コメディ・ライト小説(新)
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- こんなのが好きだなんて認めたくない
- 日時: 2019/03/08 01:21
- 名前: おもち (ID: fGppk.V/)
【 登場人物 】
@桐山 光(きりやま ひかる)
大学2年生。千和の幼馴染。
容姿端麗、スポーツ万能、文武両道。
男女共に人気者で若干ナルシスト。
@成海 千和(なるみ ちわ)
大学2年生。光の幼馴染。
バカで何をやらせても中半端かそれ以下。
基本的に食べることと寝ることしか考えてない。
恋がしたいと嘆いている。
@五十嵐 響(いがらし ひびき)
大学2年生。
クール。千和のことが好き。光のことが嫌い。
@羽山 胡桃(はやま くるみ)
大学2年生。
ぶりっこ。男好き。学年1カワイイと言われ天狗になっている。
光のことが好き。
@中原 絵里(なかはら えり)
大学2年生。通称えっちゃん。
千和と光とは中学から仲が良い。
@沢村 瑛二(さわむら えいじ)
大学2年生。
大学で光と仲良くなる。
- Re: こんなのが好きだなんて認めたくない ( No.4 )
- 日時: 2019/03/13 23:32
- 名前: おもち (ID: reIqIKG4)
#04【 合コンのせいで。 】
「ええ?!タクヤくんとユキちゃん付き合ったの?!あそこそんなに話してなかったじゃん!」
後日、大学で絵里が引くほどデカい声で言った。
千和は「ほんとだよね!わたしもびっくりしたよ~」と目を見開いていた。
「ちぇー、絵里のせいでユキちゃんと全然話せなかったじゃんよ~」
瑛二は落ち込んだ声で言った。
「こっちのセリフよ、アンタのせいでタクヤくん取られちゃったじゃないのよ!」
絵里もムッとした表情で瑛二に言う。
「は?元々タクヤって奴お前にキョーミなさそうだっただろーが!」
「いやいや、それを言うなら由希は初めから光狙いだっつうの~」
と、ここで光の話に。
「てか、光はどうなの?」と瑛二。
どう、とは。
「光はやっぱ胡桃でしょ?胡桃すっごい前から光に会いたがってたし」
ああ、羽山さんね。
あのあと案の定LIMEが来たが適当なところで終わらせてしまった。
変に期待させるのも良くはない。
「あーまあ、友達ってことで終結?」
光が答えると、「なーんだ」と絵里。
「ひかちゃんずーーっとカノジョいないんだからチャンスだったのにね」
と、千和。
いや、そんなことよりお前はーーーー。
「····千和はーーーー」
光が言いかけたところでチャイムが鳴った。
····講義が終わったらでいいか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
講義が終わった時、千和はそそくさとカバンに荷物を詰め出て行った。
今日は午前で終わりで、お母さんと出掛けるんだとか。
·····本当にお母さんか。
昼休み、自販機で飲み物を選んでいた時だ。
飲み物を買ってその場を去ろうとしたとき、見たことのある男と遭遇した。
ヒビキだ。
「·····あ」
「·····あ」
同じタイミングで母音を発するな。
「確か、こないだの。んっとーー、キリヤマくん?だっけ」
やっぱだるそうに、ヒビキは言う。
それすら鼻につくなコイツ。
「ああ、うん。そちらはえっと~·····ごめん、名前聞いてもいいかな」
光は余裕こいた表情で言った。
本当はかなりかなりかなり動揺している。
というかバリバリ名前覚えてる。
「はは、忘れられてたか~」
ヒビキはそう言うと持っていた教科書の裏を見せながら「イガラシヒビキです」と言った。
教科書の裏には《五十嵐響》と書いてある。
ほ、ほう·····。
なんか、かっけえ名前。
てかなにコイツの余裕?腹立つんだけど?
響は自販機の隣のベンチに腰を下ろして言った。
「桐山はさ、チワワちゃんの幼馴染なんだってね」
コイツ、すぐに千和の話題を出すか。
てかチワワちゃんって何か馴れ馴れしいからやめてくんねえか。
光は「あ、ああ。そうだけど?」と余裕を見せつつ自販機のボタンを押した。
間違えた。
おしるこを買ってしまった。
何で昼におしるこ飲まきゃいけないんだ。
「はは、好きなの?おしるこ」
なんだコイツ今少し小馬鹿にしてないか?
「す、好きなんだよねぇ~おしるこ」
本当は嫌いだ。
光はそう言いながら缶を開け、おしるこを飲む。
うえ、まずい。
甘ったるい。なんだこれ。
「はは、変わってるんだな、桐山って」
響はそう言って軽く微笑んだ。
「·····千和と、付き合ったりとか·····その·····したわけ?」
思い切って聞いてみた。
言うと、響はニヤリと微笑み、光を見上げて言った。
「気になる?」
こ、コイツ!!
むかつく!なんだコイツ!なんだコイツ!!
いやいや落ち着け。
ここで動揺したら負けだ。落ち着け俺!
「い、いや別に?気になるとかじゃなくてさ。どうなったのかなって思っただけだけど?」
「あ、そう。はは、なーんだ、チワワちゃんから聞いてないんだ?幼馴染なのに」
な、なんだコイツのこの余裕。
てか嫌味か!嫌味なのか!
「べ、別に?今日たまたまあんま話してなくてさ····」
今のは苦しい。
苦しすぎる言い訳だった。
「はは、そうなんだ。桐山はどーなの」
え、ちょ、まって。
話してくんないの?え、なんで?
「····いや俺は何も」
「へえ、クルミって子とユキって子、桐山に気があったように見えたけど」
「ああ、まあ、LIMEは交換したけど別にそのあとは何も」
そんなことより教えろよォォォ!
お前は?お前も千和とLIME交換してたよな?!
「はは、そうなんだ。桐山って結構モテるからさ、もう付き合ったりとかしてるのかと思った」
「いや別にモテないよ俺」
モテるけどな。
「はは、大学でも有名だよ。でもなんでカノジョ作んないの?選り取りみどりでしょ」
「いや、俺は好きじゃないと付き合わないし。誰でもいいって訳じゃないよ」
「そうなんだ。じゃあ好きな子がいるんだ」
やめろよ。
なんだ、この、罠に嵌められてる気分。
「いや、今は特にそういうのはないけど。五十嵐は?」
よし、話を戻せた。
「あー、俺?うーん、俺も別に誰でもいいって訳じゃないよ」
「そ、そうなのか。でも合コン来てたってことはカノジョ欲しいってことだろ?」
「あー、それは来た理由、桐山と一緒じゃないかな?桐山もどうせ、人数合わせに呼ばれたカンジじゃないの?」
「ああ、まあ、そんなもん。五十嵐も?」
「まあ、そんなカンジかな。でも行って良かったかも」
え、まって。
「えっ、と、その、それは、なんで·····?」
やべ、動揺しすぎた?
光が言うと、響はまた光を見上げ微笑みながら言った。
「はは、なんでだろ?」
えーーーーー·····。
そこは言おうよ·····。
響はそう言うと立ち上がり、「じゃ、俺そろそろ行くわ」と言って飲んでいた缶をゴミ箱に捨てた。
「あ、お、おう。じゃまた」と光。
また会いたくないけど。
「んー」
響はそう言ってその場を後にした。
·····なんでこうなった?
いや、だから、結局どうなったんだ?
光の元を去った響は、歩きながら携帯を出した。
『明日10時に駅で大丈夫?』
『いいよ!』
『おっけー。じゃあ気をつけて来てね』
『五十嵐くんも!』
差出人は、成海千和。
- Re: こんなのが好きだなんて認めたくない ( No.5 )
- 日時: 2019/03/18 01:06
- 名前: おもち (ID: IkQo2inh)
#05 【 合コンの後 】
「ひかちゃん、明日デートすることになった」
幸せそうな表情で言う千和が憎い。
元々本人に聞こうとしてたけど。
まさか本人から言われるとは。
で、そんなことより。
「····は、はーん。誰と?」
完璧。
完璧に素っ気ない感じで聞いてみた。
「五十嵐くん!」
だよな。
だよな。分かってたよ。
「····ど、どどっどこ行くんだよ」
「遊園地」
デートか。
いや、デートなのか····。
「何時に?」
しまった。後をつける気満々みたいな質問をしてしまった。
「10時にしゅーごー!」
アホで良かった。
俺は17年一緒にいて1日中千和と遊んだことがないというのに。
たった1日、いや数時間会っただけで1日遊びを取り付けるとは五十嵐のやつ何者なんだ。
いや別に良いんだけどさ。
「いやあ~ついにわたしにも、カレシができるかな~ん」
千和はニヤニヤしながら、かつ幸せそうな表情で言った。
カレシねー、五十嵐ねー。
「ま、まあ俺もいづれはカノジョできるし。千和もカレシくらい作っていいんじゃねえの」
誰目線なんだ、俺。
「うん!ひかちゃんも頑張ってよ!」
やめろ、その、他人感。
「あ、でねでね!明日化粧と髪の毛、えっちゃんに頼もうと思ってさ~」
ちなみにココ、俺んち。
今更ながら千和と俺は大学に来るのと同時にアパートを借りた。
隣同士に。
千和は昔から俺に着いてきてた。
何をするのにも俺で決めていた。
高校も、大学も、全部俺に合わせてきたもんだ(大学は絵里に影響されたかも知れないが)。
それが何がカレシだくそ。
瑛二が言うように、幼馴染ってよく結ばれるみたいなパターンかと思ってたんだが。
てか俺んちで五十嵐の話するのやめろよ。
どういう状況だよ。
どういう感情だよ。
そんな時、LIMEが来た。
胡桃からだ。
『光く~ん!いま何してた?』
こんな内容だ。
めんどくさい。
『まばたき』
これだけ冷たくかつ意味の分からない返事をしとけばさすがに胡桃も分かるだろう。
だが返ってきた返事はこうだ。
『え~!偶然!あたしも~!』
だろうな。
なんだこの図太さ。逆にすごい。
てか一人称クル呼び忘れてるぞ。
てかなに、怖いんだが。
これなんて返すのが正解?
すると千和が携帯を覗いて言った。
「なーんだ、ひかちゃんも胡桃ちゃんとヨロシクやってんじゃん~!」
やめろなんかそのやましいことあるみたいな言い方。
「ヨロシクしてねえよ」
「でも胡桃ちゃん可愛かったよね~。学年1カワイイって有名らしいよ」
千和はそう言いながら携帯をいじっている。
絶対興味ないだろ。適当だろ。
「そうか?ぶりっこは苦手なんだよ俺」
タイプで言えばユキの方が良かった気はする。
「そかな~!ひかちゃんナルシストのくせに自分からグイグイいかないからむしろ胡桃ちゃんみたいな子の方がいいよ」
お前もか。殺すぞ。
「別に好きでもないのにグイグイいく必要がないだろ」
「そんなんだから影でイケメンくそ童貞って言われるんだよー」
俺そんなこと言われてたのかよ。
「誰がくそ童貞だ。イケメンしか合ってないだろ」
「ねえ髪の毛結んだ方がいいかな?」
シカトかよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ねーアンタ、今日千和、五十嵐くんとデート行くみたいだけどいーの?』
絵里からこんなLIMEが来ていた。
『やまいも』
返信はこんな感じでいいだろ。
『喪服』とか返って来ていたが生憎今日は絵里としりとりをして遊んでいる暇はない。
俺は忙しいのだ。
さてーーーーーー。
現在は9時56分。駅前。
五十嵐は52分に来ていた。
初デートに遅れるって大丈夫か、千和のやつ。
あいつは絶対に遅刻する。
それと言っておくがこれはストーカーではない。
別に気になっている訳でもない。
保護者的目線での付き添いだ(勝手に)。
10時7分。そして現れた千和。
千和にしては遅れなかった方だ。
絵里のやつが早々にアパートに来て千和のヘアメイクをしてやっていた甲斐があったようだ。
そして絵里、メイクに気合いを入れすぎじゃあないか?
千和の髪、巻きすぎてキャバ嬢みたいになってるぞ。
と、そんなことを思っていると、声をかけられた。
「あー!光くぅん!やだ偶然だね!」
振り返ると、クルミがいた。
え、なんで。本物登場かよ。
「····羽山さん。どうしてここに」
光が言うと、胡桃は光に腕を絡みつけながら言った。
「んー?たまたまだよーぉ。光くんに会えるなんてシアワセ~」
(*´∇`*)みたいな顔をするな。
絶対わざとだろ。
てかどっから知ったんだよ、絵里にも言ってねえよ。
俺この子にGPSでも付けられてんのか。
まあいい。適当に巻いてさっさとアイツらを追うとするか。
って、もういない。
だが焦ることはない。
どこへ行くかは分かっている。
あのアホがべらべらと話してくれたお陰でな。
さて、後をつけるとするか。
- Re: こんなのが好きだなんて認めたくない ( No.6 )
- 日時: 2019/03/23 04:35
- 名前: おもち (ID: rTNrXcQ7)
#06 【 尾行① 】
「え~てゆうか今日光くんなんか雰囲気違うね。なにその帽子とサングラス?探偵さんみた~い」
胡桃はそう言って歩きながら光のサングラスを取った。
おいふざけるな。
ばれたらどうする。いやどうもしないけどさ。
「ああ、あのさ、あんまり大きい声で話さないでくれるかな」
光が言うと、胡桃は不思議そうな表情を浮かべた。
うん、だよね。
これに関しては初めて君が正しい反応をしてるよ。
「へ、なんで?」
「まあちょっと色々あって」
「なんか2人だけの秘密的な?なんかドキドキしちゃうね~!」
胡桃はそう言いながら再び腕を絡みつけてきた。
うん、もうそういう事でいいや。
「でー、どこ行くの?」と胡桃。
「遊園地」
「えー!嬉しい!デートってカンジだね」
だから\(^o^)/みたいな顔やめろ。
表情豊かか。
あ、これは褒めてる。
遊園地に入った。
「素敵な美男美女のカップルさんですね!コースはいかがなさいますか?」
受付で女性に言われた。
「やだもぉお姉さん上手~!」
胡桃が微笑みながら言った。
明らかに喜ぶのやめろバカップルだと思われるだろ。
てかカップルですらないからやめてくれ。
受付を終え、入園すると千和と響を見つけた。
よし、ここからが本番だ。
いや別に何をする訳では無いのだけれど。
「あれ?あれって千和ちゃんと響くんじゃない?」
胡桃が言った。
まずい、気がついたか。
「千和ちゃーーーーーー」
胡桃がでかい声を出すもんだから焦った。
胡桃の口を塞ぎ、そのまま彼女の腕を引っ張り端まで来た。
「えっやだ光くん突然そんなハグだなんて~」
(///∇///)みたいな顔やめろそういうんじゃない。
「ああごめん。その、千和たちには~黙っててくれないかな」
光が言う。
胡桃は不思議そうに言う。
「え、どうして?」
そうなるよね、うん、だよね。
「あ、いや、その····今日は!俺と羽山さんせっかく2人きりなわけだし、邪魔が入るのは嫌なんだ」
光が言うと、胡桃は即座に微笑み、腕を絡めてきた。
「やだ~!そういうことならいいよ!あたしも2人きりで嬉しいし~~!」
単純で良かった。
よし、それはそうと、あの二人どこ行った?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、2人を見つけたのはいいが。
なぜジェットコースター。
ニコニコキラキラした表情を浮べた胡桃の横で、光は青ざめた表情を浮かべている。
「きゃー、遊園地なんて久しぶりだからワクワクしちゃう~!」
「そうだな·····」
「ん?光くんどうしたの?何か顔色悪いよ?」
胡桃に言われ、光は「いやそんなことない」と真顔を貫く。
「そう?あ、もしかして光くん、ジェットコースター苦手なんじゃーーーー」
胡桃の言葉を遮り「いやそんなことない····!」と真顔。
「そんな隠さなくてもーーー」
「いやそんなことない!」
とそんな会話をしていると、前の前の前の席にいる千和と五十嵐が話し始めた。
「うわ~緊張する~!わたしジェットコースター苦手なんだよね~」
千和は青ざめた表情で五十嵐に言った。
五十嵐は「はは、実は俺も」と微笑んだ。
「え~五十嵐くん意外とカワイイね~」と千和。
同時に横で胡桃が「苦手なくせに~」と微笑んでいる。
「ははははははははは、俺も苦手なんだよね」
もちろん苦手だ。
7歳の時から苦手だ。
「えーそうなの?あたしは苦手じゃないよ~。てかあたしってよく乃木坂にいそうって言われるしじゃん?あ言われるんだけどーーーーー」
とか何とか胡桃の声が聞こえるがそんなことより千和だ。
え、まって、ちょっとまて。
千和のやつ、絵里に編み込んでもらった髪型が崩れてきているではないか。
せっかくカレシができるかもしれないというのになぜケープして来なかったんだアイツ。
隣の胡桃を見ると髪の毛の編み込み、巻きすべてが完璧にキープされている。
とはいえ、自分の髪型を見れば、ワックスとスプレーでしっかり動いていたはずだがとれてきている。
ふと外を見上げれば今にも雨が降りそうな天気。
なるほど、湿気か。
逆に胡桃はなぜこんなにとれていないんだ。
ってそんなことを考えている場合ではない。
「では皆さん発車しまーす!」
遊園地のキャストが言った。
ーーーーーえ。
最悪だった。
具合が悪い。
光はベンチで青ざめていた。
「光くん大丈夫?」
胡桃はそう言いながら飲み物を差し出した。
カノジョではないとはいえ女の子に飲み物を買わせるとか有り得無さすぎる、俺。
「ごめんね、ありがとう···」
光はそう言って胡桃から飲み物を受け取り、1口。
飲んだ瞬間、オエッとなった。
パッケージを見た。
·····なぜお汁粉。
俺はお汁粉に呪われてるのか。
てか買ってきてくれたのは有難いが、文句をつけるのはどうかとは思うがなぜお汁粉。
羽山さんのセンスを疑う。
とはいえこれは羽山さんの優しさだ。
「あ、ごめんね、響君から光君はお汁粉が好きだって聞いたから」
アイツか。
「い、いや···うん···好きだよ」
光は声をひねり出した。
この場合羽山さんは悪くない。
「良かったァ~!じゃ、次なに乗る?」
胡桃は嬉しそうに言った。
いや、もうちょっとまって。
具合が悪いうえにお汁粉の件で具合悪いからちょっとまって。
切り替えの速さ。
その時、「あれ?胡桃ちゃんじゃない?」と男の声が聞こえてきた。
見れば、ベンチの方に3人の男が近寄って来るではないか。
なんだ友達か?
「あ~みんな~!こんな所で会うなんて偶然だね!クル嬉しい~!」
胡桃はそう言って彼らに笑顔を振りまく。
「俺らもこんなとこで胡桃ちゃんに会えるなんて最高だよ!今日もカワイイなあ~胡桃ちゃんは!え、ん?·····それって、桐山?」
1人の男が光を見て不服そうに言った。
それってなんだ。
てか俺のこと知ってるのかコイツら。
「そうだよ~今日は光くんとデートなの~」
語弊があるが訂正できるほどの体力がない。
「ふ~ん···く、胡桃ちゃん、桐山と付き合ってるわけじゃ·····ないよね·····?」
さてはコイツら羽山さんのこと好きなんだな。
「あ~違うよ~!クルが光くんと遊びたくてついて来ただけなの·····」
珍しく本当のことを言ったな。
「な、なんだって!胡桃ちゃんが桐山なんかと?!」
桐山なんかで悪かったな。
てかお前ら誰なんだ。
「おい桐山!胡桃ちゃんが可哀想だろ!」
「そーだそーだ!俺らだって胡桃ちゃんと遊びたいんだよ!」
「なにお汁粉なんか呑気に飲んでんだよ!」
お汁粉は別に俺の趣味じゃない。
てか飲んでてもいいだろ。
てかなんだこれ、新手のいじめかよ。
「あー、なんかよく分かんないけど···俺は忙しいから、なら羽山さんと遊んだら?それじゃ」
光はそう言うと立ち上がり、お汁粉を持ってその場を後にした。
「えっちょっと、光くん!!」
胡桃の声が聞こえた。
まあそのうち適当に戻って来るだろ。
- Re: こんなのが好きだなんて認めたくない ( No.7 )
- 日時: 2019/03/31 07:52
- 名前: おもち (ID: qh2qVUY5)
#07 【 尾行② 】
「どこかで休憩しようか」
響が言った。
千和は「えっあ、大丈夫だよ!」と微笑む。
「いいから、座ろ」
響はそう言って千和の腕を引っ張り、近くにあったベンチに腰をおろした。
千和は慣れないヒールのせいで足が赤くなっていた。
響は座るなり「大丈夫?」と千和を見る。
「えっなにが?!だだ、大丈夫だよ!」
千和は微笑みながら誤魔化した。
響は微笑み、「そう?なら良いんだけど」と足を見た。
「チワワちゃんはさ、桐山とずっと一緒だって言ってたよね」
「あ、うん。幼稚園からずーっと」
「好きになったりしないの?桐山のこと」
響に聞かれ、千和は首を傾げた。
「うーん、ひかちゃんはずっとわたしのお兄ちゃんみたいな人でね、妹みたいにしか思ってないんだ、わたしのこと」
「····そうなんだ。チワワちゃんは?」
「え?」
「桐山のこと、お兄ちゃんとしか思ったことないの?」
「うーん、物心ついた時から傍にいたしー、ひかちゃんもカノジョいた事とか普通にあったしなあ。でもひかちゃんね、カノジョいる時にわたしの誕生日でさ、このブレスレットくれてね、それが原因でカノジョに振られちゃってさ、ちょっと悪いなあって思ってるんだよね~」
千和はそう言って左腕のブレスレットを見せた。
「·····桐山はそうじゃないと思うけどね」
「どういうこと?·····うあっ」
その時、雨が千和の目に入った。
同時に、突然雨が強くなってきた。
「うわ、屋根のある所に行こうか」
響はそう言って立ち上がり、千和も響について行った。
コンビニが見えた頃、横断歩道を渡る前のバス停に屋根があった。
「傘買ってくるからここでまってて」
と響。
「え、でも。わたしも行くよ」
「いいから。濡れちゃうし。ね?」
「·····ありがとう」
信号が青になったと同時に響は長い横断歩道を走り、コンビニへ。
待っている間、千和は携帯を開いた。
『お前傘持ってるのか?』
光からLIMEが来ていた。
ほんと、保護者みたいーーー。
と、その時。
左腕のブレスレットがなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うわー、雨かよ。
降るとは思っていたけども。
羽山さん大丈夫かな。
光は屋根つきの休憩所のベンチに座り、外を眺めた。
止みそうにないな。
傘でも買いに行くか。
遊園地を出て、コンビニで傘を2本買った。
『どこにいる?』
とLIMEを送ったが胡桃からの返信はまだない。
参ったな。
勝手に置いて来といて何だがあんな薄着でどこかで濡れていたらどうしよう。
て、男が3人もついてるんだし心配することもないか。
アイツらが何とかするだろ。
とりあえず遊園地に戻るとするか。
再入場券びちゃびちゃだけどまあいっか。
遊園地までの道のりを歩く。
ーーーーーーん?
今更ながら設定が曖昧なせいで強引なことにはなっているがココで説明させてもらうと、遊園地までの道のりに大きな池がある。
その池にジャバジャバと入って何かをしている人影がある。
千和だった。
「千和」
池の方まで降りて行き、光が言った。
千和は池から手を出し、振り返る。
「ひかちゃん?!えっなんで?なんでココに?!」
千和は驚いた表情で言った。
頭から足の先までびちゃびちゃじゃないか。
「こんなとこで何してんだよ」
光が言うと、千和はヘラヘラ笑いながら言った。
「ブレスレット!なくしちゃってさ。さっきココで転んだから、ココかなって思って」
ブレスレットってそれ·····。
「·····五十嵐は?どうしたんだよ」と光。
「あっやばい!コンビニにね、傘買いに行ってくれたんだけど…勝手にブレスレット探しに来ちゃった·····!」
千和は青ざめた表情で言った。
「·····そんなんだからカレシできねえんだよ、お前は」
「えっひっどーい」
「俺も探すよ」
光はそう言って池に足を踏み入れた。
「ええっいいよ!いいよ!」
千和はそう言いながらバシャバシャと光に駆け寄り、光の腕を掴んだ。
「わたしが失くしたんだし!!」
必死に言う千和に、光は「いいから」と言って池に手を突っ込む。
「でもーーーー」
千和は不安そうに光を見つめ、自分も池に手を突っ込み始めた。
「···お前、五十嵐のこと好きなんじゃねえのかよ」
ブレスレットを探しつつ、光は小さく言った。
少し離れた場所にいる千和は、「え?なんか言った?」と手を止めた。
雨と音と、池を歩く音で声が掻き消されている。
「なんでもない」
「なにー?」
こんな女々しいこと、聞くもんじゃないよな。
声が届かなくて良かった。
『どこにいるの?』
響は、千和に送ったLIMEを見たが既読はついていない。
千和に電話を掛けようと、通話ボタンに指を置いた時だった。
遊園地に戻ろうと足を進めていると、池にいる千和と光を見つけた。
響は通話ボタンから指を離し、画面を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
胡桃が濡れたベンチに腰を下ろしていると、ふと雨が止んだ。
と思い見上げると、傘があった。
傘を持っているのは、響だった。
「何で濡れたベンチに座ってんだよ。風邪引くぞ」
言われ、胡桃は視線を戻し溜息をついた。
「光くんかと思って期待しちゃった」
「悪かったな、俺で」
「まあアンタもココにいるってことは上手くいかなかったってカンジ?」
胡桃はそう言って悪戯に微笑んだ。
響は鼻で笑い飛ばす。
「はは。お前、桐山と俺とじゃ随分と態度違うんだな」
「アンタあたしのこと好きじゃないのに媚び売って何になんのよ。口外するようにも見えないしね」
胡桃は腕を組みながら言う。
「···桐山って、チワワちゃんのこと好きなの丸わかりだよな。合コンの時から」
響が言うと、胡桃は「やめてよ」と微笑む。
「だからあの子にちょっかいかけたの?」
胡桃に言われ、響が「まあ最初はね」と頷く。
「性格悪」
「はは、自分でも思うわ。邪魔してみたくなっちゃってさ」
「まああたしにとっては都合良いけど」
「あれ、アンタも遊びか何かだと思ってたけど」
「さあね」
「はは、そっか。まあいいや。傘2本あるし、いる?」
「·····いる」
雨はしばらく止まなそうだ。
- Re: こんなのが好きだなんて認めたくない ( No.8 )
- 日時: 2019/04/06 20:33
- 名前: おもち (ID: hamvuQpq)
#08 【 看病して 】
「はっきし!!!!」
文字だと伝わりづらいだろうがこれは千和のクシャミ。
結局あの日ブレスレットは見つからず、2人して風邪を引くというオチで幕を閉じた。
まあ、なんだこのオチとか思わないで欲しいのだが。
と、いうことでなぜか千和も家に来て寝込んでいる次第だ。
「ぐああ~頭痛い気持ち悪いお腹痛いお腹空いた肉食べたい肉~~~~」
と千和。
「うっせーな·····お粥でいいだろ·····ごほっ·····ごぉほぉんっ·····!」
光は体温計を咥え、キッチンでお粥を作りながら言った。
やべ、苦し。
今にも意識が飛びそうだ。やべ。
「肉~~に~~くぅ~~~~~~!」
部屋で千和が騒いでいる。
うるさい。野獣か。
俺1人でってか俺も病人なのにコイツを看病するのは無理に等しい。
んんんどうすべきか·····。
『今日なにしてる?』
瑛二にLIMEを送ってみた。
すぐに返信が来た。
『合コン』
またかよ。
『何時から?』
『いやもう撃沈。モテる方法教えて』
必死か。
『教えるから今すぐ家来て』
『いや今日はキツイ』
今夜なのか合コン。
どうせカノジョできないんだ、行っても意味無いだろ。
『はやくきて』
『なんでだよ。人の話聞いてたか?』
ばりばり聞いている。
何でも良いからはやく来て。
『はやくきて』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだよこの状況。空気悪っ!!窓開けろよ!!」
家に来るなり、瑛二は額に熱冷まシートを貼った2人を見て叫ぶ。
「っせーな·····ゴホッ·····頭に響くだろ·····」
と光。
「無理やり呼んどいて第一声がそれかよ!!」
瑛二に言われ、「っせーな····!」と光。
「合コン断ってきてやったら何だよお前らの看病かよ」
瑛二はそう言いながら窓を開けた。
「うあ~寒い!」と千和。
「るせえ!空気の入れ替えも大事なんだよ!」
瑛二はそう言いながら窓を開け続ける。
「も~なんで瑛二くんなんか呼んだの~~」
瑛二も忙しい(笑)中来てくれたんだ、そんな言い方するな千和。
「るせえ!お前らの為にわざわざ千葉からはるばる来てやったんだ!感謝しろバカ!」
ここは東京。と言っても千葉のすぐお隣。
とはいえ来てくれてありがとう瑛二。
光は青い顔でマスクをつけ、布団へ。
頭がぐわんぐわんする。死ぬ。
「·····瑛二·····お粥·····作りかけのあるから·····作って·····」
光は今にも死にそうな声で言う。
瑛二は「あーはいはいおっけおっけ」と言いながらキッチンへ。
「·····なんだよこれ」と瑛二。
「なに·····」と光。
「お前お粥の作り方知ってる?」
瑛二はそう言いながら鍋を持ってきた。
鍋の中にはまだ炊かれていない米、ネギ、ゆで卵が入っている。
「·····あれ·····俺·····なにそれ·····」
あんな訳の分からないもの作った覚えはない。
「もういい!!わかった!!俺が作るから!!ゆで卵は俺が食べるわ!」
瑛二はそう言ってキッチンへと戻る。
「悪ィそのゆで卵四日前の·····」と光。
忘れていた。
ゆで卵を1口食べていた瑛二は「っざけんな!!」とトイレに駆け込んだ。
「ひかちゃん·····」と千和。
「·····なんだ」
「肉·····肉が食べたい·····」
うるさい。
と、その時チャイムが鳴った。
?
一体誰だ?
「·····瑛二ィィ····」
光が呼ぶと、瑛二は「ハイハイハイ!」と言いながらトイレから出てくると玄関へ。
ガチャ。
ドアを開けた音と同時に声がした。
「·····こんにちは·····あれ·····なんで瑛二がいるの·····?」
この声は。
光は少し起き上がり、玄関へ。
思った通りだ。
そこにいたのは絵里だった。
何しに来たんだコイツ。
「·····ああ光·····」
具合悪そうだな。
絵里を見たら俺も余計具合悪くなってきた。
誰だコイツ呼んだの。
てか瑛二がいたことに驚いていたということはアイツしかいないか。
光はそう思い千和を見た。
千和は振り返り、「えっちゃぁ~~ん」と絵里を見た。
「····千和、お前絵里のこと呼んだのか」
光が言うと、千和は「具合悪いって言うから呼んだ·····」と死にそうな声で答える。
なぜ。
具合が悪いなら家で寝てろよ。
何で俺んちに呼ぶんだ。
「っざけんなよ!!病人増やしてどーすんだよ!!」
瑛二は3人を見て言う。
すまん、瑛二。
「あー瑛二アンタ·····今日の合コン行けないって言っといて·····」
絵里が言った。
なるほど。お前が幹事だったのか。
「俺は光と千和ちゃんと次いでにお前の看病だから行けなくなっちまったわ」と瑛二。
「ああ、それは残念·····」と絵里。
可哀想な瑛二。
さてと、話も済んだことだしお粥とか世話は瑛二に任せてそろそろ寝るとするか。
光が布団に入った時、瑛二も「はっきし!!!!」とクシャミ。
嘘だろ。呼んだ意味だろ。
余計具合が悪くなってきた。
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