コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 毒舌猫又の恋物語
- 日時: 2019/02/02 17:47
- 名前: 柚丸 (ID: UwsudxVD)
おや、いらっしゃい。君も物語の一つを見に来たのかい?
え?お代?お代は要らないよ、僕が聞きたいのはお客様の感想だけ。それだけ聞かせてくれれば他に何も要らないよ。
じゃあ、君は何の物語が見たい?姫君を助けるために邪悪なドラゴンを倒しに行く勇者の物語?それとも、誰にも認められなかった悲しい男のサーカス物語?さぁ、君はどんな物語が見たい?要望を聞かせておくれよ。
…え?何でも良い?僕に選んで欲しい?
うーん……僕が最も返答に困る要望だねぇ……あわわ、分かったからそんな泣きそうな顔しないでー。
しょうがないなぁ……本当にどんな物語でも良いんだね?まだ君の趣味とか好みとか聞いてないけど……見た後に文句言わないでね?
あ、今君しつこいって思ってるね?
アイテッ?!
分かった、分かったからそんなに睨まないでよ〜……殴られたところがジンジンするよ全く……もう、乱暴だね君は…。
はぁ、しょうがないねぇ……じゃあ何の物語にしようかな?
大金を手にし付け上がった女の物語……は駄目だねぇ。これは後味が非常に悪いし、僕としてもあんまり好きな物語では無いからね。
時間を止めて好き放題する男の話……うん、これは駄目だね。色んな意味で。下手したら僕が消されかねないし、この物語は後でそういうのが好きな人の専用のコーナーに置いておこうそうしよう。
…ん?はよ選べって?全くせっかちだねぇ君は……僕に選んで欲しいって言ったのは君じゃないか……。
うーん……じゃあ、こういう物語はどうだい?人間が大嫌いな猫又と人間の恋物語。これは今さっき仕入れた物語何だけどね、個人的にはこれがオススメだよ。
人間の邪悪な部分を映し出していて、僕が最も好きな物語の一つさ。これにするかい?お客様?
…はい、まいど。じゃあ、物語楽しんでおいでよ。後で感想聞かせてね。
……ん?その前に、僕は誰かって?
…さぁね?僕は人でも人外でも無いよ。何者でも無い隔離された存在さ。”地球”という青い星の住民は僕の事を神様というらしいな。
さぁさぁ、そんな雑談は良いから。折角の物語が冷めちゃうよ?
…じゃあ、行ってらっしゃい。良い物語を。次に目覚めるのは来週か、はたまた来世か。それは誰にも分からない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
皆様初めまして!柚丸と申します。
シリアスとコメディと恋愛を合わせて書いていくので、よろしくお願いします!
主人公とヒロインの恋愛もそうですが他の登場キャラクターの恋愛も余裕があれば書きたいと思います(^^)
- Re: 毒舌猫又の恋物語 ( No.1 )
- 日時: 2019/03/24 19:52
- 名前: 柚丸 (ID: UwsudxVD)
第一話「出会い」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……寂しい、なぁ……」
駅前のベンチに座り、目の前を忙しそうに行きゆく人達をぼんやりと眺めながらそんな事をボソリと呟いた。
今日は日曜日という事もあって、様々な方向に歩いていく人垣は途切れる気配も無かった。それに、季節は夏真っ盛り。
いくら日陰のベンチに座って帽子を被ってたとしても、暑いのには変わりない。
頬に張り付いた髪を耳にかけると、手がジットリと濡れる感覚を感じた。
「ハァ……」
やり場の無いため息をつき、何となく空を見上げた。
雲一つない綺麗な青色の空。サンサンと輝く太陽が心做しか通行人を上から見下してる様に見えた。私は憎々しげに太陽を睨み、太陽の光で目が痛い為また直ぐに視線を道行く人々に戻した。
「暑"い"い……アイスとかないの茜?」
家事やゴミ出し等、別にやるべき事は全て済ませた。
その後はひたすら扇風機に当たって涼んでたが、何かが物足りないと思いこうしてうだる様な暑さを我慢して外に出てきた。
物足りないと思った理由は簡単、友達がいないからである。
私こと荻野 茜は、昔から何かと友達に恵まれない。
友達を作る秘訣を学んだり、自分磨きも沢山した。
それこそ、血の滲むような努力を。
悪戦苦闘の末に辿り着いたのは、何とも悲しい事に孤独だった。
「ちょ、無視すんなって茜!」
理由は直ぐに分かった。
私が、"視える体質"だからである。
この世界には、妖怪や悪霊等人ならざる者達が存在する。
人間という生き物は、自分とは違う生き物を忌避する傾向がある様で俗に言う人外達を無差別に嫌っていた。
ただでさえ人喰い妖怪等恐ろしい妖怪も存在する今のご時世、そうなるのは仕方ないかもしれない。
話が逸れたけど、そんな人外嫌いのご時世の中で視える私は恐怖の対象でしか無かったらしい。昔から、私の周りには幽霊や悪霊等が集まりやすいらしくいつも爆発物を扱うかのように避けられていた。
「泣いちゃうぞ?オイラ泣いちゃうぞ?」
そして、あろうことか私は人に化けた妖怪という根も葉もない噂が流れ更に私の周りには人が寄り付かなくなった。
もちろん必死に反論したけど、幽霊や悪霊に好かれてるらしい私じゃあ説得力は皆無だった。
虐められはしなかったけど、遠くから忌避の目で見られるのはとても心に来た。
だけど、そんな中一人だけ私を怖がらず接してくれる友達がいた。
その子の名前は、天沢 柚。
名前の通り、女の子である。
柚とは、中学と高校とかなり長い付き合いだった。
「タンスの角に小指をぶつける呪いをかけるぞ?いいのか?」
大人しいけどキレると怖かった柚。
時には取っ組み合いの大喧嘩をしたり、父親と大喧嘩した柚の家出を手伝ったりした。
家出二日目にして、柚と共に警察の人に補導されて先生と両親にこってり絞られたけどね。
一度、柚に「なんで怖がらずに接してくれるの?」って聞いてみた。
すると、柚は呆れながら「なんで視える体質ってだけで忌避されなきゃいけないの?私は、もし柚が本当に妖怪だったとしてもずっと友達でいるよ」と言ってくれた。
人生の中で、そんな事を言ってくれた友達は柚だけだった。
クラスの男子に私を貶されて本気でキレてた柚は怖かったなぁ……。
とにかく、色々ありながらも柚と過ごした学園生活はとても楽しかった。
卒業後も、ずっと一緒にいるつもりだった。
だけど、幸せはそう長く続かなかった。
柚の実家は田舎の団子屋を経営していたらしい。
元々は柚の実兄である伊織さんに団子屋を継がせる筈だったそうだけど、伊織さんが俗に言うヒキニート状態だったらしく急遽柚に団子屋を継がせる事にしたらしい。
結局、柚は生まれ故郷である長野県に帰ってしまった。
家庭の事情にとやかく言う気は無かったけど、柚を見送る時は幸せから急にどん底に落とされた気がしてかなり辛かった。
「(´・ω・`)」
家族も案の定人外嫌いで、私を無いものの様に扱っていた。
柚以外の友達が出来る事もなく月日は流れ、いまや私は20歳の立派な大人になった。
現在家族と親戚とも絶縁状態。
一応カフェでバイトをしているけど、小中高の時と変わらない。
まぁ、キッチリ給料は貰ってるから文句は言えないけど。
前置きが長くなったけど、要は誰とも関わりを持ってないので何か機会を探しに駅まで来たという訳である。
でも、もう何となく結果は分かっていた。
待ってたって素敵な出会いが来る訳でもない。
半ば、人と関わりを持つことを諦めかけていた。
「あーかーねーぇ!」
まぁ、そんな甘い事言ってるうちに人じゃない物と関わりを持つ事になったけどね……。
さっきから、私の耳元でギャンギャン鳴きまくる白い体毛に覆われた肩乗りサイズの幼龍を顔を向けずに横目で睨む。
「さっきから煩いよ虎丸……何?」
幼龍の名前は虎丸。
一年位前、今日と同じ暑い日に道端で子供に虐められていた為助けた龍の子供だ。
家に連れ帰って手当てをしたら何故か懐かれたからそこから一緒に過ごしてた。
最初の頃はやっと友達が出来たと思い有頂天になってたけど、バイト先にも着いてくるし真夜中に大音量で鳴きまくるしでちょっぴりウザイ。
因みに、虎丸は普通の人には見えない妖術を自分にかけている為一応小声で話している。
そうでもしないと、何も無い空間に喋りかける痛い人になりかねないからね……。
「やーっと気付いてくれた……なぁ茜、暑いからアイス買ってくれねぇか?」
暑いなら家にいりゃあ良いのに……なんでわざわざ着いてくるんだよ……。
そういう思いを込めて顔を向け虎丸を睨んでも、本人は不思議そうな顔でキョトンと首を傾げてるだけだった。
煩いけど顔は可愛いから中々憎めないんだよなぁ……。
「良いけど……家に帰ってからで良い?」
「良いぞ!じゃあカリカリ君でオナシャス!味はソーダで!」
「ハイハイ……」
出会った当初は何を与えればいいか不安で仕方なかったけど、人間の食事もいけるらしい虎丸は特にアイスが大好物だった為たまにアイスをコンビニに買いに行くのが習慣になった。
アイスなら近場のコンビニで安く買えるしね……。
カリカリ君♪カリカリ君♪と上機嫌で肩を跳ねまくる虎丸を宥めながら、ベンチを立った。
虎丸自身フワフワの体毛に覆われている為、肩で跳ねられるとかなり暑苦しかったりするけどそこは我慢だ。
人混みを避ける様に、端っこを歩いて駅とは反対方向の帰路につく。電車に乗っていく程遠い訳でもないけど坂が結構あるので割とキツかったりする。
肩で跳ねられると肩が凝りかねないので、虎丸を両手で抱いて歩き始める。
「おやぁ?珍しいですねぇこんな所に幸龍の子供等」
後ろから聞こえた舐めるようなネットリとした声に、思わず鳥肌が立ち固まってしまう。恐る恐る後ろを向くと、白衣を着た人達がニヤニヤと気持ちの悪い笑顔で私と虎丸を見詰めていた。
そして、その後ろには防護服に身を包んだ人達が銃を虎丸に向けていた。
その人達は、明らかに虎丸を狙っていた。最初はよく分からなかったけど、記憶を掘り返してるうちに思い当たる物がヒットした。
「妖殺と……妖研……?!」
妖殺とは、人喰い妖怪等の危険な妖怪を排除したり捕獲する警察の様な機関という事をネットで見たことがある。妖研は、妖殺が捕獲した妖怪を研究して生態等を調べる組織だって、前に本で見たことがあった。
確か妖殺は妖殺しの略、妖研は妖怪研究所の略だった筈……。
でも、なんで……!?
「おやぁ、察しが良いですねぇ。私達妖研は、貴方が抱いている幸龍の子供を研究したいのですよ。なんせ、龍の妖怪は珍しいですからねぇ」
先程、私に話し掛けた(?)妖研の人が鼻を高くして自慢気に言った。
虎丸は、腕の中で着ているTシャツに顔を埋め震えていた。実は、虎丸の親は虎丸を庇って妖殺に命を奪われていたらしい。
だから己を助けた私に懐いたんだ。
少し前、ボソリボソリと虎丸が涙混じりに打ち明けてくれた。
だから、己の親を葬った妖殺がよっぽど怖いんだろう。チラリと虎丸に目をやると大きな青い瞳に涙を浮かべ不安そうに私を見ていた。
少し気になる事があり、私は虎丸を腕に隠し妖研と妖殺に向き合う。
感情が不安定になると術が解けてしまうらしく、周りには野次馬が集まって来ていてヒソヒソと小声で話をしていた。
「研究に使うって……研究した後は、どうするんですか……?」
「そりゃあ、廃棄処分しますよ?当たり前じゃないですか、研究した後の妖怪なんてただのゴミ以下ですから。むしろ研究してやってんだから感謝して貰いたい位ですねぇ」
……は?
廃棄…処分?ゴミ以下……?
ギリリと、無意識に拳を握り締めた。言い様の無い怒りが、心の底から湧き上がっているのが分かった。妖怪の扱いが酷いのは知っていたけど、まさかここまでなんて……!
「んじゃ、雑談はいいんで早くその龍をこっちに寄越してくだs「渡す訳、無いじゃないですか」……は?」
野次馬達のヒソヒソ声が一層大きくなったけど、今はそんな事全然気にならなかった。
「虎丸は、私の大切な家族です。妖怪が何ですか、人外が何ですか?妖怪だって生き物です!人間と同じで、ちゃんと心を持っている。人喰い妖怪とかはまだしも、何の罪も無い龍の子供を研究に使うなんて……平等主義が、聞いて呆れますね。妖怪は、貴方達の私利私欲を満たす為に生まれて来た訳じゃない!貴方達に虎丸を渡す義務は、一切ありません!!」
言って……しまった。
話し始めたら、止まらなくなってしまった。
矢継ぎ早に言葉を紡いだ為、少し深呼吸した。
ただ自分が思った事を言っただけだけど、ちょっと後悔してるかも……。
自慢気に話していた妖研の人のこめかめに、だんだんと青筋が浮いてきた。周りの野次馬も、ほとんどが私を批判していた。
腕の中で震えていた虎丸が、目を見開いていたのが僅かに目の端に見えた。
「うっせぇんだよクソブスが!綺麗事ばっかり並べやがって偽善者がよぉ!!」
さっきの紳士ぶりは何処へやら、中指を立てて喚きまくる妖研の人。他の妖研の人や妖殺事人達も、ギャーギャー喚いていた。
ちょっと待って、反論したのは良いけどその後の事何も考えて無かった……。
どうしよう?
「どっーせお前も妖怪なんだろぉ?!おい妖殺!早くあの女を撃て!」
唾を飛ばしながら指示を出した妖研の人と他の妖研の人が後ろに下がり、代わりに妖殺の人達が前に出てきてこちらに銃を向けた。
「あ、ヤバ……!」
逃げようにも、野次馬の人達に囲まれているせいで逃げられない。しかもほぼ全員ご丁寧に石を持って投げるポーズを取っていた。
「うてぇぇぇ!!」
辺りに発砲音が響き渡り、周りの景色がゆっくりになった。確か、人間は死ぬ間際になると周りの景色がゆっくりなるって高校時代の先生が言ってた。
虎丸が何か叫んでいたけど、金縛りにあったかのように足が動かない。
私……死ぬの……?
「……ッ!」
数秒後に全身を襲うであろう激痛に耐えうる為か知らないけど、ほぼ無意識に目をギュッと瞑った。そして、多分意味無いけど身を屈めて虎丸に銃弾が当たらない様にした。
せめて虎丸だけは……!
体感時間で僅か一秒後に、辺りに金属音と何かが当たる音が響き渡った。
多分、今の私は全身に穴が空いているだろう。
だけど、いくら待っても痛みがこない。
不思議に思い、目を開けると目の前に車程の大きさをした二尾の黒猫が毛を逆立てて無言で妖研と妖殺を威嚇していた。
「……え?」
有り得ない光景に、思わず声が漏れる。
黒猫の尻尾は何か影の様な物を纏っていて、辺りには真っ二つになった弾丸と石が転がっていた。
二尾の尻尾を見て、猫又という種族の妖怪を思い出した。
確か、長生きした猫が妖怪になった姿……の筈。
「正論言われて射撃命令とか……どうやら、テメェら人間は大分腐ってる様だなぁ。後ろの女が人間だから見捨てようと思ったが……気が変わった。今時俺達妖怪を忌避しねぇ奴なんてかなり珍しいからな」
それが……私と猫又…いや、"疾風"との出会いだった。
この出会いが、後に大きな事件の引き金となるなんて……今の私には知る由もない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
途中から自分が何を書きたいか分からなくなった(´・ω・`)
どうしてこうなった\(^o^)/
- Re: 毒舌猫又の恋物語 ( No.2 )
- 日時: 2019/02/24 18:51
- 名前: 柚丸 (ID: UwsudxVD)
第一.五話「猫又」
「ふわぁ……眠ぃ」
大口を開け、欠伸をした後に後ろ足で耳の後ろを辺りを掻く。現在、俺は駅の屋根の上でのんびりと箱座りで日向ぼっこをしていた。
そのままだとかなり暑いので、影の妖術で薄い板の様な物を作り傘代わりにする。それでも少し暑いが、俺はこの場所が最近のお気に入りなので我慢する。
屋敷にいても稲荷がからかって来てめちゃくちゃウゼェから、この場所まで避難した訳だ。
何となく下を見ると、人間達が忙しそうに行き来していた。
日曜日だっつーのになんでわざわざ人が多い駅に来るかねぇ……。
あ、あの女子供蹴飛ばした、クソだな。うーわ、注意されたのに逆ギレしてやがる……イライラするなら家にいりゃあいいのによォ……俺には人間の考えが理解出来ねぇ。いや、理解したくもねぇけど。
「ふわぁ…………」
つーか、ホント眠ぃな……。屋敷帰って寝るか。稲荷に寝起きドッキリされてもハリセンで吹っ飛ばせばいいだけだし。
「……ん?」
妖術を解除して立ち上がると、一匹の幸龍の子供が目に入った。
ほぉ……珍しいな、今時幸龍の子供なんて……確か、幸運を呼ぶ龍として人間共に乱獲されてほぼ絶滅寸前ってハクが言ってたな……。
ま、ご愁傷さまとしか言い様がねぇな。しかも、あの幸龍の子供よりによって人間なんかに懐いてやがるし……人間の何処がいいんだか……ま、俺には関係の無い話だ。
そう思い、立ち上がると幸龍の子供に懐かれてる人間の女が妖研と妖殺の奴らに絡まれてるのが見えた。ほーら、駅前なんかにいるから……妖研と妖殺の奴らは妖怪を視認出来る様に機械を目に埋め込んでるのも知らんのかあの幼龍は……。
よりによって幸龍の子供が駅前に行くなんて自殺行為にも程があるだろ……捕まえてくださいって言ってるようなもんだ。無知のまま駅前に向かった幼龍と女が悪ぃな、ご愁傷さま。
そのまま向きを変えて去ろうとしたが、女が放った一言で俺の動きが止まった。
「虎丸は、私の大切な家族です。妖怪が何ですか、人外が何ですか?妖怪だって生き物です!人間と同じで、ちゃんと心を持っている。人喰い妖怪とかはまだしも、何の罪も無い龍の子供を研究に使うなんて……平和主義が聞いて呆れますね。妖怪は貴方達の私利私欲を満たす為に生まれて来た訳じゃない!貴方達に虎丸を渡す義務は、一切ありません!!」
ほぉ……?今のご時世に、あんな事を言う人間がいるなんてなぁ……おもしれぇ。気が変わった、人間を助けるのはかなり癪だがあんな貴重な人間むざむざ殺させてたまるか。
…………ん?ちょっと待て、あの女の霊圧の感じ……まさか?!いや、そんな筈は無い。あいつは、大昔に***筈……!
一歩踏み出そうとした足が、反射的に止まってしまった。グズグズしてる間に、妖研のリーダーらしき男から射撃命令が出された。
だーもうッ!!考える暇も無いってことか!仕方ねぇ!
「……チッ!」
軽く舌打ちをして、体を普通の猫の大きさから車程の大きさに変化し飛び降りた。ギリギリで、女と幼龍に攻撃が届く前に尾に影を纏い銃弾と野次馬共の石を撃ち落とす事が出来た。
「…………ッグ!」
だが、ホントにギリギリだった為一つだけ銃弾が俺の胸辺りに当たっちまった。しかもご丁寧に毒塗りの。
視界がぼんやりと霞むが、何とか踏みとどまる。
そのまま、無言で妖研と妖殺共を威嚇する。
「……え?」
後ろの女から困惑の声が漏れたが、完全に無視する。
「正論言われて射撃命令とか……どうやら、テメェら人間は大分腐っている様だなぁ。後ろの女が人間だから見捨てようと思ったが……気が変わった」
Page:1