コメディ・ライト小説(新)
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- 栢野少年の初恋と冒険
- 日時: 2018/12/27 12:15
- 名前: かかろっと (ID: 3NNM32wR)
「――栢野くん?」
満員電車、
臭い息のおじさん、
参考書を読む学生、
スマホをいじるお姉さん、
「ごめんなさい、人違いでした……!」
俺の名前を呼ぶ、知らない女の子。
- Re: 栢野少年の初恋と冒険 ( No.1 )
- 日時: 2018/12/27 12:49
- 名前: かかろっと (ID: 3NNM32wR)
第一話
電車に揺られる時間はいつも憂鬱で、スマホをいじる意外にやることはない。ブロックを積み重ねてどんどん消していくだけのゲームを延々とやり続けていた。86ポイント、多分史上最低記録。
そんな些細なことにさえ、ストレスが溜まる。一回1000超えしたんだけどな。てかこんなの絶対無理じゃんクソゲーだろ。
「あ、すみません」
腹のあたりに軽い衝撃、顎のあたりでふわりと香るいい匂い。その二つの犯人は俺のほうを見向きもせずに謝罪して本を読んでいる。
バカから超天才まで揃う私立学校の制服を着ていて――分厚くて文字が小さい本を読んでいたから、彼女は恐らく上のほうのクラスだろうと思った。
それにしても、今日は電車がやたらと混んでいるらしい。俺と女の子は、日常生活では決してないような異常な密着度だった。年頃の男子としては、多少ドキドキする。こんな状況、毎朝慣れきっているけど、そのたびこうだ。
「ひゃっ」
電車が大きく揺れた。満員電車の上に運転が荒いなんか最悪だ、と思いながらブロックを消した。鎖骨あたりに、さっきよりは重い――けれど軽い衝撃が走った。スマホをいじる俺の広げた腕の中に、すっぽりと入り込んできた女の子。目が大きくて、顔が小さい。多分、とてつもなくかわいい。
「――カヤノくん?」
「……へ?」
自分でも呆れるほど間の抜けた声が出た。こんな可愛い子を前に自分はなんて、ああ、もうダメだ。
「ごめんなさい、人違いでした……!」
いや、俺の名前はカヤノだけど。栢野だから、多分間違ってはいないけど。もしかしたら茅野かもしれないし、俺とは違うカヤノかもしれないし、そしたらきっと人違いだし。どう答えるべきかわからず、俺は曖昧にお辞儀をした。
「次は中庄――左側――二番乗り場に、」
「あっ、降ります」
本を閉じ、女の子が細い体をねじって一生懸命前進していく。急がないと、ドアはあっさり閉じて、置いていかれてしまうから。
俺は、なんでそんなことをしたのか分からない。
「あ、ちょっと、すみません」
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