コメディ・ライト小説(新)

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First love is you.
日時: 2018/05/03 17:50
名前: Turtle (ID: BoGAe/sR)


《Prologue》

「黒縁眼鏡に整えてもいない髪。あまり笑うこともなく、クラスの中心的人物ではなくて、自分の席で黙ってゲームをしているようなタイプの人。でも挙動不審でコミュニケーション障害があるとかそういうのじゃなくて、どちらかというと一匹狼。集団の中にいても差し障りなく女子とも話が出来るけれど、なんというか、the普通人間。まあ、そんなところが好きなのだけど」



美人でとても一途な十七歳の女子

鳴海 芳香



あまり感情表現をしない平凡男子

同級生 佐田 秀太



ピュアな眉目秀麗モテ男

後輩 楠見 良馬




Re: First love is you. ( No.1 )
日時: 2018/05/06 22:16
名前: Turtle (ID: BoGAe/sR)



《第一話》

高校の初登校日。
女子達がグループ作りの為のLINE交換をする中、私は目をキョロキョロと右往左往させながら戸惑っていた。中学からはだいぶ距離があり、見る限りクラスに中学の同級生の姿はない。あまり対人関係に積極的ではない私の、唯一無二の親
友の椎菜は別の高校に行き、初日ながらもう孤立してしまいそうだ。

「鳴海さん、だよね?」

突然話しかけられ、明らかな動揺をしてしまう。

「……は、はい」

話しかけてきた人は女子全員とLINE交換していた、中心的な人物。顔も可愛らしい感じで、彼女は自身のスマホを取り出し、「LINE交換しない?」と言ってきた。返事は勿論オーケーで、数分も経たぬうちに、母と椎菜以外のLINE友達ができた。

そんなこんなで、高校初LINE友達の中村さんとはその後も仲良くしてもらい、クラスで孤立することなく、三ヶ月が経った。

数学の授業中。始まってから十五分ほど経っているが、前の席の佐田くんが机の中でこっそりゲームをしているのが丸見えなのが気になって仕方がない。数学の担当教師は怒ると結構怖いので、数学は皆真面目に受けているというのに、佐田くんは……。

私は教師の目を盗んで佐田くんの背中をシャーペンの丸くなっている頭でつんつんとつつく。二回目でようやく振り返った佐田くんは大真面目な顔をして首を傾げるので、ゲームを指さしてから教師を指さし、頭の上にツノを作る。ああ、と理解出来た様子の佐田くんは前に向き直り、ゲームを鞄にしまった。

こんな馬鹿らしいやり取りが毎日繰り返され、彼の優しさや気遣いなど、私はいつの間にか意識するようになっていた。彼はさりげなく優しくしてくれるので、そこに惚れてしまったのもある。

暑さが激しくなり始めた夏の日が傾き始めた頃、放課後の教室で一人での日誌を書き終わり、靴箱へと向かっている。少しの寂しさと、虚しさを感じながら角を曲がると、白いワイシャツの背中があった。

「佐田くん……?」

それは振り返り、見知った顔が現れた。彼は慣れた様子で立ち上がり、

「早く帰ろうぜ。待ちくたびれた」

そう言った。

その瞬間、私は彼に完全に堕ちてしまった。

Re: First love is you. ( No.2 )
日時: 2018/05/08 21:02
名前: Turtle (ID: BoGAe/sR)



「先輩。どうかしたんですか」

さっきから相槌は打つものの、考え事をしている様子の鳴海先輩に聞く。

肩下のミディアムヘアに、大きな目、小さい鼻や口のバランスは良く、彼女はとても美人だ。儚げな雰囲気もある。
先輩ははっとしたように我にかえり、「なんでもないよ」と笑うがまだどこかぼんやりとしている。さっき廊下でばったりと会い、角で談笑していたのだが、ずっとこの調子でこっちの調子も狂う。

「先輩、悩み事とかあるんだったら言ってください。俺、悩み事くらい聞けます」

「うん、ありがとう。でも、大したことないから。それより、一年生の子が凄い見てるよ」

苦笑した先輩は、柱の陰を指さす。そこには同級生の女子がいて、チラチラとこっちの様子を伺っている。またか、と頭を抱えながら先輩と別れ、彼女の元に行く。彼女は俺に言った。

「今日の放課後、16時30分に1-Aの空き教室に来てください」


・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後の16時30分に予定通り空き教室に行くと、彼女は先に来ており、俺が教室に入ると姿勢を正した。

「楠見くん、呼び出してごめんなさい」

彼女は最初に謝ってきた。ショートヘアで華奢な人。

「暇だったし大丈夫」

「……私と付き合ってくれませんか」

「……ごめん。今は誰とも付き合う気がないから」

人からの好意を拒絶するのはこんなにも心が痛むのか、と感じて数十回目。いままで女性と付き合ったことは、中学の一回しかないし、それも付き合っているのかどうかわからない状態だった。相手からの好意で付き合う場合は、うまくいかないのかもしれない。

「そうですか。ありがとうございました」

意外とあっさりと引き下がった彼女は、強がりなどなく、何事もなかったかのように教室を出て行った。一気に疲労蓄積し、はぁ、と息を吐き出す。

こんなときに先輩いたらが優しい言葉をかけてくれるのだろうと思う。

ハハッと自嘲の笑い声を上げ、扉を開けると、俺の教室の前で壁にもたれかかっている先輩がいた。少し俯きがちなので髪の毛で表情は見えないが、引き寄せられるように彼女のもとへ向かった。

「先輩、どうしたんですか」

「あっ、空き教室にいたんだ。教室にいると思ってた。あの、この間借してくれたハンカチを」

先輩が手に持っているハンカチを手渡ししてくる。それを受け取り、

「ずっと待ってたんですか?」

「うん。明日から私、あんまり時間がなくて。……帰ろうか」

先輩は俺をなんとも思っていない。

それでも、先輩の優しく、穏やかな包容力にはとても惹かれる。

誰もいない放課後の学校だからだろうか。日が傾いた空虚な時間だからだろうか。

先輩のことを無性に自分一人のものにしたくなった。

Re: First love is you. ( No.3 )
日時: 2018/05/15 15:08
名前: Turtle (ID: 97g6Isa9)



高校二年生でのクラス替えで佐田くんと別のクラスになってしまい、それをきっかけに私は彼に告白をすることにした。といっても告白にも準備期間が必要で、約三ヶ月間、どこでどうやって告白するかを考え続けた。その間に一年生の楠見くんと仲良くなり、長くて短い期間だった。そして、日差しが強くなり始めた頃、私は夏休み前日に佐田くんと偶然にも二人きりになり、勇気を出して告白した。


放課後、夏休み前で皆が心を躍らせ次々と帰宅していく中、佐田くんは一人黙々と日記を書いていた。私も鞄に教科書を詰め、さりげなく佐田くんの日誌を覗く。


「……鳴海、日直だっけ?」


不意に彼が顔を上げ、胸がどきりと高鳴る。


「いや、違うよ。ちょっと話があって」


「話って?」


日誌を書く彼の手が止まり、私を真っ直ぐと見上げるのを見ると、彼は本当に誠実な人なんだと感じる。


焦って取り乱しそうになりながらも、「日誌書き終わるまで言わない」と言うと彼は首を傾げながらも少し微笑み、再開した。再び教室に沈黙が走り、気まずさでその場を離れ、窓を開けて風に当たる。爽やかな風が顔や身体に当たり、さっきまでの身体の熱を奪っていき、そのおかげで気分もすっきりとした。


「佐田くんは誰かと付き合ったことはあるの?」


佐田くんに背を向けながら訊く。数秒開けて彼は返事をした。


「ある。一回だけど」


「そうなんだ。私は一回もないのに、先を越された」


日誌を閉じる音とともに、彼は立ち上がる。背後を通る足音は黒板の近くに行き、私の隣へと来た。


「佐田くん」


隣に立っている佐田くんは、その呼びかけとともに私を見る。


「佐田くんのことが好きです。……付き合ってくだ」


「ごめん」


告白しようと思ったのは佐田くんも私に好意を抱いていると思ったから、とかではないが、私の言葉を遮るように断られたのがとてもショックで、同時に羞恥心で顔が熱くなる。


「先、帰るわ」

そう言って出て行った佐田くんの背中は、告白に対する拒絶と私自身への拒絶が強く現れていた。


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