コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【Licht】
日時: 2019/07/27 16:35
名前: いろなつ (ID: iykFqmai)

闇が怖い。

太陽光でも月光でも人工光でもなんでもいい。光があればいい。
闇には、何が潜んでいるかわからないから。目には見えないところで、何が起きているかわからないから。見えていないと、不安で仕方がなかった。
闇は、何もかもを隠してしまう。

幼い俺から、あの人を隠したように。

光と闇、正義と悪。
闇を嫌い光を好む僕がその力に目覚めた瞬間、僕らの正義が始まる。

___悪を成敗するために戦う王道能力バトル、ここに開幕___

Re: 【Licht】 ( No.1 )
日時: 2019/07/27 21:33
名前: いろなつ (ID: iykFqmai)

転校生が来るらしい。
7月に。
妙な時期に来るよなあ。もうすぐ夏休みになっちゃうのに。

学期末になって、もうすぐ14歳になるというこの日。特になんということはなく、窓際の席の特権だとばかりに、窓を開けるとすぐ目の前の二階までそびえる大きな桜の木の枝をのんびりみつめる。
すみわたった青空をバックに、桜の枝がある。今は若葉がみずみずしくて爽やかだ。毎年、桜、綺麗だからなあ。今年も見たいな。

のんびりと新芽を数えていると、がやがやと煩かった教室が、急に静かになった。最後尾の席から首を伸ばして前を見てみると、ドアが開いて担任の教師が入ってきた。
結構真面目な俺たち。途端に静かになってみんな席につき、好奇で輝く目で入り口の方をチラチラと見る。
教卓に両手をついた担任の先生が、にこりとも笑わず淡々と話し始めた。
「おはよう、連休はどうだったか? だらけるといかんのでこのあとすぐ課題を集めるから、準備しておけよ」
あれ、そういえば数学のプリント鞄に入れてきたっけ……
寝坊して朝食も食べずに慌てて家を出た朝の記憶を辿る。……ダメだ、思い出せん。
「そわそわして落ち着かないな。仕方がない、通そう。転入生を紹介するぞ。入ってきてくれ」
またがやがや煩くなる。転校生ってそんなに興奮するもん? 俺が1年の10月に入ってきたときもこんなだったもんなあ。
頬杖をつき、白い手がドアが開けるのをぼんやり眺めていた……そのとき。

バチッ

「っ……!?」
頭の中で火花が散ったような音と痛みと熱さを感じ、反射的に頭を抑えた。
何これ……いってぇ……
まだズキズキと疼く頭を抱える。みんな転入生に興味津々なようで、窓際最後列の角に座る地味な男なんて気にする人はいなかった。
「……して。……ま中学校からきました」
……あれ?
なんかこの声、聞き覚えがある……
『リヒト、かあ。僕はね』
顔を上げる。
何故か、前の席の人なんていないかのようにはっきりそいつが見えた。

「望月 灯也です」
『トーヤっていうんだ』

なんだこれ……なんだこれ……
教卓の右横、黒板の前に立つ、大人しそうな男。
そいつは、みんなの前を見ているはずなのに、ばっちり俺をみつめていた。釘付けになったように、そいつから目をはなせなかった。
「よろしくお願いします」
そいつは、にこりと笑い、確かに“俺に”そう言った。
拍手喝采の中、思い出した。本当に俺の記憶なのか、本当に覚えていたのか疑うくらい、知らない記憶が、ふっと、その瞬間思い出した。

望月灯也。
俺の、親友だった男。

Re: 【Licht】 ( No.2 )
日時: 2019/07/27 21:29
名前: いろなつ (ID: iykFqmai)

それから、普通に授業が始まった。
望月灯也は色白の肌にさらっとした黒髪と涼やかな表情が似合うイケメンってやつで、休み時間の度にクラスメイトに囲まれ、楽しそうに会話をしていた。時々俺へ視線を送るのは気のせいではないだろう。

それにしても、さっきの頭痛はなんだったのかなあ……本当に、火花が散ったような感じだった。じりっと焦がされるような熱さと痛み。始めての感覚だった。

給食も終わり、静かに教室を抜けて図書室へ向かう。あまり人と馴れ合うのが好きではなかった俺は転校してきてもうまくクラスメイトに馴染めず、それがひきずられて絶賛ぼっちだ。友達どころかいじめも始まっているのかもしれない。面倒臭いからと図書委員を押し付けられ、やる気のない先輩後輩に代わりに広い図書室をほぼ毎日管理している。
いやまあ、本は好きだからいいけどね。

ガラガラと戸を開けて、カウンターに入る。カウンターと言っても木のテーブルで三方を囲い、その上にパソコンが置かれた簡易的な場所だ。ドアを開けて図書室に入り、右を見るとカウンターにいる人と目を合わせることになる。
テーブルの上には本が乱雑に山になって置かれている。返しておけということだろう。いつものことだ。

貸出し状況を記録しているパソコンをたち上げていると、ガラガラとドアの開く音がした。
めずらしいな、と顔を上げた俺は、思わず、
「あっ……」
と声を上げた。
望月灯也と、目が合った。
「こんにちは」
にっこりと微笑まれる。
『親友だった男』
過去のメモを開いたかのように、その情報を思い出した。
望月灯也、親友だった男。いつ? どこで知り合った? 何も覚えていない。この男との記憶なんて一切ないのに、その情報だけを思い出した。不思議だなあ。
望月灯也はカウンター越しに俺の目の前に立つと、笑顔を絶やさず話しかけてきた。
「クラスメイトだったよね? えっと、名前は……」
「霪 理人」
「ながあめって読むんだ。りひとくんかあ……」
俺のジャージの胸元の名札を見、頷いている。
親友って何の記憶だろう。そんなわけないのに。この男は俺の名前も知らなかったみたいだし。
ああもうなんか、混乱してきた……
「何だか、りひとくんとは仲良くなれそうな気がする。よろしくね!」
右手を差し出された。
やっぱり勘違いかなんかだよな、親友とか。
でも何はともあれ、こいつはいいやつそうだ。脱ぼっちいけるかもしれない。
俺も笑顔を浮かべて、右手を差し出し、望月の左手に触れた……その瞬間。

バチッ

「かはっ……」

頭の中で火花が散り、息ができなくなった。

Re: 【Licht】 ( No.3 )
日時: 2019/08/03 10:47
名前: いろなつ (ID: iykFqmai)

「……わあ」

かがみこんだ頭上で、呟く声が聞こえた。

息ができるようになり、涙で滲む視界で見上げる。
なにこいつ……なんで笑ってんの……

「僕に会って覚醒したの? もー、待ってることなかったんだ」

「はーあ」とため息をつき、がっくりと頭を垂れる望月。
なんのことだよ……覚醒とか……
望月は、手を差し出して、僕を起き上がらせてくれた。僕がその手を借りてふらっと立ち上がると、ぐいっと身を乗り出してきた。近っ。

「ねっ、僕のこと覚えるでしょ? 君の親友だった男、望月灯也。通称トーヤ」
「なんで……それ……だって俺、お前に会ったことないだろ? 勘違いじゃ……」
「違うんだなあ、それが」

望月はいたずらっぽい笑みを浮かべ、語尾に♪でも付きそうな口調で応えた。

なんかコイツ、印象とだいぶ違うんだけど。言ってることは厨二病なのに、なんかるんるんしてて楽しそうだ。大人しそうなイメージあったのに。陽キャっていうか、むしろパリピじゃね?

「まあ後々わかってくるんじゃないかな。とりあえずだよ、リヒトくん! 能力も覚醒してきたっぽいし、僕を『親友だった』を『現在進行形の親友』に変えてくれないかなあ。じゃないとパートナーになれないんだよね」
「まてまてまて」

カウンターに片膝を乗せてグイグイ迫ってくる望月の眼前に、片手をつきつける。

「まず近い。とりあえずカウンターから降りろ。話はそれから」
「え〜? まあ、リヒトくんが言うなら〜……」

望月は渋々カウンターから降り、読書用のテーブルセットから椅子をひっぱってきてカウンターを挟む形で俺の前に座った。

Re: 【Licht】 ( No.4 )
日時: 2019/08/07 03:23
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: j9SZVVec)

こんばんは。
夜分に唐突な書き込み、失礼します。

作品拝読致しました。

プロローグ部分から凄く引き込まれました。
『闇は、何もかもを隠してしまう。』→『幼い俺から、あの人を隠したように。 』の流れなど、特に好きでした。
能力バトルものになっていくようで、楽しみです!

執筆頑張って下さい。応援しております。


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。