コメディ・ライト小説(新)

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願い多し、未来は一つ
日時: 2019/05/24 21:40
名前: 佐藤一々 (ID: OtIMiKLW)

  迷い、悩み、葛藤する実に滑稽で愉快な思春期患い諸君へ。
 そんなに嫌なら願いを叶えてやろう。
 絶望、嫉妬、挫折、齟齬、卑下、全てくだらん。
 己の望む世界像を教えよ。己の願う自分を感じよ。己の全てを醜く吐き出すが良い。

 さあ、世界の再編だ。



〜筆者挨拶〜
 書き手デビュー。産まれたての作者をよろしくお願いします。

第一章 ( No.1 )
日時: 2019/06/01 16:00
名前: 佐藤一々 (ID: OtIMiKLW)

 俺は願う。
 人生たった一度の、奇跡を。

「さよなら、蓮二君」




願い多し、未来は一つ


第一章 消失


「聞いてくれ蓮二。俺は心に決めたぞ」

 放課後の空気はとても気持ちが良い。
 運動場を駆ける野球部の声、赤く染まり始める教室。夢見ゆめみ蓮二れんじは、入学一ヶ月ですっかり放課後の虜と化していた。
 今日も今日とて惰眠を謳歌しようと思っていた矢先である。氷川ひかわ葉月はづきが意気揚々と声を掛けて来たのは。

「ごめん、俺今から寝るところ」
「お前くらいしか話せる相手がいないんだ」
「悲しい事言うなよ。分かったよ、聞くから」

 睡眠は勿論大切だ。
 この世で最も安価で効率的な暇潰しは睡眠である。そう考えている蓮二にとって、貴重な睡眠時間が削られるのは死活問題であった。
 だが、友人の頼みである。
 入学当初に知り合って以来の仲、しかし高校初で唯一の友が、話を聞いてくれと頼んで来たのである。
 多少の眠気ならば我慢できると目を擦った蓮二だったが……秒で完全に目を覚ました。

「俺、咲良さんに告る」
「絶対やめとけ!後悔しかしないぞ!」

 瞬間蓮二の脳内に溢れるは、短くも濃い過去の記憶。
 入学式、自己紹介で堂々と「俺と付き合いたい子は後で連絡交換ね」と発言した葉月。
 翌日、「君、俺の事好きでしょ」と公開セクハラしていた葉月。
 数日後、同級生の女子による「マジきもい、ありえない」発言で真面目に号泣していた葉月。
 更に数日後、「君、可愛いね。俺の事、好き?」と平常運転に戻っていた葉月。
 告白して成功する確率など無に等しい。
 ましてや相手は、学校一可憐と名高い美少女である。

「これ以上評判下がったらお前の居場所無くなるぞ?」
「評判なんてものはな。恋の前には勝てやし無いんだよ」
「負けるだろ、お前の場合」

 最早聞く耳を持たないだろう。
 こうして始まった世にも悲しき失恋劇。
 蓮二は知っていた。この日が、全ての始まりであったと。

 四月。夏は、まだやって来ない。

Re: 願い多し、未来は一つ ( No.2 )
日時: 2019/06/02 10:56
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: U7ARsfaj)

はじめまして、友桃(ともも)と申します。
小説よませていただきました。

とてもテンポのいい文章で、序盤からおもしろかったです。
葉月はハタで見てたらおもしろそうな人ですね笑
彼の日常も破天荒そうでとても気になりますし、プロローグや第一章のタイトルを見ると、これからもっと日常から離れた大きい話に広がっていったりするのかな?とか勝手に想像したりして、わくわくしてます。
日常でも非日常でもこのテンポの文章だったらハマってしまいそうですが^^

続き、とても楽しみにしています。
執筆がんばってください^^

Re: 願い多し、未来は一つ ( No.3 )
日時: 2019/06/02 21:34
名前: 佐藤一々 (ID: OtIMiKLW)

 友桃さん、感想ありがとうございます。
 嬉しさのあまり語彙が消失したので感謝の言葉だけ述べさせて頂きました。

 出来る限り読みやすい文章というものを心掛けて執筆したので、テンポが良いと言って頂けて作者は大満足です。やったぜ。
 未だ核心に迫れておらず世界観があやふやな状態ですが、友桃さんの仰る通り日常離れした話になる事は間違いなさそうです。もう少しだけ普通の日常にお付き合いください。
 葉月に関しては、完全にやべー奴です笑
 主人公は蓮二なのですが、今の所葉月が強すぎて困っている程です笑

 素敵な感想、本当にありがとうございました。
 もうめちゃくちゃ頑張ります。

第一章 ( No.4 )
日時: 2019/06/03 22:32
名前: 佐藤一々 (ID: OtIMiKLW)

 春風吹く、午後の屋上。
 一人の男の、魂の叫びが響いた。

「咲良さん、大好きだ!付き合おう!」
「ごめんなさい、無理です」

 失恋。読んで字の如く、恋心が失われる瞬間を指す言葉だ。
 今まさに、その瞬間が訪れたと言えよう。
 告白し、振られる。以上も以下も存在しない、意味通りの失恋だ。
 だが、今この場に失恋者は存在しない。
 何故なら、氷川葉月だからだ。

「じゃあ、結婚しよう!二年だけ待ってくれ、咲良さん」
「あの、ごめんなさい。無理です」
「やっぱり二年は長いか。じゃあ今すぐ結婚しよう!法なんて無視だ!」
「無理って言って……」
「俺は君の為なら犯罪者にだってなってみせるさ。さあ、祝言を挙げよう!」

 会話が成立するかどうかは、知能指数によって決まるとされている。
 会話とは、即ち言葉のキャッチボール。
 相手の意をどれだけ受け止める事ができるか。
 はたまた、自分の伝えたい事を如何に纏められるか。
 全ては、知能次第なのだ。
 そんな事は知らんと言わんばかりに、この会話は驚く程成立していない。
 何故なら、氷川葉月だからだ。

「あの、話を……」
「ああ、嬉しいな。想像が弾みに弾むよ、幸せな未来がすぐそこに!」
「はい、葉月劇おしまい。ほら、帰るぞ」

 暴走する一人会話を止めたのは、こっそりと傍観していた蓮二だった。
 葉月は放っておこうと勝手に妄想するだけ。ただ虚しいだけだ。
 問題は、完全に困り果てている彼女の方だ。

「何だ?俺達に嫉妬でもしたのか、蓮二」
「嫉妬も何も振られてんだよお前は」
「振られた?俺が?いつ?」
「一言目が謝罪と拒絶だったぞ」
「そんな筈はない!俺は確かに愛を伝えた!この想いを!」
「うん、見事な空振りだったな」

 カキーン、と。
 見事なホームランの音が綺麗に響いた。
 上がる歓声、叫ぶ野球部。
 葉月は、空を見上げていた。
 ああ、空を飛ぶ鳥はなんて自由なのだろう────
 
「あ、そうだ。夏初さんも可愛いんだしこういう男には気を付けてね。余計な世話かもしんないけど」
「え、……はい。気を付けるようにします」
「なんかごめんね、一人の時間邪魔しちゃって」
「いえ、そんな……。あ、あの、私以外に良い子は沢山いるので……その……」
「あー、大丈夫。こいつの心、ケア要らずだから」

 抜け殻の肩を叩き、そのまま彼女に背を向けた。
 異性二人と同じ空間にいるという事は、決して気が楽とは言えないだろう。ましてや、変人奇人が相手である。
 相手の精神的疲労を考慮し、蓮二はこの場を立ち去る事にした。

「そんじゃ行くね。迷惑かけてごめんね、夏初さん」
「俺はまだ君の事を諦めてはいないから!君の記憶の片隅に置いておいてくれ!」
「本当懲りないな、お前」

 伸びていた二つの影が、黒の中に消えていく。
 想定外の出来事に呆気を取られながらも、彼女の中では、確かに一つの感情が生まれていた。
 それは、たったひらがな五文字を音にするだけで、いとも容易く相手に伝わる。
 とても簡単だ。しかし、言葉は喉の奥で止まっている。
 それを無理やり吐き出すように、体を前へと押しやった。

「……あ、ありがとう!」

 その五文字が表すのは、感謝。
 あるいは嬉しさ、あるいは寂しさ。幾重にも重なる言葉の意味は、時には簡単には伝わらない。
 それでも、彼女の言葉は消え行く影を確かに止めた。

「え?あー、どういたしまして」
「俺の方こそありがとうだよ、咲良さん!またいつかとは言わず、いつでも会おう!」

 何に、だなんて野暮な事は聞かない。
 そんな二人の優しさに、思わず笑みがこぼれた。
 少しぎこちない笑顔が、二人の瞳にしっかりと映る。
 すっかり赤く染まった夕焼けが、視界をほんの少し歪ませる。彼女──夏初なつは咲良さくらの微笑みは、どことなく儚げで、それでいて美しく、綺麗だった。
 だが、それだけではないような気がした。
 蓮二の瞳に映る咲良の姿は、少しずつ、少しずつ──

 扉の閉まる、音がした。

Re: 願い多し、未来は一つ ( No.5 )
日時: 2019/06/03 23:18
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=10985

こんばんは。友桃です。

葉月好きです!!笑 やべーやつにハマっちゃいました笑
告白シーン最高でした笑 野球部のとことかも笑っちゃいました笑
あれ、さっきから「笑」しか打ってない笑

あとあと、咲良ちゃん好きです。
声とか話し方とかかわいいんだろうなぁと勝手に想像してます。
性格もよさそ~
てっきり葉月の告白シーンのみで出てくる子なのかなと思っていたら、最後のところとてもミステリアスな雰囲気で締められていて、
あれ、もしかしてこの子キーパーソン?
とドキドキしております。
あと第一章のタイトルを思い出しました。続きどうなるのか楽しみです。

前半笑いながら読んでたのに、後半ミステリアスな空気になってて、どっちも書けるんだいいな!!と文章力に嫉妬中です笑

次も楽しみにしてます!


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