コメディ・ライト小説(新)
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- ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について
- 日時: 2019/04/24 02:27
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
幼馴染みの裕翔に秘かに恋する美鈴は、ある日、裕翔が女子生徒に告白されるところを
目撃してしまい、その衝撃で前世の記憶を思い出す。
そして、この世界が実は現世でやっていた「花嫁この手に駆け抜けろ」という
ギャルゲーだと思い出す。そのゲームのキャラクター美鈴は幼馴染みで振られ役。
結ばれることがない唯一のキャラクターだった。
「だったら、魔法を極めてやる!」
振られるぐらいだったら恋を捨て、勉学へと決意した!はずなのに…
いつの間にかイケメンに囲まれていた。
「ギャルゲーから乙女ゲーへルートが変わることなんてあるの…」
~~~~~~
【登場人物(増える予定)】
・平良美鈴
ギャルゲーの主人公の幼馴染みキャラであり、唯一主人公とは結ばれない。
ある日突然、前世を思い出す。
・中野裕翔
ギャルゲーの主人公。
一部の女子にはモテている。
・櫻田響
優しい、爽やか、王子様という王道派イケメン。
ファンクラブがあるらしい。
・斉藤栞
美鈴のクラスメイト。
学級委員でクールな性格。
・白銀透
美鈴の隣の席。
誰に対してもツンとしてる。
・近藤東
図書室の幽霊と噂になってしまった図書委員。
人と交流しない。
・高坂和希
明るい、元気、お調子者で裕翔の親友。
ギャルゲーでは攻略キャラたちの情報を裕翔に教えるサポートキャラ。
〜〜〜〜〜〜
複雑・ファジーの方から引っ越して来ました
よろしくお願いします┏○┓
- Re: ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について ( No.3 )
- 日時: 2019/04/29 16:40
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
2.決めたこと
目覚ましで起きた私は朝風呂に入る。
風呂に入りながら、この世界のことについて思い出す。
確か、攻略キャラ全員、主人公と昔会ったことがある設定だった記憶がある。
怪我したとき助けてもらったとか、泣いていたとき慰めてくれたとか…
聞けば聞くほどテンプレ。
まぁ、それがまた良きなのだが。
「そう言えば、私は今、中三だっけ」
ならば、受験生だ。
思い出してきたぞ…美鈴は超絶頭がいいのに、
主人公と一緒に通いたいがために主人公と同じ高校へ行くことにした。
でも、結局は美鈴は失恋する。
美鈴が主人公に告白するルートもあれば、告白できず攻略キャラと主人公の
結婚を見ておめでとうと言うルートもあれば、告白したけど嘘だよとか
言っちゃうルートも…思い出すだけでも美鈴は振られてばかり。
「酷すぎる…」
今の美鈴は美鈴であるが美鈴ではない。
中身は別人。
だから、主人公には全くもって興味がない。
美鈴には悪いが、平和的な未来を望む私は主人公と一緒の高校には行きたくない。
美鈴は容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀。
スポーツ万能だが、私はスポーツをやりたいとは思わない。
毎日走るなんて、前世ヲタクだった私にとっては酷なことだ。
今の姿がスポーツできる身体でもやりたいとは思えなかった。
容姿端麗…モデルとかアイドルとかにいても可笑しくない可愛い顔だが、
人前で何かをするという目立つことは苦手だ。
「となると、勉強…」
三つある選択肢の中で唯一まだマシだと思ったのは、勉強だと思った。
しかも、このゲームは魔法を使うことが当たり前な世界。
別に魔法を使えなくても生きていけるが、魔法を使えた方がやっぱり
カッコイイと思った。
厨二心が擽られる、というのもあるが。
「……決めた」
美鈴はバシャっと勢いよく立ち上がった。
「だったら、魔法を極めてやる!」
えいえいおー!と大きな声で叫び、母親に怒られたが、
今の美鈴は生き生きとしていた。
- Re: ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について ( No.4 )
- 日時: 2019/04/29 22:13
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
3.赤い目
小中学校では魔法の基礎はやるが難易度な魔法はやらない。
基礎中の基礎。
高校でやっと本格的に魔法授業を行う。
実際、あの「魔法極める宣言」をした日から一週間以上経っているが、
魔法授業は今のところやっていない。
でも、もし頭がいい高校へ行くなら話は別だ。
魔法も受験の中に入ってくる。
普通の高校はまだテストを受けて面接受けて合格したらその高校へ
入ることができるが、偏差値が高いところはそうはいかない。
高難易度な魔法使えて当たり前だよね?と指揮官が笑顔で圧をかけてくる。
だから、上の方へ行きたい人は難易度な魔法を使えるようにするため塾へ
通ったりしている人がいる。
「…塾」
嫌だ、行きたくない。
そう思い市立図書館へやって来た。
本を借りて、早速、人通りが少ない公園へ行って、練習した。
本を読んで魔法が使えればいい。
「って、口で言えば簡単だけど、駄目だ…」
美鈴のおかげで基礎中の基礎は全部できた。
頭の中から呪文が出てきて、それを唱えたら火が出たり、
風が吹いたりすることが出来た。
しかし、高難易度な魔法を使おうとすると、力加減が分からなくて
思いっきり風を出してしまったり、かと言って気を付けようとすると、
魔法が出なかったり…。
もうこれは詰んだのでは。
「うぅ」
「ヘタクソ」
「!?」
後ろを振り返ると、人が立っていた。
片目は前髪で隠れており、セミロングぐらいの髪の長さ。
髪色は毒々しい紫色で隠れていないもう片方の目は一度見るとゾクッっと
する赤色だった。
サラサラとした髪は風に揺られる。
ボーっと見ていると、その赤い目がギロリと私を睨んだ。
「何」
さらに私は驚いた。
綺麗な女性だなぁ、と思ったら声が低い。
男性だ…。
別に苦手意識はないが、変な感じではある。
「そんなに見られても気持ち悪いだけなんだけど」
「え、あ、すみません…。綺麗な人だなと思って、つい」
あっ、やべ。
そう思った頃には遅かった。
前世のときの私も思ったことを口に出してしまうタイプだ。
そのせいでトラブルとかもあった。
前にも綺麗な人を見て「綺麗」と言ったら、その人は
「アンタみたいな元がいい人に言われたくないわよ!」
と言われてしまったことがある。
だから、またそんなことになってしまうのではないかと思った。
現に彼は呆然としている。
これはまずい、また…。
「…初めて言われた。綺麗って」
彼はボソッっと呟くように言った。
「そうなんですか?」
「うん。気味悪がない人、初めて見た」
赤い目は心底驚いた、という目をしていた。
気味悪がる人なんているんだ。
「羨ましいぐらいなのになぁ」
「…は」
「あっ」
また出てしまった。
やばい、怒られる。
「すみません!気にしないでください!!土下座で許して!!」
思いっ切りスライディング土下座をした。
まさかスライディング土下座をする日が来るなんて…。
でも、相手に嫌がることをしてしまったのだから謝るしかない。
すると、彼は肩を揺らし、ククッ…と笑い始める。
「ハハハッ!君、面白いね」
「は?」
「久しぶりに笑った」
彼は涙が出るほど笑っていた。
…何だ、この敗北感。
「笑ったし、嬉しかった」
さっきまで睨んでいた赤い目は、
まるで別人のような優しい目で私を見ていた。
- Re: ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について ( No.5 )
- 日時: 2019/04/30 20:28
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
4.名無しさん
「平良美鈴…ふぅん、平良美鈴ね。忘れたらごめん」
笑顔で言っているので次会ったときは忘れているであろうと
私は感じ取った。
あれから何十分後かに土下座はもういいからベンチで座って喋ろうと
言われた。
それで名前を聞かれたので名乗ったのである。
「貴方は?」
「う~ん、教えたくないなぁ」
「名前ないんですね、分かりました。名無しさん」
「名無しさんは悲しいかな」
まぁでもいっか、と彼は言う。
いいんかい…。
「名無しさん、私、魔法の練習したいんです」
「うん、ずっと見てたからね」
「えっ、怖」
そんな反応が面白いのか、さっきから彼は笑っている。
私は別に面白くも何とも無い。
時は刻一刻と迫ってきているのに。
「練習しなきゃいけないので」
「基礎出来てたから、もう大丈夫だと思うけど」
「私は上の高校へ行くために高難易度な魔法を習得しなきゃいけないんです」
「ふぅん」
心底つまらないという顔で答える名無しさん。
つまらなくない。
主人公と一緒の高校か違う高校かで私の未来は変わるんだよ。
「でもさ、見てたけど、ヘタクソだったよ」
「う」
聞きたくない…と思い耳を塞ごうとするが、
名無しさんは私の両手を掴んでニコニコと笑いながら喋り続ける。
「力加減出来てなくて、それを気を付けると魔法が出せなくて、
しかも、何個か読み間違えてたし。
あと、風魔法のとき勢いありすぎてパンツ見えたよ」
「間違えたところ言わないでください。
それと、最後のパンツはいらないです!」
「イチゴのパンツなんて可愛いね」
「あーあー!何も聞こえないー!!」
恥ずかしさのあまり倒れそうだ。
しかもこの人、さっきから私が照れたり焦ったりすると、
物凄い笑顔でまた恥ずかしいことを喋りだす。
この人はドSだ。
「可愛いね」
「どこが」
「全部」
「…」
ため息をついてしまった。
「出会ってすぐなのに、よくまぁ全部なんて言えますね…。
ドSなのに頭の中はお花畑なんですか…」
「よく言うね。でも確かにそうだ。
美鈴の言う通り、もしかしたら頭の中はお花畑かもしれない」
うっわー認めちゃったよこの人。
私は引き気味に目で彼を見る。
あんなに睨んでいたのに、こんなにベタベタされても対応に困る。
「でも、美鈴のときだけだよ。
お花畑になるときは」
「は?」
「美鈴以外のときは、絶対お花畑にならない」
「ふぅん…」
「ボクの真似?似てるね、結婚する?」
「いきなり何でそうなるのか不明なんだけど」
「あ、敬語なくなった」
やらかしたと思い、謝ろうとするが、人差し指で口をチョンと抑えられた。
「謝らなくていいよ。むしろ、そっちの方が嬉しい」
ニコッっと笑う彼は悪戯好きな子供のようだった。
- Re: ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について ( No.6 )
- 日時: 2019/04/30 02:07
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
5.デジャヴ
「はぁ、もう今日は帰るよ」
「そうなの?悲しいなぁ」
悲しそうに聞こえないのは私だけだろうか。
「じゃあね」
「…」
えっ、返してくれないのか。
まだ仲良くなったって訳ではなさそうだなぁ。
公園の出口へ辿り着くと後ろから走ってくる音が聞こえた。
「…名無しさん?」
「…近藤東」
「その人がどうかしたんですか?」
「違う。ボクの名前」
近藤東。
まさか名乗ってくれるとは。
「近藤さん」
「やめて。敬語じゃなくていいって言ったでしょ」
「東、さん」
東くんはやめた。
少し気が引ける。
東さんは今はいっかと呟く。
いつかは言わなければいけないんだろうか…でも、その時が来ればいいな。
「それから…じゃあね」
彼はそう言い、公園の中へと戻っていった。
☆
「み~すずさ~ん、最近、男の匂いがするんだけど~」
友人の菜々美が言ってきた。
菜々美とは小学校のときから仲良しで親友だ。
ピンク色の髪色で、ふわふわした髪の毛。
タレ目で誰もが注目するような女の子だ。
そんな菜々美は三度の飯より恋な女の子だった。
「男の匂いって…」
最近、あの公園で魔法の練習をしている。
その度に東さんと会うが、別に近い距離で何かをしたりしているわけではない。
東さんは私の魔法を見て、ヘタクソだね~と言っているだけ。
それ以外は本当に何もなかった。
「だって、美鈴、最近付き合い悪いんだもんっ」
プクッと膨れた頬がとても愛らしく見える。
可愛い…と言うと菜々美はまたそんなこと言って~!と怒った。
「でも、美鈴は裕翔くんのことがいっちばん好きなんだもんね」
「…」
前の私だったら、「べっ、別にそういう訳じゃないし!」とか
言うんだったろうが今は違う。
好きか嫌いかと言われたら、ノーコメントと言うしかない。
普通なのだ。幼馴染みだね、仲良しだね、そんな感じ。
「裕翔くんでも裕翔くんじゃなくても、春が来たら教えてね!」
音符マークが付くんじゃないかという勢いで彼女はどこかへ行ってしまった。
今日、この本、返しに行かなくちゃ。
私は市立図書館へ向かった。
☆
返却した後、他にどんな本があるか探した。
しかし、自分に見合ったものが見つからない。
やっぱり、塾に行かなきゃいけなくなる感じなのかなぁ。
「嫌だな…」
「おい」
でも、塾行かない限り、高難易度な魔法を使えるようになんて…
「やっぱりそうなるよね…」
「おい貴様」
お母さんに言ったら、どんな顔をするだろう。
美鈴の母親は現実主義者だからなぁ。
「う~ん」
「貴様!」
「ヒィ!」
驚いて振り返ると、男性がしかめっ面で私を睨んできた。
…デジャヴを感じる。最近、似ているようなことがあった気がする。
「どけ。本が取れん」
「す、すみません」
ササッっと素早く動く。
彼は本を手に取ると他の棚へ行ってしまった。
- Re: ギャルゲーキャラだったはずが乙女ゲーになっていた件について ( No.7 )
- 日時: 2019/05/03 10:19
- 名前: まくら (ID: HptiZu8f)
6.魔法
「全然できない…」
このままでは本当に主人公と一緒の高校に入るルートになってしまう。
四月が終わるというのに、私は未だに基礎魔法しか出来ていなかった。
図書館であんなに本を読んだのに、実行させることは出来なかった。
「相変わらずヘタクソのままなんだね」
東さんはあの日以来、公園に行くと必ず会うようになった。
むしろ、公園に行かない日があると、どうして来なかったの?という
質問が永遠にくるので、強制的に行くようになっていた。
「別に美鈴は頭悪いわけじゃないんだから、いいと思うけど」
「それじゃ駄目なの。偏差値が高いところへ行かないといけないの」
「絶対に?」
「絶対に」
ジャングルジムの一番上で座っている彼は軽々と飛び降りて、
私に近付いた。
「じゃあ、教えてあげるよ」
「…え」
「ボク、一応高校生だからね。魔法授業もやってるし」
高校生。
「高校生…」
「うん」
「な、なら何で教えてくれなかったの!?」
彼はう~んと唸った後、ピコンと音が付きそうな顔で
面白そうだったからかな?と笑顔で答えた。
何で疑問形なの…しかも笑顔…。
「まぁ、ボクもそんなに使えるわけじゃないけどね」
そう言いながら、彼は公園の中央に立つ。
彼の近くへ行こうとすると、危ないから来ないでと言った。
少し遠いが魔法は見えなくはない。
まじまじと見ていると、彼は照れるなぁと笑顔で言った。
その顔は照れてない顔であったが。
「…悪魔の地獄」
すると、彼の周りが一気に炎に囲まれる。
使えないと言っていたが、予想より全然使えていた。
炎の色はドス黒く、本当に地獄のようだった。
その炎が渦のようにグルグルと回っている。
彼はただ炎の渦を見ているだけ。
でも、何故だろう。
彼の赤い目はいつもみたいに悪戯っ子のような目をしていない、
最初に出会ったあの時の目だった。
何もかも睨みつけている、そんな目。
「東さん…」
彼はグルッっと私を見た。
その瞳は生きている色ではなかった。
他の誰かが憑りついたみたいに。
「東さん!」
身体が勝手に動く。
何となく、本能がそうしろと言ってきたのだ。
このまま見ていたら、彼は別人になってしまいそうだったから。
炎の渦へ入ろうとしたその時―――
「聖なる滝」
東さんの周りの炎の渦の上空から滝のような雨が現れる。
炎の渦は消え、中央にいた東さんはびしょ濡れだった。
「おい貴様、魔法をコントロール出来ないなら、使うのはやめろ」
この声、どこかで。
そう思い、振り返ると、この前図書館で会った男性が立っていた。
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