コメディ・ライト小説(新)
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- 初恋
- 日時: 2019/05/11 09:59
- 名前: アルミホイル ◆YGMfyqLkSE (ID: CdQXkGKl)
キーンコーンカーンコーン・・・
チャイムの音が鳴る。
周りが「○○ちゃんばいばい!」などと挨拶を交わしている中、誰とも喋らずに足早に学校を出る。
小さい頃から人と話すのが苦手だった私は、クラスの中、いや、学校の中で孤立している。
そう、私はいわゆる、「陰キャラ」というやつだ。
「陰キャラ」というのはみんなから馬鹿にされる対象であるが、別に構わない。
だって、「陰キャラ」でも人生を楽しんでたら勝ち組だもん。
といっても、前は人生を楽しいと感じたことがなかった。
私が人生を楽しいと思うようになったのは、つい最近の話だ。
- Re: 初恋 ( No.1 )
- 日時: 2019/05/12 02:22
- 名前: アルミホイル (ID: CdQXkGKl)
その日、私はいつものようにバイト先であるカフェへと足を運んでいた。
カランカラン…
「あ!きなちゃん来た!」
「きなちゃん…?って誰すか店長」
「………」
店に入ると、店長と初めて見る男の子が話していた。
背が高くて凄く端整な顔立ちをしている子だ。
「あ、あの…店長……」
「この子はね、新しく入ってくれた子だよ。今日面接だったんだけど、きなちゃんも知っての通り、うちは人数が足りないでしょ?だから即採用!」
初対面の男の子が居ることに緊張して、その人は誰ですか?という声が思うように出なかったのに、店長が私の知りたかったことを言ってくれた。
店長はいつも私の言おうとしていることを分かってくれる。
優しくてかっこよくて穏やかで…人と話すのが苦手な私でも、何故か店長とは普通に喋れる。店長は私にとってお兄ちゃんのような存在だ。
「………って、きなちゃん、聞いてる?」
「えっ、あ、ごめんなさい…聞いてなかったです…」
「もう一度言うね。きなちゃんに、新しく入ってきた子、田代隼人くんの、お世話係をしてほしいんだ。」
……………?
どうして私なんだろう、まだ仕事内容も完璧じゃないし、何より人と話すのが苦手だから上手く教えられたりできないし…
「という訳なので、きなちゃんさん、これから俺が仕事覚えるまでお願いします」
「…あ、はっ、はい。……えっと…」
「フルネーム分かんないんで、きなちゃんさんって呼んでまぁーーーす」
少し私を煽るように田代くんが言う。
名前をまだ言ってなかった私が悪いんだけどね。
…ってあれ?私今「どうしてきなちゃんさんって呼ぶの?」って聞いたっけ…
「おーい、きなちゃんさーん」
「あっ!!あ、ご、ご、ごめんなさい!」
「大丈夫っすよ。改めて自己紹介します。田代隼人です。」
「佐原樹奈子です…。」
「きなこ…うまそ…」
「…美味しくないです」
「ぶっ!!」
田代くんが吹き出す。
「あっ、そういえば!」
いつのまにかキッチンに移動していた店長が突然言う。
「何すか?」
「いや、二人とも同じ高校だったなあーって。」
「…………えっ!!!!!!」
「うわっ。びっくりした。」
田代くんが私の声のせいで少しだけ身体をビクッとさせた。
同姓同名だと思ってたけど、田代くん……ってまさか…
「……あ、あの。もしかしてあの田代くんですか…?」
「この田代っすね。」
「い、いや!そ、そういんじゃなくt」
「多分佐原さんが知ってる田代隼人だと思う」
私の声を遮るように言う。
そう、田代隼人といえば学校で知らない者はいない。
生徒会役員で、バスケ部エース、そしてそのスタイルの良さと、綺麗すぎる顔立ちから、入学したときからずっと人気者だった。
でも、最近は『学校であまり見かけない』と女子がよく嘆いている。
ちなみに私は、田代隼人という名前だけは知っていたけど、顔は今日初めて見た。
………本当に綺麗な顔だなあ。顔小さいし…目がキラキラしてて…髪の毛もサラサラだ…。鼻の形凄く綺麗、高いし……。肌なんて毛穴もないんじゃない?羨ましいなぁ……。
「ちょっと佐原さん、近い近い」
「わっ!!ご、ごめんなさい、毛穴が…」
「毛穴?」
「あ、い、いや、そうじゃなくて…肌綺麗だなあって…」
「そう?佐原さんのが綺麗だと思うけど。」
そう言って田代くんが私の顔を近くで見てくる。
「………あ、あの…」
「…………」
「………ぁ…んっ!」
田代くんが私の首筋に息を吹きかける。
- Re: 初恋 ( No.2 )
- 日時: 2019/05/12 02:38
- 名前: アルミホイル (ID: CdQXkGKl)
「お、おい、変な声出すなって…」
私の声に田代くんが反応する。
少し顔が赤いような…?
「ごめんなさい…」
「いや、俺が悪かったから、謝んな。」
「あ、はい…。」
「それと、俺のこと知ってるってことは、同い年だよな?タメ語でいこうぜ」
「………慣れるまで敬語使わせて下さい」
「そうくるか」
田代くんがフッと笑う。
なんか、田代くんの笑顔って、なんか、なんかさ…
「かわいい……」
「ん?何が?」
「あ!!いい、い、いや何でも!!!!ナンデモナイデス!!!!」
「その反応で何でもないは無理があるぞ」
「…………そんなことより、そろそろ仕事しましょう。」
話題を私の失言から仕事のことに変える。
普段店長と家族以外の人と話さないだけあって逸らしかたが下手だなあ。
「そうだな。じゃあ何したらいい?」
あ、でも田代くん、話を逸らしたことに気づいてないっぽい。よかった。
「えっとね。田代くんってホールだよね?ホールだったら、とりあえずメニュー全部覚えてもらおうかなぁ」
「了解。あと、敬語じゃなくなってるな。俺に慣れたってこと?なんかすっげえ嬉しいわ。」
………ほんとだ。自分でも気づかなかった。
それに、極度の人見知りで、声が思うように出なくて、出ても震えてたりするのに、何だか店長とか家族と話すみたいにすらすら言葉が出てくる。
「……何でだろ」
「無自覚かよ」
田代くんがまた笑う。
今日で笑うの何回目だろう。この人よく笑うなあ。
「佐原さんってよく笑うんだな。」
「えっ、私が?」
「あなたしかいませんが。」
「……えっ、私が?」
「なにこれ無限ループ?」
「……………………えっ、私が?」
「ノリいいな おい!」
私と田代くんは一緒に大きな声を上げて笑った。
- Re: 初恋 ( No.3 )
- 日時: 2019/05/12 02:50
- 名前: アルミホイル (ID: CdQXkGKl)
結局その日は、ずっと話していたせいで、全然仕事を教えられなかった。
次の日、私はいつも通り学校に行くのだけど、心なしか気分が良い。
「〜♪」
鼻歌なんか歌っちゃって、ほんと、今日はどうしたんだろう。
「…あっ!」
道すがら、田代くんを見つけた。
私は家を出るのがみんなより20分ぐらい早いので、登校中に誰かを見つけるというのは珍しい。
田代くん…声かけてもいいのかな……
私が悩んでいると、田代くんはもういなかった。
「……声かけたらよかった」
かけたら一緒に行けたかもしれないのに……
っていやいやいやいやいや!!
好きとかじゃないんだよ?違うのこの感情は!
楽しい時間を一緒に過ごした相手って、これからも仲良くしたいって思うじゃん?
つまりそういうことだよ!私は田代くんと友達になりたいだけで、別に付き合いとかじゃないからね?!
自分に言い訳するかのように言う。
何でこんな必死になるんだろう私……
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