コメディ・ライト小説（新）
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- リベンジ インフェクション
- 日時： 2019/11/01 16:24
- 名前： 柞原 幸 （ID: 5VHpYoUr）
- 参照： http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12574
初めまして。柞原幸です。
今回が初作品ですが、どうぞお楽しみください☺︎
☆2019年夏の大会で銅賞を頂きました☆
☆投票してくださった皆様、本当にありがとうございました☆
⚫︎⚫︎登場人物紹介⚫︎⚫︎
[ミア＝ルーベン]
ルヒカラ王国に住む、13歳の女の子。
ルーベン家の長女であり、アクトの姉。
元気で明るいが、ルヒカラ王国の主食の一部であるペリ草が大の苦手。
[アクト＝ルーベン]
ルヒカラ王国に住む、10歳の男の子。
ルーベン家の長男であり、ミアの弟。
心配性だが、優しく賢いしっかり者。
[アマリア＝ルーベン]
ルーベン家を支える頼もしいミアとアクトのお母さん。
コロモロとペリ草が大好き。
[アルベルト＝フローマー]
ルヒカラ王国第107代国王。
多くの国民に慕われている。
[ロト]
アルベルト王の執事でありながら、ルヒカラ王国警備隊の最高指導官でもある人物。
国王も舌を巻くほどの優秀な人材。
[カール＝ファイネン]
今年ルヒカラ王国の警備軍隊入りした新米警備員。
暑さにやられるとへにゃへにゃになる。
[ルセル＝ローべ]
ルヒカラ王国の警備軍隊の1人。
その実力から、最高指導官の右腕とのあだ名も持っている。
また、新米警備員の教育係も務めている。
◆目次◆
プロローグ>>01
==第1章『隣国の異変』=============================
1話>>02 2話>>03 3話>>06 4話>>07 5話>>08 6話>>09 7話>>12 8話>>13
===================================
==第2章『侵入』=============================
9話>>17 10話>>18 11話>>21 12話>>23 13話>>26 14話>>27 15話>>31 16話>>34
===================================
÷÷感想をくれた方÷÷
◇友桃さん >>04 >>10 >>15 >>19 >>24 >>29 >>35
◇朱雀さん >>36
- Re: リベンジ インフェクション ( No.43 )
- 日時： 2020/01/26 13:28
- 名前： 柞原 幸 （ID: eldbtQ7Y）
長い間更新を止めてしまってすみませんでした…m(__)m
年末年始、とても忙しくて。。
ひと段落つきましたので、また更新を再開したいと思います。
これからもリベンジインフェクションをよろしくお願いします。
- Re: リベンジ インフェクション ( No.44 )
- 日時： 2020/02/27 21:42
- 名前： 柞原 幸 （ID: Ytr7tgpe）
森に夜が来る。
もうじき森は真っ暗闇になる。
ガーダはミアとアクトが追いついていないのを確認すると、地面を蹴り、風を切ってバネの様に高く跳んだ。
一番低い木の枝をそっと掴んで折れないうちに幹を斜めに蹴る。
タン、タン、タンとそのまま木の幹を利用して上に登っていく。
もしこの様子を見た者がいたのなら、「ついに人間は重力にも逆らうことが出来る様になったのか？」と目を見開いたであろう。
音を立てず、空気を揺らさず。
空中で静止したかの様に見えてしまう滑らかなガーダの動きは美しく完璧であった。
一番太く、強い木の枝にガーダは座り、羽織った黒いマントの袖をギュ、と握りしめた。
ふいに、今まで流れていた音楽が途切れたかの様にガーダの無線機が鳴り、静寂を切り裂いた。
ガーダは無線機を手に取り、画面を見る。
深みどりの画面に紺色のカクカクした文字が浮かび上がった。
（…ロトからだ。）
ため息が夜の冷たい空気にほうっと白く、長く流れ出た。
—————————————————————————————
「ねぇ。このまま僕たちどうなるの？」
アクトが泣きそうに言う。
「何言ってんの。ガーダさんはロトにわざわざ指名されたとびきりの護衛だよ？
きっとすぐに合流できるって。うん。できるできる。」
ミアは握ったことも使ったこともなかった槍を固く握りしめ、頭の中で猛獣に出会ってしまった時の槍の動かし方を脳内再生し、ひたすらジリジリと前に進んでいった。
森は静まりかえり、ルヒカラ王国の林の夜とは全く違って虫が地を這う音すら聞こえない。
ただただ月明かりだけが安心感を与えてくれた。
がさり。
「え。」
「なに？」
後ろから草を踏む音が聞こえた。
遠くの方であったが、静まりかえった森の中ではとても良く響いた。
がさり。
「ねっ、ねねねね姉ちゃん！！！！！近づいてくるよ！どうしよう！！」
「くっつかないでって！！槍使えないでしょっっ！」
二人ともパニックに陥り、四方八方をグルグル見回す。
しかし辺りは暗い色の木の幹のみ。
がさ。がさ。がさり。
「うっっっわ！！！死んじゃうのっ？！ぼ、僕たち！」
「いや私だって怖いんだから叫ばないでよ！！余計に怖く…。」
「ここか。」
ふいと茂みの中からガーダが現れた。
無線機を手にし、自分達を見下ろしている。
「が、ガーダさん！！」
ミアとアクトはへなへなと座り込んだ。
「すまない。森の霧で五感が鈍ってしまって見つけ出すのに時間がかかった。」
あと、とガーダが無線機をミアとアクトの方に見せた。
深緑の光がぼんやりと二人の顔を照らす。
「先程ロトから無線が入った。その内容だ。
どうやら、俺達が早くこの任務を終えなければもっと大変なことになるぞ…。」
ミアは緊張の緩和により震える手で無線機を持ち、文字を読んでいくうちに、どんどん目を見開いて行った。
「そんな…。」
「どうしたの姉ちゃん？」
アクトはミアが持った無線機を覗き込んだ。
暫くしてやはりアクトも顔色が変わる。
「サド王国が…ルヒカラ王国に宣戦布告っ……？！？！」
- Re: リベンジ インフェクション ( No.45 )
- 日時： 2020/04/29 22:33
- 名前： 柞原 幸 （ID: Ytr7tgpe）
｢サド王国って、確かルヒカラ王国から東に遠く離れたあの国ですよね？
マストレードに続いて一体…。ていうかこの状況、結構ルヒカラ王国やばいんじゃ？｣
アクトが焦った口調で言う。
アクトが考えたのは、マストレード王国とサド王国が手を組み、ルヒカラ王国を討ち取ろうとしている事だった。
特別に大事な貿易相手であるマストレードとの交易を0にすれば、ルヒカラ王国の経済や国民の生活に支障が出てくる。そこを狙っているのではと。
｢正直、現在二国の意図はよく分からない。だが、いずれにせよ、今まで俺達の保護者だったロトはサド王国の方に手を回さなければいけなくなる。
マストレード王国から花火が上がったとは言え、それが宣戦布告だとはまだ確信できないのだから、まずは直接使者を寄越して宣戦布告をしてきたサド王国から手を打たなければならない。｣
｢…てことは、私達は一刻も早くマストレード王国に辿り着いて、サド王国に辿り着いて、サド王国との関係性の有無や、国内状況を確かめなくちゃいけないってこと…。｣
ミアは拳を固く握りしめる。
｢まぁそういうことだ。明日からはもっと速く歩け。｣
ガーダが話のコシを折り、また先陣をきって歩き出した。
2人もよいしょと立ち上がり、ガーダに続いた。
歩いて数分。急に道が開き、あれ程生い茂っていた木が1本もない直径約20メートル程の広場に出た。
まるでこの場所にUFOが着陸したみたいだった。
｢うわぁ。この場所野宿にピッタリだね。｣
嬉しいような嬉しくないような声でアクトが言った。
｢待ってろ。｣とだけ言って場を離れたガーダは、3分程経ってから、腕いっぱいに30センチ程の枝を抱えて戻ってきた。焚き火用の枝らしい。
｢良かった。僕てっきりこのヘトヘトの中、薪割りさせられるのかと思ってたよ…。｣
アクトが眉を下げて笑いながら胸を撫で下ろす。そして、すぐ真面目な顔になって、
｢あの、ガーダさん。言っておくんですけど、僕火起こしなんて出来ないんで…。｣と首を振った。
｢何言ってんだ。マッチを使えばいいだろ。｣
｢え、まっち？｣
ミアもアクトもまさか、といった顔でガーダを見た。
｢まっち、って、あのマッチ？｣
｢あのマッチも何も、先っちょに赤いのがついてるあのマッチだ。他に何が？｣
ミアもアクトも驚いた。
マッチの原料となる『アスペン』という木は、ルヒカラ王国の気候に適さず、植えたとしてもすぐに枯れてしまうのだ。
その為マッチは貴重、と言うよりもほぼ国内に普及していなかったのである。
買おうとしたって到底自分達の貯金箱の中にあるお金じゃあ買えないだろう。
｢王宮の人はそんな高価なもの持ってるんだね…！すごいっ！！｣
アクトは興奮を隠しきれない様子で目を輝かせた。
｢僕、マッチっての、1回は見ておきたいと思ってたんだ！！だって、シャッ、って1回擦るだけで火がつくんだよね？不思議だと思わない？？
本で見たんだ。確か箱の側面にある部分には赤リンと、えーと……あっ、硫化アンチモンが使われてるんだよね！
あれ、赤リンが発火させる作用を持ってて、その発火によって箱が燃えないように硫化アンチモンが赤リンの発火を抑える作用を発動させてるんだよね！！どっちも発火させる作用かと思ったら違うんだよ…。だってあんな小さい力で火を起こすためには更に発火させる作用が強い方が良いよね。なんでそれで火がつくかって言うと、赤リンと酸素が反応するからなんだよね！じゃあその酸素がどこから来るかっていうと…｣
ガーダはきょとん、とした顔でアクトを見つめていた。
無理もない。ミア自身も｢あぁ、また出た。｣と思ってしまったのだから。
アクトは勉強大好き人間で1度興味が湧くと止まらない太刀なのだ。
きっともうサド王国のことなんて忘れている。
ガーダが集めた木の枝や木の葉の上に点火したマッチを投げ入れると、直ぐに中央で火が揺らめき始めた。ミアとアクトはせっせと周りにある木の枝を集めては火の中に入れて行く。たちまち火は大きくなりいつか学校のお泊まり会で経験した｢キャンプファイア｣に似ていた。
｢…綺麗だね｣
暗い夜の森の一角でパチパチと燃え盛り、周りを照らす唯一の火を目の前にして、ミアとアクトはとろとろとまどろんできた。
思えば今日は長かった。
人生で経験したことがないくらい。
暖かな暖色の光が優しくミアの頬を照らす。
もうアクトは寝てしまった。
ガーダもさっき木の上に登っていたので、きっとそこで眠りについたんだろう。一応見張りも込めてくれているみたいだ。
（ちゃんと進めてるのかな？私。）
寂しく怖い森だけれど、上を向けば息を飲むほど綺麗な星空が広がっている。
星空を見られるのはもう今日が最後なのかもしれないし、一ヶ月後には家族で笑いながら見上げているのかも知れない。
ミアはふと、自分の金色がかったショートヘアに付けている星の形の髪留めを思い出した。
この髪留めは触ると勇気が湧いてくる。
何故だかは分からないけれど、ずっと昔からそうだった。
嫌いなペリ草を食べる前。
学校の大事な試験の前。
アクトをいじめたガキ大将のナワバリに乗り込んだ時。
そして、
お父さんを見送ったあの時。
ミアは目を瞑り、そっと髪留めに触れた。
（まだまだこれからだ。私、頑張るよ。お父さん。お母さん。）
眠りについたミアの頭上で、沢山の星々がキラキラと輝いていた。
- Re: リベンジ インフェクション ( No.46 )
- 日時： 2022/09/11 13:07
- 名前： 柞原 幸 （ID: Dbh764Xm）
- 参照： http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12574
初めまして、あるいはお久しぶりです！柞原幸です。
2年程前、このリベンジインフェクションという小説を書いていたのですが、色々と忙しい事が重なって完全に更新を止めていました。
ですが2年経った今でも日常の中で、ふとこの物語を書いていた頃の作品に注いでいた愛情や、ずっと応援してくれていた方を思い出すことが多々あり、「自分の決めたあのラストまで描き切りたい｣という気持ちがずっと残っていました。
1度更新を辞めてしまった私ですが、少しずつ投稿を再開して行きたいと思います。ゆくゆくは最終回にまで筆を運べる様に…
温かく見守っていただけると幸いです
- Re: リベンジ インフェクション ( No.47 )
- 日時： 2022/09/25 19:48
- 名前： 柞原 幸 （ID: Ytr7tgpe）
ただレンガの道を何となく歩いていく。
何か大事なことが自分を呼び寄せている様な気がして。
ただただ歩いていく。
自分でも分からないのに分かる。
どこに向かっているのかが。
何故なんだろう？
分かるのはずっと先なんだろう。ずっとずっと先。
でも、忘れてしまいそうな気がする。 思い出したら、そのままどこかに溶けて消えて行ってしまう気がする。
それでもどんどん歩く。歩き続けて、そうだ、あそこの角を曲がって……
「…ﾊｯ、」
そこでミアは目を覚ました。いつもなら最初に目に入るはずの天井は目に入らず、代わりに限りなく近い土の地面が目に入ってきた。
湿った土の匂いがする。
周りはまだ暗いが、空は滲んだ明るみを帯び始めている様だ。
体を起こすと、昨日の疲れがまだじんわりと体を巡っている。
霧のかかる頭をボーッと働かしながら周りを見ると、火が消え黒く炭になった木の残骸と、続けて正面にまだすやすやと地面に横たわり眠るアクトの顔が目に飛び込んだ。
ミアは頭の中の霧を無理矢理払い除け、ようやく偵察者の任務中である事を思い出す。
昨日から色々な事がありすぎて、今日目が覚めたら端から端まで全部夢だった、なんて展開を少し期待していたこともついでに思い出した。
「アクト、」
ミアは重い体を動かしながら焚き火の残骸のそばを通りアクトを起こしに行った。
体を揺さぶるとアクトは「ゔーん…」と小さく漏らしながら目を開けた。
しかしすぐにまた目を閉じ可愛らしい寝息を立て始める。
何だか微笑ましい気持ちになりながらもう一度、「任務中だよアクト。もうすぐ朝になるしガーダさんの所に行こう。昨日『朝日が昇る前には起きろ』って言われたでしょ。」と話しかけた。
アクトは目を瞑りながらうんうんと頷き、口だけにっこりと笑って右手の親指だけ立て、Goodの形にしてみせた。
一そして、直ぐにまた寝息を立て始める。
「こら！！！！！！！あんた朝には強いタイプでしょうが！起きて！！朝だよ！！」
ミアはより強くアクトを揺さぶる。アクトは慌てて激しく動くミアの腕を掴み「起きた！起きた！」とギャーギャーと叫んだ。
ミアは手を止め、アクトが体を起こすのを手伝う為に手を差し伸べた。
アクトはミアの手を借り、体を起こしながらため息混じりに言った。
「何だか今日はいつもより眠いし疲れてるんだよね…何でだろう…」
「ふかふかのベッドで寝てる訳じゃないから安眠出来なかったんでしょうね…。私は多分そのお陰で早めに目が覚めたんだと思うけど、無くなって始めてベッドの凄さに気づいちゃった。久々にあの夢も見たし。」
ミアも体の痛みを感じながら肩をすくめる。
「え、夢ってもしかして…また？」
アクトが驚く。
と、突然2人のすぐ背後から新しい声が生じた。
「俺がいなかったら永遠にその夢を見続けてたかもな。」
「うわぁっ！ががガーダさん、おはようございます？！」
2人はすぐ後ろに立っていたガーダに気づかず思わず体を仰け反らせた。
ガーダは「おはよう｣を返すことも無く、さっさと二人の間をすり抜けて燃え尽きた焚き火の傍に腰を下ろし、何やら地面に並べ始めた。
ミアとアクトは顔を見合せ、どう動いて良いのかも分からないまま、突っ立ってガーダの羽織っている黒いマントを後ろから見つめていた。
…しかし直ぐに他の事に気を奪われた。
「わ、良い匂い…！」
二人は思わず駆け寄ってガーダの手元を覗き込んだ。
ガーダは焚き火の近くに置いていた2段重ねの小さな鍋を開け、『かぼちゃ』を取り出していた。
鍋の保温機能が働いていたのか、鍋からは沢山の湯気が上がっている。
「あーっ！！かぼちゃだーー！」
ミアとアクトは喜んで目を輝かせる。
かぼちゃはマストレード王国の特産物の1つであり、ルヒカラ王国はこの作物をコロモロの次に多く輸入していた為、勿論ミアとアクトにも馴染みがあった。湯気の立つ鍋にはかぼちゃしか入っていない様であったが、幸い二人はかぼちゃが大好きだった為早く頬張りたい気持ちで胸が満たされた。
…何よりも二人は空腹だったのだ。
ガーダは視線をこちらに向けず、後ろでキャッキャと喜ぶ2人の声を聞き流しながら、並べたお椀にかぼちゃをよそった。
「…只のかぼちゃでそんなに喜ぶんだな。」
ガーダはよそい終えた最後のお椀を置くと、不思議そうにそう言った。
ミアはガーダが自分達に向けて感想を言ったのがあまりにも新鮮で、果たして皮肉なのか唯本心を呟いただけなのか分からなくなってしまったが、やっぱり声をかけられたのがどうしても嬉しくて、元気に「勿論！」と返した。
立ち上がったガーダは
「食べ終わったらすぐ出発するぞ。」
とだけ言い残し、自分の分のお椀だけ持って、またスルスルと木に登り姿を消してしまった。
ミアはまだほの暗い朝の空気に包まれた森の中でアクトとアツアツのかぼちゃを頬張りながら、いつまでもこちらを向かないガーダの表情が少し綻んだ様な気がしてならなかった。