コメディ・ライト小説(新)

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きゃのっちゅ!
日時: 2019/03/25 14:26
名前: かるび (ID: lDBcW9py)

どっちかなんて、選べない!
題名はCan not choose から取りました。


川瀬知也(かわせ ともや)
バカで単純な普通の高校生。
すぐに赤くなるのが悩み。
あかねとは幼馴染で、家族ぐるみのお付き合い。
美人ギャルと付き合うのが夢らしい。


宿木 小雨(やどりぎ こさめ)
内気な性格。ウジウジした性格を治したいと常日頃から思っている。
お菓子作りが得意。重度のオタクで、「推し」の事になると饒舌。
弱気な自分を励ましてくれる美月は推しの1人。


春山 美月(はるやま みづき)
誰にでも優しい学年一の美少女。
文武両道で友人も多く、その上頼れる万能タイプ。ものすごくいい匂いがする。
ただし手料理が壊滅的にマズいらしい。


佐土原 あかね(さどわら あかね)
素直になれないけど、誰よりも一途に知也を思い続けている。
勉強も運動も凡だけど頑張り屋。
友達想いでいつも笑顔、もちろん男ウケは抜群。


佐土原 かおり(さどわら かおり)
あかねのお姉さん。
おっとり美人で、自覚なしの天然たらし。
近所の小学生の初恋を尽くかっさらって行く。

1 小雨とあまやどり ( No.1 )
日時: 2019/03/25 15:05
名前: かるび (ID: lDBcW9py)

小雨side


―小さな時から、雨女だった。
だからいつも折り畳み傘を持ち歩いていて、
よく傘を忘れた人を見つけては、入れてあげていた。

雨女になるべくしてなったようなこの名前が、好きではなかった。

…宿木 小雨。16歳。




「小雨ちゃん、傘貸して!」

「うん、ちょっとまっててね。」

朝は晴れていたのに、夕方から雨に風にで大荒れだ。

私はリュックサックから3本の傘を取り出し、
友人に並べてみせた。

「赤とピンクと白の傘、どれにする?」

「あ、じゃあピンク!」


こんな会話は日常茶飯事だ。

ヤドリギコサメとして生まれた以上、これが私の使命なのだ。

こんな私に出来ることなんて、これくらいしか無いんだ。


今日は3本売り切れ。大繁盛だ。
最後の1本をあげる時はすこし躊躇したが、
頼まれたものは仕方ない。

こんなふうに断れない自分が、いつも嫌になる。


そんな時。

「小雨ちゃん、相合傘しちゃおっか?」


「…!!」
「美月ちゃん…!!!!!」



明るい色の地毛をハーフアップで纏めているこの美少女は、私の愛してやまない「推し」、春山美月ちゃんだ。


美月ちゃんは影のような私に1番先に気付いて笑いかけてくれる、スーパーハイパー美少女でウルトラ聖人なのだ。

「推し」である美月ちゃんへの愛を語れば、1時間では済まないだろう。


「本当に美月ちゃんは優しいよね、こんな陰険な私に手を差し伸べてくれて」

「そんなに自分を卑下しちゃダメだって。小雨ちゃんは可愛いんだから!」



相合傘をすると、左半身か右半身だけずぶ濡れになるなんてことがよくあるが、私は5分ほど歩いた今でも少しも濡れていない。

美月ちゃんはナチュラルに、私が濡れないように傘を傾けてくれている。

それなのに何一つ嫌な顔もせず、むしろ濡れた髪の毛が大変良く映えている。

何度か傘を美月ちゃんの方にずらそうとしたが、

「ダメ、小雨ちゃんが風邪ひいたら、学校がつまんなくなっちゃうでしょ?」

と、美月ちゃんはこんな雨の日でも晴れ空みたいに笑いかけた。


なので、スーパーハイパー美少女でウルトラ聖人の美月ちゃんに甘えて、少し気まずくもそのまま歩いた。




「じゃあね!またあした!」

私の家まで送ってくれた美月ちゃんは、傘をさしているのにずぶ濡れのまま帰って行った。


「やっぱり美月ちゃんは女神様だなぁ…」


なんて呟きながら、家に入って靴を脱ぐ…


はずが、なぜか扉があかない。


「あれっ!?」


押しても引いても扉はあかない。


鍵を忘れてしまった、こんな日に限って!





---





「せっかく美月ちゃんに傘借りちゃったのに…」

宿木小雨が大雨に打たれているなんて、あまりにも惨めすぎる。



「お母さん、早く帰ってきてよぉ……」

暫くの間、私は下を向いて、アスファルトに水が弾ける音を聞いていた。





「宿木?あれ、宿木だよな?」
「へ?」

俯いた顔をあげた時、見えた顔




「川瀬くん!?」



その顔は間違いなく、同じクラスの川瀬知也だった。



「なんだよ傘もささずに。宿木小雨のくせに、雨宿ってねえじゃん。大雨だし。ギャグかよ?」

「な、うう…」

言い返せぬまま俯いていると、いままで耳のそばで聞こえていた水を弾く音が、急に遠くなった。

「え?」


「これ使えって!俺走って帰るから!」


川瀬知也はそう言うと、手で頭を抑えて駆け出して行った。


「傘…」

「また他人の傘で雨宿り、させてもらっちゃった…」



「持ち手のとこ、ちょっと暖かい…」



初めて男子に傘を借りた。

持ち手のところが少し暖かくて、自然と顔がほころぶ。


「川瀬くんって、優しいなぁ…」



--
急に雨が降り出した初夏の日。
それは小雨の「推し」に、川瀬知也の名が新しく追加された瞬間の日。

2 美月とけしごむ ( No.2 )
日時: 2019/03/25 15:34
名前: かるび (ID: lDBcW9py)

美月side



「おはよう小雨ちゃん!昨日は大丈夫だった?」

「うん!うん!本当にこれは美月ちゃんと川瀬くんのおかげで…」

「川瀬くん?」



小雨ちゃんが男子の名前を出すのは珍しいことだ。



「川瀬くんと、何かあったの?」


「えっ!いやいやいや!別にラブコメの波動とか全然無くてその普通にその傘を」

「ラブコメのはどう…?よくわかんないけど、傘かりたってこと?」

「ひゃい!そうです!」



小雨ちゃんはテンパると少しオタッキーになるのだけど、今日はあまりにもテンパリすぎだ。

傘をかりたくらいでこの動揺のしようは…


まさか




「小雨ちゃん!川瀬くんのこと好きになっちゃったんじゃないの!?」


「へ?」



「そうだよ!絶対そうだよ!大丈夫!私応援するからね!」


「や、違う!全然違うから…!」

男っ気の全くない親友に好きな人が出来た、

あまりに大イベントすぎる。


この男っ気のない親友をここまで照れさせるとは、川瀬知也、侮れない。

しかしながら、小雨ちゃんはお人好しすぎて危ういところがあるし、危ない男に寄ってこられては困る。

私は川瀬知也を観察することにした。




--

知也side




「春山?そんなにジロジロ見るなよな」


学年一かわいいと名高いマドンナ春山が、俺を見ている。

人間じっと見てみると意外とヘンテコな顔をしていたりするものだが、春山はどこから見ても完成されている。

「やめない、私には使命があるから!」

使命?意味がわからない。
美人には大きな欠点があると言われるが、本当だ。

とりあえず春山のことを意識しつつも、目の前の授業に集中することにした。


少しして横目で春山を見ると、さすがに彼女も集中して黒板を見つめている。


鼻筋が通っていて、まつ毛が長くて、色が白くて、いい匂いがして

チラチラ見ているつもりが、つい見とれてしまう。

さすが、顔面偏差値学年一は伊達じゃない。



「あ、」

ぼんやりしていたせいで、不注意で消しゴムを落としてしまった。



拾おうとしたが、消しゴムは弾んでかなり遠くに行ってしまっている。


この静かな中立ち上がるのも嫌だし、だからといって…



そんなくだらない葛藤をしていると、沈黙を破るように椅子を引く音が響いた。




周りの目を気にせずふっと立ち上がって、俺の消しゴムを拾って………





『はいっ』



内緒話の時に使うようなウィスパーボイスで



「あ、りがと、」



学年一の美少女の手は




『消しゴムって弾んじゃうから落とすと大変だよね』




俺の手に触れた




--

恋の始まりって、こういうのを言うんだろうか


俺は暫く、ふわふわした独特の空気の中にいた。


春山の顔はもう見られなくなった。


今春山の顔を見たら、それこそゆでダコの如く真っ赤になってしまうだろう。



春山美月。


俺はたぶん、とんでもない高嶺の花に恋してしまった。

3 あかねとかおり ( No.3 )
日時: 2019/03/27 01:27
名前: かるび (ID: 69bzu.rx)

あかねside



ずっと、お姉ちゃんの背中を見てきた。


優しくて、上品で、いつもニコニコしていて


誰からも好かれる姉が、私も大好きだった。




--





「ちょっと知也!前かしたCD、早く返してよ!」

「わぁったよ!明日持ってくっからさ!」

「明日ぁ!?遅いっつーの!もう1ヶ月も経ってんだよ!?」

ちょっとした言い合いのつもりが、知也相手だとついヒートアップしてしまう。



佐土原あかね、16歳。
ずっと前から、知也の事が―――





--






「ねぇあかね、あかねと川瀬ってデキてんの?」

「うぇ!?なんで!?」


驚きはするものの、この手の質問は耳タコだ。

幼なじみで家も近所で、たまに一緒に帰るし、親ぐるみの付き合いだし、
そりゃ周りから見ればそう思われてもおかしくはない。


「そんなわけないでしょ、ホントにアイツって鈍臭いんだよ?この前もさぁ」

「はいはい。痴話喧嘩なら他でどーぞ。」

「だから違うって!」


こんな会話は何度もしているし、私自身本当に慣れている。
ただ、知也とは本当にそんな関係ではない。


だって―






「ねぇ知也、あんたってまだお姉ちゃんのこと引きずってんの?」

「はぁ!?」

「あんたのお姉ちゃん好きも困ったもんだったからね、毎日うちの周りウロウロしたり」

「るっせーな!」




だって、知也は。



ずっと私のお姉ちゃんの事が




好きだったんだもん。



---

私が小学生の時、既に中学三年生だった姉は、他から見ても目を引く美人だった。


近所の男子はみんな姉に懐いていて、恋心を抱いていたヤツも少なくないと思う。

そして知也も、その1人だった。



「あかね!かおりねーちゃんにこれ渡して!」

ある日、そんな事を言われたことがある。

渡されたのは、
子供ながらに一生懸命作ったであろう、シロツメクサで編んだアクセサリー。

不格好だけど、サイズもおかしいけど、それでも愛情がこもったアクセサリー。


「うん、絶対渡しとくね!」


そうは言ったものの、見れば見るほど私はそれが欲しくて、結局姉に渡せなかった。
私はそれを自分の宝箱に入れて、知也には渡しておいたと嘘をついた。

私はずるい。

お姉ちゃんをエサにして、知也を何度も家に入れた。
誰よりも近くにいたかった。

自分で言うのはなんだが、私は誰よりも知也の近くにいたと思う。


でも、それでも、


知也は、私に振り向いてはくれなかった。



こんなに近くで見ていても、私なんて
お姉ちゃんに会うための経由でしかなくて
それこそ都合のいい友達としか思っていないんだろう。


もう、分かっている。



「あ、なんか最近は美月にもデレデレしてるらしいけど、浮ついた男はモテないんだからね」

「わ、わかってるって!だ、だ誰が浮ついてなんか!!」

「ふぅん。」

知也はわかりやすい。

焦った時の声の上ずり方なんて、特に。

そっか。美月の事が気になってんだな。


分かりたくなくても、知りたくなくても、
顔を見てれば、声を聞いてれば、全部気付いてしまう。

ずっと見てきたんだ。仕方ない。

だから



「知也」

「ん?」

「今回は私、応援してやんない。」

「はぁっ!?てか別に好きとは誰も言ってないし!」

「ふん、絶対応援してやんない!」



私はこれからも、知也とこうやって言い合いがしたい。



「知也の女ったらし!」

「うるせぇな!」

「ばーか!」



私は、ずっと前から知也の事が―――




知也の事が、大好き。


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