コメディ・ライト小説(新)
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- あげいん中学生。
- 日時: 2019/04/29 10:08
- 名前: 也 (ID: oSsw04AE)
やわらかな、優しい風が吹いた。
自転車をこぐ私の真新しい制服に、桜の花びらが降ってくる。
絵に描いたような鮮やかな青空の下、私はなんとも言えない幸せな気持ちになって、一気に坂をかけ登った。
1 世界一眠い世界史の授業
この春、私、中野史織は猛勉強の末、第一志望だった県立高校に合格した。県内トップの偏差値を誇り、大学への進学実績も輝かしい。
校則は他の高校に比べるとかなり緩くて、基本自由だから、おしゃれもできるし、勿論スマホだって使える。中学のキツキツの校則とは大違いた。
私のクラスはメンバーに恵まれてて、直ぐにみんな打ち解けた。入学式の次の日にみんなで写真撮ったって言ったら、親友の田中璃乃(りの、ちなみに同じ学校)がすんごいびっくりしてたっけ。璃乃のクラスは誰も話し出せなくてみんなずっと勉強してるんだって。かわいそうに。
そんなこんなで、私は今高校生活を大いに楽しんでいる。
とはいえ。
県内屈指の進学校なのだから、授業の進むスピードは異常である。一度遅れたら、もう大変なことになる。だから絶対、授業に必死にくいついていかなきゃいけないんだ。
授業中寝るなんて、以ての外。はっと目覚めた時には、もう教科書は5ページくらい進んでしまっている。
だから、絶対寝ちゃいけない。寝ちゃいけないんだけど、、、
私の席は窓際。くじ引きでこの席を引いた時はラッキーだと思ったけど、実はここ、かなり危険。春のそよ風が心地よく吹いて、抗ってはみても、ついウトウトしてしまうのだ。
そして、今は午後イチの世界史の授業。
世界史の先生はおじいちゃんで、テストに出ないであろうウンチクをことあるごとに教えてくださる。そんなの全然興味ないし……睡魔に襲われちゃうよー……
何より、そのおじいちゃん先生の声は静かでやわらかくて、かつ耳に心地よく響くから、結局世界史の授業はいつも寝ちゃうんだよね。あ、隣の席の人、すでに船漕いでる。
てか、私も、そろそろ、や……ば……
ガクッ
2 まさかまさかの逆戻り!?
………………あ。
やっばい、また寝ちゃった。どれくらい意識飛ばしてたんだろ、今何分??
時計を確認しようと私は顔をパッとあげる。
すると…………
??「おいしおり!!何ぼーっとしてん だ!!!」
私「ふぁっ!?え、えっと、すいません!!」
勢いで謝ってしまった。え、え、え、ちょっと待って、何これ何これ!?
私、今世界史の授業受けてたよね!?
今私に喝をいれたのは……中学のバレー部の顧問の先生!?
あれ、ていうか、私なんでこんな汗だくなの??
しかもなんでバレーボール持ってんの??
あと、なんか首がすーすーするような……
って、えっ!!??セミロングだった髪の毛がショートになってる!!!何これ!なんなのこの状況!!!!
ここってもしかしなくても……
私の中学校?
うん、それは間違いない。一旦落ち着こう。それで今は部活の時間なんだ。
んで、なんで私がここにいるわけ??
分かった、夢だ。これは夢なんだ。だって私はもう高校生になったんだし。それにしても授業中にこんながっつり夢みれるなんて、私結構大物じゃない?笑
で、この夢いつ覚めるんだろう。
まーいいや、目が覚めるまで中学生の私っぽくバレーしよっと。チームメイトの髪型とか顔で察するに、これはまだ中一の時かな。うわあ、なつかしーー!!
私にレシーブの順番がまわってきた。さすがに今の私は高校生なので、3年間中学でやっただけの技術はある。私の元チームメイト、つまり今この世界で中一のチームメイトは、私のプレーを見てびっくりしている。
何これ、きもちいーー笑笑
それにしても、夢にしては腕にボールが当たる感触とか、周りの声とかが結構リアルだな。自分の体もしっかり動くし。
こんなにリアルだと、なんか夢っぽくなくて、目が覚めるか不安になってきた。
いやいや、落ち着けって私。夢じゃないわけないじゃん。だって私さっきまで高校で授業受けてたじゃん。この中学、一ヶ月前に卒業したじゃん。
そのうち目、覚めるよね。大丈夫だよね。
……大丈夫だよね。
「「「「「ありがとうございました、
さようならー!!!」」」」」
顧問「気をつけて帰れよぅ」
あの。かれこれ3時間経ちました。部活終わっちゃったよ、こっからどうすればいいの!?
璃乃「史織ーかえろーよー」
……りの。そうだ、璃乃に色々聞いてみよう。
私「ねえ璃乃、今私達何歳??」
璃乃「は?何言ってんの、13歳でしょ、大丈夫??」
私「……じゃあ、今何月?」
璃乃「4月だよ。なに、 具合悪いの?帰れそう??」
私「……いや、ごめん、大丈夫、帰ろう」
とりあえず、みんな中一じゃなくて中二になりたてだったってことは分かった。
いや、そんなのはどうでもよくて。
今、私の中で組み立てられてる疑念が確信に変わりつつある。
家に帰ると、今はゆるくパーマがかかったショートヘアーだったはずのお母さんが、長い髪をひとつにまとめて料理をしていた。
とりあえず、体に染み付いたルーティーンをこなしてみる。
給食セットと汗で濡れた練習着を洗濯機に放り投げる。
自分の部屋にカバンをおく。
お風呂に入る。
晩御飯を食べる。
自分の部屋には、大量の高校の教科書は置かれていなかった。璃乃と受験後に買ったリュックサックも、自分のスマホもなかった。
シャンプーは最近使っている好きな匂いのものではなかった。
ご飯はしっかり味がした。お茶碗は、かなり前に割ってしまったはずのものが傷ひとつ無い状態で置かれていた。
分からない。どうしてこうなってるのかさっぱり分からないけど、私は確信した。
私、中学生に戻ってる。
なんで!?なんで!?
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
こんなことある!?でもしょうがないよね、確信した、これ夢じゃないわ!!
とりあえず、今日は寝よう。朝起きたら戻ってるかもしれないし。期待を込めて、若干レイアウトの違う自分の部屋でベッドに潜った。
翌日。スマホのアラームの音ではなく、誕生日プレゼントで友達から貰った目覚まし時計の音で目覚めた時に、うすうす気づいた。でもまだ、希望を捨てたくない。嫌だ。嫌だ。ゆっくり、ゆっくり起き上がってみる。
ハンガーには、見慣れた中学のセーラー服しか掛かっていなかった。
やっぱり、戻れてない。私は泣きそうになった。
どうすればいいの、これ。何が引き金になってるの?何が原因でこの現象?
そもそもここは過去?それとももうひとつの世界??
わかんない、全然わかんない。
私は世界史の授業でうたた寝をしていただけなのに。
そうだ、学校。学校に行けば分かるかもしれない。
とりあえず登校してみよう。
一旦切ります