コメディ・ライト小説(新)
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- いつかは。
- 日時: 2019/01/04 23:08
- 名前: 林檎 (ID: aeLeTDX9)
いつかは。
ある中学校の、女子バレー部のお話です。オチなし、全体的にのんびりしてます。いろんな名前が出てきますが、 キーパーソンとかいるわけではないので、気にしないでください。勉強の息抜きで書いているので、文章は拙いのですが、お許しください。キャプテン目線で進めていきます。
背番号一番、カナ。私はこうみえてキャプテンである。つっても、うちの部活はちょっと特殊で、部長とキャプテンが別々だから、試合中以外私の役目はとくにない。
ユズ「ね~カナ、邪魔。こんなど真ん中にたたずまないでよ。ただでさえでかいのに。」
サナ「ユメ、またカナがぼーっとしてるー」
ユメ「よし、川に投げ捨ててこよう」
おい、それがキャプテンに対する態度か、貴様ら。
カナ「ちょっと君たち、カナに対する敬意というものは・・・」
ユメ「は?」
カナ「すみません」
部長のユメはめっちゃ怖い。女バスの部長としょっちゅうけんかしてる。だがしかし、かなりアホだ。この前の数学の小テスト、確か13点とかとってた気がする。でも言ったら間違いなくボール投げられるから、言わないでおこう。
リン「おーい、皆集まったし準備終わったからそろそろ始めるよ。ユメ、ボールアップの指示出して。」
ユメ「はーい。」
キャプテンはよく魂ぬけてるし、部長はあほだから、実質うちの部をまとめてるのは副部長のリンとリカだ。二人とも頭よくて、二人で生徒会の副会長とかやってたりする。クラスも同じだから、なんか困ったらリンリカに言えば何とかなる、みたいな風潮があるらしい。ちょっとかわいそうな気もするけど、実際二人に頼めば大抵のことはうまいことこなしてくれるのだ。なにより、リンは自分の意見結構ずばずば言うから、ほんとに嫌だったらちゃんと伝えてくるだろう。そんなこんなで、うちの部は二人に頼ってしまっているというわけだ。いや、私だって仕事手伝ったりはもちろんしてますよ?
リン「おいカナ、ぼーっとしてんなよ。」
リカ「目どっかいってるよ?」
ユメ「うーん仕方ない、これはもう罰ゲームだな。よし、
みんな、かかれーーーーーーーーーーーーーーー!」
十人くらいが、一斉に私の腰めがけてとんできた。どうやら、ジャージのズボンを脱がそうという魂胆らしい。まあ、女子しかいないし、パンツくらい・・・ ちょっとまって。今日、よりによってくまさんの・・・・・・・・
カナ「ぎゃああああああああああああああああああああああ
やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ルナ「逃げた!逃げたぞ!」
アヤ「つかまえろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
なんなんだ、ほんとになんなんだ、この状況! 後輩たち困ってんじゃん。一部大爆笑してるけど。ほんとに皆くだらない。こういうとき、止める人がいないんだよね、この部・・・
でも、私はそんな女バレが結構好きだったりする。毎日くだらないことして、練習始まったら皆超真剣で、ときどき笑いが混ざって。こんな日々が、ずっと続けばいいのにっておもう。
・・・とはいえ、この状況は何とかしないと。あんなパンツ見られたら、変なあだ名つけられるのは目に見えている。
カナ「もう、みんないくらカナのこと大好きだからって、こういうのは良くないぞ☆」
ユズ「はーい、処刑確定でーーーす」
ユメ「アヤ、サナ、はさみうちだ!」
カナ「え、ちょ、ま、やめろおおおおおおおおおおおお!」
がらがらがら・・・・
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
先生「・・・・・・部活もはじめないで・・・・・お前ら何やってるだあああああああああああああああああ ああああああ!!」
こうして私のパンツは守られたわけだけど、その日のトレーニングは三倍になりました。
・・・・・ほんとに何やってんの、わたしたち。
こんなにふざけた部だけど、実は結構つらい経験もしてるんだよね。あれは、十月の終わりの大会で・・・
*
足がこわばって動かない。汗だくなのに、手は凍っているように冷たい。後輩たちが、苦しそうな顔で応援の言葉を叫んでいる。先生たちが、怒鳴っている。「がんばれ」とか、「おちつけ」とか、「なにやってんだ」とか、「大丈夫」とか、いろんな音が体育館に響いている。でも、どんな声も今の私達には届いていない。聞こえるのは、早くなり過ぎた自分の鼓動と、「どうしよう」と焦る心の声だけ。険しいユメの顔がみえる。苦しそうなリンの顔がみえる。アヤが呆然としている。ミミとメイは泣きそうだ。エナはうつむいてしまっている。
ユメが打ったボールはネットに引っかかって落ちた。リンがジャンサーをミスった。ミミとエナのコンビ攻撃が合わない。少しずつ、少しずつ、チームの歯車がずれていく。
私が、何とかしなきゃ。私は、キャプテンだから。私が皆を支えなきゃ。助けなきゃ。
でも
恐い。
すがるようなベンチメンバーの目も、頭を抱えて下を向いている先生の姿も、戦意喪失寸前の皆の顔も、いろんな声で溢れかえるこの空気も。全部怖かった。
そして、私にトスが上がった。こわばっている足では全然うまく飛べなくて、私の手に当たったボールは目の前の黒い網に吸い込まれて、タン、と床に落ちた。試合終了の、笛が鳴った。
その日からの練習は、全然楽しくなかった。練習量が大幅に増えて、休みもなくなって、先生がよく怒鳴るようになって、毎日誰かが練習の後に体育館の隅で泣いていた。あんなに部活が楽しかったのに、今の皆の目はうつろで、次第にバレーすら楽しいと思わなくなっていった。
そんなある日、メイが過呼吸をおこした。スリーメンの最中、口元を抑えるメイにリンが気づき声をかけたところ、どんどん呼吸が荒くなっていき、しまいには座り込んでしまったらしい。
メイは、ひとしきり落ち着いた後に、大粒の涙をボロボロ流しながらこういった。
メイ「私達、このままでいいのかな。あんなに部活楽しかったのに。私はこのまま引退なんて嫌だ。 私、もっと頑張るから、もっとうまくなるから・・・」
いい加減話し合いをしよう。
そういったメイの目から涙が一粒、かすかに雨の音が聞こえる薄暗くてぼんやりとしていた体育館の床に落ちた。
みんな泣いていた。みんな、前みたいに戻りたいと強く願いながらも、こうでないと強くなれないのではないか、あの日のようになってしまうのではないかと思って言い出せず、苦しんでいたみたいだった。
私も苦しかった。こんなダメダメなキャプテンを叱りながら、それでもついてきてくれるみんなが苦しそうにバレーをしているのが何より悲しかった。何とかしなきゃ。そう思って私とユメは緊急ミーティングを開いた。
ミーティングを開いたのは正解だった。「絶対に勝たなければ」その自分たちの気合が、自分たちを押しつぶしていたんだ。じゃあこれからはどうすればいいんだろう。そこから、新しい応援歌とか、試合前の気合の入れ方とかで盛り上がちゃって、最後には先生のお叱りを受けたけど、みんな笑ってた。先生も笑ってた。
やっぱり私たちはこうでないと。ここからまた新しい一歩を踏み出そう。壁にぶつかっても、そのたびにみんなでこうして乗り越えていこう。大丈夫。私達ならきっと、強くなれる。
*
あの日から、部活は明るさを取り戻した。もちろんきついけど、なんか充実感みたいな。みんな生き生きしてるよね。今は、新しいコンビ技とか練習してる。なんかワクワクするなー・・・
ユメ「先生、またカナがぼーっとしてます。」
先生「ほお。よし、カナ、スパイク三十本連続いくぞー」
カナ「え」
き、きつかった・・・・・メイとリンに全部レシーブされたし。ユメはにやにやしてるし。
ああ、今日も部活が終わる。いつかは本当に終わってしまう日が来るんだ。寂しいけど、でも、その日まで、私は全力でがんばりたい。私、もっと強くなるよ。大好きな、女バレのみんなと一緒に。
完