長身の青年がわずかに目を見張ってこちらを凝視していた。
コートの裾がはためいているのを見て風也は思わず空を見上げる。まっさらな青空から降り注ぐ日差しは十二分に熱を含んでいて、手でひさしを作っていても頬を汗が伝うくらいだ。なんだか前にも同じようなことを思った気がするなと心の中で苦笑しながら、風也はゆっくりと視線を青年に戻した。予想外の先客は、初めてこの場所であった時と同じように、ワインを片手にひとり佇んでいた。
「すげぇ久しぶりだな。つーかお前それ暑くねぇの?」
苦笑交じりに青年――有希白波に声をかけると、彼はわずかに目を見張ったまま、どこか宙に浮いたような声音で呟いた。
「……覚えているのか」
予想外の返答に眉をひそめる風也。
「覚えてるって何を……。お前のことだったらそんな暑い格好してワイン持ってる中学生、そうそう忘れねぇよ」
言いながら、開けっ放しだった扉を閉める。重い金属が大きな音を立てると、それまでどこか呆けた様子だった白波は我に返ったように目を瞬いた。
それっきり黙ってしまった白波を問い詰める気も起きず、風也はゆったりとした足取りでフェンスのほうへ向かった。数メートル離れた場所から白波の視線を感じるが、とくに何も言ってくるでもない。風也も何も言わずに左手でフェンスを握り外を見下ろすと、体育祭真っ最中の校庭は、いつになく人と熱気と砂ぼこりでにぎわっていた。
まだ自分が出る競技まで時間がありそうだ。首に下げた青いハチマキを手でおさえつつ眼下の校庭を右から左に流し見る。ほとんどが豆粒のように見える中、見知った顔は背格好でだいたい見当がつく。
フェンス越しに眼下を見下ろしたまま、風也はおもむろに右手に声を投げた。
「何か用があってここに来てんの」
しばらくの沈黙の後、低い声が短く告げた。
「誰も来ない場所に……」
「あぁ、そういや前もそんなこと言ってたな」
ようやく視線を彼に向ける。はっきりとこちらを見ているその瞳は、どこか昏く、おぼつかない。まるで特別な意思もなくこの場に立っているように見えるのに、なぜかその目は明確にこちらに向けられていて、不思議な奴だと風也は目を細めた。そのままフェンスに背を向けてもたれかかると、さびついた甲高い音があたりに響いた。
「でもここ、オレ結構来るぜ。昼休みだと亜弓とか他のやつも来るし。まぁ今日は体育祭だから……」
風也はふと思いあたって言葉を止めた。
「あぁ、体育祭やってるから今なら誰も来ないと思ったのか」
白波は何も言わない。じっとその場に佇んだままの彼を、時折ふく風だけが軽やかに撫でていく。
彼から視線を外した風也は、フェンスにもたれかかったまま地面に胡坐をかき、ゆっくりと目を閉じた。静かな空間で目を閉じると、風だけが色濃く感じられて、気持ちよかった。
「悪ィけどオレ30分くらい寝てから下戻るから、それまで――」
「いや、もう用は済んだから、いい」
「え?」と問い返すより早く、
一段と強い風が、辺りに吹き荒れた。驚いて目を開けようとするが、風にあおられた金髪が視界を覆ってうまく開けられない。髪を抑える手の甲に、頬に、体に吹き付ける、芯の通った――風。
――まただ、と風也は思った。初めてここで会った時と、同じだと。
風がやんで目を上げると、やはり白波の姿は忽然となくなっていた。狐に化かされたような気持を味わいながら、しかし風也は、肌に残る風の感触に、言いようのない違和感を感じていた――
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