コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 雨降る本屋とちびっ子姫様
- 日時: 2019/01/22 15:27
- 名前: 灯火 霊美 (ID: 3KWbYKzL)
ぽつん、ぽつん、ぴちゃっ
ぽつん、ぽつん、ぴちゃっ
雨降る日だけに彼女は毎日現れる。
傘をさして、本屋が開くまでずっと待って、いつも楽しげに何時間でも待っている。今日は閉店、そう言っても帰ろうとしない。
これはある少女の物語……ー
**もくじ**
1.そして彼女は現れた >>1
- Re: 雨降る本屋とちびっ子姫様 ( No.1 )
- 日時: 2019/01/22 16:16
- 名前: 灯火 麗美 (ID: 3KWbYKzL)
ある晴れの日、僕は思い出した。
明日、雨が降るとしたら。
彼女はまた来てくれるだろうか。
———————————————
「ちょっと〜佐々木くーん」
「あっ、はい」
僕は佐々木涼介。普通の本屋で働いている普通の社会人だ。
「すまないけど、あそこの本の整理今日中にできない?ほら、昨日言ったとおりもう少ししたら出かけちゃうからさあ、前川さんとやってもいいけど……」
春菜とは小学生からの幼馴染だ。実はちょっと気を寄せている相手でもある。
「!わかりました!」
「ああ、よかった。助かるよ」
「いえいえ」
すると突然ザーザーという音、ゴロゴロッピシャッと雷の音が聞こえた。
さっきまで晴天だったのに嘘のようだ。
「行くんですか?」
僕は店長に問う。
「そうだね、行かなくちゃ。こりゃ帰りが遅くなりそうだよ……」
「大丈夫ですよー」
春菜の声だ。
「おお、助かるよ、そうだ、佐々木くん君の口から説明しておいてね」
えぇ……
「わかりました」
しぶしぶと頷いた。
「じゃあね〜」
店長はガラガラっという音を立てやがて車の音もした。
「んで?説明ってなによ」
「えっと……」
「どうせ本棚の整理でしょ?」
「え、そうだけど」
なんでわかったんだろ。
「そういえば、お客さんがそっちに居たわよ。接客してきなさいよ。こっちは任せて」
「ええ……」
せっかく春菜と……。
「ほら!早く」
「わかった!」
春菜がさした方向を見ると、まだ小さな少女が1人。
勇気を出して声を出そうとすると…パッと少女がこっちを向いた。
「何かお探しでしょうか」
緊張感で苦笑いになってしまったが、なんとか言えた。
「探してないですよ」
まだ小学6年生くらいで背は小さい。
「え……」
「不満でもありますか?何か言いたそうな目ですけど」
「いっ、いえありません!」
女子って全員こんなんなの?…お母さんや妹を除いて春菜としか接したことがないから、全く知らない。
「なら邪魔しないでください。本の声を聞いてるんです」
は…?と疑うような言葉を耳にした。
「信じられないでしょうね、いいんですよ」
「いや、疑ってないです!!!」
「ほらね、私なんて言った?『信じられない』って言ったじゃないですか。疑ってるなんて言ってません。貴方って、顔にも言葉にも出やすいタイプなんですね」
少女はどこか寂しさもある涙笑いをした。とても小学生と思えないほどの口調でペラペラ喋っていた。話がついていけず、頭は聞くのでいっぱいでした。
「ちょっとお話し付き合ってくれます?」
「は、はぁ…いいですけども」
「私は流雨」
急に名前を教えてきて。これには驚いた。
「おかしいでしょ、笑っちゃいますよね。でも貴方とは話す機会が多くなりそうだから…うふふ。そして小学6年生です。よろしくお願いいたします」
話す機会が多くなりそう…?そこはいいとして、今考えるとこんな古い本屋、こんな小さな子供が知ってるとは…。
「急に話変わりますけど…えっと…その………保護者様は?」
ああ、保護者なんて言ってもわからないかな。ここは……
「お母さんやお父さんは来てないですよ。ひとり」
「そうなんですか……」
「それに貴方、敬語使わなくていいんですよ?私はまだ小さいですし、貴方社会人くらいでしょう。逆にこっちがおかしくなりそうです」
確かにそうかもしれない。でも……
「ですが、お客様ですし……」
「そんなのどうでもいいんですよ。私は気に食わないんです」
「せめて名前には…」
「んーそれはいいですよ。あ、私は、鳴海流雨です。な・る・み!」
「鳴海……?もしかして……!」
「ああー……言わなきゃ良かった気がします」
あの鳴海財閥の????!!!
「えーと、別の鳴海です」
「嘘!…マジかぁ……」
「貴方敬語じゃなくなると親しむやすいですよ。そのまま…キープキープ」
「は…………うん」
「まーさっきのは嘘です。鳴海財閥のですよ。言わないでくださいね、私も言わなきゃよかった……」
別に態度は変えない。なんたってちびっ子姫様のお願いだったんだからね。
ー続くー
Page:1