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コメディ・ライト小説(新)
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- あこがれ
- 日時: 2019/05/19 15:22
- 名前: 月見草 (ID: PWuHX0Jf)
×××さんへ
その人の名を便せんに書いて私はため息をついた。
どうせこんな手紙渡す勇気も機会も私にはないのだから
分かっていて私は書いている。
渡せない手紙をなぜ書いているかなんて自分でもわからない。
ただ、なんとなく。
幼い日の私たちのこと、あなたはまだ覚えていますか。
子供のころの私から見たあなたは私にとって
「あこがれ」の存在でした。
駆け回るあなたの姿は物語の主人公のようでした。
かっこよくて、きらきらしていて、まさに「あこがれ」でした。
けれど、わたしとあなたは特別仲がいいわけじゃなかったから、
あなたと遊ぶことは「たまに」でしたね。
…ほんとはもう少したくさん一緒に遊びたかったけれど。
それも、今となってはもうできないか。
私にとってあなたは「あこがれ」でした。
ご〇ん
ほん〇はちょ〇と
○○でした。
「あれ…?」
私の目から、涙が零れ落ち、文字のうえに「ぽたり」と、落ちた。
便箋に、書かれた文字は、じわじわと、にじみ、それは、もう、
読めなく、なって、いた。
私の、あなたへの気持ちは、その、にじんだ文字のように、もう、
わからなく、なって、しまった。
涙が、便箋に、私の心に、ぽたり、ぽたりと、とめどなく、落ちた。
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