コメディ・ライト小説(新)
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- 特殊恋愛物語
- 日時: 2019/07/24 09:26
- 名前: IO (ID: yU3pc2AF)
登場人物
・有明野月(ありあけ のつき) 成績優秀な少し電波な少女
・臥待沙仁依(ふしまち さにえ) 転校してきた長髪の少年
・水端研二(みずはし けんじ) 文武両道のイケメン少年
・大塚小祐里(おおつか こゆり) 非の打ち所がない絢爛少女
代わり映えのしない毎日。何か人生を大きく変えるような出来事はないかと、有明野月は考えていた。たとえば…
「おはよぉ野月」
彼女の名前は大塚小祐里。立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花の言葉が似合う絶世の美女。ソフトテニス部の部長を勤めており、成績も優秀な非の打ち所がない存在。
「よお」
彼は水端研二。隣のクラスの小祐里の彼女で、サッカー部部長。他校の生徒からも告白にやってくるその美貌には、一部の女性の先生の視線も奪ってしまう。無論成績は優秀。
「お、おはよう二人とも。って、研二くん、ここ三組だけど…」
「あ?何?」
周りのみんなには聞こえないような声で脅す研二。…そう、私はこの二人に虐められている。その理由は些細なもの、成績の順位の事だ。この学校ではテストがあるごとに学年で順位がつけられる。…自慢ではないが、私は学年一位を取り続けていた。それが気にくわなかったのか、私は小祐里と同じクラスになってから、二人から上履きを隠されたり教科書をゴミ箱に入れられたり、掃除当番を押し付けたりと嫌がらせを受けていた。
「てめぇどうせダチいねぇんだろ?だから構ってやってるってのに、なんでそんな睨むんだよ?」
「…」
「…シカトかよ。うぜぇ、お前後で校舎裏来い。分かったな?」
「…分かった」
「…ッチ。行こうぜ小祐里」
小祐里は少し私を見てニヤけた。そして研二の腕に抱きついて教室を出て行った。…たとえば、あういう奴らにいじめられていたところに救世主が現れて、ドーンってなんかなったら面白いのにな。
「ねぇねぇ聞いた?」
「なになに?」
「今日隣のクラスに転校生が来るらしいよ!」
「まじ?!男?女?」
「それがさ…男らしいよー!」
「おー!イケメンだといいなー!って、あんたはそういう情報どこから取ってきてるの?」
「えへへー、今朝部活の時に顧問から教えてもらってんだー!」
後ろにいる女子が話している。転校生なんて今までいっぱい見てきた。正直これっぽちも興味なんて無かった。
ホームルームが終わった。私は係の仕事なので、校舎裏の花壇の水やりをしに行った。呼ばれていることもあるので、ささっと仕事を片付けようとした。花壇のところにいくと、知らない生徒が一人。白髪の長い髪を赤いリボンで雑に縛った中性的な人。目の下には濃い隈がついている。私は急いでいるので声をかけようとはせず、自分のクラスの花壇に水をやった。するといきなり
「すいません」
いきなりその人に声をかけられた。見た目は中性的だが、声は男そのものだった。
「な、なんでしょう」
「僕のクラスの花壇はそれですか?」
「僕のクラスって…何組ですか?」
「二年四組です」
驚いた。同学年だったのだ。そして神霊は、今朝の女子生徒の会話を思い出した。
「も、もしかして今日転校してきた生徒?」
「あ、はい。臥待沙仁依といいます」
名前を聞いて、私もなのろうとした瞬間、後ろから悪魔の声が聞こえた。
「おーい」
「ゲッ」
あのリア充だ。
「じゃあ早速さっきの罰を…って、他に人いるじゃねぇか」
沙仁依はこっちに気がついていないのか、ずっと花壇を見つめている。そこに二人が滲みよる。
「こんにちはぁ!」
「え…?あ、こんにちは…」
「君はもしかして、二年三組に転校してきた人?」
「は、はい。臥待沙仁依と言います」
急展開で頭が混乱しているのは、沙仁依はあからさまに焦っている。
「俺水端研二。同じクラスだから、わかんないことがあったらなんでも聞いてね!そしてこっちが俺の彼女の…」
「大塚小祐里でぇす!研二の彼女でぇす!クラス違うけど、仲良くやってこぉ!サニくんって呼んでいい?」
偽善者が。野月はバカップルにバレないように舌打ちをし、睨みつけた。その瞬間を、沙仁依は見逃していなかった。
沙仁依のお陰であの時間は二人に絡まれずに済んだ。あれから、沙仁依はよくあの二人に絡まれているらしい。そして翌日、定期テストが行われた。家や塾で勉強していた私は学年一位を獲得。そして、あの転校生、臥待沙仁依がなんと小祐里と研二を抜いて二位をとった。そして、悪夢は広がった。嫌がらせの矛先は、私だけではなく沙仁依にも向けられた。よく朝に花壇で会うのだが、沙仁依の顔には痣が多く出来ていた。声をかけて、痣の事を聞こうとしても、毎回話を逸らされる。野月は沙仁依が二人に絡まれているのは察していたが、沙仁依は野月が二人に絡まれているというのを知らないようだ。
沙仁依と帰り道が途中まで同じというのに気づいたのはすぐだった。それ以来、私達は変な噂を広められないぐらいに一緒に帰った。そこで、沙仁依に思い切って聞いてみた。
「ねぇ沙仁依」
「何?」
「あなたってさ、あのバカップルにいじめ受けてんの?」
沙仁依の歩きが一瞬止まったように見えた。
「いじめというか…まぁ、ちょっと絡まれてるだけだよ」
「へぇー…」
「こ、こっちも聞くけどさ、もしかして野月も…」
「そういえば沙仁依ってさ、頭いいよね!どっか塾行ってるの?」
「…塾は行ってないよ」
話を逸らされた。
次のテストが近づく。野月と沙仁依は部活に入っていないため、早く家に帰っていた。それぞれ勉強をし、力をつけていった。ある日、野月はテスト期間で諸活動停止になった日、帰り際に二人に呼ばれた。
「…」
「何?通せんぼ?」
「…家に帰ったらすぐに空き地に来い」
「え、なんで…テスト期間だから勉強しなきゃ…」
「うるせぇ!来いったらとっとと来い!」
「こないとツイッターに貴方の悪口書いちゃうかも〜。キャハハ」
二人の命令を無視するとろくな目に遭わないので、仕方なく空き地に行くことにした。
空き地には誰もいなかった。私は空き地の隅にあるベンチに腰を下ろした。しばらく待っていると、私は後頭部に強い衝撃を受けた。地面に打ち付けられた体を起こしてみると、そこには小祐里と研二が立っていた。
「もー研二ったら、学校じゃ思いっきりできないからって、これやりすぎじゃない?」
「…こいつがいるから俺の周りからの評価が下がってったんだ。てめぇのせいで!」
みぞおちに蹴りをもろに食らった私は、大量の唾液を出して地面に倒れた。それを小祐里は携帯で撮影しながら笑っていた。次に私は脛を鉄のパイプで殴打され、脛がミシッと嫌な音を立てた。無理やり立たされた後には、頭、首、胸、腹、腕、足を丁寧に壊されていった。頭、首、腹、胸はなんとか耐えたが、右腕と左足の感覚はすでに無くなっていた。挙げ句の果てには意識が朦朧としてきた。地面に這いずり、意識がなくなろうとしていた瞬間、空き地の入り口に人影が見えた。
「沙…仁依…?」
声を出すので精一杯だった。空き地の入り口いた沙仁依はだんだんこっちに近づいてきた。野月を少し見てから、研二たちの方に振り向いた。
「随分遅かったじゃねーか。どんだけ遅いんだよ」
「…ずっと思ってたんだけどさ」
沙仁依の目の色と目つきがいつもと違った。
「なんでこういう事すんの?」
「あ?そんなん、俺がムカついたからだよ。俺は前まではトップ三の中に入っていたのによぉ、てめぇが入ってきたせいで四位だぞ!?そのせいで親には軽蔑され、ストレスのせいか他校の生徒も来なくなっちまったし最悪なんだよ!」
「塾行ってないのに学年二位はおかしいと思うよぉ?どうせインチキとか使ってんでしょ?そういうところ直したら〜?」
沙仁依の目つきがさらに悪くなった。
「要するに八つ当たりってこと?あと塾行ってる行ってないは関係ないだろ、ただ単にお前らの努力不足なだけだろ。」
心なしか口も悪くなってきている。
「俺らだって人間だ。てめぇらみたいな偽善者のサンドバッグじゃねぇんだよ。俺はお前らよりも努力している。それが結果に出ているだけだ。その名誉を踏みにじるのは人として恥すべき事だ。」
散々言ってる。下から見える沙仁依の背中が逞しく見えた。
「…さっきから黙って聞いてりゃよぉ。俺らが偽善者?何バカみたいな事言ってんだよ。それに、お前らとかてめぇらとかよぉ、…なんか言うなら俺だけを言えよ。小祐里に手出すな」
「研二…」
なんだそりゃ。いきなり彼女を守った?
「あ?何綺麗事すかしてんだよ。今更良いところ人前で見せたってなんの加点にもなんねぇぞ?」
「っつ、てめぇ!さっきから聞いてれば散々言ってんじゃねぇじゃよ!もう許さねぇ。こいつボコボコにしてやんよ。小祐里、下がってな」
素手で戦おうとしているのか、広くスペースを確保している。私も移動したいが、完全に左足がお釈迦になってしまったので。歩くことは愚か、立ち上がる事もできない。…重力を感じないと思ったら、なんと、沙仁依に持ち上げられて、安全な場所に避難させられていたのだ。野月を持っている時の沙仁依の顔は、何処か切なそうだった。そして、野月を置いた時に、小さな声で「野月はなにも悪くないよ」と、ふんわりとした笑顔を一瞬浮かべながら言った。
砂ほこりが舞う中、二人の男子高校生が佇んでいた。お互いがお互いを睨み合う無限の刹那。先に攻めたのは研二。格闘技、喧嘩に
慣れていないのか、力任せに拳を突き出している。蹴りも全く命中しなかったが、流石サッカー部といったところか、足の筋肉はついており、少しでも当たると無事では済まない。
「なんでずっと避けてんだよ!そっちも少しは攻めろや!」
「そういうのは当ててから言え」
その瞬間、研二が横に吹っ飛んだ。沙仁依が蹴りを腸あたりに当てたのだ。
「が、がは…」
研二は悶えている。
「…」
野月には見えていた。沙仁依の目に、涙が浮かんできている事に。
沙仁依が目を離した瞬間だった。
「動くな…」
野月の背中には、タガーナイフが立っていた。
「おいおいやめてくれよ。そんな人質みたいな真似は…」
「そうだよ。人質だよ」
「なんだよ、たかが一発蹴りくらっただけでそんな真似するなんてな、怖気付いたのか?」
「そうだよ…やめなよ研二。下手したら犯罪だよ…」
「はぁ?俺とお前は今まで逮捕すれすれの事やってきたじゃねぇかよ」
完全に逆上してる。だんだんと私の背中にナイフが突き刺さってくる。じわじわと来る痛みに私はだんだん声を上げていく。
「おい…やめろよ…」
「研二ぃぃぃぃ!もうやめて!殺人犯になっちゃうよ!」
「今更うるせぇ!もうこんな生意気な女ブッ殺してやらぁ!」
「やめろよ…」
ナイフがどんどん深く刺さっていく。私は必死にもがいたが、私を押さえつけている手が緩むことはない。
「…やめろよ」
沙仁依の声がだんだん小さくなっていく。私の意識が完全になくなりそうになった時。
「やめろっつてんのが聞こえねぇのか!このクズ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
沙仁依の声で空気が振動したように感じた。そして沙仁依は一目散に研二のところに駆け出し、拳を突き出した。そして、研二は頰を殴られ、遠くに吹き飛んだ。研二は痙攣を繰り返した。沙仁依の目からは…ぼたぼたと大粒の涙が流れていた。
気がついた頃には私は病室にいた。目を開けて見えた光景は、大きい花束、朝ごはん、そして、ベットによりすがり寝る沙仁依の姿だった。研二は殺人未遂の疑いで逮捕。小祐里は学校で研二のこともあり、いじめに遭うようになり転校。これで平和な学校生活が遅れる…と思った野月だった。
「あ、起きたの?」
「あんたもね。病院に送ってくれたの?」
「いや、小祐里ちゃんが携帯で百十九番してくれたから…」
「…」
「な、なに?」
「人格が違う…」
「?」
「いや、なんでもない。それよりさ、一つ聞きたいんだけど…」
「ん?」
「あんたさ、研二とタイマンしてる時めっちゃ泣いてたけどさ、どうしたの?怖かったの?」
その質問に沙仁依は答えるのに無言になった。
「まぁ、なんていうか…悲しかったからというか…」
沙仁依は少し顔が赤くなっていた。
「はぁ。なんだそりゃ」
この時は、まだ涙の正体を知らなかった。
〜エピローグ〜
数日後、私たちは付き合う事になった。実はお互い両片思いだったよいで、すんなりと交際していた。
「今ならさ、野月」
「何?」
「あの時の涙の意味わかるんじゃない?」
「え…全然わかんない」
「…なら教えてあげるよ」
沙仁依は笑顔になった。
「あの涙はね…」
〜完〜