コメディ・ライト小説(新)
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- 恋刻ノ御伽草子
- 日時: 2019/09/29 07:14
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: Ga5FD7ZE)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=11705
炎が舞う。其れは紅の華のようにも見える美しくも妖しげな火が辺りを包む。
魅入られてはならない、死に誘われるから。
「っ......何でこうなるんだ、よ」
その最中に死がすぐ其処まで来ているのにも拘わらず自分に対しての苛立ちからかそれとも後悔から来た言葉なのかは分からないが小さくしかしはっきり云い、持っていた刀が手から滑り地面に落ちた。
これで何回目? と誰かが男性に向かって問う。
「っ知るかよ。 俺が諦めるまでか、この結末を変えるまで何回も、何度でもやる」
だから、付き合えよ? とその誰かが男性には分かるのか声を聞いた途端、男性の表情が和らぎ、誰かに毒づきながらも不敵に笑って言う。
勿論。だけど、貴方の願いは? と男性に向けて誰かはまた問う。この返事をする前に男性は完全に火に包まれ消えて逝った。
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御早う御座います、キイチです。大分前ノートに書いていたのをリメイクして書いていきたいと思いますんで宜しゅう頼みますわ。
目次 >>01
小説家になろうというサイトに移りましたので此処は最新話やネタ作りに移行し他の話は削除します。ハンネは逢葵 秋琉で書いていますので、ご理解・御協力お願い致します。
- Re: 恋刻ノ御伽草子 ( No.3 )
- 日時: 2019/04/10 21:51
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: Jhl2FH6g)
彼が描き上げたのは鳩が手提げをぶら下げている絵、鳩と手提げの下に学園の名と自分の名と行き先を書き記す【能力特化学園 鴇永 空の机まで】と付け足した絵に空は息を吹き掛ける。すると、絵だったものは実体化しまるで生きているかのように動き出す。絵は実体化したからか描いた痕跡が消えていた。
描いたものが実現・実体化する能力で能力の名は【絵現】と云う。空は絵現と後2つ能力を持っていた。其れは書いたものにのみ書いた内容が本当になる能力で能力名は【有筆】。そして、もう1つの能力は空自身も知らないので現時点で使える能力は2つで、学園から認知されているのも2つのみだった。
空は絵現した目の前に居る白黒の鳩を見たのち、その手提げに今日使う教科書やノート、筆箱を入れてから窓を開ける。
「んじゃ、頼む」
鳩をゆっくり言葉と共に一撫ですると、鳩は空の言葉を理解したようにこくっと頷き、外へ羽ばたいて行った。その様子を見送った後、自分も学校へ向かうのか身を翻して玄関へ学校へと向かう。
階段を下りて真っ先に目に飛び込んだのは、目の前にある建物が洋から和に変わっていた。其れも何だか時代劇......否、戦国時代にあるような建物に変わっていて、空は え?とまだ夢の中かと目に映る光景が信じられずに瞬きを数回して目を擦る。しかし、目の前の光景、景色は変わらず現実だと悟る。
「あー...確か、放送で江戸時代を再現したとか何とかって云っていたような?」
聞き流していた放送の内容を思い出したのか、納得はしたもののこうも建物まで夢で見た光景と一緒だと愈々、現実味が帯びてきた為か、素直に凄いとか驚く事も出来ず覇気のないやけに冷淡とした口調で興味無さげにしかし、確信を持って云えないので疑問系になりながら自身の後頭部を無意識に掻いた後、放送に耳を傾けつつ歩き始めた。
『吉井先生の能力により昨夜で建物、学校等の建築物を作り、私の能力、時間旅行と複写で復元し風景までも当時のを再現して忠実に......嗚呼、生活に支障ない程度になって居るので、ガス・水道・電気、浴室・トイレは今まで通りに使えるようにしているので__』
「はー、放送越しで正解______っ?」
学校へと向かいながら放送を聞いていたが、長い。まだ聞いてから其ほど経ってない筈が聞き飽きたと聞き手に回る。聞くのが億劫になってしまうくらい酷く関心の得ないものでため息にも似た吐息を吐いてからこんな長話、校庭か体育館で聞かされていたらと思うと、違和感はまだ拭えないが、ただ棒立ちしながら聞くよりは幾分マシだと云うように声に出すも、その途中で背中に突き刺さるような視線を感じて固唾を飲む。
ピリピリと張り詰めた空気に一瞬して変わり、明らかに好意的じゃない視線。殺意を含んだ視線。だが、誰かに憎まれるような事はした覚えがない。
しかし、自分の知らない内に誰かに恨まれる。憎まれたり嫌な思いをさせたりなんてこの世界ではよくある事。その類いだと思いはするも、矢張身の覚えがない事だからか、徐々に歩くペースを早め、曲がり角に差し掛かれば直ぐ様、駆け出した。
- Re: 恋刻ノ御伽草子 ( No.4 )
- 日時: 2019/09/03 18:05
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: YohzdPX5)
空が駆け出すと、追い掛けてくる足音が複数聞こえて来る。1人だと思っていたからか、その多さに思わず振り向こうとするが
「いやー! ちょっ、ちょっと何で追い掛けてくるの?! 来ないで!」
聞き覚えのある声が空の耳に届き、反射的に足が聞こえてきた方へと駆ける。空が今の現状より優先したような行動は、同級生で友達の姫咲 千早の声だからというのが大きく、声を聞く限り混乱状態で空と同じ誰かに追われているような只事ではない状況だってことは声だけでも分かる。
近付くにつれ、行く手を阻んでいる。恐らく千早を追い掛けている見掛けない学園内には居ないような男達を見てぴんっと来たのかはっとしたような顔をした後に。
(あの校長、向こうの奴等まで複写したって事かよ!)
「っ姫早!」
空自身が付けた千早の渾名。この渾名は千早と初めて会ってから二日もしない内に付けて其れ以来ずっとこの渾名で呼んでいる。
時たまに、姫っちとか姫なんて色々別の渾名で呼んでいるが、其れは千早の緊張や不安そうな顔をした時、余計な事を考えている時に笑わせたいが為に呼んでいる渾名だった。
千早の渾名を呼び、自分も追い掛けられている身である為か止まることも後ろを振り返る事もなく千早を追い掛けている男達の合間を掻い潜り、千早の手を掴んで手を引きながら学校へと走って向かう。
追い掛けている男達を撒くように出鱈目に。
けれど、確実に学校へと近付いてたが、この状況では撒くには時間的にも無理がある事を悟る。
しかし、千早一人で逃げられる可能性は先程の光景を目の当たりにした空からしてみれば低くかと云って千早が空と複数相手にする、況しては千早を庇いながら相手をするのは剰りにも無謀だと云えた。
本音を云えば、傍に居てくれた方が安心するが、傷付けたりされたりする光景を千早に見せたくはない。其れに千早が悲しんだり心配したり怖がられたりしたら困るのも事実で空は、走りながら時より千早を気遣うように目を配り、声を掛けつつ思案をする。
- Re: 恋刻ノ御伽草子 ( No.5 )
- 日時: 2019/09/03 18:20
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: YohzdPX5)
だが、頭の中で幾ら思案しても良い案は中々出てこず、体力と気力が無くなりかけているからか次第に
「んやろっ!」
半ば自棄に近い心境で。空は、自分の示指を噛んで血を出せば、壁に走り描きのように絵を素早く描き、殴り書きで【大きい早馬。千早を学校まで乗せ行く。】と有筆と絵現の能力を発動させる。
大きい早馬と書いたのは急いで描いた馬で小さく雑だから。描いた大きさで雑なまま実体化してしまう可能性があるので有筆で付け足したのだった。血で描いたのでとある映画に出てくる感染した犬のような出で立ちになるかと危惧した空だが、建物が木材で出来ているからか色味が移り、赤いオーラを纏う力強い赤茶の馬が瞬く間に現れて
「きゃっ?!」
「その馬は俺の能力だから、安心して良い! 姫早を頼んだっ!」
完全に実体化した時には千早を乗せた状態で急に目線が高くなったからか可愛らしい驚いたような声が千早から上がる。繋がれた手は千早が浮上した際に放しており、有筆通りにしかし、合図がないからか空と同じペースで走っていたが、焦りからか空の切羽詰まった声を聞き届けるとぐんっと一気にペースを上げて千早を乗せたまま学校へと走り去って行く。
走り去る前に千早が何か云ったような気がするが、よく聞き取れなかったのと千早の言葉を聞いている余裕などないのもあり、気のせいだと心の裡で言い聞かせる。
そうしなければ、千早が何て云ったか、気になって気になり過ぎてその事で頭の中が一杯になって仕方ないから。不意に千早を危機から遠ざけたからかそれとも既に千早の事で一杯だからか追われているのにも拘わらず笑みが零れ落ちた。
「やべえな、姫早の破壊力。 凄すぎて、頑張れそうだ」
逃げている間に交わされたやり取りと最後に聞いた千早の驚いたような声を思い出したようで思わず口から出てしまう。走り疲れた筈が特に応援もされてないのに千早の声を聞いただけで活力が溢れてくる。
千早にそんな能力なんてなく千早の能力は自分を好きな動物や物に姿を変えられる【変身】で他人に力等を与える【付加】じゃない筈が空には千早の声を聞いただけ或いは見ただけで頑張れる気が、多少無茶な事でも今なら出来そうだと思えるから不思議だ。
もしかしたら、自分が想う以上に千早の事が好きかも知れないと。だが、好きと千早に伝えたら今の関係が崩れる。何かが終わる気がしてならない。其れに片想いのままが良いと感じるのも事実で。だから、千早に想いを伝えるつもりはない。伝えても真剣に告げるつもりはなく何時もの調子で云うだろうと。あくまで今段階ではなのでこの未来は分からない。
気が散漫し呼吸も走っているからか乱れていた空だったが、次第に落ち着きを取り戻して、今の状況をどう切り抜いていくのかどうしたいのかが分かる。千早を先に行かせたのなら、自分が遅刻しようが怪我しようが無茶だろうが何だって出来ると。
だから、学校へ急ぐのを止めて、複数相手にすることにしたらしく、空は、距離をたっぷり空けると振り向き、勢い良く自分の方へ向かってくる相手に1発、嚼ます。鳩尾に見事に当ったようで、苦しそうな呻き声を上げ、その場に倒れるようにして蹲った。
蹲った相手の腰に差している刀を息を整えながら抜き取り、刃先を自分の方に向けて持つ。逆刀ではないが相手を殺すつもりはなく竹刀を持っているつもりで怯んでいるのか驚いているのか或いはその両方かは定かではないが蹲る男以外の男達に向けて構える。
「......只の複写じゃない、のか?」
複写が痛がったり況しては感触が有るなんて思ってなかったと能力の詳細は知らないので複写は一体何処まで複写出来るのかを把握してない為、此れが複写だと断言出来ない。
しかし、この学園は特別なイベントがない限り能力者だけが入れる敷地で部外者、家族ですら普段は出入り禁止。能力者は大人や教員に許可を得た学生のみ学園外に出れる。基本学園外に出る事は許されず、許可を貰うのにも家族に会うという理由だけでは許可が降りないと云う。其れぐらいこの学園は外と隔離され非能力者と接触しない閉鎖的な空間だからか、空はこの見知らぬ男達が複写だと能力の仕業だと思っていた。そうしなければ、この状況に納得出来ず、訳の分からず今よりも混乱していただろう。
だが、果たしてこの男達は複写なのだろうか? 空は一抹の不安ややけに人間味のある、まるで自分の絵現のように立体的で其れに加えて有筆で否、明らかにそれだけではこんなに自発的に動く事が有るのか? と疑問に思ってしまうも、其れを確認する暇はなく、キンッと刀と刀がぶつかり合う。
- Re: 恋刻ノ御伽草子 ( No.6 )
- 日時: 2019/09/09 06:07
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: Rn9Xbmu5)
「っは、ちょっとは手加減しろって‼」
ずしっと腕に来る振動と太刀筋の重さに受け止めきれないと云うように思わず本音が出る。自分の刃と相手の刃が自分に向かっているからか仰け反りながら危い、危いと口にするも、何故か楽しそうな笑みを浮かべて刀を反らす。滑らかに受け流すようにしながら横へとずれる。
竹刀のようにとは云ったが、実際に振るった事などなく刀の持ち方や打ち合い、間合い等したことがなく経験は全くと云って良い程ない。その筈が、どうしたことだろうか。まるで、前にも使った事があるような手に馴染む感覚でもうとっくに目が醒めている筈なのにまだ夢を見ているような酷く現実的じゃない状況に、少し現実に友達と遊んだり、会話をしたりする時以外の出来事に日々に物足りなさを感じていた為か刃物を持っている男達に囲まれ相手している身の危険がある状況ですら楽しいと思ってしまう。
「でも、少し不気味だなっと!」
呻いたり痛そうにする以外に声を出さない男達を空は少しだけ不気味だと感じていた。否、声を出さないんじゃなく出せないと相手している途中で気付く。その証拠に男達の口は幾度となく開いて何かを云っているのに。空は其れに安堵した。安堵したのには理由があった。それは能力で生み出されたものだと確信が持てるからだった。
同時に悪趣味だと感じ、次第に沸々と怒りが込み上げてきた。この怒りは男達にではなく、男達を生み出した能力者に対して空は往なしながらも怒りからか男達から放たれている殺意のある目と同じになり掛けるが
「おーい、空!」
自分を呼ぶ、聞き慣れた声が上から降ってきてふと空の殺意が和らいでいくのが見てとれた。空は、視線は男達をしっかり捉えたままその声の主に向けて
「李紅!? おまっ、何しに来たんだ!」
空の同級生で女友達の楠木 李紅と云うらしく空は、李紅の危機感も況しては緊張感もないこの場に削ぐわない声に殺意は和らいだものの、李紅がどうして此処に来たのか、どうして上からつまり、屋根の上に居るのか、学校に遅刻しても良いのか、そもそも、何でそんなに悠長に話し掛けてくるのかが分からず、やけに突っぱねた強めの口調で云ってしまっているが、正直李紅に構ってられないのも事実で、困ったような怒っているような何とも云えない表情で複写の男達、複数相手にしていた。
「何しにって.....そりゃあ、ねえ?」
チッチッチィと舌打ちとはまるっきり違う。軽やかでリズムの良い音が李紅の口から鳴り、にんまりと口許を緩ませてまるで聞き返すような質問に質問で返すような口調で、勿体振りつつ楽しげにしている気配が背中越しでも伝わり、状況分かってんのかよ。と頭を抱えたくなるが本当に構ってられないのか急かすように
「ねえ? って、云われても分かるか! 良いから云えって!」
李紅の真似か鸚鵡返しの要領でノリツッコミのようにテンポ良く返すも何時もようには状況が状況なので目の前に集中したい空は、強い口調で李紅に向けて告げる。千早のようにこの場を去るように云うこともなくかと云って邪険にしている訳でもない為か李紅との会話を本気で止めようなんて思ってなく男達から目を逸らさずに耳を欹てる。
「えー、仕方ないなあ。 ただ、混ざりたいなーって.....僕も混ざって良い?」
何時ものようなやり取りが出来ず、不満そうに声を上げる李紅だったが、にんまりと再び笑みを浮かべて、駄目かな? 良いよね? と最早、拒否権はないと云うように殺意とは違うものの李紅の視線が背中に痛いほど突き刺さる。
見なくても分かる輝いている雰囲気が滲み出ていてきっと否、確実に目を輝かせていると空は思いながらも、千早よりそんな心配や不安はなく自分の能力よりも優れた能力を持っていて男っぽい所があるからか千早の時よりこの場に残る事に複数相手にさせることにやや悩むような素振りを見せるも抵抗はなく拒否はしないようで
「っ別に良いけど、やり過ぎんなよ?」
悩むような素振りを見せたのには、理由がある。理由は簡単で李紅は容赦がなく知らない相手にや嫌いな人には手加減しない。これっぽちも情を見せずやり過ぎる傾向がある。しかも、友達が絡むとますます容赦しなくなる。空からしたら心強く相手からしたら物凄く後免被る。正直云って相手にしたくない、敵に回したくないのが本音だ。助かるのは助かるが、相手に同情の方が強く素直には喜べないも事実で
「...、...御愁傷様。 李紅に出会ったのが、運のつきだ」
李紅のやりい。 やったー!という声を聞きながら心の底から思っているのかやけに深刻な声音で男達に対してだが、男達には聞こえないように小さな声で云ったは良いものの段々笑えてくる。危機的状況だったのに李紅が来て混ざるだけで余裕が出来たのもそうだが、自分の言葉に対して可笑しな事を云っているような気がしてそれがじわじわとツボに来てしまい、数秒声に出して笑った後に
「決めた! 俺も、手加減しない!」
刀を普通に持ち直し、刃先を相手に向ける。空からしたら刃先を相手に向けるだけで手加減してない事になるが、矢張相手を傷付けないようにあしらい、気絶を狙っているのか刀を持っていない手で打撃を加えたりしながら、この状況を楽しんでいるように顔が綻んでいる。
「そう! 登校の妨害してくるんだから、遠慮も手加減も要らない!」
空の言葉に相槌し当然と云うようにきっぱりと云い放てば、空の真横に降り立ち、にいっと眩しい程に笑みを向けて続けざまに
「でも、そう云う空は手加減してるでしょー?! まあ、楽しそうだから良いけどさ!」
相変わらず甘いなあ! と何時の間に相手から刀を奪ったのか、構えている刀が太陽の光に反射して煌めいている。刀が何故か様になっているのは何故だろうか。と空は横目でちらりと李紅を見て不思議に思うも直ぐに嗚呼、成る程。と合点したようで。
「李紅、お前......」
お前も着物なんだな。と云うつもりだったが、何故か続けられずに引っ掛かりを覚える。前にも云った気がすると、前にも見た気がするとそんな筈ないのにさっきから其ればかり。無いことと云えば、この状況に千早が居ないこと。否、さっきのさっきまで空と一緒に居た訳で、自分が先に行かせたから此処には居なくて当然で
(否、何訳が分からない事を俺は云っているんだ?)
(......んなの、有るわけねえ。 夢と現実が錯誤しているだけだ)
刀を握る手に力が籠る。錯覚、混合しているだけだと頭の中で解釈をすれば、相手に集中する。自分の中でモヤモヤがまた出てきて気が触れそうになるのを防ぐ為にも頭を空にして振るう。
幸いにも李紅には自分の様子が可笑しいとか気付く事もなく男達を相手にしていた為、其れには安心した空は、李紅と一致団結して男達をものの数分で倒し気絶させることに成功した。
- Re: 恋刻ノ御伽草子 ( No.7 )
- 日時: 2019/04/26 22:30
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: W2jlL.74)
「っはあ、やっと終わった。 楽しいのは楽しかったけど...さっすがにきっつ」
美術部なんだよ、俺は。と運動部じゃないから体力はないんだよと云いたげに空は肩で息をしながら、バテ気味なのか両手を膝についたまま弱音に等しい言葉を思わず声に出す。そりゃ女子よりはあると思うが隣に居る李紅を見ると自信と云うか気力が無くなり、つい言い訳染みた言葉を付け足してしまっていた。美術部だとしても、普通に体力は人並み以上の人は居るし美術部だから体力がないと云う話にはならないのを知っているから余計に自分の首を絞めるようで息を整えながらも
「そんで、李紅。 何で、此処に居るんだよ?」
改めて李紅が此処に居る理由を聞く。何時もなら女子寮と男子寮は隣で行く方向が同じだから。と居る理由が分かるが今日は違う複写された男達に追われ道を出鱈目に走り、学校にはそこそこ近いが何時も通る道よりも遠く見つけにくい路地裏で空の声と刀のぶつかり合う音しかなかったから益々、李紅が居ることに来たことに疑問が浮かんで理由を聞く事にしたらしくそう聞くと李紅を見る。
「え? 何でってそりゃあ...空が此処で危ない目に合うって、侑ちゃんが云ったから」
救世主って奴をちょっと、やりたくて。と何故か右頬を指で掻くような仕草をしながら、相変わらず明るくも暢気な口調で今から学校行くという気持ちがないようで全く焦る様子も先を急ぐという事もなく悠長におどけたように空を見返して云う。
因みに、李紅が云う侑ちゃんは和泉 侑奈と云う名で李紅の親友であり、空の幼馴染みで今は同級生。侑奈の能力は僅かな先にある未来を見る【予知】と水を自由に操る【操水】の二つを所持している。操水は珍しい能力ではなく能力の中では主流で多いが、侑奈の操水は特にずば抜けていて、予知も他の能力者より長く見ること、特定の誰かの未来を見ることが出来るという。しかし、空はよく思ってはいなくそれを聞くなり、
「あー......まあ、うん。 助かった、サンキュ」
(アイツには極力使うなって云わなきゃな......、能力は無限に使える訳じゃないしよ)
口では、歯切れは悪いものの感謝の意を表す言葉を云うが、侑奈の事になると別らしく声にはりがなく何とも言い難い表情になりつつ、後頭部を掻きながら侑奈にどう云おうか。どう使わなくするか。考えを巡らしていた。能力は空が云うように無限に使えるという訳じゃなく気付かない内に知らない内にそれ相応の対価を払っている。
其れは命や寿命、記憶や関係性、体力や視力、味覚等と多種多様で中には髪だったり、言語だったり、能力に回数があったりもし大人になったら使えなくなった等よく聞く話で、その逆も多い。その逆は短命や寿命。寿命においては使う一回毎に3日か5日減るというもので其処まで影響はなく余程一日に頻繁に使わなければ尽きない為、緩やかなものだが。命そのものは体に影響を来す。侑奈は、能力か元からかは定かではないが小さい頃から体が弱く、女子寮・男子寮とは違う寮で暮らしている。その為か、空は侑奈が能力を使う事をよく思ってない。
「あー.....まあ、うんは、余計! 侑ちゃんにも礼、忘れないように!」
空の真似か男っぽい声を最初に出して、辛気臭いオーラを出している空の背中をばしんと強めに叩く。大阪のおばちゃんのような行動だが、わざとやっている。こうでもしなきゃ自分まで空みたいな否、それ以上に侑奈の事で一杯一杯になると感じて空気を変えるように元気にはっきりと云う。
「っ痛! ちょっ痛いって、力入り過ぎだかんな?! ......わーったよ、礼は云うから」
背中をばしんと思いっきり叩かれた空は、更に前のめりに勢いもあって倒れそうになるが、何とか踏ん張り叩かれた箇所を擦りつつ、痛いというより衝撃がかなり強く危うく倒れそうになったからか、叩いたことに対して怒ってはないが加減しろと云う意味で李紅に告げれば、侑奈に礼と云われて罰が悪そうな顔をして渋々ながら承諾する。
だが、侑奈を目の前にすると礼よりも能力を使ったことに対して怒ってしまいそうだ。否、怒らなくても責めるような言い方になってしまいそうだ。と空は思う。現に侑奈が使う度に心配からかつい、責めるような言葉を投げ掛け仕舞いには礼を云うタイミングを何時も見逃す。感謝はしている。感謝はしているのに、それよりも心配が勝ってしまう。侑奈は其れなのに、何時も何時も変わらない明るさで過ごしているものだから余計にかもしれない。
「ふふっ、御免御免! んーーっ、よし! ちゃんと、空が礼を云うかその時は影から見守ってる!」
空が怒ってないと分かっているからか、笑って軽い感じに謝り、空の様子に暫し考えるような仕草をしながら唸っていると閃いたように自分の両手を一回叩いて空の方を見て名案でしょ?と云っている清々しい顔ではっきりと云っていて。
「は?! ちょっ、そっちの方が余計だからな? 礼くらい、云えっから和泉が相手でも」
李紅の軽い謝りに対して仕方ない奴だな。なんて云いながら李紅に釣られるようにして笑っていた空だっだが、まるで保護者のような発言に素で驚いているのか素っ頓狂な声を出して慌てたようにやや口早に不本意だと云わんばかりにそして自棄っぱちになり気味に云い、そっぽを向く。
「またまたあ。そんな事云っちゃってー! そう云ってるけどその時になったら礼、何回も云いそびれてるじゃん!」
空の言動が可笑しいのか。くすくすと笑みが止まらないようで笑いながら、そっぽを向く空の顔を覗くようにしてまるで今までも見てきたかのようにつらつらと饒舌に。ね、そうでしょ? そうでしょ?と僕の読み当たってるよね?と云うようにくすくすからによによと笑みを湛えつつ決して目を合わせようとはしない空に何とか目を合わせようとしながらも同意を求めてるように何度も聞く。
「っだー‼ しつこいっての! 其れは俺の問題だから良いの! ほら、行くぞ!」
聞こえないと云うように李紅の言葉を遮り、この話はお仕舞いと云うようにやや強引に話を終わらせると、踵を返して学校へと李紅を置いていく形で向かう。
「あっ、ちょっと! 逃げるなーっ! まだ、話終わってないんだから!」
しつこかろうがなかろうが関係なく続けるから! と一足先に行く空に対してしまったと云うような顔をして反応が遅れてしまったものの、慌てたように少しだけ怒っているような声を上げてタッと駆け足で空に直ぐ様追い付けば、空は自然とペースを落とし歩きに変わり、李紅と変わらないペースで一緒に歩いて学校へと向かい始める。
例え、能力を使おうがもう遅刻には変わらない為、この際ゆっくり一時限目の途中からでも終わり頃に教室へ入っても良いか。と疲れたという事もあってか、普段授業は体調が悪かろうが何だろうが受けている空は珍しくそんな考えなのか。能力を使うこともなく李紅の話の続きを時々曖昧にはぐらかして聞いていた。